マルツ パーツまめ知識
ソーラーパネル 使用レポート
充放電コントローラ 編
2011年8月  KY
◎ソーラーパネルの電気を溜める
ソーラーパネルは「十分な太陽の光」があれば電気を取り出すことが出来ますが、
「曇り」、「雨降り」の場合、十分な電気が得られません
また、当然のことですが夜間は使用出来ません。
そこで、昼間はソーラーパネルからの電気を利用しつつ蓄電池に充電し、夜間は
蓄電池からの電気を利用する「ソーラーパネル充放電コントローラ」を製作しました
ので紹介します。
◎蓄電池には鉛蓄電池を利用
蓄電池には以下のようなものがあります。
@鉛蓄電池
Aニッケル水素
Bニカド
Cリチウム・イオン
Dその他
それぞれ特徴がありますが、今回は「充電制御」が比較的容易な鉛蓄電池を用いること
にします。
★簡単な鉛蓄電池の充電方法
図1に充電方法を示します。
逆流防止ダイオード」を介して開放電圧20V程度のソーラーパネルを直結します。
ただし、電池電圧が14V以上となった時に充電を停止する「過充電防止」が必要となります。
また、鉛蓄電池は「過放電」(10V程度以下)になると劣化するので、過放電防止も必要です。
★用いた鉛蓄電池
今回は写真1のように12V/0.8Ahの小型品を用いてみました。
▽【NP0.8-12】小型制御弁式鉛蓄電池 12V/0.8Ah
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/45650/
★過充放電防止
過充電、過放電防止は図2のように電池電圧を監視し、この値によりスイッチS1、S2を
ON/OFF制御すれば良いわけです。
最大充電電流は電池の種類、機種(型番)により異なり、今回は電流容量の1/10以下
とし、用いたソーラーパネルの短絡電流が750mAですから、電流制限抵抗を用いています。
過充電(充電完了)は14V前後、過放電(放電停止)は今回の場合10.5Vとし、それぞれの
電圧になったら、S1、S2を制御します。
◎今回の方式
図3にブロック図を示します。
過充放電のON/OFF制御はPICを用い、電圧監視もPICのADで取り込みます。
S1,S2は「MOS-FET」で、これをPICのポート出力で制御し、PICの電源は鉛蓄電池から
必要な電圧に変換し供給します。
充放電制御だけであればマイコンを用いなくても実現出来ますが、動作モード等柔軟性を
考慮してマイコンを用いました。
◎回路
★ON/OFF制御
pチャネルMOS-FETを用い(Q1,Q2)、レベル変換用トランジスタ(Q3,Q4)を介して制御します。
用いたFETは東芝の「2SJ380」で、今回のような充電電流および数100mA程度の負荷電流
であれば放熱は不要です。
ただし、電流容量アップ時の変更に備えてQ2のみは小さめの放熱器を用いています。
【2SJ380(F)】FET
★充電、出力制御表示
充電および出力制御の動作表示用としてLED1,LED2を設けています。
点灯/消灯の条件はソフトウェアによりますが、この時のポート出力をそのままLEDに接続
しています。
★充電電流
R1により充電電流を設定し、電流容量が異なる場合、変更が必要。
★電圧、電流監視
ソーラーパネル電圧、鉛蓄電池の電圧監視用として「パネルメータ」を設けてみました。
鉛蓄電池の電圧はマイコンにより監視しているわけですが、常時監視できるようにして
います。また、ソーラーパネル電圧も前回紹介の「回転装置」と組み合わせて最大電圧
監視用に設けました。
鉛蓄電池用のM1はDC20V程度のパネルメータが望まれます。
今回はこの仕様の手持ち部品が無く、「感度250μAのラジケータ」に電流制限抵抗R8を
追加して簡易表示としました。
ソーラーパネル用のM2は電圧が20V前後になりますので「DC30V仕様」のパネルメータ
です。
M1 → 鉛蓄電池電圧
M2 → ソーラーパネル電圧
M3は出力電流の監視(表示)用です。
用いたDC電流計は手持ち部品の関係から「50mA仕様」です。
電流計単体では最大50mAまでの表示ですから、これにR18の「分流抵抗」を用いて500mA
までの拡大表示とし、50mA/500mAのレンジ切換はS1により行います。
★AD変換
マイコンは5V動作です。
したがって、12Vなどの電圧をそのまま接続出来ません。抵抗分割によりマイコンで取り込む
ことが出来る電圧に変換します。
IC1のGP0、GP1端子はAD機能として用いています。GP0はソーラーパネル電圧監視用として
設けましたが、現在は未使用です。
★マイコン部の消費電流
マイコンは3端子レギュレータにより5Vに変換して電源供給しますが、その供給源は鉛蓄
電池です。
鉛蓄電池にとってはマイコン部の消費電流は余計な負荷になります。極力消費電流を抑え
ることが必要です。
今回は一般的な3端子レギュレータを用いましたが、この部分は低消費レギュレータが望まれ
ます。
◎部品表
部品番号 部品名     型番   メーカー 数量
BATT1 鉛蓄電池 12V/0.8Ah   NP0.8-12   GS YUASA 1
C1,C3 セキセラ 0.1μF         2
C4,C5 セキセラ 0.1μF         2
C2 ケミコン 33μF/25V   25YK33   Ruby-con 1
D1 ダイオード     11EQS10   日本インター 1
IC1 PICマイコン     PIC12F675-I/P   Microchip 1
IC2 3端子レギュレータ 5V   TA78L05S(F)   東芝 1
J1,J4,J6 絶縁ターミナル   TM505アカ   MSK 3
