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◎はじめに |
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パワーMOS FETは「高速に大電流をスイッチング」する分野で使用されます。 |
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スイッチング素子としては「バイポーラトランジスタ」が従来からありますが、 |
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パワーMOS FETは高速、ON抵抗が低いのが特徴です。 |
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今回は高速の分野ではありませんが、電力系の制御素子として応用した例を |
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紹介(レポート)します。 |
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◎MOS FETの使い方 |
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MOS FETの回路シンボルを図1に示します。(エンハンスメント特性) |
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電極は、 |
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D (ドレイン) |
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G (ゲート) |
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S (ソース) |
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の3つで、それぞれトランジスタの場合に |
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対応させると |
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D → C(コレクタ) |
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G → B(ベース) |
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S → E(エミッタ) |
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になります。また、nチャネルとpチャネルの2タイプになり、これもトランジスタに対応 |
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させると、 |
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nチャネル→NPN |
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pチャネル→PNP |
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になります。 |
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エンハンスメント特性とは図2 b ) 、d
) のように、 |
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nチャネルの場合 |
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ゲート・ソース間にプラスの電圧を与えるとドレイン電流が増加 |
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pチャネルの場合 |
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ゲート・ソース間にマイナスの電圧を与えるとドレイン電流が増加 |
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デプレッション特性とは図2 a ) 、c ) のようにゲート・ソース間電圧がプラス、マイナス |
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どちらの区間でもドレイン電流が変化します。 |
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パワーMOS FETはほとんどの場合、「エンハンスメント特性」です。 |
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★MOS FETのスイッチング回路 |
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基本的なスイッチング回路を図4に示します。 |
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a ) のnチャネル型はゲートにプラスの電圧を与えればFETがONし、b ) のpチャネル |
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はゲート電圧がゼロ(GND)でFETがONします。 |
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どちらもゲートしき値電圧Vth以下でOFFし、ONするような電圧を加えることにより |
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ONします。 |
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抵抗Rgはnチャネル、pチャネルどちらも入力がオープンになった時の接地抵抗または |
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プルアップ抵抗です。 |
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これが無いと入力がオープンになった時にFETの動作が不安定になります。 |
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例えば、入力がスイッチ接点でオープンの状態がある場合に抵抗Rgを接続します。 |
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◎電子負荷 |
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パワーMOS FETは前述のように「高速に大電流をスイッチングする」分野で使用され |
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ますが、今回はこの応用として「電子負荷装置」を製作しました。 |
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★電子負荷とは |
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例えば、図5のように電源装置の出力特性試験を行う場合、大電力の負荷抵抗 |
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が必要になり、この部分は可変抵抗が望ましいです。 |
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しかし、大電力タイプの可変抵抗は入手が難しいことと、可変抵抗の替わりに |
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いくつかの大電力の固定抵抗を用意するのも大変です。 |
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これに対して、図6のように可変抵抗部分をトランジスタまたはFET等のアクティブ素子 |
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で置き換えたものを「電子負荷」と言います。 |
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FETはゲートに加える電圧によりドレイン電流 |
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を制御し、トランジスタはベースに流す電流 |
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によりコレクタ電流を制御しますので、これは、 |
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図7のようにそれぞれ、「ドレイン・ソース間」 |
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または「コレクタ・エミッタ間」は言い方を変えれば |
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「可変抵抗素子」です。 |
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これを電子負荷装置として応用した代表的な |
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動作モード「定電流モード」の動作原理を |
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図8に示します。 |
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トランジスタの制御電圧にオペアンプを |
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用い、バーチャルショートの性質を利用 |
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したもので、トランジスタの電流Ioは必ず、 |
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Io = Vref / Rs |
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になります。 |
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Vrefを可変しすれば連続可変で自由にIoの値を設定することが出来ます。 |
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図9に設定例を示します。 |
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もう1つの代表的な動作モードの「定抵抗モード」の動作原理を図10に示します。 |
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このモードではVinに関係なく、R1,R2,Rsにより定抵抗として動作します。 |
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定抵抗での設定例を図11に示します。 |
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◎簡易版電子負荷装置の製作 |
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★簡易版 |
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「定電流モード」だけの簡易版の電子負荷装置を製作してみました。 |
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(主な仕様) |
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・装置電源電圧 |
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内蔵乾電池(単3×4)または外部DC電源(9V〜15V) |
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・定電流レンジ |
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3Aおよび0.3Aをスイッチで切換 |
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・定電流設定 |
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「SETボリューム」と微調整用「FINEボリューム」 |
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・定電流値測定 |
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外部電流計で測定 |
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・許容消費電力 |
