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自律走行車のLiDAR用GaN FETクイックガイド

著者 Kenton Williston 氏
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-02-01

マルツ掲載日:2024-06-24



 光検出による距離測定(LiDAR)の用途には、自律走行車やドローン、倉庫の自動化、精密農業などがあります。これらの用途の大半には人間が関わるため、LiDARで使用するレーザーが目にダメージを与える可能性が懸念されます。目の負傷を防ぐため、車載用LiDARシステムは、最大200ワットの送信においてIEC60825-1クラス1の安全要件を満たさなければなりません。

 一般的なソリューションでは、1~2MHzの繰り返し周波数で1~2nsのパルスを使用します。レーザーダイオードを制御するためには、マイクロコントローラなどのデジタル集積回路(IC)が必要ですが、レーザーダイオードを直接駆動することはできないため、ゲートドライバ回路を追加する必要があります。また、このゲートドライバの設計は、LiDARシステムの性能が自動車技術会(SAE)のレベル3以上の先進運転支援(ADAS)システムに適していることを保証するために最適化する必要があります。

 ディスクリート部品を使用してIEC60825-1の安全要件を満たすハイパワーで高性能なゲートドライバを設計することは、複雑で時間がかかり、コストや市場投入までの時間の増加につながる可能性があります。このような課題に対応するため、設計者は、窒化ガリウム(GaN)パワー電界効果トランジスタ(FET)と組み合わせた統合型高速ゲートドライバICに目を向けることができます。

 統合ソリューションを使用することで、特に大電流レーザーパワーループにおいて、ドライブ信号のインテグリティを低下させる寄生を最小限に抑えることができ、大電流ドライバをパワースイッチの近くに配置できるため、高周波スイッチングノイズの影響を最小限に抑えることが可能になります。

 この記事では、LiDARについて簡単に紹介します。大電流レーザーパワーループに焦点を当て、用途と安全要件について説明してから、車載用LiDAR設計の課題を検討します。その後、Efficient Power Conversion(EPC)、Excelitas Technologies、ams OSRAM、Texas Instrumentsが提供する、GaNパワーFET、ゲートドライバ、レーザーダイオードを含むLiDARソリューションと、開発プロセスを加速するための評価ボードと実装ガイダンスを紹介します。

LiDARの仕組み

 LiDARシステムは、レーザービームパルスの往復飛行時間(ToF)(Δt)を測定し、対象物からの距離を計算します(図1)。距離(d)は、d=c×Δt/2(cは空気中の光速)の式で計算できます。

 短いパルス持続時間は、LiDARの鍵のひとつです。光速が約30cm/nsであることを考えると、1nsのLiDARパルスの長さは約30cmです。このため、解像可能な特徴の大きさの下限は約15cmとなります。その結果、LiDARのパルスは、人間スケールの環境に有用な解像度を持つために、数ナノ秒に制限する必要があります。


図1:LiDARはToF測定を用いて物体を検出し、その距離を特定します。(画像提供:ams OSRAM)

 パルス幅、ピークパワー、繰り返し周波数、デューティサイクルがLiDARの主な仕様です。たとえば、LiDARシステムで使用される一般的なレーザーダイオードは、100ns以下のパルス幅、100ワットを超えるピークパワー、1kHz以上の繰り返し周波数、0.2%のデューティサイクルを持ちます。

 ピークパワーが高いほどLiDARの検出範囲は長くなりますが、熱放散はトレードオフの関係にあります。パルス幅が100nsの場合は、レーザーの過熱を防ぐために、平均デューティサイクルが通常0.1%から0.2%に制限されます。より短いパルス幅もLiDARの安全性に貢献します。

 IEC60825-1では、レーザーの安全性を最大許容被ばく量(MPE)という観点から定義しています。これは、目に損傷を与える可能性が無視できる、光源の最高のエネルギー密度またはパワーのことです。無視できるレベルとして、MPEのパワーレベルは、目に損傷を与える可能性が50%のエネルギー密度のおよそ10%に制限されます。パワーレベルが一定であれば、パルス幅が短い方が平均エネルギー密度が低く、安全です。

 1回のLiDAR ToF測定で対象物までの距離を特定できる一方で、数千または数百万のLiDAR ToF測定値を使用して3次元(3D)点群を作成することも可能です(図2)。点群とは、コンポーネントと呼ばれる大量の情報を格納したデータポイントの集合体です。

 各コンポーネントには、属性を表す値が含まれています。コンポーネントには、x、y、z座標と、強度、色、時間(物体の動きを測定するため)に関する情報が含まれる場合があります。LiDARの点群により、ターゲットエリアのリアルタイム3Dモデルを作成します。


図2:LiDARシステムでは、多数のToF測定値を組み合わせて、ターゲットエリアの3D点群および画像を作成します。(画像提供:EPC)

