「直流電圧測定アダプター」の製作
●アナログ式テスターの内部抵抗に注意!
アナログ式の場合は原理的にテスターの内部抵抗が無限大ではなく、測定条件を考慮する必要があります。
たとえば「内部抵抗 20KΩ/V」の場合、
             これは 1Vあたり20KΩの抵抗があることを意味しています。
             例えばテスターの3Vレンジでは  20 × 3 = 60KΩ 

図1の場合は図2のように等価的にR2に60KΩの抵抗を並列接続された形になります。
したがって、テスターは1.36Vを表示することになります。
アナログテスターの場合は測定する回路のインピーダンス(抵抗)が高い場合、測定に注意してください。
●直流電圧測定アダプターを作ろう
テスターの内部抵抗が大きければ、回路のインピーダンスが高くても測定誤差が小さくなるわけです。
ここではデジタルテスター並の10MΩを目標としてみます。

直流電圧測定アダプターの使い方イメージは図4のとおりです。

測定対象回路と、アナログテスターの間に、直流電圧測定アダプターを介すことで、
アナログテスターの内部抵抗を大きくすることに相当する効果が得られます。
アダプターの構成は図5のようにします。

回路図

@オペアンプの選定&給電方法を考える。
オペアンプへの電源供給は下図のように2とおりあります。

上の図では、±の2電源を供給しています。
この場合、信号はGNDを中心として±に振れます。
±の両方に信号が振れるので、交流、直流どちらでも扱えます。
下の図では、+の1電源を供給 (単電源)しています。
信号はGNDと+の間で振れます。
オペアンプの入出力にコンデンサをつなげば交流信号が扱えます。
なお、単電源はアンプの形式により直流動作が異なります。下図をご参考ください。

※ 今回作成する回路は?
今回の「直流電圧測定アダプター」では図7のような信号を扱います。

両電源用のオペアンプを単電源で動作させると
図8のように電源とGND近辺でリニア(直線)になりません。
そこで0V(GND)近辺の信号を扱いたい場合は「単電源用オペアンプ」を使用することになります。

今回は図7におけるBの項目は電源電圧をできるだけ大きくとれば解決する問題ですので
@、Aを満足することを目的とし、C−MOS構造のオペアンプを採用してありますが、
理由は以下のとおりです。

図4は今回の回路ですが、R1,R2はオペアンプの入力抵抗を決める抵抗です。
なるべく高くなるように、R1=R2=4.7MΩとしてあります。
ここで、入力抵抗が高い場合に、問題となるオペアンプの性能項目があります。
それは、「バイアス電流」という項目でこの電流はオペアンプすべてにおいて発生する電流です。(図10)
入力が無くてもこのバイアス電流により出力に電圧が現れてしまい、その電圧は
             出力 = Ib × R2
となり、R2の値が大きい場合考慮が必要です。
以下に各オペアンプでの試算をしてみます。
(代表的な単電源用オペアンプ LM358の場合)
    45nA × 4.7MΩ = 211mV
(C−MOS オペアンプ LMC662の場合)
    0.002nA × 4.7MΩ = 0.009μV
この結果により測定可能最小電圧はLM358の場合、不十分ですので、LMC662を採用することにします。
A各定数の設定
▼抵抗 R1,R2
ここはなるべく、入力から見た抵抗が高くなるようにします。
ここではR1=R2=4.7MΩとしてあります。

オペアンプの入力抵抗が非常に大きいので入力端子から見た入力抵抗はR1,R2の直列
抵抗値とみなせます。
(9.4MΩ)
▼コンデンサ C1
図12は原理的にはR2のみ1本でも良いのですが、

入力抵抗が高く、小さな信号レベルを扱う場合、ノイズの影響を受けやすくなります。
そこで、R1とC1を設けてこのフィルターにより不要なノイズ成分(AC成分)を除去します。

▼R3,R4,VR1,VR2
オペアンプの利得は@式で表されますが、
R1=R2としたためにオペアンプのプラス端子には実際に入力された電圧の
半分が入力されることになります。
したがって、本装置の入出力の利得を1とした場合、

これにより R4 =
Rx となります。
▼R5
R5はオペアンプの出力がショートした場合の保護抵抗です。
抵抗値が大きいほど保護効果は大きくなりますが、
あまり大きな値では損失(電圧降下)が大きくなってしまうのでここでは1KΩとしてあります。

▼ダイオード D1
電圧レンジが小さい場合のテスターの保護用です。
ダイオードの順方向電圧以上の電圧が加わった場合に電圧リミットされます。

▼コンデンサ C2
オペアンプの動作安定用です。不要な周波数成分をカットします。
DC電圧を扱う装置ですので高い周波数成分を除去しています。
カットする周波数は以下の計算式です。


Bフィルタの設計
図17の回路をローパスフィルター(低域通過)と言います。

ある周波数以下までは入出力の信号レベルは同じで、それ以上の周波数は減衰するものです。
コンデンサは交流の周波数により抵抗が変化し、その抵抗をリアクタンスと呼びます。
これをXcとすれば図17は図18のようにあらわされます。

また、リアクタンスXcは次式であらわされます。

ここでフィルタの利得をA(f)とすれば

となります。foという周波数を fo
= 1 /2πCR を考えると、このときのA(f) は

つまり、 f = fo の時、振幅が 1 / √2 となり、この周波数foをカットオフ周波数と呼びます。

C調整方法

(1) DC電源(0〜12Vまでが可変できるもの)とデジタルテスターを用意します。
(2) DC電源が無い場合は乾電池(例えば006Pの9V電池を2個直列)と図19のように、ボリューム(10KΩ)を利用して0V〜18Vまで設定できるようにします。
(3)以下、図19の場合での調整方法を説明します。
なお、アナログテスターの機種により次のようなDC電圧レンジがありますが、
ここでは12/3/0.12Vを想定しての手順です。
          ・12/3/0.12V
          ・10/2.5/0.25V
          その他
@ レンジスイッチ(S2)はA−RANGE側、アナログテスターのDC電圧レンジ
    を12Vにして図19のように接続します。
    デジタルテスターの測定値が10VとなるようにVRを調節します。
    VR2を調節してアナログテスターの針(測定値)が10Vとなるようにします。
A VRを調節してデジタルテスターの測定値は0.1Vとなるようにします。
    レンジスイッチ(S2)をB−RANGE側、アナログテスターのDC電圧レンジを0.12Vにします。
    VR1を調節してアナログテスターの針(測定値)が0.1Vとなるようにします。
アナログテスターの電圧レンジが10/2.5/0.25Vの場合は、
10Vレンジで@、0.25VレンジでAの操作(校正電圧は0.2V)になります。
D使い方
テスターのレンジに対応して以下のようにレンジスイッチを切り替えます。
| 
   | 
  
   レンジスイッチ  | 
 
| 
   ●10/2.5/0.25Vの場合  | 
  
   B  | 
 
| 
        10/2.5  | 
  
   A  | 
 
| 
        0.25  | 
  
   | 
 
| 
   ●12/3/0.12Vの場合  | 
  
   | 
 
| 
         12/3  | 
  
   B  | 
 
| 
         0.12  | 
  
   A  | 
 
【付録】接続図

