テキスト ボックス:                 MHPA-FET 改造記
                      2009年6月  KY
◎はじめに
ステレオヘッドホン・アンプキット MHPA-FET」を改造カイゾウしました。
このキットは「ヘッドホン専用センヨウアンプ」で出力シュツリョク部ブにMOS-FETを採用サイヨウしているのが特徴トクチョウです。
主オモな定テイ格カクを以下イカに記シルします。(カタログ値アタイ)
周波数シュウハスウ特性トクセイ 20Hz〜100KHz(-3dB、32Ω負荷フカ)
最大サイダイ出力シュツリョク 120mW + 120mW (32Ω、THD=3%)
ひずみ率リツ 0.005%以下イカ (50mW出力シュツリョク、1KHz,32Ω、LPF=80KHz)
SN比ヒ 100dB以上イジョウ (JIS-A、50mW出力シュツリョク基準キジュン)
チャンネルセパレーション 65dB以上イジョウ (JIS-A、50mW出力シュツリョク基準キジュン、1KHz)
利得リトク +15dB
電源デンゲン DC15V
◎目的モクテキ
このキットのカタログ定テイ格カクは上記ジョウキどおりで、主オモな項目コウモクの実測ジッソク値アタイを表ヒョウ1に示シメします。
表ヒョウ1
  Lch Rch ケース実装ジッソウ
ひずみ率リツ 0.00344% 0.00315% 使用シヨウ電源デンゲン
SN比ヒ 104.7dB 104.8dB KENWOOD PA18-3A
CS 65.9dB 65.7dB
CS : チャンネルセパレーション
上記ジョウキデータは「ケース実装ジッソウ」しないと同オナじような値アタイになりません。
また、このレベルになりますと、ケース無ナしの状態ジョウタイでは本来ホンライの性能セイノウ(特性トクセイ)が発揮ハッキされ
ませんので、ケース実装ジッソウをお勧ススめします。
特性トクセイ的テキにはこれで十分ジュウブンですが、オリジナルを損ソコなわない範囲ハンイ内ナイで特性トクセイ改善カイゼンをしてみる
ことにしました。
なお、このレポートでの改造カイゾウ内容ナイヨウはオリジナルの設計セッケイ方針ホウシンに反ハンしますので、
あくまでも、「自己ジコ責任セキニン」とし、動作ドウサ原理ゲンリをよくご理解リカイ願ネガいます。
◎改造カイゾウその1
☆ひずみ率リツおよびSN比ヒの改善カイゼン
回路カイロの利得リトクはオペアンプの定数テイスウで設定セッテイされ、オリジナルでは「+15dB」です。
(図ズ1を参照サンショウ)
一般的イッパンテキに、抵抗テイコウ値アタイが小チイさいほどノイズが少スクなく
なります。
したがって、この部分ブブンの値アタイを小チイさくすればノイズが
減少ゲンショウし、SN比ヒの改善カイゼンにつながり、ひずみ率リツに
対タイしても、改善カイゼン効果コウカが期待キタイできます。
抵抗テイコウ値アタイは利得リトクが+15dBとなる組クみ合アわせにすれば
良ヨいわけですが、限度ゲンドがあります。
今回コンカイはこの部分ブブンを図ズ2の定数テイスウに変更ヘンコウしました。
この図ズは原理ゲンリ図ズで、実際ジッサイの回路カイロと異コトなります。
実際ジッサイの部品ブヒン番号バンゴウの対応タイオウは図ズ2を参照サンショウ願ネガいます。
この改造カイゾウにおける改善カイゼン結果ケッカを表ヒョウ2に示シメします。
表ヒョウ2
    Lch Rch
ひずみ率リツ 改善カイゼン前マエ 0.00344% 0.00315%
  改善カイゼン後ゴ 0.00252% 0.00235%
SN比ヒ 改善カイゼン前マエ 104.7dB 104.8dB
  改善カイゼン後ゴ 107.1dB 107.1dB
ひずみ率リツ、SN比ヒともに約ヤク3dBの改善カイゼン効果コウカです。
◎改造カイゾウその2
ひずみ率リツは前記ゼンキの抵抗テイコウ定数テイスウ変更ヘンコウにより改善カイゼンされますが、さらなる改善カイゼンを試ココロみました。
ただし、この改造カイゾウは「オリジナルの設計セッケイ方針ホウシン」と大幅オオハバに異コトなりますのでお勧ススめしません。
