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◎はじめに | ||||||||||||||
最近のデジタルテスタ(マルチメータ)は電圧、電流以外に周波数の測定機能を備えたものも | ||||||||||||||
多くなっています。また、測定データをパソコンに取り込めるものもあります。 | ||||||||||||||
筆者もこのようなデジタルテスタを利用していますが、テスタの機種により測定可能な周波数範囲 | ||||||||||||||
が異なり、測定可能な上限値が数100KHzまたは数MHzの機種もあります。 | ||||||||||||||
(機種によっては高い周波数でも測定可能なものもあるようです) | ||||||||||||||
また、信号レベルが数10mVでは測定不可の機種もあります。そこで、測定周波数の拡大と | ||||||||||||||
感度アップを目的とした「周波数カウンター拡張装置」を製作しましたので紹介します。 | ||||||||||||||
◎システム | ||||||||||||||
図1のようにデジタルテスタ用のアプリケーションソフトを利用して、パソコン上に周波数ドリフト | ||||||||||||||
のグラフを描画します。 | ||||||||||||||
また、周波数ドリフトではなく、単純な周波数カウンターとして用いることも出来ます。 | ||||||||||||||
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◎ブロック図および回路図 | ||||||||||||||
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(インピーダンス変換部) | ||||||||||||||
J-FETを用いたソースフォロワ回路です。 | ||||||||||||||
入力インピーダンスは約1MΩで、過大入力(数V)に対してはダイオードD1〜D4の保護回路が働きます。 | ||||||||||||||
(増幅部) | ||||||||||||||
トランジスタTR2のエミッタ共通回路による増幅と、インバータIC(アンバッファ)74HCU04により、 | ||||||||||||||
ほぼ、デジタル信号まで増幅します。 | ||||||||||||||
IC1(74HCU04)の電源接続に注意してください。 | ||||||||||||||
本装置ではIC1の電源およびGND間に抵抗R11,R12を入れています。 | ||||||||||||||
(波形整形) | ||||||||||||||
IC1の出力は完璧なデジタル信号ではありません。この信号をシュミットトリガインバータの74HC14 | ||||||||||||||
できれいなデジタル信号に波形整形します。 | ||||||||||||||
参考として図100に74HC14の入出力の波形を示します。 | ||||||||||||||
74HC14の「IN」信号(完璧なデジタル信号ではない)がきれいなデジタル信号「OUT」になって | ||||||||||||||
波形整形されているのが分かります。 | ||||||||||||||
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(分周および切換スイッチ) | ||||||||||||||
デジタルテスタの周波数レンジ拡大を目的として「1/10の分周回路」を設けました。 | ||||||||||||||
例えば、INPUT端子に20MHzの信号を加えた場合、分周器を用いればOUTPUT端子には | ||||||||||||||
20MHz÷10=2MHz の信号に変換され、最大2MHzの周波数レンジのデジタルテスタでも20MHzの | ||||||||||||||
信号が扱える(測定)ことになります。 | ||||||||||||||
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1/10にすれば図4のように実際の周波数は読み値を10倍して読めば良いので、換算が楽です。 | ||||||||||||||
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分周器には10進カウンターICの「74HC390」を用いています。 | ||||||||||||||
なお、このICは2回路入りなのでもう1つの回路を利用すれば「1/100分周」も可能です。 | ||||||||||||||
◎製作 | ||||||||||||||
○基板とケース実装 | ||||||||||||||
サイズ 72×95 の片面ユニバーサルを利用して組み立てました。 | ||||||||||||||
配線はTR1,TR2部のGNDを極力短くすることと、GNDの配線順番に注意します。 | ||||||||||||||
図5に本装置の各ブロックの配置とGND配線を示します。 | ||||||||||||||
ケースにTAKACHIのYM-150を横置きにしたイメージでユニバーサル基板を製作しました。 | ||||||||||||||
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基板は実験を兼ねて図5のとおり製作したのですが、 | ||||||||||||||
その後、ケースをYM-150に対して1ランク | ||||||||||||||
小さいYM-130の縦置きにすることにしました。 | ||||||||||||||
基板もYM-130の縦置きにすべきですが、実験を | ||||||||||||||
兼ねたユニバーサル基板でうまく動作し、少し | ||||||||||||||
面倒になってきたので基板はそのままです。 | ||||||||||||||
YM-130の縦置きにする場合は図6の配置が | ||||||||||||||
良いと思います。 | ||||||||||||||
図5の基板ではINPUTと基板への入り口が少し | ||||||||||||||
距離があるので、INPUTのBNCコネクタと基板間 | ||||||||||||||
の配線には「50Ωの同軸ケーブル」を用いています。 | ||||||||||||||
(同軸ケーブルは不要かもしれません) | ||||||||||||||
図6の配置にすれば同軸ケーブルでの配線は | ||||||||||||||
不要です。 | ||||||||||||||
写真1に内部の様子を示します。 | ||||||||||||||
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INPUT,OUTPUTは「絶縁タイプのBNCコネクタ」です。これにより不要なGNDループを作らない | ||||||||||||||
ようにし、アナログとデジタルのGND経路をはっきりさせます。 | ||||||||||||||
今回使用したユニバーサル基板は取り付け穴の1箇所が「ベタパターン」になっています。 | ||||||||||||||
(基板はLinkmanのLUPCB-9572-NS) | ||||||||||||||
このパターンを利用して基板のGNDをシャーシへ接続します。 | ||||||||||||||
図7にその方法を示します。 | ||||||||||||||
ベタパターンを基板のGNDに接続し、金属スペーサを介してシャーシと接続します。 | ||||||||||||||
