テキスト ボックス:               簡単治具製作シリーズ
                「低周波発振器の製作」
                             第3回目(最終回)   考察編

                       2010年3月  KY
製作後に電気的特性を確認し考察します。
◎キーパーツ
今回の製作でのキーパーツは「2連ボリューム」
です。ボリュームの原理を図19に示します。
2連ボリュームは図20のようにボリュームが2個
あり、軸の回転に応じて両方のボリュームが
動きます。
ここで問題になるのは「トラッキングエラー」です。
トラッキングエラーは図20のように各ボリューム間
の抵抗値誤差を言います。
ウィーンブリッジ回路は原理的に2個のRoの値が
同じでなければなりません。
このRo誤差が大きいと発振不安定になります。
当初、2連ボリュームは10KΩで実験を行っていたのですが、その後、Coの定数を変更し、これに伴い
ボリューム値(Ro)を50KΩにしています。
あいにく、手持ちの2連ボリューム50KΩが1個しか無く、これを用いて実験を行いました。
ところが、「どうも、動作が不安定。出力偏差の誤差が大きい」のです。
トラッキングエラーが大きいのかなと思い、図21の方法でトラッキングエラーを測定してみました。
グラフ4にその結果を示します。「B社」がこの時に用いたボリュームです。
抵抗値15KΩ以下から、かなりのエラーになっています。
これでは動作不安定になるのも当たり前です。(と、言うより2連ボリュームを採用するのが無謀)
仕方なく、他社のボリュームを購入し、トラッキングエラーを測定し、このデータも一緒にグラフ4に
示します。
B社よりはかなり良好です。Linkman製が一番良かったのでこれを採用することにします。
(注意:各社のボリュームはサンプル数1です。必ず、この結果になるとは限りません)
写真5に、最終的に採用した
Linkman製のボリューム
(RD925G-QA1-B503)
の外観を示します。
グラフ4の結果はボリューム単体の場合です。実際はこのボリュームに固定抵抗3.9KΩを直列
接続して使うので、この場合でのトラッキングエラーをグラフ5〜7に示します。
固定抵抗Ra,Rbのある分、トラッキングエラーが緩和されることが分かります。
最大誤差は、
Linkman:1dB
A社:3dB
B社:3dB
です。
Ra,Rbの値をさらに大きくすればトラッキングエラーはさらに緩和(改善)されます。
ただし、周波数範囲が狭まるのでRa=Rb=3.9KΩで「良し」とします。
◎電気的特性
○周波数特性
各レンジでの周波数特性をグラフ8〜グラフ11に示します。
測定は1000Hzレンジ時の1000Hzを基準(0dB)にして行っています。
発振器ですから、周波数を変えても出力レベル(電圧値)は限りなく「差」が無いのが望まれます。
各グラフから
10Hzレンジ  → 約50Hz付近
100Hzレンジ  → 約500Hz付近
1000Hzレンジ  → 約5KHz付近
10000Hzレンジ  → 約50KHz付近
でレベル差が大きくなっています。
これは使用したボリュームでのトラッキングエラーがそのまま影響しているようです。
この結果については「仕方ない」と思います。
○ひずみ率特性
1000Hzレンジでのひずみ率特性(THD)をグラフ12に示します。
一般的な「動作チェック用発振器」に用いるのであれば申し分ありません。(これは満足!!)
◎まとめ
周波数特性に関しては用いるボリューム特性に左右されますので仕方ありません。
トラッキングエラーの少ないボリュームにすれば、さらに良好な特性になると思います。
また、ボリュームでは無く、「金属皮膜固定抵抗」を用いて10ポイントくらいで切り替えれば良好
な特性になります。
ただし、この場合少し使い勝手が悪くなるかもしれません。
乾電池動作はすごく便利です。使用風景を写真6に示します。
汎用オペアンプを用いたので動作電圧が12Vになってしまいましたが、低電圧駆動のオペアンプ
(例えば、CMOSオペアンプ)を用いて、単3×3本または4本の電源とし、周波数もスポット周波数
(例えば、100Hz,1KHz,10KHzの3波)にすれば、さらに小型化が出来ると思います。(図23)
低周波発振器は市販品(測定器)でも安価な製品があり、特に自作する必要もないと思いますが、
実際に自作してみると難しさが分かり、また楽しいものです。
特に、周波数の連続可変は難しいものです。
図23による「スポット周波数」であればそれほど難易度は無いと思います。なるべく小型にして
電池駆動させれば市販品には無い「特別な物」になると思います。
おわり