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ACアダプタの特徴

ACアダプタの「ノイズ」について解説します。
一般的にACアダプタは以下のように3通りに分けられます。

トランス式非安定化ACアダプタ
  • 簡易的な方式
  • 入出力の変動に弱い
  • 用いる電源と機器の定格に注意
トランス式安定化ACアダプタ
  • 入出力の変動に強い(安定)
  • リップルは少ない
  • やや大型
スイッチング方式ACアダプタ
  • 小型、軽量
  • 効率が良い(熱を持たない)
  • 入出力の変動に強い(安定)
  • スイッチングノイズが発生する

それぞれの特徴を把握したうえで、機器に適したACアダプタを選択することが必要です。
ここでACアダプタの「ノイズ」に関して具体的な解説を行います。

単純なLED点灯などの用途では、電源からのノイズによる不具合はほとんどなく、どのようなACアダプタでも使えます。

しかし、相手側の機器によってはACアダプタからのノイズにより不具合が発生する場合があり、各ACアダプタで発生するノイズについて把握しておく必要があります。

主なノイズ成分

電源から発生するノイズは少ないことが望ましいのですが、ACアダプタの方式により、ノイズ成分が異なります。

トランス式非安定化ACアダプタ 原理的に「リップル」が主な成分。
トランス式安定化ACアダプタ 非安定化より「リップル」成分が少ない。
スイッチング方式ACアダプタ スイッチングノイズが主な成分。周波数と大きさは機種により異なる。

★リップルとは

トランス式非安定化ACアダプタの原理図を図1に示します。

AC100Vをトランスにて変圧し、これをダイオードにより整流します。これを平滑回路により直流(DC)に変換しますが、この場合、充電、放電の波形が残り、この成分(波)を「リップル」と言います。

図1の整流回路はブリッジ方式なのでAC100Vが50Hzの地域ではその倍の周波数である100Hzがリップルの基本成分になります。
また、AC100Vが60Hzの地域では120Hzがリップル基本成分です。

図1 トランス式非安定化ACアダプタ

リップル成分の大きさは負荷電流値により異なり、実際にオシロスコープで観測した波形を「波形1」に示します。
上のチャンネルはDC出力を観測したもので、リップルが直流に乗っているのが見えます。
下のチャンネルはその成分を拡大したもので、この例では100Hzの成分です。
トランス式安定化ACアダプタは非安定化の出力電圧を安定にしたもので、リップルは非安定化よりかなり小さくなります。

また、「波形2」にスイッチング方式ACアダプタのノイズ波形を示します。
この例ではノイズ成分は約25KHzですが、この周波数は機種により異なり、数10KHzの製品(機種)が多いようです。

波形1 オシロスコープによるリップル観測   波形2 オシロスコープによるスイッチングノイズ観測
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ノイズ成分分析

トランス式の非安定化および安定化のノイズ成分は主に「リップル」、スイッチング方式は「スイッチングノイズ」が主なノイズ成分になり、 波形で観測すると波形1、波形2になりますが、この波形は歪んでいます。したがって、「高調波」が存在することになります。
そこで、実際の高調波成分を観測しました。

電源出力は一般的に負荷側にコンデンサを接続した場合、波形1、波形2のような成分は減衰(減少)します。
そこで、図2のように負荷は抵抗のみとし、純粋にノイズ成分が分かりやすい方法で観測することにしました。

図2 ノイズ成分観測図

各種ACアダプタは同じ出力電圧とし、同じ負荷(つまり、同じ出力電流)での電圧をFFTアナライザにて周波数分析します。


★FFTアナライザとは

観測結果の前に、FFTアナライザと観測波形の見方について説明します。

FFTアナライザとは「FFT演算」(Fast Fourier Transform : 高速フーリエ変換)により周波数分析を行う装置です。
最近のデジタルオシロスコープではFFT演算機能の付いた機種が多いですが、今回の観測は専用機(FFTアナライザ)で行っています。
例えば、「歪んだ波形」は基本成分(周波数)以外の高調波成分が存在し、図3のようにオシロスコープではどのような高調波成分があるかは分かりません。FFTによる解析では横軸が周波数になり、これにより周波数成分を観測することができます。

観測データは図4のように周波数の観測レンジを2KHzと100KHzの2とおりとし、低い成分と高い成分を観測することにします。

図3 周波数解析   図4 観測データの目盛

★測定結果:帯域2KHzまで

トランス式非安定化ACアダプタ;波形3 リップルの基本波100Hz(-10.73dBV)が観測され、その高調波(100Hzの整数倍)も観測されます。
トランス式安定化ACアダプタ;波形4 リップル(100Hz)は非安定化と比べて小さく(-56.96dBV)、非安定化と比較して約1/200の大きさです。
スイッチング方式ACアダプタ;波形5 100Hzなどリップルは観測されませんが、この機種は1KHz近辺でレベルが少し盛り上がっています。
波形3 非安定化ACアダプタ 帯域2KHz   波形4 安定化ACアダプタ 帯域2KHz   波形5 スイッチングACアダプタ 帯域2KHz

