マルツ パーツまめ知識
ダーリントントランジスタ
◎ダーリントン接続
図1のように複数のトランジスタを直結したものを「ダーリントン接続」と言い、このような
トランジスタを「ダーリントントランジスタ」と言います。
一般的なトランジスタと比較し大きなhFEが得られます
図2のように2個を用いた場合は等価的に「NPNトランジスタが1つ」の形になり、全体(総合)
のhFEは
hFE1×hFE2
となります。
図3はトランジスタのコレクタに「1000mA流したい」例です。
必要なベース電流はコレクタ電流をhFEで割った値ですから、図3 a ) では10mAです。
これに対し図3 b ) のダーリントンでは0.1mAとなり、小さい電流で大きな電流を制御
することができます。
このことは図4のように大きな電流制御を行う場合、有効です。
◎接続例
図5に接続例を示します。
a ) NPN+NPNの同極接続
等価的にNPN
b ) PNP+PNPの同極接続
等価的にPNP
c ) NPN+PNPの異極接続
等価的にNPN
d ) PNP+NPNの異極接続
等価的にPNP
すべて全体のhFEはhFE1×hFE2になります。
a ) ,b )のように同極接続の組み合わせは等価的なVBEはVBE1+VBE2になりますが、c ) ,d ) の
異極接続はVBE1となります。
◎スピーカアンプへの応用
前記図3,図4ではデジタル的な応用例ですが、アナログ信号に用いた例を図6に示します。
ダーリントンは少ないベース電流で大きなコレクタ電流が得られるのが特徴ですが、
言い方を変えると重い負荷(電気の世界では抵抗値が低い負荷を重い負荷と言います)を駆動する
ことが出来ます。
図6はスピーカを鳴らすアンプで、スピーカインピーダンスはこの例では8Ωですから、
重い負荷と言えます。
TR1にて電圧増幅します。
このままではスピーカに十分な電流で駆動することは出来ません。
そこで、TR2、TR3によるダーリントン接続(NPN+PNP=NPNの異極接続)を用い「エミッタ
フォロワ」の役目を行います。
この部分はダーリントンですからTR1からの小さな電流を増幅し、スピーカを駆動します。
◎製品例
ダーリントンは個別のトランジスタを組み合わせても良いですが、すでに1つのパッケージ
になったダーリントントランジスタを用いると便利です。
表1に主な市販のダーリントントランジスタを示します。
表1  主なダーリントントランジスタ
型番   メーカー VCEO(V) Ic(DC) Pc(W) hFE(min) パッケージ
2SB1259   サンケン 120 10A 30(*) 2000 TO220F
2SB1383   サンケン 120 25A 120(*) 2000 TO3P
2SD560-L-AZ ルネサス 100 5A 1.5 2000 TO-220AB
2SD1140(F) 東芝 30 1.5A 0.9 4000 TO-92MOD
2SD1224   東芝 30 1.5A 1 4000 2-7B1A
2SD1409A(F) 東芝 400 6A 2 600 SC-67
2SD1698   ルネサス 80 0.8A 0.75 4000 TO-92
2SD1785   サンケン 120 6A 30(*) 2000 TO220F
2SD1796   サンケン 60 4A 25(*) 2000 TO220F
2SD2081   サンケン 120 10A 30(*) 2000 TO220F
2SD2082   サンケン 120 16A 75(*) 2000 TO3PF
2SD2083   サンケン 120 25A 120(*) 2000 TO3P
2SD2241(Q) 東芝 100 ±4A 2 2000 SC-67
Pcの(*)印はTc=25℃での値
詳細はデータシートを参照願います。