マルツ パーツまめ知識
アナログスイッチIC 基礎編・パーツリストも充実
◎機械的スイッチと半導体スイッチ
例えば図1のようにA-Y間をON/OFFするスイッチとして以下のものがあります。
@機械的スイッチ
トグルスイッチ
押しボタンスイッチ
スライドスイッチ等
Aリレー
・機械式リレー
・フォトMOSリレー
B半導体スイッチ
・ダイオード
・接合型FET
・アナログスイッチIC
・その他
ON/OFF制御は@の機械的スイッチの場合、
基本的に人間の手で操作します。
A、BのON/OFF制御は電子的に行うことが
@との大きな違いで、ON/OFFの切換スピード
が速いことも特徴の1つです。
図2は接合型FETを用いた
半導体スイッチの回路例です。
機械的スイッチ、リレーと同様にアナログ
信号をON/OFFできますが、ON/OFF制御
回路が必要です。
半導体スイッチの中で取扱いが容易なよう
にIC化されたものを「アナログスイッチIC」と
呼びます。
◎アナログスイッチICの使い方
★4000Bシリーズのアナログスイッチ
アナログスイッチICは各半導体メーカーから、さまざまな機能、特性のものがあり、デジタル
ICの「4000Bシリーズ」の中から定番的なもので解説します。
図3にSPSTの「4066B」の内部接続と論理を示します。
▼【TC4066BP】http://www.marutsu.co.jp/pc/i/18967/
A,Bがアナログ信号端子で双方向です。(注意:双方向なのでI/OまたはO/Iと表現)
CONTが制御信号で、「Hレベル」でスイッチON、「L」レベルでスイッチOFFになり、4066Bはこの
回路が4個入っています。
SPSTは図3のようにA,B間をON/OFFするもので「単極単投」とも言います。
SはSingleの略、「単」、PはPoleの略で回路数を指します。(極)
TはThrowの略で接点数を指します。(投)
つまりSPで単極、STで単投となります。
▼「NC」と「NO」
スイッチ用語の中で「NC」、「NO」があります。
NCは図4 a ) のように「ノーマリークローズ」の略で、スイッチ操作しない時にONで、操作した時に
OFFになります。
NOは図4 b ) のようにスイッチ操作しない時にOFF、操作した時にONします。
4066Bは図3の論理から「NOのSPST」です。
★電源供給
4066Bの場合、電源端子は図5のようにVDDとVSSの2つがあり、一般的には単電源で動作させます。
VDDは電源のプラスVSSはGND(0V)に接続し、4066Bでの推奨動作範囲は3V〜18Vです。
アナログ信号の扱える振幅レベルはVDD〜VSSの間で、
制御信号は「VDDレベルでH」、「VSSレベルでL」になり、同じ電源であればデジタルICで直接制御出来ます。
図6はプラス、マイナスの両電源動作の場合で、アナログ信号はプラスとマイナスを扱うことが出来ます
が、制御信号は
プラスのVDDレベルで「H」
マイナスのVSSレベルで「L」
となるのでレベル変換回路が必要になります。
以上のように4066Bは単電源動作が基本になりますが、アナログ信号は両電源、制御信号は単電源
で制御出来るアナログスイッチICもあります。
図7にレベル変換例を示します。
★ON抵抗
機械的スイッチではON時の抵抗は数10mΩ程度ですが、アナログスイッチの場合、数Ω〜数100Ω
になります。このスイッチON時の抵抗を「ON抵抗」と言います。(図8 a )
スイッチOFFでは図8 b ) のように端子間は非常に高い抵抗値(OFF抵抗)になり、これによりスイッチ
OFFと見なせ、これを「OFF抵抗」と言います。
4066Bは各半導体メーカーから製造されていますが、東芝の「TC4066BP(NF)」でのON抵抗と
OFF抵抗を表1に示します。
表1 TC4066BP
ON抵抗   条件  
250Ω(typ) VDD-VSS=5V
110Ω(typ) VDD-VSS=10V
70Ω(typ)   VDD-VSS=15V
   
OFF抵抗    
>109Ω      
ON抵抗は電源電圧が高いほど低くなります。
◎スイッチの種類
★SPST
表2に主なSPSTのアナログスイッチICを示します。
項目の中の「ONロジック」はスイッチONの論理で「H」は「NO」、「L」は「NC」を意味します
例えば、MAX4516はロジックレベル「L」でスイッチOFF、「H」でスイッチONです。
MAX4680は「L」でスイッチON、「H」でスイッチOFFです。
電源電圧の欄で「±XX〜±XX」の表現はアナログが両電源動作、制御は単電源動作が可能な意味で、
詳細は各メーカーのデータシートを参照願います。
なお「回路数」はICのパッケージに入っているSPSTの数です。
表2  SPST
型番   メーカー 電源電圧(V) 回路数 ON抵抗 on/off(nS) ONロジック パッケージ
MAX4516CPA Maxim ±1〜±6   1 10Ω(typ) 40/30 H DIP8
MAX4514CSA+ Maxim   2〜12 1 10Ω(typ) 30/20 H 8 SO
MAX323CPA Maxim   2.7〜16 2 33Ω(typ) 85/25 H DIP8
MAX323CSA Maxim   2.7〜16 2 33Ω(typ) 85/25 H SOP8
MAX4641EUA+ Maxim   1.8〜5.5 2 2.5Ω(typ) 9/5 H 8μMAX
MAX4590CPE Maxim ±4.5〜±20 4.5〜36 2 0.9Ω(typ) 160/210 H DIP16
