◎はじめに
信号源として用いる発振器の代表的なものを以下に記します。
(オーディオ発振器)
・主にオーディオ帯域(低周波)の信号を発生
・発生波形は「正弦波」、「矩形波」
・低周波発振器またはRC発振器とも呼ばれる
(ファンクションジェネレータ)
・種々の波形を発生
正弦波、矩形波、三角波、任意波形等
・スイープ機能、出力オフセット機能等、色々な機能がありテスト信号源
として用いられる
(標準信号発生器)
・無線機器の信号源として用いられる
・RF信号発生器またはRFシグナルジェネレータとも呼ばれる
オーディオ発振器は機種によっては比較的安価なものがあり、趣味の電子工作でも
自作オーディオ機器の動作確認、調整に必要な測定器です。
そこで今回はこの「オーディオ発振器」を紹介します。
◎動作原理
主に「ウィーンブリッジ発振回路」が用いられ、動作原理はパーツまめ知識の
「低周波発振器の製作」を参照願います。
◎操作方法
オーディオ発振器は測定器の中では操作は簡単です。
写真2にAD-8626の操作部(フロントパネル)を示します。
(手順1)
Bの「波形選択ボタン」で出力したい波形(正弦波か矩形波)を選択する。
(手順2)
希望する周波数レンジを@の「周波数レンジ選択ボタン」で選択し、Aの
「周波数ダイヤル」で周波数を設定する。
(手順3)
Cの「出力レベル調整ツマミ」とDの「減衰器」で希望の出力レベルと
なるようにする。
出力端子はこの機種の場合「バインディングポスト」ですが、図4のように変換コネクタを
用いて同軸ケーブルを用いれば使い勝手が良く、測定系の接続ケーブルを同軸ケーブル
に統一しておくと便利です。
◎応用例1
図5に「フィルターの周波数特性」測定例を示します。
手順1
・オーディオ発振器(以下、AGと呼ぶ)を「正弦波、1KHz」にする
・出力に「電子電圧計」および「オシロスコープ」を接続
(オシロスコープは波形モニター用)
手順2
・出力が飽和しない振幅レベル(この例では0dBV)となるようにAGのアッテネータ
および出力可変ボリュームを調整
手順3
1KHz時の出力レベルを基準レベル(0dB)とし、AGの周波数を可変し、この時の
振幅レベルをグラフにプロットする
このようにして測定した結果をグラフ1に示します。(Excelで作成)
なお、振幅(信号)レベルの測定は一般的なデジタルテスターでは測定出来ません。
オーディオ帯域専用の「電子電圧計」を用います。
周波数 出力
(Hz) (dB)
100 -5
200 -1.6
300 -0.9
400 -0.6
500 -0.4
600 -0.3
700 -0.2
800 -0.1
900 -0.1
1000 0
2000 -0.2
3000 -3
4000 -8
5000 -12.5
6000 -16.5
7000 -20
8000 -23
9000 -25.7
10000 -28
◎応用例2
図6は「矩形波」を用い、オペアンプ増幅回路での「簡易発振チェック例」です。
オーバーシュート量が大きいほど位相余裕がありません。
発振の判断は「オーバーシュート量20%以下」を目安にします。
オーバーシュートの観測例を図7に示します。
この例では、約10KHzの矩形波を加え、その時のオペアンプ出力を観測したものです。
◎どのようなものを選んだらよいか
一般的に正弦波の「ひずみ率」が小さく、「出力偏差」が小さいほど価格が高くなります。
ひずみ率は小さいほうが望ましく、図8のように発振器のひずみ率が大きいと評価回路
(増幅回路等)を正しく評価することが出来ません。
出力偏差は図9のように出力レベルの「平坦度」のことです。
この場合も偏差の大きい発振器を用いた場合、評価回路を正しく評価(測定)すること
が出来ません。
以上のように、ひずみ率および出力偏差は小さいほうが好ましいのですが、これは価格に
関係しますので、用途により選択します。
例えば、オシロスコープを用いての「簡易波形チェック」または図5のようなフィルター特性
を測定(評価)する場合などは、
・ひずみ率 0.1%以下 (500Hz〜20KHz)
・出力偏差 ア0.5dB以内
のような仕様で十分です。
このようなクラスのオーディオ発振器は各メーカーから販売されていて、それほど高価なもの
ではありません。