ひずみ率リツの大幅オオハバ改善カイゼンは「アイドル電流デンリュウ」の調整チョウセイで行オコナえます。
以下イカ、原理的ゲンリテキな部分ブブンを説明セツメイします。
○A級キュウ増幅ゾウフク
増幅ゾウフク器キは「動作点ドウサテン」により「A級キュウ」、「B級キュウ」、「AB級キュウ」、「C級キュウ」のように分類ブンルイされ、A級キュウ、B級キュウ
の場合バアイを図ズ3に示シメします。
A級キュウは入力ニュウリョク信号シンゴウが無ナくても、常ツネに一定イッテイの動作ドウサ電流デンリュウ(コレクタ電流デンリュウ、ドレイン電流デンリュウ)を流ナガしています。
一般的イッパンテキに増幅ゾウフク器キはA級キュウ動作ドウサが多オオいのですが、電力デンリョク増幅ゾウフクで使用シヨウする場合バアイはデバイス(トランジスタ、
FET等トウ)の熱ネツ損失ソンシツが問題モンダイになります。
○プッシュプル回路カイロ
B級キュウ増幅ゾウフクは 図ズ3 b ) のように入力ニュウリョク信号シンゴウの半波ハンパしか増幅ゾウフクしませんので、通常ツウジョウは図ズ4のように
トランジスタを2個コ設モウけて増幅ゾウフクします。
図ズ4 プッシュプル増幅ゾウフクの原理ゲンリ図ズ
入力ニュウリョク信号シンゴウがプラスの時トキ(期間キカン1と3)
はTR1が動作ドウサし、マイナスの時トキ a ) NPNトランジスタ2個コで構成コウセイ
(期間キカン2と4)はTR2に動作ドウサし、
負荷フカRL(ヘッドホン)へは合成ゴウセイされた
波形ハケイになります。
動作ドウサ原理ゲンリは b ) のようにプラスの
時トキは図ズのようにトランスに信号シンゴウ
が現アラワれるので、TR1のベースに
図ズの方向ホウコウで電流デンリュウが流ナガれるので
TR1が動作ドウサします。
マイナスの場合バアイは c ) のようになりますので
この場合バアイはTR2が動作ドウサします。
b ) プラスの場合バアイ c ) マイナスの場合バアイ
図ズ4の場合バアイは入力ニュウリョクにトランスを設モウけて 図ズ5 コンプリメンタリプッシュプル回路カイロ
片側カタガワのトランジスタのみが動作ドウサするように
していますが、図ズ5のように構成コウセイすると
トランスが不要フヨウになります。
NPNとPNPトランジスタの特性トクセイが同オナじ
ものを「コンプリメンタリ」と言イいます。
コンプリメンタリで構成コウセイすることにより
プッシュプル動作ドウサを行オコナっています。
FETの場合バアイも同様ドウヨウに図ズ6の構成コウセイで
コンプリメンタリプッシュプルになります。
図ズ6  FETコンプリメンタリプッシュプル
図ズ7  クロスオーバー歪ヒズミ
○クロスオーバー歪ヒズミ
B級キュウプッシュプルでは図ズ7のように上下ジョウゲの
波形ハケイのつなぎ目メで波形ハケイ歪ヒズみが発生ハッセイします。
実際ジッサイにはB級キュウで使ツカうことはほとんどなく、ある程度テイドのバイアスを加クワえて動作ドウサさせています。
○AB級キュウ動作ドウサ
B級キュウ増幅ゾウフクのクロスオーバー歪ヒズミを少スクなくする方法ホウホウ
として、図ズ8のように動作ドウサ点テンを若干ジャッカン、右ミギへ移動イドウし、
入力ニュウリョク信号シンゴウが無ナくても、ある程度テイドの電流デンリュウ(IDL)を
流ナガしておきます。(バイアスをかける)
これにより、入力ニュウリョク信号シンゴウにより、すぐにコレクタ電流デンリュウ
が流ナガれることになり、また、動作ドウサ点テンの非ヒ直線チョクセン
部分ブブンも改善カイゼンされ、歪ヒズミの低減テイゲンになります。
このような動作ドウサを「AB級キュウ増幅ゾウフク」と言イいます。
なお、直流チョクリュウ電流デンリュウIDL(これをアイドル電流デンリュウと言イいます)
は直流チョクリュウですので、負荷フカRLへは交流コウリュウ信号シンゴウ(変化ヘンカ分ブン)
としては現アラワれないので、プッシュプルで構成コウセイすれば
スムーズな上下ジョウゲ波形ハケイの合成ゴウセイができることになります。
