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レールツーレール・オペアンプ LMC6482を活用した集音装置の設計 その2

目 次

前回は周波数特性を変える前の準備としてオペアンプ自身の周波数特性を検討しました。
今回はこれに部品追加し、周波数特性を変えるシミュレーションを行います。

フィルタによる周波数選択

フィルタは「周波数に対して、一定でない特性をもたせる」ことが出来ます。図17 a ) のように抵抗のみの組み合わせでは周波数特性に変化がありませんが、b ) のように抵抗とコンデンサを組み合わせることにより周波数特性に変化が起こります。

抵抗は図18のように周波数に関係なく、インピーダンス(抵抗)は一定です。したがって、図17 a ) のように抵抗のみの場合、出力電圧に変化は起こりません。これに対し、コンデンサのインピーダンス(リアクタンス)は①式のように周波数が高くなるほど小さくなります。

これは、図19 a ) のようにコンデンサ部のインピーダンスをZで表現すると可変ボリュームになり、出力VoutはR1とZの分割比で決まります。


周波数が低い領域で、R1 ≪ Z の関係となるように定数を設定すれば、Zは無い状態と見なせるので出力Voutは、ほぼ、Vinの値です。


周波数が高くなり、コンデンサのインピーダンスが小さくなると、今度はVoutが下がっていきます。

このように、抵抗とコンデンサを組み合わせると周波数特性が変化し、図19の特性は高い周波数成分が減衰する「ローパスフィルタ(LPF)」です。
参考として図20に周波数特性により分類したフィルターの種類を示します。

BPFおよびBEFなどはオーディオ(音楽)に用いると面白い音になると思います。

LPFとHPFのシミュレーション

HPHはRとCの位置がLPFの逆になります。
図21にそれぞれの特性とカットオフ周波数fcの計算式を示します。

図22の定数の場合、カットオフ周波数fcは約1.59KHzになり、データ2にシミュレーション結果を示します。
Label netはフィルター出力を、それぞれ、LPF、HPFとしています。
「Add Traces to Plot」の「Expression(s) to add」で以下の文字を入力してください。

V(LPF)/V(VIN)
V(LPF)/V(VIN)

赤がLPF、青がHPFの特性で、同じカットオフ周波数に設定しましたので、特性が左右逆になっていることが分かります。
カーソルにて特性の平坦の部分が0dBであることが分かり、-3dBのポイントが約1.59KHzになっていることを確認してください。

集音装置の周波数選択部

図23に周波数特性に影響する部分を示します。C8とRLは基本的なHPFの形になっています。
それ以外の部分については直観的にフィルターとしての形が分かりにくいですが、結果的に以下の働きをします。

(C4,R5の組み合わせ) LPF
(C6,R6の組み合わせ) HPF
(C5,VR1の組み合わせ) LPF
(C7,R8の組み合わせ) HPF
(C8,RLの組み合わせ) HPF

これ以外にC2とU1部の入力インピーダンスの組み合わせでHPFを形成しますが、
このシミュレーションでは省略します。

★コンデンサC6の役目

両電源用のオペアンプを単電源で動作させるために、バイアスを印加しています。図24のようにR3,R4によりVCCを抵抗分割したものをオペアンプのプラス端子に加え、これがバイアスになります。
図24では R3 = R4 = 100K ですから、オペアンプのプラス端子には4.5Vの直流電圧が印加されます。
ここで、C6が無いとR6の下側はGND接続になりますから、通常の非反転アンプの形になり、プラス端子に印加された直流電圧(バイアス)をそのまま増幅し、オペアンプ出力はVCCのレベル付近まで振れてしまいます。

このままでは入力される交流信号を増幅することが出来ないので、解決方法としてコンデンサC6を用います。
C6により、直流入力(バイアス)に対する等価回路を図25に示します。

a ) コンデンサは直流を通さない

b ) R6の下側はオープン : C6は直流を通しませんので、直流から見るとC6は無い状態です。したがって、R6の下側はオープン状態。

c ) R6は無い状態 : R6の下側はオープンですから、R6は機能していないのでR6を削除。

d ) 結局、直流入力に対しては1倍のアンプ : R5は抵抗ですが、オペアンプ出力とマイナス端子は、ほぼ、同電位なので増幅には関係していないことになります。つまり、抵抗の働きをしていないので、線で結ぶ。これにより、この形は1倍のアンプ。

