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FR-50B用VFOの製作 その2【設計編】
今回は、具体的な設計を行います。
開発ステップとしては以下の段取りです。
①ユニバーサル基板を用いた実験基板による基本回路の決定とソフトウェアの開発。
②プリント基板の製作とケース組み込み。
このレポートでは①の段階です。
◎DDS-ICの選択
今回、用いたDDS-ICはANALOG DEVICESのAD9834です。
DDSを構成する波形メモリ、DAコンバータ等を内蔵したワンチップDDSで、必要な外付け部品は抵抗、コンデンサのみです。
主な特長を以下に記します。
50MHzリファレンス・クロック、0~25MHz出力
3線式シリアル・インターフェース
20ピンTSSOPパッケージ
これ以外に位相変調、周波数変調などの機能があります。
VFOとして用いた場合のブロック図を図7に示します。
50MHzのクロックを用いた場合、0~25MHzまでを発生させることが出来、周波数設定は3線式シリアル・インターフェースでマイコン等で制御します。
周波数設定(レジスタ)は28ビットで行い、50MHzクロックでは約0.2Hzの分解能になります。
AD9834からのサイン波出力はDAコンバータなのでLPF(ローパスフィルタ)が必要です。
制御の詳細はAD9834のデータシートを参照願います。
また、「AD9833/AD9834 DDSアプリケーション・ガイド」も参考にされると良いです。
DDSの動作原理等が解説されています。
パッケージは20ピンのTSSOPです。
このサイズであればはんだ付けも難しくないと思います。
◎マイコンの選択と周辺回路
★マイコンの選択
PIC16F886を用いました。
主な制御は以下のとおりです。
②LCD制御
③ロータリーエンコーダからのUP/DOWN検出
④周波数ステップ(トグルスイッチ)の検出
図8にPIC16F886を用いた周辺回路を示します。
なお、マイコンは内蔵クロック8MHzで動作しています。
★ロータリーエンコーダ部
周波数の設定は図9のようにロータリーエンコーダにより行います。
この場合、右回転で「周波数UP」、左回転で「周波数DOWN」です。
図10にインクリメンタルタイプのロータリーエンコーダ出力波形を示します。
ロータリーエンコーダからの出力は「A相」、「B相」の2つで、右回転、左回転で位相が異なります。
この位相差をソフトウェアにて検出し、左右を判断します。
ロータリーエンコーダからのパルス信号が入る毎に左右を判断し、UP/DOWNステップ数はチューニングステップの選択ポジションによります。
なお、電源ON直後の周波数初期設定は「7.05000MHz」となるようにプログラミングしています。
図11はロータリーエンコーダからの信号受け回路です。
ロータリーエンコーダは接点が「機械式」、「光学式」などがあります。
機械式は一般的にチャタリングがあるので、チャタリング防止回路を設けておきます。
シュミットトリガインバータICの74HC14と各抵抗、コンデンサにより波形整形を行うことによりチャタリングを防止します。
図12に各方式への対応を示します。
機械式を用いた場合、実際に用いるロータリーエンコーダで各定数を決める必要があります。
実験段階では図12の両方の方式を試してみました。
どちらも良好に動作しましたが、どちらにすべきか迷っています。
ダイアルを回した時、用いるロータリーエンコーダのクリック有/無によって、かなり操作性(感触)が異なります。
また、一般的に光学式のほうが高価です。
とりあえず、プリント基板では両方に対応しておくことにします。
★チューニングステップの選択
チューニングステップは10Hz,100Hz,1KHzの3段階切り替えとし、用いるスイッチは「3ポジショントグルスイッチ(中央OFF)」です。
スイッチを図13のように接続すれば、ポジションによりスイッチ接点の論理(H/L)が変化し、これをマイコンのポート(RA7,RA6)で読み込みます。
左のポジションではスイッチ接点の「2-3」がONになり、RA7 = H、 RA6 = L、中央では接点がすべてOFFになりますから、RA7 = H,RA6 = H になります。
また、右では「2-1」がONになりますので、RA7 = H,RA6 = L です。
これによりスイッチポジションを検出することが出来、プログラムでは常にスイッチポジションを監視しています。
実際に切り替えて操作してみると10Hzは不要な気がしました。
50Hzでも良いような感じです。
また、用いるロータリーエンコーダの1回転あたりのパルス数にもよると思いますが思い切って10KHzステップがあっても良い気がします。
◎AD9834周辺回路
★周辺回路
図14に周辺回路を示します。外付け部品が少ないです。
AD9834には周波数設定、位相設定の内蔵レジスタが2個あり、また、外部リセットピンなどがあります。
今回はレジスタは1個しか用いていなく、また、リセットも含めて内部のコントロールレジスタを操作する方法なので、回路はすっきりしています。
部品定数はデータシートどおりで、AD9834のデータシートを参照願います。
★出力レベルが不足している
図15にAD9834の出力レベルの計算を示します。
1ピンに接続するR1(RSET)の値により、DACの出力電流フルスケール値が決定され、①式により約3.176mAです。
出力はこれにR3をかけたものになり、約0.635Vp-pとなり、実効値では約0.224Vrmsになります。
R1とR3の値は任意です。
例えば、R3の値を大きくすれば出力電圧も大きくなります。
ただし、許容される最大出力は0.8Vp-pなので、データシートどおりの値としています。
(R3 = 240Ωでも良さそうな気がする
DAC出力はLPFを通す必要があるので、このロス分を考えると、0.224Vrmsよりさらに小さくなることが予想されます。
実験基板では最初、LPF部はLCで組んでいました。
この構成でFR-50Bに接続すると、やはり、感度が低下します。
ちなみに、SG(信号発生器)をVFOの替わりに接続し、出力レベルの値により感度が変化します。
FR-50BのVFO出力電圧をオシロスコープで観測した時、約1Vp-pあり、これが正常な値と思われます。
★出力AMPを設ける
AD9834の出力に「LPF+出力AMP」が必要なことが分かったわけですが、この構成について少し迷いました。
なるべく部品点数を減らす目的で、今回はFR-50B専用VFOとし、図16のような構成としました。
2SK192AにてAD9834からの信号を受けて、ドレイン側に同調回路を設ける方式です。
同調周波数は約12MHzで、適当なコイルが無かったので、コイルを自作(手巻)しています。
これにより、FR-50Bに接続した状態で、電圧は1Vp-pを少し超えた位になっています。
図15ではDAC出力波形をきれいな正弦波で表現しましたが、クロック50MHz入力の場合、出力12MHzではかなりくずれた波形です。
波形1にユニバーサル基板で組んだ実験基板での波形と、図17にその時の観測ポイントを示します。
波形1のように同調回路を設けることにより、きれいな波形となっています。
◎電源部
電源は図18のように外部DC電源を用い、内部の3端子レギュレータで5Vに変換したものを用います。
したがって、すべての回路は5Vで動作します。
外部DC電源から直接5Vを供給しても良いのですが、システム(装置)間で電源電圧が異なると、トラブルの元になります。
例えば、5V動作の装置に「12V動作と思い込んで12Vを供給してしまう」恐れがあります。
そのようなミスを防止する目的で、無線機で良く用いる供給電圧としています。
FR-50B用VFOの製作 その3【製作編】に続きます。