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◎はじめに
インターホンは屋内での「部屋間通話」または「屋内-玄関通話」などに利用され便利な
ものです。
筆者は電子工作に興味を持ち始めた中学生の時に「インターホンキット」を組み立てた
記憶があります。
現在、高機能なインターホンが市販されていますが、あらためて自分なりのインターホン
を製作してみようというわけです。
◎動作原理
最初に単純な構成を考えてみます。
○同時通話方式
図1は装置1⇔装置2の同時通話構成です。
どちらにもマイク(MIC)、スピーカ(SP)、アンプ(AMP)を搭載しておけば良いわけです。
この場合、通信ラインが3本必要。
同時通話はどちらからも話したり聞いたり同時に出来るので会話はスムーズになります。
(つまり、電話と同じ)
次に、無線通信のような「送受信切換」の片側通話方式を考えてみます。
○片側通話方式その1
図2が片側通話方式で、この場合、「親器」と「子器」に分けて子器のAMPは親器のAMPを
用います。
通話切換(親器→子器、または子器→親器)は切換スイッチS1-a,S1-bにて行います。
○片側通話方式その2
図2の方式は通信ラインが3本です。設置する場合、この本数が少ないほうが良いです。
そこで、通信ラインを2本とし、スピーカをマイク替わりにした方式を図4に示します。
スピーカは図3のように「音→電気信号」に変換することも出来ますので、スピーカをマイク
替わりに用います。
○子器からの呼び出し
片側通話の場合、子器はスピーカ/マイクのみしかありません。
したがって、子器から通話したい時は「親器へ呼び出し」をかけて親器で電源ONにする必要
があります。
呼び出しの仕組みは図5のとおりです。
・親器のS1は受信状態
・親器のS2は電源スイッチで電源OFF状態
なおかつ、S2-aによりAMPの入出力が接続。この時のAMPの入出力
は位相が同じなので、電源がONになると発振する(ブ~~~~音)
・子器のS3がONになれば親器の電源がONになり呼び出しを行う
ことが出来る
S1は親器が通話(送話)しない時は常に受信状態になっていることが必要です。
(具体的にはS1を「モーメンタリタイプ」のスイッチにしておけば良い)
子器のスピーカ入力にあるコンデンサはスピーカ自体がコイルですから、電源ライン
からの直流をカットする目的で入れます。
結局、部品点数が少なく、2線式の図5の方式で製作してみることにします。
◎設計
○回路
図7に今回製作したインターホンの回路を示します。
スピーカ(マイク)からの信号をTR1の「ベース接地増幅回路」で受け、新日本無線のスピーカ
アンプIC「NJM2073」で増幅します。
ベース接地部の電圧利得は入力部のロスも含めると約+37dB、NJM2073は+44dBですから
全体で約+81dBとなります。
○呼び出し動作
子器からの呼び出しは図6の状態で発生します。
電源スイッチS2が「OFF」のポジションで子器の呼び出しスイッチS3を押します。
これにより親器の電源がONになり、アンプ(IC1-a)はS2の状態で正帰還ですから発振を起こ
し、この発振信号は親器のスピーカに接続されているので、スピーカから発振音が聞こえます。
この音はアンプの正帰還(発振)を利用したものなので、周波数が何Hzになるかは断定でき
ませんが、図の定数で「ピ~~~~」という感じになりました。
C8の値を替えれば違う音になるかもしれません。
◎キーパーツ
○スイッチS1
送話/:受話切換スイッチのS1は「モーメンタリ、プッシュスイッチ」です。
今回のインターホンは常に親器を受話状態にしておかなければ、子器からの呼び出しを受
けることが出来ません。
例えばS1に「オルタネートタイプ」のスイッチを用いると、「送話側にしっぱなし」の危険性が
あります。
したがって、モーメンタリタイプのスイッチであれば、必ず受話側に戻り、常に受話状態にして
おくことが出来ます。
今回はS1に
日開の「EB2061」
を用いています。
トグルスイッチのモーメンタリタイプでも同じ機能ですが、送話/受話切換はプッシュスイッチの
ほうが操作性が良いので、EB2061を採用しています。
○コンデンサC7
このコンデンサは発振防止用で容量が0.22μFです。通常、この部分は容量的にフィルム系
になりますが、この場合、サイズ的に大きなものになります。
今回はケースと実装の関係で部品高さ制限があり、なるべく小型品が望まれます。
そこで、小型の積層セラミックコンデンサ
Linkmanの「CT4-0805Y224M」
を採用しています。
○コンデンサの0.1μF
この部分は電源パスコン、信号ラインに用いますが、同じ容量でも通常は使用用途により
品種を変えます。
今回は、なるべく品種を増やさない目的で容量誤差の少ないものに統一しています。
この部分は
Linkmanの「CT4-0805B104K」
