デバイス

LEDレベルメータ専用IC LM3914 その1

◎LM3914

DC電圧などの信号の大きさを複数のLEDで表示する便利なLEDレベルメータ専用ICが市販されています。
表示方法は図1のようにバー表示、ドット表示などがあり、用途によって選択することができます。

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このようなLEDレベルメータの1つであるLM3914を紹介したいと思います。
このICのデータシートには色々な応用例が紹介されていて、それを実際に回路を組んで具体的な動作等について説明します。

マルツオンライン Dot/Bar Display Driver – LM3914 (Linear)【COM-12694】
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/577507/

以下、LM3914の簡単な仕様を記します。
型番はブレッドボード、ユニバーサル基板で実装可能なDIPパッケージです。
図1のバー表示とドット表示はモードピンをHまたはオープンとすることで選択します。
また、LEDの電流制限抵抗は不要で、電流値は外部抵抗で設定します。
詳細はデータシートを参照願います。

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◎コンパレータとは

LM3914の基本動作はコンパレータです。
コンパレータの基本動作を図2に示します。
回路シンボルはオペアンプと同様にマイナス入力端子、プラス入力端子、出力端子があります。
オペアンプをコンパレータ機能として用いることもでき、両電源動作も可能です。
ここでは動作原理を簡単に説明するために図2のように単電源動作として話を進めます。

コンパレータとは2つの入力信号の大小を比較するもので、結果をHまたはLで出力します。
図2のようにマイナス端子の入力信号をEm、プラス端子の入力信号をEpとすれば、図2 a ) のように Em>Epの場合、出力はLになります。
これが Ep>Emの関係になれば図2 b ) のように出力はHになります。

比較する信号は片方を固定値としてもよく、例えば、図3のように基準電圧Vrefを用いれば、入力Emがこの値を超えたかを検出することができます。
Em > Vref でコンパレータ出力を利用しLEDを点灯させれば目で検出結果が分かります。
図3ではEmをマイナス端子、Vrefをプラス端子に接続していますが、この逆の接続でもよく、都合の良いコンパレータ出力論理を選択すればよいです。

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◎LM3914のコンパレータ

例えば図4のように2個のコンパレータを用い、入力Emは共通とします。
基準電圧VrefをRa,Rbにより分割したものを各コンパレータに与えると、Em < Vb では各コンパレータ出力はHです。
次に、Emの値を徐々に上げ、Em > Vb でCOMP1の出力がLになり、さらにEm > Vref でCOMP2も出力がLになります。
2個のコンパレータで Em < Vb 、Vb < Em < Vref 、Em > Vref の状態を検出することができます。

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具体的に数値を入れたものを図5に示します。
Vb,VcはVrefを抵抗分割したものですから、計算結果は図のとおりで、1.1Vと2.2Vです。
LM3914は抵抗分割の数が10個で、これによりLEDは10ポイントです。
分割抵抗の値はすべて同じなので入力された基準電圧は10等分されます。
例えば、基準電圧が5Vの場合、分割は0.5Vステップです。
入力信号が5Vを超えれば、バーモードでLED全点灯、ドットモードでLED10のみが点灯します。
図6の一番下のLED1が0.5Vですから、このLEDが点灯しなければ入力は0.5V未満ということです。

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◎基準電圧の設定

図7にLM3914の基準電圧部を示します。
1.25Vの基準電圧が7ピンと8ピンに接続され、6ピンのRHIは基準電圧の入力端子です。
R1,R2を図7のように接続すると6ピンのRHIとGND間の基準電圧Voutは①式で表わされ、最大12Vまで設定することができます。
①式のVrefは内部の基準電圧ですが、ばらつきが1.2V~1.34Vなので、精度を求めたい場合、半固定抵抗を用いることをお勧めします。
IADJは内部基準電圧1.25Vのマイナス端子から8ピンへ流れ出す電流で、データシートによると75μA(typ)です。
Voutの精度が必要なければ、IADJをゼロとして計算しても良いです。
ILEDはLEDの駆動電流でR1と関係があり、②式で求めます。

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◎10ポイントLED バー/ドット切り替え基本回路

★バー/ドット切り替え

図8にLED1~LED10の10ポイントLEDのバー/ドット回路を示します。
LED1側が下位で、LED10が最上位です。
バー/ドット切り替えは9ピンをVccに接続するとバー表示、オープンでドット表示になります。

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★基準電圧と電源電圧の関係

LM3914の基準電圧Voutは1.2V~12Vの範囲で設定できますが、電源電圧は基準電圧Voutより1.8V以上高くする必要があります。
例えば図9 a ) のように基準電圧Voutが2.5Vの場合、電源はこれより1.8V以上高くすることが必要で4.3V以上になります。
また、図9 b ) のように基準電圧Voutが5Vであれば電源は6.8V以上必要でになり、9Vまたは12Vが適当な電源電圧です。

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★基準電圧VoutとLED駆動電流設定例

R1、R2は①、②式から次のような関係があり、それぞれの計算結果を以下に記します。

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Vrefを1.25Vとして計算しましたが、前述のようにこの値はバラツキます。
精度を求めたい場合、半固定ボリュームを用います。
ここではこの値を500Ωとすれば図8のように、R1 = R2 = 1kΩとなります。