アイドル電流デンリュウを増加ゾウカすれば、動作点ドウサテン近辺キンペンでの歪ヒズミはさらに改善カイゼンされますが、アイドル電流デンリュウにより
トランジスタ(FET)の熱ネツ損失ソンシツが大オオきくなりますので、ある程度テイドのアイドル電流デンリュウに設定セッテイします。
○アイドル電流デンリュウの再サイ設定セッテイ
オリジナルのアイドル電流デンリュウの設定セッテイ値アタイは「20mA」です。
この値アタイを多オオくすることにより、さらなる「ひずみ率リツの改善カイゼン」になります。
ただし、アイドル電流デンリュウを増加ゾウカすれば、前述ゼンジュツのようにFETの「熱ネツ損失ソンシツ」が増加ゾウカして、デバイスを破損ハソン
する恐オソれがあります。
これらを考慮コウリョして、オリジナルのアイドル設定セッテイはひかえ目メにしてあります。
今回コンカイの筆者ヒッシャの設定セッテイ値アタイは「40mA」です。これにより、大幅オオハバなひずみ率リツの改善カイゼンになりますが、
40mAを超コえる設定セッテイにしてもそれ以上イジョウの改善カイゼン効果コウカはありませんので、40mAの設定セッテイが最大値サイダイチです。
40mA設定セッテイに伴トモナい、FETの熱ネツ損失ソンシツも増加ゾウカします。したがって、放熱ホウネツを考カンガえる必要ヒツヨウがあります。
今回コンカイの場合バアイは、放熱ホウネツ器キを使用シヨウしないで、ケースの上ウエ蓋フタに放熱ホウネツ穴アナを設モウけることで対処タイショしています。
写真シャシン1に追加ツイカした放熱ホウネツ穴アナの様子ヨウスを
示シメします。
アイドル電流デンリュウ40mAの設定セッテイはAB級キュウではなく、
A級キュウ動作ドウサに近チカくなります。
したがって、FETの消費ショウヒ電流デンリュウは「無ム入力ニュウリョク時トキ」
が最大サイダイ消費ショウヒ電力デンリョクになります。
参考サンコウとして写真シャシン1のケース実装ジッソウ時ジのFET
温度オンド上昇ジョウショウ値アタイを以下イカに示シメします。
(条件ジョウケン)
・無ム入力ニュウリョク
・60分フン後ゴ
(FETの温度オンド上昇ジョウショウ値アタイ)
Δ30℃
ここで言イう「温度オンド上昇ジョウショウ値アタイ」とはFETの表面ヒョウメン温度オンドの上昇ジョウショウ値アタイ分ブンのことです。
上記ジョウキの「Δ30℃」は周囲シュウイ温度オンドに対タイして「+30℃」高タカくなると言イう意味イミで、例タトえば、周囲シュウイ温度オンドが
25℃であればFETの表面ヒョウメン温度オンドは 25 + 30 = 55℃ になります。
FETはドレイン電流デンリュウの値アタイにより「温度オンド変化ヘンカに対タイするドレイン電流デンリュウの変化ヘンカ特性トクセイ」が異コトなります。
MHPA-FETのオリジナルは周囲シュウイ温度オンドの変化ヘンカに対タイするFETドレイン電流デンリュウの変化ヘンカが最モットも少スクなくなる
アイドル(ドレイン)電流デンリュウの設計セッケイです。
今回コンカイの改造カイゾウのようにドレイン電流デンリュウを増加ゾウカすると、温度オンド上昇ジョウショウに伴トモナい、ドレイン電流デンリュウが減少ゲンショウする傾向ケイコウに
なります。
したがって、なるべく「放熱ホウネツ効果コウカ」を上アげて温度オンド上昇ジョウショウを抑オサえることが望ノゾましいです。
今回コンカイの改造カイゾウによる「アイドル電流デンリュウの変動率ヘンドウリツ」をグラフ1に示シメします。
このグラフは電源デンゲンON直後チョクゴのアイドル電流デンリュウ(ドレイン電流デンリュウ)を初期値ショキチとし、その後ゴの時間ジカン変化ヘンカによる
アイドル電流デンリュウの変動率ヘンドウリツを測定ソクテイしたものです。
この結果ケッカから、10分フン後ゴ以降イコウは、ほとんど変動ヘンドウしなく、ほぼ、一定イッテイになります。
テキスト ボックス: 注意
  グラフ1は写真1の穴仕様(放熱)で行った結果で、放熱状態が異なれば
  同じ結果になりません。また、放熱効果が少なければ、変動率は大きく