J2,J5,J7 絶縁ターミナル   TM505アカ   MSK 3
J3 DCジャック     MJ14ROHS   マル信 1
LED1 LED Φ3 赤           1
LED2 LED Φ3 青     BL304B2CA1A01 Linkman 1
M1 ラジケータ     ラジケータ 250μA   1
M2 パネルメータ   GM-45(DC30V)     1
M3 パネルメータ   DC 50mA     1
Q1,Q2 FET     2SJ380(F)   東芝 2
Q3,Q4 トランジスタ     2SC1815Y(F)   東芝 2
R1 3W抵抗 150Ω 3WMOS(X)キンピR 150オーム   KOA 1
R2,R3 カーボン抵抗   100K     2
R4,R7,R11 カーボン抵抗   47K     3
R5,R6 カーボン抵抗   100K     2
R8 カーボン抵抗   75K     1
R9 カーボン抵抗   2.2K     1
R10 カーボン抵抗   3.3K     1
R12,R15 金属皮膜抵抗   10K     2
R13,R16 金属皮膜抵抗   330K     2
R14R17 金属皮膜抵抗   100K     2
R18 抵抗     0.15Ω     1
S1 スライドスイッチ 6P         1
XIC1 ICソケット 8P (丸ピン)   21218NE   Linkman 1
             
  ケース     PL1   LEAD 1
  ユニバーサル基板   LUPCB-7247-ND   Linkman 1
  放熱器     16P16L25   LSIクーラー 1
  スペーサ 10mm   金属6角メスーメス   4
  ビス類           1式
  配線材           1式
R18は用いたDC50mAを500mAに拡大するための抵抗。
計算値は0.15Ω。手持ち部品が無かったので0.22Ωを並列/直列接続で0.15Ωに近い
組み合わせとした。
50mA/500mA切換用スイッチS1は「接触抵抗」の小さいものが必要。
基板はLED実装の関係で「両面基板」。
M1はラジケータにこだわる必要は無い。
◎製作
写真2に内部の様子を示します。
鉛蓄電池が接続されるラインは将来の電流容量アップを考慮して「太め」の線材を用い、
Q2も放熱器を用いています。
今回の出力電流は最大数100mA程度ですが、各出力電流における測定結果は表1の
とおりです。
表1
出力電流 ドレイン・ソース間電圧 ドレイン損失
0.07A 0.011V   0.00077W
0.8A 0.128V   0.1024W
3A 0.5V   1.5W
S1は接触抵抗の小さいものが望まれます。
分流抵抗(R18)が0.15Ωなのでスイッチの接触抵抗が大きいと表示誤差が発生します。
筆者は手持ち部品(スライドスイッチ)の中から接触抵抗の小さいものを用いました。
また、S1部の配線も「太く、短く配線」する必要があります。
(線材の抵抗分が無視出来ない)
写真3に外観を示します。
M1のラジケータは赤表示の範囲で約10.5V以上を示し、電圧が直感的に分かりやすくなって
います。
◎現在の運用システム
図5に現在の運用システムを示します。
昼間は負荷に応じてソーラー出力およびBATT出力を必要電圧に変換して各種装置に用い
ています。
夜間は市販の「DC駆動センサーライト」をBATT出力で用いています。
今回使用の鉛蓄電池の電流容量が0.8Ahですから、それほど大きな負荷は駆動出来ません。
センサーライトは玄関(入り口)部は常時点灯(消費電流約40mA)、仮設トイレはセンサモード
(待機時数mA)で用いています。
センサーライトは単3×4のDC駆動ですが、これに前回紹介のLM2594N5.0を用いて5Vに変換
したもので駆動しています。
写真4は昼間の使用風景で、この状態で、「出力ON」、「充電」です。
・ソーラー出力
DC/DC変換を介して扇風機を駆動
・BATT出力
DC/DC変換を介してラジオを駆動
テキスト ボックス:  各電圧変換
◎まとめ
★ソフトウェアについて
運用して1週間ほどですが、過充電および過放電に関しても機能しており問題ありません。
ただし、LED表示が頻繁に変化するわけではなく、また、電圧監視のメーター指示はソフト
ウェアと関係ありませんのでマイコンがうまく動作しているか少し不安の時があります。
「ちゃんと動いているよ!」の意味を込めて定期的に動作表示(LED点滅等)をすれば
良いかもしれません。
★電流容量について
今回は0.8Ahの電流容量としましたが、大きな電流容量の鉛蓄電池が欲しくなりました。
用いたソーラーパネルの最大電力点電流は650mAです。
したがって、最大650mAの充電電流が確保出来るということで、例えば、10Ahクラスの
鉛蓄電池が充電可能です。
大きな電流容量の鉛蓄電池であれば、DC/ACインバータも駆動可能ですから、停電時
緊急電源として用いても良いと思います。
★電圧変換は内蔵が良い
3端子レギュレータおよびLM2594等を用いた電圧変換部はケース内に内蔵すれば良かった
と思います。
また、電流容量アップ時にDC/ACインバータを内蔵すれば、さらに使い勝手の良い装置
になります。
以上、充放電コントローラについて紹介しました。
ソフトウェアを含めた機能については基本的なことが出来たと思います。
今後は電流容量アップも含めて運用しながら検討していくつもりです。