★測定結果:帯域100KHzまで

トランス式非安定化ACアダプタ;波形6 高調波などのノイズは観測されず、きれいです。
トランス式安定化ACアダプタ;波形7 きれいですが、若干、ノイズの底が非安定化と比べて上がっています。
スイッチング方式ACアダプタ;波形8 約35KHzのスイッチング成分とその2倍の高調波が観測されます。実験に用いたこの機種はノイズレベルが多いと思います。また、この観測では帯域100KHzまでですが、高調波は100KHz以上でも存在すると思われます。
波形6 非安定化ACアダプタ 帯域100KHz   波形7 安定化ACアダプタ 帯域100KHz   波形8 スイッチングACアダプタ 帯域100KHz
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ノイズの特徴

★トランス式非安定化と安定化ACアダプタ

原理的に低い周波数のリップルが主な成分で高い成分は多くありません。
非安定化ACアダプタの場合、リップルが多いとラジオまたはオーディオアンプの電源として用いた場合、「ブーン」というような音として聴こえる場合があります。

リップルは負荷側(機器)にて容量の大きいケミコンを接続すれば低減(改善)させることは可能です。

ちなみに、筆者の手元にあるラジオとヘッドホンアンプの電源に非安定化ACアダプタを用い、問題無く動作しています。

安定化タイプは入出力電圧の変動を抑え、さらにリップルを低減(改善)したタイプで、負荷側で特にリップル低減を行なう必要はあまりないと思います。


★スイッチング方式ACアダプタ

低い周波数領域では特に目立ったノイズはありません。
数10KHz以上の領域でのスイッチングノイズが主な成分で、この周波数とノイズレベルは機種により異なります。

(簡単に言いますと、性能の良いものと悪いものがあるということです)

波形3~8は純粋にACアダプタ単体のノイズを分析する目的で抵抗負荷のみとしましたが、抵抗負荷にバイパスコンデンサを追加した場合の波形を波形9~11に示します。

波形9 波形8のスイッチングアダプタの負荷に一般のケミコン470uFを追加   波形10 波形8のスイッチングアダプタの負荷に低ESRのケミコン470uFを追加   波形11 ノイズの少ないスイッチングアダプタの負荷に低ESRのケミコン470uFを追加

波形9は一般品のケミコン470μFを追加した場合で、ノイズレベルが1/3に低下し、さらに低ESRのケミコン470μFを追加した場合、1/10になっています。(波形10)

波形11はノイズの少ない機種(スイッチングACアダプタ)に低ESRのケミコンを追加した場合で、ノイズ成分が分かりません。

比較の意味で縦軸の電圧範囲を同じにして観測していますが、波形11で用いたスイッチングACアダプタでも電圧範囲の感度を上げると、スイッチングノイズは観測できます。

ここで重要なことはスイッチングノイズはゼロにはならないことと、その高調波も存在するということです。
例えば、AMラジオなどは、このようなノイズの影響を受けやすく、スイッチングACアダプタは適していません。
具体的には、「ピ~」などのノイズがラジオから聞こえてしまいます

このように、AMラジオなどはスイッチングノイズとその高調波が混入する周波数関係になっているので、不具合が生じます。
ヘッドホンアンプなどの場合では、可聴周波数範囲外であれば特に問題となることはないと思います。

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非安定化ACアダプタのリップル改善

非安定化ACアダプタでリップルが無視できないような場合、リップルを改善した実験例を紹介します。

図5のように非安定化ACアダプタ出力を3端子レギュレータにより電圧を安定化させ、さらにリップルの低減を行なおうというものです。

用いるレギュレータは固定出力でも良いのですが電圧可変ですと便利ですので、パーツまめ知識「パーツ」「半導体」「No.25可変3端子レギュレータの使い方」で製作したものを用いました。

非安定化ACアダプタは手持ちの関係でVSM-1561を用いています。ただし、このACアダプタは出力極性が「センターマイナス」なのでコネクタ極性には注意が必要です。
また、レギュレータ部は12V出力も得られるように回路定数等を変更しています。

図5 3端子レギュレータを用いる

波形12,13に3端子レギュレータを通した後の波形を示します。
100Hzのリップルはかなり小さく、帯域100KHzにおいても良好な特性です。

このような良好な特性となった理由は3端子レギュレータを用いたことと、ACアダプタの電流容量を大きくし、ACアダプタ側から見た負荷を軽くしたことです。

波形12 非安定化アダプタにNJM317を追加 帯域2KHz   波形13 非安定化アダプタにNJM317を追加 帯域100KHz
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まとめ

各方式のACアダプタのノイズ成分はそれぞれ異なります。(図6)
ノイズ成分によっては影響を受ける機器がありますので、用途に合ったACアダプタを選ぶことが必要です。

図6 主なノイズ分布
  • ★トランス式非安定化と安定化ACアダプタ
  • 100Hz(または120Hz)などのリップル成分が問題となる機器で注意が必要。
  • ★スイッチングACアダプタ
  • スイッチング周波数とその高調波が混入する周波数関係の機器で注意が必要。
    例えば、AMラジオなどの電源には適さない。
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