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可聴周波数範囲とオーディオコンポーネントの概要

著者 Jeff Smoot 
VP of Apps Engineering and Motion Control at CUI Devices
2021-07-21

マルツ掲載日:2021-11-22


 オーディオは車から家電、ポータブル機器に至るまでいたるところにあり、その適用範囲は増大の一途を辿っています。オーディオシステムの設計に関して考慮すべき重要な要素は、サイズ、コスト、品質です。品質は多くの要因に影響されますが、代表的な要因はシステムが与えられた設計に必要な可聴周波数を再現できるかどうかです。

 この記事では、可聴周波数範囲とそのサブセットの基本、エンクロージャ設計の影響、適用範囲に応じて必要となる可聴範囲を決定する方法について詳しく説明します。

可聴周波数範囲の基礎知識

 一般的に使用される可聴周波数範囲は20Hz~20,000Hzです。しかし、平均的な人の可聴範囲はこの20Hz未満のHz数~20,000Hzであり、しかも、この可聴範囲は加齢とともに狭くなっていきます。可聴周波数は、オクターブごとに周波数が2倍になる音楽を通じて最もよく理解できます。

 ピアノの最も低い音であるAは約27Hz、最も高い音であるCは約4186Hzです。音を出す物体や機器では、よく使われるこれらの周波数以外に、高調波周波数も発生します。これらは単純に、高い周波数を低い振幅で表現したものです。

 たとえば、27HzであるピアノのA音には、54Hzの倍音(つまり高調波)、81Hzの倍音などが含まれており、それぞれの倍音は最後の倍音よりも小さな音になります。音源を正確に再現することが求められるハイファイスピーカシステムでは、特に高調波が重要になります。

可聴周波数のサブセット

 表1に、オーディオシステムの設計において目標の範囲を定義するのに役立つ、周波数範囲20Hz~20,000Hzにおける7つの周波数サブセットを示します。


表1:可聴周波数範囲サブセット(画像提供:CUI Devices)

周波数応答グラフ

 周波数応答グラフは、ブザーやマイクロフォン、スピーカなどが様々な可聴周波数をどのように再現するかを視覚化するのに良い方法です。ブザーは通常、音を鳴らすだけなので、周波数範囲が狭いのが特徴です。一方、スピーカは音声を再現するのが仕事なので、一般的に周波数範囲が広くなります。

 スピーカやブザーなどの音声出力機器の周波数応答グラフのY軸は、音圧レベルのデシベル数(dB SPL)で表されています。この数値は、基本的には機器が出力する音声の大きさを表します。マイクロフォンなどの音声入力機器は、音を出すのではなく検出するので、そのY軸は感度をdBで表したものになります。

 図1は、X軸が周波数の対数値を表し、Y軸の単位がdB SPLなので、オーディオ出力機器のグラフです。なお、dB数も対数値なので、両軸とも対数値です。


図1:基本的な周波数応答グラフ(画像提供:CUI Devices)

 このグラフは、周波数を変えて一定の電力を入力したときに得られるSPLのdB数を表しており、周波数範囲における変化が少なく、比較的フラットなグラフとなっています。このオーディオ機器に同じ入力電源を与えた場合、入力電源が70Hz未満の場合には出力するSPLが非常に低くなりますが、70Hz~20,000Hz間の場合には安定した高さのSPLを出力します。70Hz未満の場合には、出力されるSPLは低い値になります。

 CUI Devices製スピーカ「CSS-50508N」の周波数応答グラフ(図2)は、より一般的なスピーカプロファイルの例です。このグラフには、共振によって出力が強くなったり弱くなったりした点の集合である山と谷がバリエーション豊かに描かれています。この41mm×41mmスピーカのデータシートに記載されている共振周波数範囲380Hz±76Hz内の値で、グラフの最初の主なピークが発生していることがわかります。

 これは600~700Hz付近で急降下しますが、その後、800Hz~3,000Hz辺りでは安定したSPL性能を発揮します。CSS-50508Nがスピーカの大きさから高音域に比べて低音域での性能が低いものと設計者は推測することができますが、このことはグラフでも確認できます。