MAX4680EAE Maxim ±4.5〜±20 4.5〜36 2 0.9Ω(typ) 160/210 L 16 SSOP
MAX4542EUA Maxim   2.7〜12 2 30Ω(typ) 35/25 L 8μMAX
TC74HC4066AP(F) 東芝   2〜12 4 170Ω(max) 7 H DIP14
TC4066BP(NF) 東芝   3〜18 4 290Ω(max) 5 H DIP14
TC74HC4066AF(F) 東芝   2〜12 4 170Ω(max) 7 H SOP14
DG202CJ   Maxim ±4.5〜±18   4 115Ω(typ) 460/450 H DIP16
DG202CSE Maxim ±4.5〜±18   4 115Ω(typ) 460/450 H SOP16
MAX313CPE Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 4 6.5Ω(typ) 70/65 H DIP16
MAX313CSE+ Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 4 6.5Ω(typ) 70/65 H 16NarrowSO
MAX362CSE+ Maxim ±4.5〜±20 10〜30 4 50Ω(typ) 150/90 H 16NarrowSO
MAX4066ACEE+ Maxim   2〜16 4 16Ω(typ) 25/15 H 16 QSOP
MAX4066CSD+ Maxim   2〜16 4 16Ω(typ) 25/15 H 14NarrowSO
MAX351EPE Maxim ±4.5〜±20 10〜30 4 17Ω(typ) 110/100 L DIP16
MAX361CSE Maxim ±4.5〜±20 10〜30 4 50Ω(typ) 150/90 L 16NarrowSO
MAX4537CSE Maxim ±2〜±6 2〜12 4 55Ω(typ) 35/15 L 16NarrowSO
MAX391ESE Maxim ±3〜±8 3〜15 4 20Ω(typ) 65/35 L SOP16
DG201ACSE Maxim ±4.5〜±18   4 115Ω(typ) 460/450 L SOP16
★SPDT
SPDTは図9のようにA,Bの信号を切り替える機能で、表3に主なICを示します。
表3  SPDTその1
型番   メーカー 電源電圧(V) 回路数 ON抵抗 on/off(nS) パッケージ
MAX319CPA Maxim ±4.5〜±20 10〜30 1 20Ω(typ) 100/60 DIP8
MAX319CSA+ Maxim ±4.5〜±20 10〜30 1 20Ω(typ) 100/60 8 SO
MAX333ACPP+ Maxim ±4.5〜±20 10〜30 4 20Ω(typ) 145/175 DIP20
図10はノーマリークローズ(NC)とノーマリーオープン(NO)の組み合わせですが、
図11のようにBとDを接続すれば図9と同じSPDTになります。
図10のタイプを表4に示します。
表4  SPDTその2
型番   メーカー 電源電圧   回路数 ON抵抗 on/off(nS) パッケージ
DG403CJ   Maxim ±4.5〜±20 10〜30 2 20Ω(typ) 100/60 DIP16
MAX303CPE Maxim ±4.5〜±20 10〜30 2 20Ω(typ) 100/60 DIP16
MAX303CSE+ Maxim ±4.5〜±20 10〜30 2 20Ω(typ) 100/60 16NarrowSO
MAX314CSE Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 2 6.5Ω(typ) 70/65 16NarrowSO
MAX383EPE Maxim ±3〜±8 3〜15 2 20Ω(typ) 100/60 DIP16
MAX383CSE Maxim ±3〜±8 3〜15 2 20Ω(typ) 100/60 16NarrowSO
★DPST
SPSTを2個連動にした機能です。
表5  DPST
型番   メーカー 電源電圧(V)   回路数 ON抵抗 on/off(nS) ONロジック パッケージ
MAX385EPE Maxim ±3〜±8 3〜15 2 20Ω(typ) 100/60 H DIP16
DPSTは表5のような専用のICがありますが、図12のようにSPSTを2個用い、制御信号を共通にすれば
DPST機能になります。
マルチプレクサ/デマルチプレクサ
図13のように複数の入力を選択するものを「マルチプレクサ(Multiplexer)」と言い、
「データセレクタ」とも呼ばれます。
図13は入力Aを選択した例で信号の向きはA→COMです。
マルチプレクサに対し図14のように複数の出力先を選択するスイッチ(機能)を「デマルチプレクサ
(Demultiplexer)」と言います。
図14では出力先をAAに選択した例で信号の向きはCOM→Aです。
例えば図15のように
マルチプレクサで入力信号を選択
デマルチプレクサで出力先を選択
以上のようにマルチプレクサとデマルチプレクサの違いは信号の向きですが、アナログスイッチの場合
図16のように信号方向は「A⇔Y」、「B⇔Y」などのように双方向です。
双方向ということは図17のように「Aを入力とすればYへのマルチプレクサ」となり、「Yを入力とすれば