LiDARレーザーの電源にGaN FETを使用

 GaN FETはシリコンFETに比べてスイッチング速度が速いため、非常に狭いパルス幅を必要とするLiDARアプリケーションに適しています。たとえば、EPCのEPC2252は、最大75Aの電流パルスが可能な、AEC-Q101車載規格準拠の80V GaN FETです(図3)。EPC2252の最大オン抵抗(RDS(on))は11mΩ、最大総ゲート電荷量(Qg)は4.3nC、ソースドレイン回復電荷量(QRR)はゼロです。

 このICは、ダイサイズボールグリッドアレイ(DSBGA)として提供されます。つまり、パシベーション処理されたダイが、他のパッケージなしではんだボールに直接取り付けられます。その結果、DSBGAチップはシリコンダイと同じサイズになり、フォームファクタを最小限に抑えることができます。この場合、EPC2252では1.5×1.5mmの9-DSBGA実装を使用します。ジャンクションから基板までの熱抵抗は8.3˚C/Wであるため、高密度システムに適しています。

          
図3:EPC2252 GaN FETはAEC-Q101に準拠し、車載用LiDARシステムのレーザーダイオードの駆動に適しています。(画像提供:EPC)

 設計者は、EPCのEPC9179開発ボードを使用し、総パルス幅2~3nsのLiDARシステムにEPC2252を採用することにより、作業を短期間でスタートできます(図4)。EPC9179はTexas InstrumentsのLMG1020ゲートドライバを内蔵しており、外部信号やオンボードの狭パルス発生器(サブナノ秒精度)で制御できます。


図4:EPC2252 GaN FETとその他の主要部品を搭載したEPC9179デモボードを示します。(画像提供:EPC)

 開発ボードには、ブレークアウェイ5×5mmインターポーザで構成されたEPC9989インターポーザボードが付属しています(図5)。これらは、SMDやMMCXのような多くの一般的な面実装レーザーダイオードの実装フットプリントに対応し、RFコネクタやその他さまざまな負荷に対応するように設計されたパターンにも対応しています。


図5:EPC9989インターポーザボードには、右上のSMDレーザー用インターポーザのように、EPC9179デモボードで使用するためにスナップオフできるインターポーザが用意されています。(画像提供:EPC)

 905nmで発振するExcelitas TechnologiesのTPGAD1S09Hパルスレーザーダイオード(図6)は、EPC9989インターポーザボードで使用できます。このレーザーダイオードには、リードレスラミネートキャリヤにマウントされた多層モノリシックチップを使用し、波長温度係数(Δλ/ΔT)が0.25nm/℃という優れた熱性能を実現しています。

 この量子井戸レーザーダイオードでは、適切なドライバを使用することで、立ち上がり時間と立ち下がり時間が1ns未満になります。TPGAD1S09Hは、面実装アプリケーションやハイブリッド集積に使用できます。取り付け面に対して平行または垂直に発光させることができ、エポキシ樹脂封止によって低コストと大量生産が可能になります。


図6:TPGAD1S09Hパルスレーザーダイオードは、非常に高いピークパルスを発生し、取り付け面に平行または垂直に光を照射できます。(画像提供:Excelitas)

 ams OSRAMのSPL S1L90A_3 A01(図7)も、EPC9989インターポーザボードで使用できるレーザーダイオードの一例です。このシングルチャンネル908nmレーザーモジュールは、ピーク出力120Wで、1~100nsのパルスを供給できます。動作温度範囲は-40℃~+105℃、デューティサイクルは0.2%で、サイズは2.0×2.3×0.69mmとコンパクトなQFNパッケージです。


図7:SPL S1L90A_3 A01レーザーダイオードは、1~100nsのパルスを発生し、EPC9989インターポーザボードで使用できます。(画像提供:ams OSRAM)

 極めて狭いパルス幅を必要とするLiDARシステムの設計者は、Texas InstrumentsのLMG1025-Q1を利用することができます。これは1.25nsの出力パルス幅を持つシングルチャンネルのローサイドゲートドライバで、IEC60825-1クラス1の安全要件を満たす強力なLiDARシステムを実現します。その狭いパルス幅、高速スイッチング、300psのパルス歪みにより、長距離での正確なLiDAR ToF測定が可能になります。

 2.9nsの伝播遅延で制御ループの応答時間を改善し、2×2mm QFNパッケージで寄生インダクタンスを最小限に抑え、高周波LiDAR駆動回路の大電流、低リンギングスイッチングをサポートします。LMG1025-Q1EVMは、LMG1025-Q1用の評価モジュールで、一般的なレーザーダイオードに相当する抵抗性負荷や、抵抗性負荷による駆動パルス調整後のレーザーダイオードを搭載するための場所を備えています(図8)。


図8:LMG1025-Q1EVMデモボードには、初期セットアップ用の一般的なレーザーダイオードに相当する抵抗性負荷を搭載できます。(画像提供:Texas Instruments)

まとめ

 設計者は、IEC60825-1クラス1の安全要件を満たし、センチメートルレベルの解像度でリアルタイムのToF測定を提供する車載用LiDARシステムを開発するという課題に迫られています。上述したように、GaN FETをさまざまなレーザーダイオードと一緒に使用することで、高性能な車載用LiDARで必要とされるナノ秒パルス幅と高ピークパワーレベルを生成することができます。

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