デバイス

7MHz AM送信機の実験(その1)構想編

◎AM通信

最近、7MHz帯でAM通信が行われていることを知りました。
筆者が初めてアマチュア無線を始めたのは50MHzのAMで、何十年も前のことです。
その当時でも7MHz帯ではAMモードで交信したことはありません。

AMモードによる通信は現在では50MHz帯で行われているという認識しかなかったので、7MHz帯でのAM通信に非常に興味がわきました。
昔、古いアマチュア無線機器を収集する時期があったのですが、写真1にHF帯でのコレクションを示します。
ご存じの方が多いと思いますが、トリオのTX-88DSと9R-59Dの組み合わせです。

 

7MTX1-01

 

①のTX-88DSは真空管式送信機で3.5MHz~50MHz、AM/CW、出力10Wです。
取扱い説明書によると重量が11kgもあり、かなり重いです。

これとペアになる受信機は②の9R-59Dでこれも真空管式で、重量は8.5kgです。
9R-59Dは好きな受信機の一つで5~6台ほど所有していたのですが、保管場所などに困って処分したので残っているのは2台のみです。

写真2に9R-59Dのフロント外観を示します。写真1とは違うもう1台のほうで整備済です。
年に何度かは電源を入れています。

 

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チューニングダイアルが2重軸になっていて、外側を回すと左のMAIN TUINGが動きます。
BAND SPREADはダイアルの拡大用で、内側を回すと右のBAND SPREADが動いて同調の微調整ができる仕掛けです。
周波数の読み取り精度は良くありません。

9R-59Dは30MHzまでしか受信できませんので、50MHzで運用する場合、⑤のコンバータCC-26との組み合わせになるようです。
④のSM-5は3.5MHzと7MHzのプリセレクタと14MHz,21MHz,28MHzのコンバータも兼ねています。
SM-5ではなくSM-5Dのほうが本来のラインアップになると思います。
TX-88DSは写真3のようにクリスタル発振です。
周波数を変えたい場合、クリスタルを交換するか③のVFO-1を接続します。

 

7MTX1-03

 

実装されていたクリスタルの表示を見ると「8400KC」と読めます。
つまり、8400KHzのことです。昔はHzではなく、Cと表現されていたと思います。

図1はTX-88DSの周波数関係です。
発振および逓倍(ていばい、難しい字です)部はBANDにより動作が異なり、逓倍部もBANDにより逓倍数が異なります。
図1は50MHz帯時の関係で、8400KHz(8.4MHz)のクリスタルで2倍の16.8MHzとなり、さらに逓倍部で3倍されて50.4MHzが発射されます。
前の所有者は50MHz帯をメインに運用していたのかもしれません。

 

7MTX1-04

 

図1のような周波数関係を見ていると面白く、勉強になりました。

ところで、筆者は写真1のラインアップで実際に運用したことはありません。
すべて中古で購入したもので、TX-88DSのみ怖くて一度も電源を入れたことが無く動くかどうか分かりません。

以前にFR-50B用VFOのレポートでも少し触れましたが、筆者が50MHzのAMで運用していたころに自作の真空管式AM送信機で運用されていた局長さんがいました。
「変調は6BQ5のプッシュプル」という言葉を今でも覚えていますが、TX-88DSも変調器の最終段は同じ6BQ5のプッシュプルです。
また、送信部最終段はS2001/6146Bで、プレート電圧は380Vです。

写真4,5に内部の様子を示します。

 

7MTX1-05

 

TX-88DSと9R-59Dはキットです。完成品もあるのかもしれませんが、写真5のように内部は意外ときれいで配線(はんだ付け)も悪くありません。
慣れた人が製作したのかもしれません。

話は変わりますが、無線機の保管場所から珍しいものが出てきました。

写真6のようなリード差し替え式のアナログテスタです。
現在でもアナログテスタは販売されていますが、ファンクション切り替えはロータリースイッチ方式がほとんどと思います。
写真6のものはファンクションにより、各穴(ジャック)にリード(テスタ棒)を入れる方式です。
製造されてから40~50年くらいたつのでしょうか。
保存状態が良く、けっこうきれいです。
DC電圧ファンクションの動作確認をしてみると動きます。
ちなみに、標準電圧発生器で確認してみると精度の良さにびっくりです。

