■オペアンプ 単電源1段アンプの設計手順
図30の回路を設計する手順をご紹介します。
仕様を以下のように決めます。
・入力インピーダンス Zin 5KΩ以上
・ゲイン 20dB(10倍)
・周波数特性 下側 20Hz、 上側 20KHz
※周波数特性は基準の周波数を1KHzとして、
この基準周波数のレベルから-3dBのポイントの周波数を言います
●手順その1
仕様で入力インピーダンスが5KΩ以上です。
入力インピーダンスを決定するのはR6とR1です。
(厳密にはC1のインピーダンスも影響を与えますが、ここではC1のインピーダンスはゼロと仮定します。)
R1の値は仕上がりゲインが20dBの仕様ですから、選択の値はいろいろ考えられます。
例えば
1,10,100,1K,10,100K ・・・・・
R2は必ずR1の10倍の値となり、R1 = 100Kの場合はR2 = 1M、R1 = 10の場合はR2 = 100Ωです。
しかし、R2 = 1Mはノイズの影響を受けやすく、
また、R = 100Ωの場合はオペアンプの出力の負荷となり、十分にオペアンプの出力がスイングできません。
したがって、ノイズの影響およびスイング能力を考慮しますと、
R2は1K〜100Kの範囲が妥当となり、R1も100〜10Kの範囲となります。
ここでは入力インピーダンスの確保と計算に便利な値10KΩとします。
R6はR1と並列になるために大きな値が望まれますが、あまり大きな値にしますと、
これもノイズに対して不利となり、
また、C1の放電時に時間がかかります。
100Kから数100Kが適当でここでは100KΩに設定します。
結局、入力インピーダンスは R6 // R1 = 9KΩ です。
(注) R6 // R1 はR6とR1の並列合成抵抗値の意味です
●手順その2
・R2の決定
R1 = 10K ゲイン = 20dB(10倍) ですから R2 = 100KΩ となります。
・C1の決定
C1はR1との組み合わせで周波数特性の低域が決まります。(ハイパスフィルター)
基準の周波数(1KHz)のレベルを0dBとし、
これに対して-3dBレベルが落ちた周波数を低域におけるカット周波数(fcl)と呼び、
次の計算式で求まります。
ここで、R1 =
10K, fcl = 20Hz とすれば、
0.8μFというコンデンサはありませんから、1μFとします。
なお、使用する抵抗、コンデンサの誤差について確認しておきます。
抵抗をカーボン抵抗で誤差±5%,コンデンサの容量誤差±20%とした場合、
最大誤差時のカットオフ周波数fclを確認します。
fcl が高域側にずれる条件は Rがマイナス5%,コンデンサがマイナス20%の場合です。
この時の fcl は、
仕様的には若干20Hzより上になりますが、これが気になる場合は C1 = 2.2μF
とします。ここでは、1μF で可とします。
1μF時にfcl = 16Hz となります
●手順その3
▼C3を求めます。
C3はR3と次段の負荷等によりハイパスフィルターを形成し、そのカットオフ周波数は次式で求まります。
すでにハイパスフィルター はC1とR1で決めていますので、
ここではfcl = 20Hzに影響がでないように若干低めに設定します。
R3は10K〜100KΩが適当で R3 = 10KΩとします。RL = 100K , fcl = 10Hz とすると
ここではC3 = 10μF とします。
▼C2を決めます。
C2はR2とあわせてローパスフィルターを形成します。
この時のカットオフ周波数を fch とすると
C2は不要な高域成分をカットし、この周波数を数10KHzと考え、ここでは C2 = 22pF とします。これにより、
●手順その4
・「R4,R5,C4」
R4とR5はオペアンプにバイアスを与えるものですが
オペアンプのプラス端子に電源電圧の半分がかかるようにします。
すなわち、 R4 =
R5 です。抵抗値の選択は高い値がよく(消費電流が少なくてすむ)、
10K〜100Kの範囲で選びます。ここでは R4 = R5 = 100KΩとします。
C4はR4とローパスフィルターを形成し、
カットオフ周波数が低いほど電源ラインからのノイズ等の影響を受けにくくなります。
しかし、C4をあまり大きくすると電源OFF時の放電に時間がかかりますので、
信号周波数の下限を目安とします。C4 = 0.1μF R4 = 100K
とすると
です。C4 = 1μF でも良いです。
以上により設計完了。ここでの諸特性は以下のようになります。
●単電源動作時の注意点
単電源用のオペアンプの中でオペアンプ出力にコンデンサを用いて動作させる場合、
オペアンプによっては下図のように抵抗ROLが必要な場合があります。
これは、オペアンプの構造上、出力にコンデンサがあると波形歪が発生し、これを改善させる方法として抵抗を接続します。
抵抗値は数KΩ以上で、実際に抵抗値をかえて波形歪が無い値に設定します。
ゲインを可変(調節)したい場合は次のようにします。
ゲインを変化させる方法は a) , b) のように2通りありますが、
a) の場合は入力抵抗が変化し、相手側の出力抵抗がかわった場合、ゲイン誤差が問題になる場合があり、よくありません。
一般的にが b) の方法が良く用いられます。
この方法にも c) ,
d) の2とおりありますが、 d) の接続を使います。
その理由は、
特に基板実装を考えた場合に、ボリュームはICの近くに配置できるとは限りません。
また、操作性からボリュームをICから遠いところに配置したい場合があります。
c) の場合はオペアンプのマイナス端子に接続されているためにノイズに対して過敏な部分です。
しかし、 d) はオペアンプの出力に接続されているのでこちらのほうがノイズの影響は少なくなります。
ボリュームの接続は e) のようにします。
ボリュームの記号は図のようになりますが、 CW とはクロックワイズの略で
時計回り(つまり右まわり)を意味します。右に回して信号レベルが上がるようにします。
ほとんどボリュームは図の接続端子番号です。
なお、ボリュームの端子は空かないようにします。