なお、今回の入力部のインピーダンスは1MΩと高くしていますので、金属ケースに実装(収納) | ||||||||||||||
しないと外来ノイズの影響を受けます。(金属ケース実装しないと使い物にならない) | ||||||||||||||
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ケースをYM-150からYM-130に変更した理由は次のとおりです。 | ||||||||||||||
図8のようにケースを縦置きにした場合、筆者所有のデジタルテスタをそのままケース上に置けて | ||||||||||||||
場所を取らないからです。 | ||||||||||||||
写真2にケース外観を示します。 | ||||||||||||||
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◎部品表 | ||||||||||||||
部品番号 | 品名 | 型番 | メーカー | 備考 | ||||||||||
C1,C6〜C8 | 積層セラミックコンデンサ | 0.1μF | 耐圧50V | |||||||||||
C2,C3 | セラコン | 0.01μF | 耐圧50V | |||||||||||
C4,C12 | ケミコン | 100μF | 耐圧25V以上 | |||||||||||
C5 | ケミコン | 10μF | 耐圧25V以上 | |||||||||||
C9,C10 | 積層セラミックコンデンサ | 0.1μF | 耐圧50V | |||||||||||
C11 | ケミコン | 47μF | 耐圧25V以上 | |||||||||||
D1〜D6 | ダイオード | 1N4148 | 同等品可 | |||||||||||
IC1 | ロジックIC | 74HCU04 | ||||||||||||
IC2 | ロジックIC | 74HC14 | ||||||||||||
IC3 | ロジックIC | 74HC390 | ||||||||||||
IC4 | 3端子レギュレータ | 7805 | ||||||||||||
J1,J2 | BNCコネクタ | CN24A | テイシン | 同等品可(絶縁タイプ) | ||||||||||
J3 | DCジャック | MJ14ROHS | マル信無線 | |||||||||||
R1 | カーボン抵抗 | 1MΩ | ||||||||||||
R2,R9 | カーボン抵抗 | 100KΩ | ||||||||||||
R3,R5 | カーボン抵抗 | 100Ω | ||||||||||||
R4 | カーボン抵抗 | 4.7KΩ | ||||||||||||
R6 | カーボン抵抗 | 330Ω | ||||||||||||
R7,R8 | カーボン抵抗 | 47KΩ | ||||||||||||
R10〜R12 | カーボン抵抗 | 220Ω | ||||||||||||
S1 | トグルスイッチ | 3P | ||||||||||||
TR1 | FET | 2SK192A-Y | 東芝 | Yランク | ||||||||||
TR2 | トランジスタ | 2SC1906 | ルネサス | 代替可 | ||||||||||
XIC1 | ICソケット | 14P | IC1用 | |||||||||||
XIC2 | ICソケット | 14P | IC2用 | |||||||||||
XIC3 | ICソケット | 16P | IC3用 | |||||||||||
金属スペーサ | 8mm | M3用メスーメス | ||||||||||||
ビス | M3セットビス | |||||||||||||
ケース | YM-130 | TAKACHI | ||||||||||||
基板 | LUPCB-9572-NS | Linkman | サイズ 95mm×72mm | |||||||||||
ゴム足 | BP42 | TAKACHI | ||||||||||||
# 2SK192AはなるべくYランクを使用 | ||||||||||||||
他のランクの場合、R4,R5の調整が必要になるかもしれません。 | ||||||||||||||
# 2SC1906は2SC1815等の汎用トランジスタでも動作すると思い | ||||||||||||||
ますが、なるべくftの高いトランジスタが望まれます。 | ||||||||||||||
(例えば、2SC2668等) | ||||||||||||||
# 基板は片面ユニバーサル 95mm×72mmであれば同等品で可 | ||||||||||||||
◎評価 | ||||||||||||||
出来上がったものを評価してみました。 | ||||||||||||||
評価は「感度チェック」です。表1、表2に結果を示します。 | ||||||||||||||
各信号レベルを入力した場合で、「○」は正常カウントした部分です。 | ||||||||||||||
「×」はミスカウントまたはカウントしない部分、数値部は正常カウントした時の入力レベルです。 | ||||||||||||||
表1の結果から、「おおむね、10Hz〜10MHzの範囲では入力レベル150mVrms以上であれば | ||||||||||||||
正常カウント」します。 | ||||||||||||||
大きい信号レベルでは「1/10の分周モード」時に正弦波で7Vrms、矩形波で10Vp-pまでは | ||||||||||||||
正常カウントします。(それ以上の振幅レベルはテストしていない。大きい信号レベルを扱いたい | ||||||||||||||
のであれば、外部にアッテネータを付加すれば良い) | ||||||||||||||
表1 | ||||||||||||||
正弦波 | 40mVrms | 正弦波 | 1Vrms | 正弦波 | 3Vrms | |||||||||
1 | 1/10 | 1 | 1/10 | 1 | 1/10 | |||||||||
10Hz | 70mVrms | 70mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
100Hz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
1KHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
〜 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
5MHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
6MHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
7MHz | 50mVrms | 50mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
8MHz | 90mVrms | 70mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
9MHz | 130mVrms | 90mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
10MHz | 130mVrms | 110mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
11MHz | 220mVrms | 140mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
