熱電対
図1のようにA,Bの2種類の異なる金属を接合すると、その接合部(測温部)と右端(基準部)に温度差 がある場合(T1,T2)、その温度差に応じた熱起電力が発生します。 これを「ゼーベック効果」と言い、これを応用したものが熱電対(ねつでんつい)です。
図1 ゼーベック効果
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T1とT2の温度差に応じた |
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熱起電力が発生(ゼーベック効果) |
熱電対は、工業分野、農業分野
その他いろいろな分野で「温度測定」に写真1 熱電対外観例
用いられています。
外観例を写真1に示します。
測温部の形状はこの例
では接合部がむき出し
ですが、液体用、空調用
などの用途に応じて
いろいろな形状が
あります。
なお、起電力には極性が
ありますが、コネクタの端子
形状(太い、細い)で区別
していて、相手側のコネクタ
もこれに適合しています。
熱電対は温度範囲および熱起電力の大きさにより規格化されていて、K,T,J,E,R,・・・などがあります。
写真のものは「K型」で、コネクタ色は「黄色」です。熱電対の種類(K,T,J等)によりコネクタの色も
規格化されています。(JISとANSIは異なる)
K型の温度範囲と熱起電力を図2に示します。
温度範囲
熱起電力
このように温度差に応じて熱起電力を発生しますが、規格は基準部(基準接点)を規定していて、
その値は0℃です。したがって、基準部の温度が0℃でない場合、絶対値に誤差が生じます。
図3にその例を示します。測温部の温度は異なりますが、測温部と基準部の差はどちらも 75℃となって、熱起電力の値が同じです。
このように基準部を0℃に一定にしておかないと測定誤差が出ます。
基準部の温度が変化すると測定誤差が出ますので、
なんらかの方法で一定値(理想は0℃)にすることを「基準接点補償」と言います。
具体的には基準部を「砕いた氷と水の中に入れる」ことが考えられますが、これは現実的ではありません。
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図3 測温部の温度が異なっても熱起電力の値は同じ |
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a ) 測温部 +75℃ |
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b ) 測温部 +100℃ |
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例えば図4のように「温度センサ」を使用して基準部の温度を測定すればこれにより補償(演算)
する方法があります。
また、増幅部と補償部を一体にした「熱電対専用IC」もあります。
専用ICの一例として、アナログデバイセズの「AD594/AD595」などがあります。
詳細はデータシートを参照願います。
図4 基準接点補償の一例
写真2に「ICの表面温度測定」風景を
示します。
最近は安価な「デジタルマルチメータ」
でも熱電対を用いた「温度測定機能」
を搭載したものもありますので、手軽に
温度測定出来ると思います。
写真2 ICの表面温度測定