A,Bへのデマルチプレクサ」になります。
表6に主なマルチプレクサ/デマルチプレクサを示します。
構成欄の「2ch×3」は図17の回路が独立して3個入っていることを意味し、詳細は各メーカーの
データシートを参照願います。
表6  Multiplexer/Demultiplexer
型番   メーカー 電源電圧(V) 構成 ON抵抗 パッケージ
TC74HC4053AP(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 2ch×3 180Ω(max) DIP16
TC74HC4053AF(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 2ch×3 180Ω(max) SOP16
TC4052BP(NF) 東芝 VDD-VSS(3〜18) VDD-VEE(3〜18) 2ch×3 240Ω(max) DIP16
TC74HC4052AP(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 4ch×2 180Ω(max) DIP16
TC74HC4052AF(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 4ch×2 180Ω(max) SOP16
DG409CY+ Maxim ±5〜±20 5〜30 4ch×2 60Ω(typ) 16NarrowSO
DG509ACJ+ Maxim ±4.5〜±18   4ch×2 170Ω(typ) DIP16
MAX339CPE Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 4ch×2 220Ω(typ) DIP16
MAX339CSE+ Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 4ch×2 220Ω(typ) 16NarrowSO
MAX4052AESE+ Maxim ±2.7〜±8 2〜16 4ch×2 60Ω(typ) 16NarrowSO
TC4051BP(NF) 東芝 VDD-VSS(3〜18) VDD-VEE(3〜18) 8ch 240Ω(max) DIP16
TC74HC4051AP(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 8ch 180Ω(max) DIP16
TC74HC4051AF(F) 東芝 Vcc(2-6) VEE(-6-0) Vcc-VEE(2-12) 8ch 180Ω(max) SOP16
ADG508AKNZ アナデバ ±10.8〜±16.5 10.8〜16.5 8ch 280Ω(typ) DIP16
DG508ACJ Maxim ±4.5〜±18   8ch 170Ω(typ) DIP16
MAX308CPE Maxim ±5〜±20 5〜30 8ch 60Ω(typ) DIP16
MAX338CPE+ Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 8ch 220Ω(typ) DIP16
MAX4051AESE+ Maxim ±2.7〜±8 2〜16 8ch 60Ω(typ) 16NarrowSO
MAX307CWI Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 8ch×2 60Ω(typ) 28WideSO
MAX397CPI Maxim ±2.7〜±8 2.7V〜16V 16ch 60Ω(typ) DIP28
MAX306CWI Maxim ±4.5〜±20 4.5〜30 16ch 60Ω(typ) 28WideSO
図18に8チャンネルのマルチプレクサ「TC4051BP」の内部接続と論理を示します。
0〜7の8つの入力を選択しCOMに接続する機能です。
0〜7の選択は制御信号A、B、C、INHで行い、INH = L 時、A,B,Cの組み合わせで決まります。
表7 4051B 真理値表
C B A COM
L L L 0
L L H 1
L H L 2
L H H 3
H L L 4
H L H 5
H H L 6
H H H 7
例えば図19、表8のように 表8
C B A COM
A = H L L L 0
B = H L L H 1
C = L L H L 2
INH = L L H H 3
H L L 4
とすれば、3が選択され、「3-COM間」が導通します。 H L H 5
H H L 6
H H H 7
(電源供給)
4051Bの場合アナログ系とデジタル系の電源は分離されています。(図20)
VDDとVEEがアナログ
VDDとVSSがデジタル
アナログ信号はVDD〜VEEの間の振幅レベルを扱うことになります。
デジタル(制御信号)はVDDとVSSです。
例えば図21 a ) は「単電源」で構成した例です。
VSSをVEEに接続し、これを電源の0V(GND)とします。
アナログはVDD〜VEE(0V)の間を扱いデジタルは0Vで「L」、VDDレベルで「H」です。
図21 b ) はアナログ電源にプラスマイナスの「両電源」を用いた例で、
これによりアナログはVDD(プラス)〜VEE(マイナス)の間を扱うことが出来ます。
なお、4051Bでの推奨動作条件は以下のとおりです。
VDD〜VEE  最大18V、最小3V
VDD〜VSS  最大18V、最小3V