◎ドットモードでフルスケール時にLEDが全点灯する回路

ドットモードでフルスケール時にLEDが全点灯する回路を図10に示します。
LED10が点灯しない入力信号レベルではLEDが1個のみ点灯するドットモードになっています。
LED10が点灯するフルスケールの信号が入力されると、ドットモードからバーモードに切り替わってLEDが全点灯します。

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入力信号がフルスケールに満たない状態では図11のようにLED10は消灯状態です。
LED10はR3でプルアップされていますから、10ピンは、ほぼVccのレベルです。
トランジスタQ1はPNPですからベース電流が流れませんのでQ1はOFFです。
これによりQ1はR5,D1,R6の回路と切り離された状態になり、Vcc→R5→D1→R6の経路で電流が流れます。

MODE(9ピン)がドットモードの電圧になるようにR5,R6の値を選べば、フルスケールに満たない入力信号ではドットモードです。

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LED10が点灯するフルスケール時では図12のように10ピンがLEDの順電圧分(例えば2V等)電圧降下します。
これによりPNPトランジスタのQ1がONし、D1のカソードにVcc(エミッタ)→コレクタの経路で電圧が印加されます。
この電圧はD1から見ると逆バイアスになりますので、D1がOFFします。
D1がOFFするとD1およびR6の回路は切り離されので、MODE(9ピン)は、ほぼVccのレベル(電位)になりバーモードに切り替わってLEDが全点灯します。

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図13にドットおよびLED全点灯時の各部の電圧実測値を示します。
かっこ内の数値が全点灯時です。
例えば10ピンのLED10は消灯時に電圧が4.99Vですが、点灯時にLED順電圧分低くなり、この例では2.99Vです。
(注意:この値は用いるLEDおよび駆動電流で異なる)これによりQ1がONし、さらにD1に対して逆バイアスされます。
この時、MODEピンの電位はVccになってバーモードになります。

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◎フルスケール時に全LEDが点滅する回路

図14にフルスケール時に全LEDが点滅する回路を示します。

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モードピンがVccに接続されていますので、図15のようにLED9まではバーモードです。
ここでLED10が点灯するフルスケールの信号が入力されると全LEDが点滅し、フルスケール状態にあるかぎり、点滅を持続します。
また、フルスケールに満たない信号入力に戻れば表示もバーモードに戻ります。

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点滅の速さは図14の定数の場合、数Hzで図16に10ピン(LED10)の実測値を示します。(参考値

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◎表示電圧範囲を拡大する回路

コンパレータの基準電圧は6ピンのRHI端子と4ピンのRLO端子間の電圧です。
今までの応用例ではRLO端子をGNDに接続していましたので基準電圧はVoutです。
入力信号をこのVoutで10等分するわけですが、Voutを5Vとすれば図17のように0.5Vステップです。

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図18は内部接続の詳細です。
4ピンのRLO端子は抵抗分割部の最後ですからこれをGNDに接続すればコンパレータへの基準電圧は6ピンのRHI端子とGND間の電圧であるVoutです。

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これに対し、RLOをGND接続ではなく図19のように接続すると0Vからではない領域を基準電圧にすることができます。
例えば、入力信号0V~5Vのうち4.8V~5Vを10等分してLEDを点灯させることにより細かく電圧値を知ることができ、この例では0.12Vステップになります。

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図20はこの時の内部接続の詳細です。
6ピンと8ピン間の電圧をVd、8ピンとGND間の電圧をV2とすれば6ピンとGND間の電圧は Vd + V2 です。
ただし、抵抗分割最後の部分である4ピンのRLOを8ピンに接続していますので、コンパレータの基準にはV2が加算されることになります。
例えばVdを1.2Vとすれば0.12Vステップで分割されます。
ここで、V2を4.8VとすればLED1は 4.8V + 0.12Vの値ですから、4.92Vを超えると点灯します。
図21に接続方法による基準電圧の違いを示します。

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図22に7Vのツェナーダイオード電圧をチェックする応用例を示します。

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R1,R2は③、④式で求め、調整用にVR1,VR2を追加します。
調整手順は6-4ピン間の電圧Vdが1.2VとなるようにVR1を調整します。
次に、ツェナーダイオードの替わりに正確なDC6.94Vを5ピンのSIG端子に加えてLED5が点灯するようにVR2を調整します。

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◎実験について

回路は簡単ですからブレッドボードで実験されることをお勧めします。
写真3に便利な部品例を示します。
一番左は半固定抵抗で、これを用いて入力信号を作ります。
つまみ付なので信号レベルの可変が楽です。

LEDはφ3などの丸型でも良いのですが、10個並べると少しきつくなります。
写真3は長方形のもので、この形状のほうがブレッドボードに並べやすくなります。
色も各種揃えておくと良いです。
写真4はブレッドボードでの実装風景で、ジャンプワイヤは各種加工済の単線を用いました。

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図23に簡単な入力信号の作り方を示します。
写真3の半固定抵抗(VR3)を用いて入力の替わりにします。
Raはなくても良いのですが、5ピンのSIG端子への過大入力制限用です。
用いる電源のノイズが大きい場合LED点灯の変わり目で複数のLEDがちらつく場合があります。
コンデンサCdはこれの緩和用です。

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