12MHz | 270mVrms | 180mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
13MHz | 510mVrms | 210mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
14MHz | 560mVrms | 270mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
15MHz | 650mVrms | 320mVrms | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||||
表2 | ||||||||||||||
正弦波 | 5Vrms | 正弦波 | 7Vrms | 矩形波 | 5Vp-p | 矩形波 | 10Vp-p | |||||||
1 | 1/10 | 1 | 1/10 | 1 | 1/10 | 1 | 1/10 | |||||||
10Hz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
100Hz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
1KHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
〜 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
5MHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
6MHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
7MHz | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
8MHz | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
9MHz | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
10MHz | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
11MHz | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ||||||
12MHz | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ||||||
13MHz | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ||||||
14MHz | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ||||||
15MHz | × | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ||||||
○ カウントOK | ||||||||||||||
× ミスカウントまたはカウントせず | ||||||||||||||
数値部は正常カウントした時の入力レベル | ||||||||||||||
周波数が高いほど分周しないモードのほうが感度の点で不利な結果です。 | ||||||||||||||
この理由はOUTPUT出力の手前のR10の値が220Ωと高めになっているので、負荷(テスタ等) | ||||||||||||||
の値によって本装置の出力波形が崩れるからです。 | ||||||||||||||
このR10はICの出力ショートの保護用ですが、当初、扱う信号は10MHz程度と考えていたので | ||||||||||||||
このような値です。 | ||||||||||||||
IC(74HC14)自体はもう少し高い周波数まで動作可能です。 | ||||||||||||||
表3に出力バッファの74HC14の入力ピンで正常カウントした各周波数での入力レベルを | ||||||||||||||
示します。 | ||||||||||||||
表3 | ||||||||||||||
周波数 | 入力レベル (Vrms) |
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TR2の増幅度は、やや、抑え目なのでこの部分を調整するか、 | 20MHz | 0.49 | ||||||||||||
IC1での増幅度を上げれば感度は改善されると思いますが、 | 25MHz | 0.69 | ||||||||||||
これで可としました。 | 30MHz | 1.26 | ||||||||||||
もし、10MHz以上も扱うのであれば図9のような | 35MHz | 1.31 | ||||||||||||
「バッファ能力の強化」を試すのも良いと思います。 | 40MHz | 1.4 | ||||||||||||
図9ではR10を50Ω(1W)とし、各ゲートを並列接続してバッファ能力を上げます。 | ||||||||||||||
また、デジタルテスタ側でインピーダンス整合用の「50Ω終端抵抗」を接続します。 | ||||||||||||||
50Ω終端抵抗には「BNC型ターミネータ(50Ω)」を用い、各変換コネクタを用いると接続が楽に | ||||||||||||||
なります。また、同軸ケーブルは各種の長さを用意しておくと便利です。 | ||||||||||||||
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◎使用した感想 | ||||||||||||||
図10に「周波数ドリフト測定の接続」、写真3に測定風景を示します。 | ||||||||||||||
ケース上にデジタルテスタを置くようにしたのは場所を取らなくて良いです。 | ||||||||||||||
測定ケーブルは50Ωの同軸ケーブルが基本です。 | ||||||||||||||
デジタルテスタのパソコン取り込み用のアプリケーションソフトで自動的に周波数ドリフトをグラフ化して | ||||||||||||||
くれますので、このような測定は非常に楽に行えて良いです。 | ||||||||||||||
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◎出力信号について | ||||||||||||||
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本装置の出力信号は図11のようにデジタル信号です。 | ||||||||||||||
デジタルテスタの機種によっては、このようなデジタル | ||||||||||||||
信号に対して周波数カウントしない(反応しない) | ||||||||||||||
ものがあるかも知れません。 | ||||||||||||||
このような場合、図12のように出力信号をコンデンサを | ||||||||||||||
通してからデジタルテスタに接続してください。 | ||||||||||||||
コンデンサを通して抵抗で終端(接地)すればGNDを | ||||||||||||||
跨ぐ信号になります。つまり、デジタル→交流信号に変換します。 | ||||||||||||||
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