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約30W |
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・電池電圧検出機能 |
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電池電圧の約70%で「アラームLED」を表示 |
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電子負荷装置へ加えられる許容電圧は使用するFETの耐圧に左右されます。 |
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筆者の場合は最大でも24Vまでしか扱いませんので許容電圧は24Vと考えています。 |
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許容消費電力は放熱器を含んだFETの許容消費電力に左右されます。 |
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今回製作したものは放熱器をケース内部に実装したため、許容消費電力の点では |
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不利です。実際に使用した結果、約30Wまでと考えています。 |
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★回路図 |
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図12に簡易版の回路図を示します。 |
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乾電池の電池寿命を70%とすれば、6V×70%=4.2V の電圧で動作するオペアンプを |
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採用しています。(ナショセミのLMC6482) |
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動作電圧は6Vまたは5Vにこだわる必要はありません。 |
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製作は微少信号または高速信号を扱うわけではありませんので特に、部品配置、 |
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配線に注意する必要はありません。 |
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ただし、「3Aが流れるルート」は少し太めの線材(筆者はAWG22を使用)で配線します。 |
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また、「LOAD」の黒は、やたらと他のGNDへ接続しないで、R1,R2のGNDへ接続し、 |
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電源部のGNDへ単独で戻します。 |
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★FETと放熱器の選択 |
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FETは低電圧駆動が必要です。 |
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ゲート・ソース間電圧が2Vくらいで数Aのドレイン電流が流れるFETを選択します。 |
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今回使用のFETは東芝の2SK2313です。 |
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主な定格を以下に示します。 |
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・ドレイン・ソース間電圧 |
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60V |
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・ドレイン電流 |
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60A(DC) |
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・許容損失 |
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150W(Tc=25℃) |
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・チャネル・ケース間熱抵抗 |
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0.833℃/W |
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データシートではゲート・ソース間電圧が |
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2V近辺の場合のドレイン電流値が読み取り |
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にくかったので、実験して確認しました。 |
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2SK2313に近い特性として同じ東芝の2SK1381があります。 |
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放熱器は大きいほど望ましいです。今回はケース内に実装するために写真1のような |
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放熱器を使用しました。筆者の手持ちのものでメーカー、型番が不明ですが参考 |
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としてサイズを写真1に記します。 |
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また、FET(2SK2313)と放熱器との実装状況も示します。 |
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FET自身の放熱器はドレインです。したがって、写真1のように「絶縁シート」が必要です。 |
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定電流制御部の回路を図14に示します。 |
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検出抵抗Rsにはそれぞれ |
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3Aレンジ→0.5Ω、10W、セメント抵抗 |
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0.3Aレンジ→5Ω、1W |
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です。他の抵抗値でも良いです。 |
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3Aレンジ用には10Wのセメント抵抗を用いましたが、3A連続動作ではかなり抵抗が |
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熱くなります。20Wタイプが良いと思います。 |
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(今回は基板実装面積の関係で10Wにしています) |
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オペアンプへのVrefはNJM431を用い、電圧値は2.5Vです。 |
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必要な電圧(スケール)になるようにVR1,VR2,VR3の組み合わせを決めれば良いです。 |
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VR2は電流設定の「微調整用」です。これがあると細かな設定も楽になり、お勧めします。 |
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★電池電圧検出 |
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オペアンプが2個入りなので、余ったほうを利用して「電池電圧検出機能」を追加して |
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みました。 |
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電源スイッチ内蔵の表示LEDをコンパレータの基準電圧とした回路です。 |
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電池電圧が高い場合は、コンパレータのマイナス端子のほうがプラス端子より高い |
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のでコンパレータ出力は「L」レベルです。したがって、「BATT-LED」は消灯。 |
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この電池電圧が低下して約70%くらいになると今度はコンパレータのマイナス端子の |
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ほうがプラス端子より低くなるので出力が反転しアラームLEDの「BATT-LED」を点灯 |
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させて、電池交換を示します。 |
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★基板の製作 |
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部品点数が少ないのでユニバーサル基板で製作しました。 |
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写真2に内部配線の様子を、図15に内部構造図を示します。 |
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ユニバーサル基板を放熱器のサイズにカットし、金属スペーサを利用して放熱器と |
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背中合わせに実装します。 |
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写真1のように部品点数が少ないので基板上にはかなりの余裕があります。 |
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放熱器、セメント抵抗は熱を持ちます。写真1ではあまり綺麗ではありませんが、 |
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線材が放熱器、セメント抵抗に接触しないように束線します。 |
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ケースはTAKACHIの「MB-4」です。 |
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今回は「カバー」と「シャーシ」を逆にして用いています。 |
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つまり、図15のようにカタログではこの部分がシャーシですが、これを「カバー」として |
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用いています。 |
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ケースは市販の「ラッカースプレー」 |
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で塗装してみました。 |
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夏場の塗装は乾燥が早いので |
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作業は楽です。 |
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放熱器がケース内実装ですので、 |
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放熱効率を上げる目的で「カバー」 |
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にはいくつもの丸穴を空けます。 |