  なると思います。
◎改造カイゾウ1と改造カイゾウ2でのひずみ率リツ特性トクセイ
改造カイゾウ1と2の併用ヘイヨウを行オコナったひずみ率リツの実測ジッソクをグラフ2に示シメします。
参考サンコウとしてオリジナルの特性トクセイも併アワせて表示ヒョウジします。
元々モトモト、オリジナルでも出力シュツリョクレベルが低ヒクい領域リョウイキ(10mW)からひずみ率リツが低ヒクく良好リョウコウな特性トクセイです。
改造カイゾウを行オコナうことにより、さらに良好リョウコウな特性トクセイになることが分ワかります。
前マエにも述ノべましたが、このクラスの特性トクセイを発揮ハッキするためには、「ケース実装ジッソウ」が条件ジョウケンです。
また、ケース無ナしではせっかくの特性トクセイが生イかされません。
◎チャンネルセパレーションの改善カイゼン
チャンネルセパレーションを改善カイゼンします。
この改善カイゼンは写真シャシン2のように「ヘッドホンジャックのGND配線ハイセン」の線材センザイを太フトくするだけです。
使用シヨウする線材センザイは太フトいほうが望ノゾましく、また、配線ハイセン(束タバ線セン)しやすいものが良ヨいです。
筆者ヒッシャの場合バアイ、
UL1007のAWG18 黒クロ
で行オコナいました。
基板キバン側ガワの接続セツゾクポイントは図ズ9のとおりで、
C9とC10の接続セツゾクポイントの半分ハンブンの位置イチ
の「レジスト」を剥ハがして、この部分ブブンに
線材センザイをはんだ付ツけします。
これによる改善カイゼン効果コウカは次ツギのとおりです。
表ヒョウ3
  L→R R→L
改善カイゼン前マエ 65.9dB 65.7dB
改善カイゼン後ゴ 73.9dB 73.3dB
改善カイゼン度ド 8dB 7.6dB
この改善カイゼンは簡単カンタンですからお勧ススめします。
◎その他タの改善カイゼン
改造カイゾウ1により、R4,R5,R21,R22,C5,C6の定数テイスウ変更ヘンコウを行オコナいました。これにより、C5,C6の定数テイスウが
220pFになりましたので、この部分ブブンに「フィルム系ケイ」のコンデンサが使用シヨウできます。
この部分ブブンのコンデンサは特性トクセイには関係カンケイありませんが、オーディオ的テキにフィルム系ケイのコンデンサに
変更ヘンコウしました。手持テモちの関係カンケイで、この部分ブブンには「ポリプロピレンコンデンサ」の
APSF100J221 (ニッセイ電機デンキ)
を用モチいています。このコンデンサに限カギらず、色々イロイロ、試タメしてみてください。
また、「微々ビビたるもの」ですが、写真シャシン3のように、上ウエフタの側面ソクメン部ブの塗装トソウを剥ハがして、
より確実カクジツにシャーシと導ドウ通ツウさせて、シールド効果コウカを上アげて?います。
◎まとめ
改造カイゾウ1とチャンネルセパレーション改善カイゼンはお勧ススめします。
内部ナイブ配線ハイセンと束タバ線センは写真シャシン2と図ズ10を参考サンコウにしてください。
このキットは「シールド線セン」を用モチいない設計セッケイ方針ホウシンです。また、やたらと「ツイスト処理ショリ」をすることは
不要フヨウで、LEDへの配線ハイセンのみ「軽カルいツイスト処理ショリ」です。
改造カイゾウ2はオリジナルの設計セッケイ方針ホウシンに反ハンしますので、改造カイゾウに自信ジシンのある方カタは自己ジコ責任セキニンでお願ネガい
します。
また、この場合バアイ、必カナラずFETの温度オンド上昇ジョウショウの確認カクニンをしてください。
最近サイキンは安価アンカなデジタルテスターでも温度オンド測定ソクテイ機能キノウ(熱ネツ電デン対ツイ)がありますので、これを利用リヨウすれば
良ヨいです。
温度オンド上昇ジョウショウ値アタイは「+30℃以下イカ」を目安メヤスとすれば良ヨいです。
追加ツイカの放熱ホウネツ穴アナは写真シャシン1のように「Φ3.5が16個コ」です。穴アナが大オオきいと異物イブツ(虫ムシ等トウ)が入ハイりやすく
なります。この穴アナサイズでもう少スコし穴アナ数カズを増フやしても良ヨいです。