テキスト ボックス: ACアダプタ
◎はじめに
一口に「ACアダプタ」と言っても、色々な方式があり、選択に迷うところです。
そこで、各種ACアダプタの動作原理、特徴について簡単に説明します。
一般的にACアダプタは以下のように3通りに分けられます。
・非安定化ACアダプタ
簡易的な方式
・安定化ACアダプタ
非安定化方式の出力を安定化したもの
・スイッチング方式ACアダプタ
◎非安定化ACアダプタ
図1に「非安定化ACアダプタ」の構成例を示します。
このタイプは従来からある方式で、以下のブロックで構成されています。
@トランス
AC100Vを必要とするAC電圧に変換
A整流回路
AC→DCに変換
図1の場合は整流素子にダイオードを用いた「ブリッジ」回路
B平滑回路
整流のみでは完全なDCになっていません。(脈流)
これをコンデンサを用いてDCに変換
注意:b ) ,c ) は同じポイントですが、b ) はコンデンサが無い場合の波形
  
このように非安定化タイプは平滑回路によりDCに変換する簡単な構造ですから
図2のように負荷変動または入力のACが変動すると、それに応じてDC出力電圧が
変動(変化)してしまいます。
グラフ1に「出力9V/0.3A」の出力特性例を示します。
負荷電流を0〜300mAまで変化した時の出力電圧を測定したもので、入力のAC電圧も
90V,100V,110Vの3とおりでデータを取っています。
負荷電流(mA) AC90V AC100V AC110V
0 12.6 12.84 14.04
50 9.88 11.12 12.31
100 9.02 10.28 11.4
150 8.35 9.6 10.65
200 7.73 8.99 10.02
250 7.2 8.42 9.42
300 6.7 7.9 8.84
この試料のACアダプタは「AC100V、出力200mA時に定格電圧の9V」になるようです。
例えば、このACアダプタを用いて、消費電流が50mAの軽い負荷(機器)に用いる場合、
DC電圧はAC100V入力時に11.12Vです。
つまり、図3のように動作電圧9V機器に11.12Vを電源供給(接続)することになります。
このように非安定化タイプは負荷により出力電圧が変化しますので、機器が必要とする
消費電流とACアダプタの能力(電流容量)に注意する必要があります。
図3の例(機器の消費電流が50mA)の場合、用いるACアダプタは電流容量の少ないもの
が適切で「電流容量は、大は小を兼ねることが出来ない」ということです。
○なぜ、出力電圧が変動するか
原理的にAC100Vをトランスを用いて「変圧」していますので、AC100Vが変動すれば
それに応じて整流回路に加わるAC電圧も変動(変化)し、平滑回路での電圧値も変動
負荷により出力電圧が変動する理由は図4のとおりです。
します。脈流をDCに変換するためにコンデンサを用いて「充電、放電」を繰り返します。
この時、負荷電流(放電)の大きさにより@、A、Bのように波(リップル)の大きさが
異なります。また、トランス部の損失(電圧降下)、ダイオードの順電圧の変動により負荷
の値が異なると、DC出力電圧が変動します。
◎安定化ACアダプタ
安定化タイプは図5のように平滑回路の後に「電圧安定化回路」を追加したものです。 
DC出力電圧は安定化回路の入力電圧(平滑回路出力)より低い値となるようにして
いる為、AC100Vが変動しても影響を受けないようにしています。
また、負荷変動に対しては、安定化回路の為に影響をあまり受けません。
グラフ2に安定化タイプ(定格 9.5V/1A)の実測特性例を示します。
このデータはAC100V入力時で、負荷変動に対して良好であることが分かります。
なお、AC90V、AC110V時でもAC100V時に対して特性差がありませんでしたので、
データは省略します。
また、非安定化タイプは原理的に「リップル」が避けられませんが、安定化タイプは
リップルが小さくなります。
負荷電流(A) 出力電圧(V)
0 9.61
0.2 9.56
0.4 9.51
0.6 9.46
0.8 9.41
1 9.29
◎スイッチング方式ACアダプタ
スイッチング方式は非安定化、安定化タイプと原理的に異なり、構成例を図6に示します。
AC100Vを整流、平滑したDCを「スイッチング回路」により断続(ON/OFF)します。
この出力を再び整流、平滑するとON/OFFに応じた平均値(DC)になります。
出力変動に対しては、それを検出し、スイッチング制御(電圧制御)を行って、常に一定
となるように「フィードバック」(自動制御)を行います。
この方式は大きなトランスを用いる必要が無く、電源装置が小型になり、AC→DCへの
変換効率も良いというのが特徴の1つです。
なお、図6におけるトランスは数10KHz以上の高い周波数用なので、50Hz/60Hz用と比べて
小型、軽量です。
グラフ3にスイッチング方式の出力特性例を示します。(Linkman STD-12010U2)
この機種は12V/1Aの仕様ですが、負荷電流1.5Aまでは出力電圧が安定し、1.55A以上
で「保護回路」が働いています。
負荷電流(A) 出力電圧(V)
0 12.148
0.1 12.127
0.2 12.107
0.3 12.088
0.4 12.068
0.5 12.039
0.6 12.026
0.7 12.003
0.8 11.986
0.9 11.964
1 11.943
1.2 11.904
1.4 11.86
1.5 11.843
1.55 0.8
Linkman STD-12010U2
スイッチング方式は原理的に高速(数10KHz〜数100KHz)でON/OFFしますので、
これによる「スイッチングノイズ」が発生します。
波形1にスイッチングノイズの波形観測例を示します。
機器によっては、例えば「AMラジオ」などは、このノイズの影響を受ける場合があります。
つまり、スイッチング周波数が数10KHz〜数100KHzですから、この周波数成分と数10倍
までの周波数成分により影響を受ける場合があります。
オーディオ機器などは数10KHz以下の可聴周波数ですから、スイッチング方式でも
影響はあまりありません。
なお、スイッチングノイズの大きさは電源の機種により異なります。
◎まとめ
○非安定化ACアダプタ
簡易的な方式
入出力の変動に弱い
用いる電源と機器の定格に注意
○安定化ACアダプタ
入出力の変動に強い(安定)
リップルは少ない
やや大型
○スイッチング方式ACアダプタ
小型、軽量
効率が良い(熱を持たない)
入出力の変動に強い(安定)
スイッチングノイズが発生する
以上のように、それぞれ特徴がありますので用いる機器に適した電源を選択することが
重要です。