パーツまめ知識
エコー用IC  【PT2399】 使用レポート
2011年11月  KY
◎エコー用IC PT2399
このICは簡単に「エコー音」を発生させることが出来、パッケージもDIP品ですので
ユニバーサル基板を用いて製作することが出来ます。
エフェクト効果を作るための基本である「DELAY」(信号遅延)を内蔵し、
遅延時間も外付け部品で簡単に設定することが出来ます。
また、「DELAY」を用いることにより各種「エフェクト音」に応用出来ます。
今回は基本的な「エコー音」の発生と簡易的な「エフェクト音」を発生する装置を
製作しましたので紹介します。
◎エコー音の発生原理
★DELAYとは
DELAY(ディレイ)とは図1のように入力された信号が一定時間後に出力される装置で、この
方法としては古くから色々なものがあります。
例えば図2のようにデジタル方式の場合、アナログ信号を「AD変換」し、
メモリに書き込んでおきます。
これを一定時間後に読み出して「DA変換」すれば遅れたアナログ信号が得られます。
★エコーの原理
PT2399での構成例を図3に示します。
▼PT2399 デジタル・ディレイ専用IC  
DELAY出力を入力と加算し、この加算出力がエコー出力になります。
@原音
入力 → 加算回路 → エコー出力
この場合、原音はそのまま出力される
ADELAY(1回目)
加算回路 → DELAY → 加算回路 → エコー出力
DELAYの1回目は原音がDELAYを通り、加算回路を通ってエコー
出力になる。この時、DELAY→加算回路へ入力(戻る)されるレベルは
帰還量を調整し、元のレベルより小さくしておく。
BDELAY(2回目)
加算回路 → DELAY → 加算回路 → エコー出力
DELAYの1回目の信号が再度、DELAYを通り、Aと同じ処理を行う。
以下、複数回行われ、エコー効果になる。
図4にこの時のエコーパターンを示します。
◎簡易エフェクターの製作
★システム構成
図5のように「コンデンサマイク」を入力とし、動作モードは「エコー/DELAY」の2つがあります。
DELAY時間およびエコー時の帰還量はボリュームにて可変とし、電源は内蔵の乾電池です。
出力は2系統で、「LINE出力」は外部ステレオ機器(アンプ等)用、
これとは別に「内蔵スピーカアンプ」で簡易的に外部スピーカを鳴らすことにしました。
その他のエフェクター(例えば、コーラス効果、サラウンド等)にはDELAYが複数、信号処理
回路が必要になりますが、今回はPT2399の評価(レポート)を目的としましので、DELAYは
1回路のみとしています。
★回路
J1がコンデンサマイク用の入力ジャックで市販のパソコンアクセサリ用コンデンサマイクが接続
出来るように「ステレオジャック」にしています。
用いたコンデンサマイクはサンワサプライのMMMC1で、必要な信号レベルとなるようにIC2で
増幅し、PT2399のローパスフィルタ(加算アンプ兼用)へ接続します。
コンデンサマイクは色々と市販されていますのでMMMC1に拘る必要はありません。
ただし、その他のコンデンサマイクを用いる場合、マイクアンプ部の定数を変更する必要が
あるかもしれません。
VR1がマイク感度、VR2がDELAY時間、VR3がエコー時の帰還量調整用です。
PT2399はエコー/DELAYでそれぞれのローパスフィルタ定数が推奨されています。
今回はエコーを主体としましたので、フィルタ定数はエコー時の定数を用いています。
エコー/DELAYの切換はスイッチS1にて行い、一旦、IC2によるバッファーアンプで受けて
簡易的にL/Rに振り分けてLINE出力(J2)します。
スピーカアンプ部はIC2の出力から分岐したものをLM386N1にて増幅し、この部分は特別
なものではありませんので、回路は省略します。
エコーの出力ポイントはIC1の15ピンからR11を介して取っていますが、この信号は逆相です。
(DELAY時は位相は合っている)気になる方はこの部分にオペアンプによる反転アンプを追加
してください。
電源は単3×4本の6Vとし、D1にて若干下げて用いています。
★部品表
表1
部品番号 部品名   型番   メーカー 数量 備考
C1,C10 ケミコン47μF/25V 25YK47   Ruby-con 2  
C2,C3,C9 セキセラ 0.1μF CT4-0805B104K*10 Linkman 3 数量注意
C4 セラコン 47pF CCDC50V47P*10   1 数量注意
C5,C21 ケミコン10μF/50V 50YK10   Ruby-con 2  
C6 ケミコン 1μF/50V 50YK1   Ruby-con 1  
C7 フィルムコン 3900pF EOL100D39J0-9 FARAD 1  
C8 ケミコン100μF/25V          
C11,C12 セキセラ 0.1μF CT4-0805B104K*10 Linkman 2 数量注意
C13,C14 セラコン 560pF       2  
C15,C16 フィルムコン 0.082μF EOL100S82J0-9 FARAD 2  
C17 ケミコン4.7μF/50V 50YK4R7   Ruby-con 1  
C18 フィルムコン 0.01μF EOL100S10J0-9 FARAD 1  