 設計者は、周波数特性グラフをどのように、どのようなタイミングで参照するかを理解することで、スピーカなどの出力機器が目的の周波数を再現できるかどうかを確認することができます。


図2:CUI Devices製の41mm×41mmのスピーカ「CSS-50508N」の周波数応答グラフ。(画像提供:CUI Devices)

可聴範囲とエンクロージャに関する検討事項

 可聴範囲がエンクロージャの設計に与える影響は、以下のセクションで説明します。

スピーカサイズ
 小型のスピーカは、動かす空気が大型のスピーカよりも少しで済むため、不要な高調波を抑えて高い周波数を出すことができます。しかし、低い周波数で同じようなSPL出力を実現しようとすると、より高いピッチと同じ知覚dB SPLに一致させるためには、十分な空気を動かすために、より大きなスピーカの振動板が必要になります。振動板は大きくすると重くなりますが、低周波では振動板の動きが非常に遅くても構わないので、この重さは問題になりません。

 スピーカを小型化するか大型化するかの判断は、最終的にはアプリケーションの要件に依存しますが、スピーカを小型化すると、一般的にエンクロージャが小さくなり、コスト削減や省スペース化につながります。詳しくは、CUI Devicesのブログ「How to Design a Micro Speaker Enclosure」をご覧ください。

共振周波数
 共振周波数とは、物体が振動する自然な周波数のことです。ギターの弦は弾くとその共振周波数で振動するので、その共振周波数が生じているギターの弦の横にスピーカを置くと、ギターの弦が振動し始め、時間とともに振幅が大きくなります。

 しかし、ギターの弦でなく音声で同じことを行うと、周囲の物体と一緒になって不必要なバズや異音を生じることになります。このトピックについて詳しくは、共振と共振周波数に関するCUI Devicesのブログをご覧ください。

 非線形出力と不要な高調波の両方を持つスピーカを避けるために、エンクロージャの設計では、エンクロージャの自然共振周波数が目的の音声出力と同じ範囲に存在しないことを確認する必要があります。

素材間のトレードオフ
 スピーカやマイクロフォンの設計では、動作中に静止していなければならない部品、柔軟性が必要な部品、剛性が必要な部品の間で微妙なバランスをとっています。スピーカの振動板(コーン)は、応答が早くなるように軽く、かつ動いても変形しないようにできるだけ剛性を保つ必要があります。

 CUI Devicesのスピーカには、軽量で剛性の高い紙やマイラーがよく使われています。マイラーはプラスチックの一種なので、湿気や水分に強い利点があります。振動板が使われているだけでなく、振動板とフレームをつなぐためのゴムも使われています。極端な動きによる破損を防ぐためには、強度と、振動板の動きを妨げない柔軟性が必要です。


図3:スピーカの基本構造(画像提供:CUI Devices)

 このような素材間でのトレードオフの関係は、マイクロフォンの技術同士を比較する場合にも見られます。エレクトレットコンデンサマイクロフォンやMEMSマイクロフォンは、耐久性、小型パッケージ、低電力を特長としていますが、周波数や感度に限界があります。一方、リボンマイクロフォンについては、感度と周波数範囲が高いものの、耐久性が低いというトレードオフの関係があります。

 エンクロージャの設計では、素材も重要な選択の一つで、音の共振と吸収の両方に影響します。エンクロージャの最大の目的は、後方で発生する位相のずれた音を減衰させることであり、そのためには吸音効果のある素材を選ぶ必要があります。これは、減衰させるのが難しい低周波音のアプリケーションでは特に重要です。

まとめ

 結局のところ、オーディオシステムの数は限られており、可聴範囲全体を忠実に再現できる単一のオーディオ出力機器は存在しません。一般に、ほとんどの用途ではこのレベルの忠実さは必要なく、完全に線形な出力も必要ないと思われます。しかし、可聴周波数範囲を理解することは、設計に適したオーディオコンポーネントを選択する上で重要な役割を果たします。

 可聴周波数範囲を理解していれば、設計者はコスト、サイズ、性能の間のトレードオフ関係をより適切に比較考量することができます。CUI Devicesは、あらゆるアプリケーションをサポートするために、様々な周波数範囲のオーディオソリューションをご用意しています。




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