で、容量誤差ア10%品です。
◎製作
○部品表
部品番号   品名   型番   メーカー 数量
C1,C5,C6 電解コンデンサ 100μF/25V 25YK100 ルビコン 3
C9~C11 電解コンデンサ 100μF/25V 25YK100   ルビコン 3
C2,C3 電解コンデンサ 1μF/50V 50YK1   ルビコン 2
C4,C8 積層セラミックコンデンサ 0.1μF CT4-0805B104K Linkman 2
C7 積層セラミックコンデンサ 0.22μF CT4-0805Y224M Linkman 1
IC1 パワーアンプIC   NJM2073D 新日本無線 1
J1,J2 Φ3.5モノラルジャック MJ153   マル信 2
P1,P2 Φ3.5モノラルプラグ         2
PC1 片面ユニバーサル基板 72×47サイズ       1
R1 カーボン抵抗 470ス 1/4W       1
R2 カーボン抵抗 43K 1/4W       1
R3 カーボン抵抗 10K 1/4W       1
R4 カーボン抵抗 3.3K 1/4W       1
R5 カーボン抵抗 220ス 1/4W       1
R6 カーボン抵抗 1K 1/4W       1
R7 酸化金属皮膜抵抗 1ス、1W       1
R8 カーボン抵抗 47ス 1/4W       1
S1 押しボタンスイッチ 6P EB2061   日開 1
S2 トグルスイッチ 6P   MS500FMF ミヤマ 1
S3 押しボタンスイッチ 2P DS193アカ ミヤマ 1
SP1,SP2 スピーカ 8ス   SP50MM   Linkman 2
TR1 トランジスタ   2SC1815-Y 東芝 1
VR1 Φ16サイズ 10Kス、A         1
XIC1 ICソケット 板ばね8P   21208NE Linkman 1
XBATT1 単3×4用電池ケース   BH3412B Linkman 1
XBATT2 電池スナップ   006PI   Linkman 1
XS1 スイッチ用ツマミ   AT443R   日開 1
XSP1,2       スピーカーオサエカナグ 高橋 必要量
XVR1 ボリューム用ツマミ   K-100-16RL-B サトーパーツ 1
XVR2 ツマミキャップ   K-100-16CL-GY サトーパーツ 1
  親器用ケース   SW125S   TAKACHI 1
  子器用ケース   SW100S   TAKACHI 1
  単3アルカリ電池         4
  線材、ビス類         必要量
○基板製作
「72×47」サイズで十分です。
写真1のように内部構造の関係から、ケースに収まるように基板をカットしています。
背の高い部品(ケミコン)はケース内部の高さ制限の関係で「寝かせて」取り付けます。
スイッチ類からの線材による配線は図9のようにテストピンを作っておくと楽です。
○ケース
親器はTAKACHIの「SW125S」
子器はTAKACHIの「SW100S」
スピーカは今回用いたものより厚いと電池ケースに当たるので注意。(図10参照)
写真1に内部の様子を示します。
写真2に外観を示します。
プラスチックケースですから、加工は楽です。
柱等への固定は図11のように、これもプラスチック
の板を利用すれば簡単です。
参考として、スピーカの加工図を図12に示します。
◎使い方
子器から呼び出す場合、親器の電源がOFFになっていることが必要です。
この場合、親器の音量ボリュームを絞りきった状態でもスピーカから呼び出し音が出ます。
◎使用感
○音量レベルについて
現在、部屋間にて20mほどのケーブルで使用しています。
スピーカをマイク替わりにしましたので、音量レベルが気になるところですが、特に音量
レベルが小さいと感じることはありません。
マイク感度は少し離れてしゃべると小さく、近すぎると、やや、ひずみ感があります。
マイク(スピーカ)からの距離は10cm~20cm程度が良い。
(手元に市販のインターホンが無いので比較、適性レベルが分からない)
○呼び出し
子器からの呼び出し音は親器の音量ボリューム位置により、若干、音色が異なります。
時々、ボリューム位置により「プゥ~~、ブゥ~~」のようなちょっと間抜けな音がします。
ただし、ボリュームを絞りきった状態でも呼び出しが出来るのでこれは便利!
ボリューム位置による音色の違いはR6の値を大きくすれば改善するかもしれません。
○音質
少し、「こもった音」。ただし、通話には支障無い。
スピーカをマイク替わりにした原因なのか、スピーカの固定を含めた内部構造の影響
なのか不明。
◎最後に
必要最小限な構成、
・2線式
・片側通話
・マイク/スピーカ兼用
については満足しています。
今回の呼び出し音はアンプの発振を利用しましたが、図14のように「ブザー」を用いても
良いと思います。