 

7MTX1-06

 

◎AM送信機の計画

写真1は仕事場の脇に並べたもので、このままコレクション自慢をしていても仕方ありません。
TX-88DSはひょっとしたら動くのかもしれませんが、内部を見ると電源を入れる勇気がありません。
そこで、このままのラインアップを活かして、TX-88DSの替わりとなる送信機を製作すれば面白そうです。

真空管式送信機の製作となると、慣れていないと無理です。
トランジスタ式であれば感電の心配がありませんので、図2の構成を考えました。
受信機は9R-59Dを用い、TX-88DSの替わりとなる送信機を製作すればAM通信が可能になります。
9R-59Dで無線通信に実用性があるのか不明なので、今回は製作というより実験レベルとします。

 

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◎送信機の仕様

用いるデバイスは半導体です。
実験目的なので欲張ったものにしないで以下の仕様とします。

(設計方針、仕様)
①送信出力 1W程度
②電源 外部供給DC12V
③クリスタル発振 1波 (7195KHz)
④特別なデバイスは用いない
⑤あまりお金をかけない

出力は1W程度を目標とします。
10Wとなると用いるデバイス(トランジスタ)の選択、入手に問題があります。
現在入手できる一般的なトランジスタを用いることにします。
電源は内蔵しないで外部から安定なDC12Vを供給します。
周波数はクリスタル発振による7195KHzの1波です。
DDS-ICを用いれば簡単に周波数可変も可能になりますが、実験目的なのでクリスタル発振とします。

図3に構成図を示します。
送信部は発振、ドライブ、電力増幅の3ステージでTX-88DSと同じ構成です。
トランジスタに何を用いるかまだ未定なのですが、とりあえず、この構成にします。
マイクは市販のコンデンサマイク(完成品)を用い、マイクアンプ(変調部)はスピーカICを考えています。
送信モニタは出力が出ているかの監視用で、アナログメータを用いる予定です。

 

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ケースは昔風に図4のようにアルミシャーシとアルミ板を用い、アルミ板部をフロントとイメージしています。

 

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図5にフロントパネルの部品配置イメージを示します。
スタンバイ・スイッチは動作モードの切り替えです。
TX-88DSではこの部分はシーメンスキーです。
シーメンスキーは現在でも入手可能なようなのですが、高価です。
筆者は未使用のシーメンスキーを何個か所有しているのですが、使うのが勿体ないです。
そこで、この部分は3ポジションのトグルスイッチを用いることにします。
このスイッチの機能を少し説明します。

現在の無線機はトランシーバなので送信/受信はPTTスイッチで自動的に切り替わります。
しかし、送信機と受信機が別な場合、送信と受信を切り替える必要があります。
上側でキャリブレート、中央で受信、下側で送信です。
キャリブレートは送信と受信の周波数を一致させるための操作で、このポジションでは送信機は微弱な送信状態になります。
この微弱な送信出力を受信機で受信し、周波数を一致させる操作を行います。
現在のトランシーバのように周波数がデジタル表示の場合、このような操作は不要なのですが、
9R-59Dのように周波数の表示がアナログで読み取り精度も良くない場合、このようなキャリブレートが必要です。
3個のLEDはスイッチポジションが色で分かるようにするものです。

図6はリアパネルの部品配置イメージです。
9R-59Dとの接続はアンテナ用のM型コネクタと制御コネクタの2つです。

 

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写真1は撮影用に並べたのですが、これを見ていると色々なアイディアが浮かんできます。
今回は7MHzのAM送信機の計画ですが、VFO、コンバータなど現代の部品を用いて製作してみるのも面白いかもしれません。
この机はしばらくこのままにしておくつもりです。

次回はいよいよ実験に入ります。

 

▼ 続きは その2 1次試作編 をご覧ください。

その3

その4

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