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放熱器をケース外に出せば |
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放熱効果も上がって良いの |
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ですが、放熱器がむき出し |
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ですと、手(指)が当たった時に |
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熱くて痛いのでこのような構造 |
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にあえてしています。 |
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★ケース外観 |
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写真3に「フロントパネル」、写真4に「リアパネル」の外観を示します。 |
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チルトスタンドを用いました。やはり、チルトスタンドがあると非常に操作性が良く |
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なります。 |
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使用したものは |
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TAKACHI の「CT-1」 |
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で、ケースMB-4のサイズにぴったりです。 |
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「レンジ切換」スイッチは最大3A流れます。使用したものは「トグルスイッチ」で |
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定格6Aのものです。 |
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リアパネルにある「FUSE」は装置の保護用です。なんらかの原因で3A以上流れた |
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場合に回路を切断して保護します。 |
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リアパネルの「DC I」のジャックは「電流計」接続用で、マルチメータを接続します。 |
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ケースサイズを大きくして、電流モニター用の「アナログ電流計」を搭載できれば |
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さらに使い勝手のよいものになると思います。 |
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★シャーシの構造 |
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図16にシャーシの構造を |
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示します。 |
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「埋込電池ボックス」と「チルトスタンド」 |
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が取り付けられます。 |
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埋込電池ボックスの穴加工は |
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少し面倒ですが、出来上がって |
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みると非常に操作性が良いです。 |
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◎使用した感想 |
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★動作入力電圧範囲 |
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簡易版の定電流設定値は「3A」、「0.3A」の2レンジです。 |
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入力される電圧Vinの値が高ければ最大電流設定値(フルスケール、3Aまたは0.3A) |
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まで制御できます。ただし、Vinの値が低電圧の場合、フルスケール値(3Aまたは0.3A) |
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近辺は制御出来ません。 |
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そこで、図17のように動作可能(制御可能)な入力電圧を測定してみました。 |
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「3Aレンジ」はVinが2.5Vまでは3Aまで制御でき、1Vでは1.32Aまで制御出来ます。 |
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同じように「0.3Aレンジ」の場合を図17 b ) に示します。 |
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この結果から、おおむね、乾電池の電圧1.5Vまでは2Aまでの設定が自由に出来ます。 |
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(Vinが2.5Vまでであれば、3Aまで自由に設定できる) |
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★許容消費電力 |
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Vinに18Vを加えて1Aの定電流で約3分間の連続動作ではケース表面が「ほんのりと」 |
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暖かくなります。 |
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この時の消費電力は 18V×1A = 18W です。 |
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今度はVinが18Vで3Aの設定(つまり、18V×3A=54W)では1分間ほどでケース表面の |
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温度が「かなり、熱くなってきたかな」というレベルで触れないほどではありません。 |
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これらを考慮すると、連続運転(動作)での許容消費電力は20〜30Wと思われます。 |
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放熱器のサイズを大きくし、ケースの外に出せば、許容消費電力も大きく取れると |
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思いますが、今回は極力、コンパクトに仕上げることと、余計な突起物を出さない |
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ことが目的でしたので、これで「良し」と自己満足です。 |
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★DC/DCコンバータの効率試験に電子負荷を用いる |
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実際の使用例として「DC/DCコンバータの効率試験」を行いました。 |
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以前の「HT7750A使用レポート」で100μHでのデータが不足していましたので、 |
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インダクタに100μHを用いた場合の効率測定です。 |
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写真5に測定風景と測定回路を図18に示します。 |
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電流値設定に「FINE」の微調整ボリュームをつけたのは使い勝手が良いです。 |
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数ワット程度の「DC/DCコンバータ」の効率測定にはこのようなコンパクトな電子負荷 |
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のほうが作業台であまりスペースを取らないので良いです。 |
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(特に、乾電池動作は便利) |
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電子負荷で各電流値にセットし、この時の入出力の電力を測定します。 |
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このようにして測定したインダクタ100μH(RTP8010の100μH)での効率データ |
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をグラフ1,2に示します。(詳細はHT7750Aレポートを参照願います) |
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写真5の測定時には電子負荷は内蔵の乾電池で動作させています。 |
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この時の消費電流は「約18mA」です。消費の大部分はNJM431と電源表示LEDの |
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電流です。電源表示用のLEDにはもう少し輝度の高いLEDを使用して、この部分での |
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消費電流を削減すれば良いと思います。 |
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いずれにしても単3電池で18mAの消費電流ですから、それほど電池寿命は気にしなく |
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ても良いかもしれません。 |
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(長時間の使用であれば外部ACアダプターを使えば問題ない) |
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★今後の改良(改善)点 |
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DC/DCコンバータなどの効率測定では写真5のように電圧、電流測定にマルチメータ |
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が4台必要です。 |
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(写真5ではDC/DCコンバータの入力電力はDC電源内蔵のデジタル表示を直読) |
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マルチメータ4台は少し大げさです。せめて、電子負荷側での電圧、電流を |
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マイコン等を用いてデジタル表示させれば良いと思います。また、せっかくのマイコン |
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ですから、同時に負荷側での消費電力もデジタル表示させれば、さらに使い勝手の |
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良い電子負荷装置になると思います。 |
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