C19 フィルムコン 3300pF EOL100D33J0-9 FARAD 1  
C20 セキセラ 0.1μF CT4-0805B104K*10 Linkman 1  
D1 ダイオード   1N4001*25   1 数量注意
IC1     PT2399     1  
IC2 オペアンプ   LMC6482AINNOPB NS 1  
J1,J2 Φ3.5ステレオジャック MJ073H   マル信 2  
J3 Φ3.5モノラルジャック MJ164H   マル信 1  
LED1 Φ3 赤         1  
R1,R2 カーボン抵抗 2.2K     2  
R3,R4     100K     2  
R5,R22     1K     2  
R6     3.3K     1  
R7,R9     10K     2  
R8,R14     15K     2  
R10,R12     10K     2  
R11     4.7K     1  
R13     5.6K     1  
R15,R16     10K     2  
R17,R18     100K     2  
R19     47K     1  
R20,R21     220Ω     2  
R23     3.3K     1  
S1 スライドスイッチ6P       1 パネル
VR1〜VR3 ボリューム50K,B R1610N-QB1-B503 Linkman 3  
VR4 ボリューム10K,A,SW付 RV170SF-10-15K-A10K アイコー 1  
XIC1 ICソケット16P 212016NE   Linkman 1 板バネ
XIC2 ICソケット8P   21208NE   Linkman 1 板バネ
  単3×4用電池ケース BH3412B   Linkman 1  
  電池スナップ 006PI   Linkman 1  
  ケース   TS1   タカチ 1  
  つまみ Φ16 黒 K10016RLB サトー 2 VR1,VR4
  つまみ Φ22 黒 K10022RLB サトー 2 VR2,VR3
  つまみキャップ緑 K10016CLG サトー 1 VR1
  つまみキャップ青 K10022CLBL サトー 1 VR2
  つまみキャップ橙 K10022CLOR サトー 1 VR3
  つまみキャップ灰 K10016CLGY サトー 1 VR4
  ユニバーサル基板 ICB288   サンハヤト 1  
  金属スペーサ、ビス類       一式  
  LM386N1アンプ部       一式  
  コンデンサマイク MMMC1   サンワサプライ 1  
★製作
(ケース)
図7のようにタカチのTS型傾斜ケースを用い、傾斜部にボリュームを配置することにより
ボリューム操作しやすいようにしています。
電池ケースを除いたすべての部品および基板は図8のように
傾斜部(カバー)に実装します。
これはボリューム、スイッチ、ジャック等の配線量(本数)が多いために、
このような構造にしています。
★基板
72mm×47サイズのユニバーサル基板です。少し窮屈になってしまいました。
この上のサイズを用いればスピーカアンプ部も同一基板に実装できます。
★内部配線
少し配線が汚いですが、写真1に内部の様子を示します。
用いた線材は「AWG24」で、少し小ぎれいになるように「結束バンド」等でまとめておきます。
★外観と使い方
写真2のように各ボリュームのつまみキャップはすべて色違いとしてみました。
図9に操作部を示します。
(エコーモード)
・スライドスイッチS1を「右側」にする。
・MICボリュームにて感度調整。
・DELAYおよびFB GAINにてエコー音調整。
エコーはDELAYとFB GAINの組み合わせで効果音が変わります。
FB GAINを右に廻すほど帰還量が多くなりエコー時の繰り返し回数が多くなり
ます。ただし、あまり帰還量を多くすると発振するので注意。
(DELAYモード)
・スライドスイッチS1を「左側」にする。
・MICボリュームにて感度調整。
このモードではFB GAINは機能しません。
単純に入力信号(MIC)の音を遅らせる機能ですが、MICにて話している途中に
DELAYを変えると音声が「遅くなったり、早くなったりする効果音」になります。
このようにDELAY操作のスピードによって音の高低が変化します。
◎使ってみて
★音が良い
音の良いのには驚きました。
今回はマイク入力にエフェクトをかけたものをLINE出力としましたが、この機能以外に
LINE入力およびミキサー(加算)を設ければ良いと思います。
図10に1つの案を示します。
★DELAY
今回は単純に原音を遅らせる機能のみにしましたが、その他のエフェクトとして図11に構成案
を示します。それぞれ、加算処理およびDELAYを複数用意する案です。
また、加算時に位相操作をしても面白いかも知れません。
いずれにしても、DELAY、加算、位相操作により色々な構成が考えられます。
ただし、どのような音になるのか筆者には分かりません。
以上、PT2399について簡単にレポートしました。
エコーについては少し自分の声に自信を持った気がします。
その他のエフェクトについては構成次第ですが、「気合を入れて」チャレンジする価値はあり
そうです。