■オペアンプ回路 発振をおさえる位相補償 |
●オペアンプはどういう場合に発振してしまうのか? 図8は100Hzから上の周波数から利得が減少し、その傾斜は20dB/decです。 (折れ曲がり点をポールと呼びます) 位相はポールの1/10の点から遅れ、ポールで45°の遅れ、ポールの10倍で90°遅れて、 その後は位相は一定のままです。 このような特性をもったオペアンプはどのような使い方をしても発振はしません。 オペアンプはフィードバックをかけて使いますので、 図8の場合はフィードバックをかけても180°+ 90°= 270°となり、 発振の条件である360°に達しません。 (ポールが1つの場合は位相遅れは最大90°でそれ以上にはならない) しかし、図9の特性のようにポールが2つあるとこれによる位相遅れは最大180°になります。 図9のA点では利得が1以上で、位相は180°に近いポイントです。 したがって、このような特性のオペアンプでフィードバックをかけたアンプでは 仕上がりゲインの低い(例えば0dB)のバッファアンプでは発振する可能性があります。 図10のように仕上がりゲイン50dB,20dB,0dBの各場合での位相遅れを見ると 50dB → 90° 20dB → 140° 0dB →
170° となり、0dBの場合がなんらかの条件でさらに位相が遅れると 位相遅れが180°となると発振します。 また、仕上がりゲインが少ないほど発振に対して不利となります。 180°に対する位相の余裕(位相マージン)は45°(または60°)をとるのが普通です。 ●位相補償の方法 冒頭の図8のようにポールが1つの場合を「完全補償型」と呼び、フィードバックを100%かけても安定です。 このタイプは高い利得を必要とするには適していませんが、汎用のオペアンプに多いです。 図9のようなものを「非補償型」と呼びます。 非補償型は完全補償型と比べて利得帯域幅積(GB積)が広いのが特徴ですが、 このままでは仕上がりゲインが低い場合は動作が不安定になりますので「位相補償」を行うことになります。 ▼ (1) 非補償型の位相補償 非補償型のICは外部にコンデンサ等を接続して補償できます。 方法はいくつかあり、以下のとおりです。 @ 1ポール補償 A 2ポール補償 B フィ−ドフォワード補償 A、Bは単純ではないので、ここでは@について解説します。 ICの位相補償用端子にコンデンサを接続し、 1次ポールの位置を左にずらします。 これにより帯域は狭くなりますが、同じ仕上がりゲインでも位相の遅れ分が少なくなります。 コンデンサの値はICにより異なります。 コンデンサの値は仕上がりゲインの直線がオープンループゲインと交差する点での 位相マージンが45°(できれば60°)となるようにします。 ▼ (2)完全補償型 完全補償型でも発振の可能性があります。 図12のようにCi,Clが配線パターンにより存在します。 R2 → Ci と Ro → Cl の経路で新たなポールが発生し位相が遅れる要素になります。 一般的にCMOS構造のオペアンプは負荷容量に弱く出力を外部に出して配線容量が増えたり、 どうしても負荷容量が大きいものをドライブする場合は注意が必要です。 ● Ciに対する補償 図13のCf2を追加します。これにより、 Cf2,R2,R1による進相補償回路(位相を進めさせる)になります。 なお、実際にはCiの値は分かりませんので、 矩形波を入力して出力波形が下図のような矩形波になるような値にします。(矩形波は10KHz)
●Clに対する補償
以下は各オペアンプでの a ) の回路での実験結果です。 この場合は図14 b
) のようにCf1とRf,R2を追加します。 この値の目安は以下のとおりです。 Cf1 数10pF以下 Rf 100〜220Ω R2 100KΩ c ) はRpを入れた例です。 この場合はRpを入れることにより、 Ciによる位相遅れが直接オペアンプの端子にあらわれないようにしたものです。 Rpの値は100〜1KΩくらいにすると効果があります。 ただし、この方式はオペアンプの出力抵抗(増幅器としての)がRpになりますので この抵抗分による電圧ロスに注意が必要です。 |