以上のように、直流入力(バイアス)対しては1倍のアンプとなり、オペアンプ出力が飽和することはなくなります。

今度は交流信号に対する等価回路を図26に示します。

C6のインピーダンス(リアクタンス)が十分小さくなるように定数を選べば、R6の下側はGND接続と見なされますから、通常の非反転アンプとして動作します。

以上のようにコンデンサC6の役目はバイアス(直流)に対しては出力が飽和しないように1倍のアンプとして働き、交流信号に対しては通常のゲインを持った非反転アンプとして動作します。

★C6,R6によるフィルター効果

図26ではC6のインピーダンスが十分小さい(例えば、ゼロ)条件としましたが、この値が無視できない場合、どうなるでしょうか。
図27のようにC6とR6は直列接続ですから、この合成インピーダンス値はR5との組み合わせで③式のように増幅度に関係してきます。

例えば、C6のリアクタンスが小さい高い周波数領域ではZ6の値は、ほぼ、R6になります。
ところが、低い周波数領域ではリアクタンスが大きくなり、Z6の値も大きくなりますので、増幅度は小さくなります。
また、リアクタンスは周波数が低いほど大きくなりますので、結局、HPFの働きです。

この場合のカットオフ周波数はR6とR5の関係により少し複雑になります。 R6≪R5の関係であれば、④式で計算できます。
ただし、これは目安の式なので、正確にはシミュレーションで確認することをお勧めします。


図9にシミュレーション回路、データ3にシミュレーション結果を示します。
④式による計算結果は33.8Hzとなり、シミュレーション結果と、ほぼ、合っています。

 

★C4,R5によるフィルター効果

この場合も前記図27と同様にインピーダンスで表現すると図30になります。今度はC4とR5は並列接続です。

⑤式に、インピーダンスを用いた計算式を示しますが、LPFを用いる周波数帯域は一般的に高い周波数領域です。
したがって、正確にはオープンループゲインを考慮しなければなりません。


少し複雑になりますので、ここでの説明はオープンループゲインが無限大の理想
オペアンプを用いたものとして話を進めます。

周波数が高くなるほどC4のリアクタンスが小さくなりますので、合成インピーダン
スZ5は減少します。

つまり、周波数が高いほど増幅度が下がりますので、これはLPFの働きです。

実際の特性は以下の条件により変わります。

R6とR5の定数比率
用いるオペアンプのオープンループゲイン

少し複雑になりますので、シミュレーションで特性確認をしたほうが良いです。
図32にシミュレーション回路、データ4にシミュレーション結果を示します。
この場合、用いたオペアンプはLT1492で、カットオフ周波数は約6.2KHzです。
GBWの異なるオペアンプを用いると、特性も若干変化することを確認してください。
例えば、以下のオペアンプに交換すると特性が変わります。

LT1638
LT1361

シミュレーションを用いれば、同じ回路、定数なのにオペアンプを変えると特性も変化することを実感すると思います。


★LPFとHPFの組み合わせ

オペアンプを変えると特性が変わる理由は、オープンループゲインの値が無視できないからです。
説明が簡単になるように、コンデンサ無しの状態でのクローズドループゲインを図33に示します。
正確には⑥式のようにゲインはβとAで決まります。
オープンループゲインAを無限大とすれば、⑦式になりますが、実際にはオペアンプにより

Aの値が異なるので、ゲインが若干異なり、コンデンサを追加すれば特性も異なることになります。

★LPFとHPFの組み合わせ

今までは、LPF,HPFを単独でシミュレーションしてきましたが、図34のように、各部にLPF,HPFを構成した場合のシミュレーション結果をデータ5に示します。

特性の平坦な部分から-3dBまでの帯域は約330Hz~6.2KHzの特性です。

まとめ

集音装置の周波数特性についてシミュレーションしました。

★オペアンプ単体での高域カットオフ周波数はGBWで予想出来る
★コンデンサと抵抗の組み合わせで周波数特性に変化が起こる
★用いるオペアンプによっても周波数特性が若干異なる


電子回路シミュレータは設計または回路学習に大変有効な手段です。

今回は簡単なフィルターでしたが、特性変化を実感できたことと思います。

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