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リレーモジュールによる機能安全の向上

著者 Rolf Horn(ロルフ・ホーン) 氏
DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供
2023-11-09

マルツ掲載日:2024-04-08



 機能安全は、エラーや誤動作が生じても機械やプロセスの安全な動作を保証するものであり、今日の産業システムにとっては必須です。リレーモジュールは、電気回路を調整する信頼性の高いメカニズムを提供することで、機能安全の確保において重要な役割を果たします。

 この記事では、Weidmüller SAFESERIES製品ファミリに焦点を当てて、機能安全の面でのリレーモジュールの重要性を検討します。また、その本質的な特性に焦点を当てて、最適な選択と活用のためのガイドラインを提供します。

機能安全のニーズに応える

 電気機械式リレーは、低電力信号で高電力の電気回路を制御するために一般的に使用されます。入力信号の状態に応じて電流の通過を許可または阻止するスイッチとして機能します。

 リレーモジュールは、重要な安全機能を確実に実行し、潜在的な危険を最小限に抑えるために、機能安全アプリケーションで使用されます。機能安全におけるリレーモジュールの最も重要な側面のいくつかを以下に示します。

・冗長性
 冗長性は機能安全の基本原則の1つで、同じセーフティクリティカルな機能を実行するために複数の独立したコンポーネントを必要とします。リレーモジュールは、多くの場合、1つのリレーが故障してもシステムが安全に作動し続けられるように冗長構成になっています。

・フェイルセーフ設計
 リレーモジュールは通常、誤動作時にも安全な状態が保たれるよう設計されています。リレーが故障したり、電源が切れたりしても、デフォルトの設定によりシステムの安全性が確保される状態になります。たとえば、機械の緊急停止を制御する回路のリレーが故障した場合は、即座に停止します。

・診断と監視
 高度なリレーモジュールに統合されたこれらの機能により、システムはリレーの欠陥や故障を検出し、故障アラームや冗長リレーへの切り替えなど、適切な対応を開始できます。

・信頼性と堅牢性
 リレーモジュールはその耐久性と信頼性でよく知られています。極端な環境条件、温度変動、機械的応力に耐えることができるため、要求の厳しい産業環境での使用に適しています。

・低レイテンシ
 セーフティクリティカルなアプリケーションでは、応答時間が何よりも重要です。人員や装置の安全を確保するために迅速な応答が求められる用途では、リレーモジュールが優先的に使用されます。

 機能安全アプリケーションにリレーモジュールを実装する場合は、規格への準拠などのいくつかの点を考慮する必要があります。これにより、機能安全アプリケーションで使用されるリレーモジュールは、関連する安全規格と認証に確実に準拠します。

 欧州電気標準化委員会(CENELEC)は、電気機械式エレメンタリリレーに特化したEN61810シリーズを策定しました。このシリーズはいくつかの規格で構成されており、それぞれが特定のリレータイプや用途に合わせて調整されています。EN61810-3はこれらの規格の1つであり、そのタイプA型は特に重要です。

安全リレー

 EN61810-3タイプA規格は、ノーマリオープン(NO)接点がノーマリクローズ(NC)接点と同じ位置にならないことを保証するための特定の設計と構造手法を組み込んだエレメンタリリレーに適用されます。これらのリレーは、特に規格に適合するよう強制ガイド接点付きの構成となっており、自己監視型の安全関連制御システムに採用される機能を備えています。

 強制ガイド接点は、たとえばアーク放電による接点の微小溶着(リレーの固着)があっても、NC開接点とNO閉接点が同時に閉じることがないように、機械的にリンクされています。

 この安全機構の実例として、3つのNO接点と1つのNC接点を備えたWeidmüllerの安全リレーモジュールを図1に示します。図からわかるように、すべての極はバーを介して機械的に接続されており、独立した動作はできないようになっています。

 NC接点が溶着されている場合、リレーの通電中にNO接点はいずれも閉じることができません。同様に、NO接点のいずれかが溶着している場合、リレーの非通電中にNC接点は閉じることができません。特殊回路との組み合わせにより、開スイッチの誤動作を検知します。これが、人と機械の最大限の安全を確保する最も確実な方法です。


図1:Weidmüller安全リレーモジュールの構成図。(提供:Weidmüller)

 安全リレーでは、機械やシステムの安全機能を確実に実行し、非常停止ボタン信号、ライトカーテン、安全ドアスイッチなどを監視できます。工場で緊急事態が発生した場合は迅速な対応が求められます。サイレン、警告灯、冷却システムを作動させる場合は「安全対応通電」(ETS)プロトコルを使用し、モータや非常停止弁を停止させる場合は「安全対応通電停止」(DTS)プロシージャに従う必要があります。IEC62061とSIL3に準拠した安全関連アプリケーションの起動と停止は、冗長接点付きリレーにより保証されます。

 安全規格に準拠していないスイッチングリレーの金属接点は、繰り返し使用すると溶着することがあります。オペレータが非常停止ボタンをクリックしても、マシンは安全でないモードで作動し続けるため、オペレータとマシンの両方にリスクがあります。安全であると認定されていないリレーは、国内外の安全要件で義務付けられているように、潜在的に危険な機械や設備に使用することはできません。

 安全性と信頼性が向上しているため、ポジティブドライブ接点を備えたリレーが好評を得ています。ポジティブドライブ接点を備えたリレーモジュールには、主要技術として冗長な回路や機構が採用されています。これらの冗長機能は、制御回路やリレー自体が故障しても、リレーが安全な状態に保たれるように設計されています。この冗長性は、安全性と信頼性が重要視される用途には不可欠です。

 これらのリレーモジュールに備わっている信頼性と安全性は、以下のようなさまざまな用途に適しています。

・産業用オートメーション
・医療機器
・発電や電源分配
・電気通信
・輸送業

 このタイプのリレーは、主接点と補助接点が機械的に接続されているため、補助接点の位置を使用して電源回路の主接点の位置を特定できます。そのため、コイルが非通電状態になっても、(接点が固着しているため)コンタクタが閉じたままかどうかを判断できます。電極接点が溶着されている場合は、機械的な接続により、コイルの非通電時に補助開接点は閉じられません。

WeidmüllerのSAFESERIESリレーモジュール

 電気工学の分野では、安全性と信頼性が何よりも重要です。精度と信頼性に専念する姿勢が、ポジティブドライブ接点を特長とするWeidmüllerのプラグ式リレーモジュールなどの高度なコンポーネントをもたらしました。これらの革新的なリレーモジュールは、技術の大きな進歩を象徴するもので、幅広い用途において安全性、効率性、柔軟性を向上させています。

 これらのリレーモジュールの核心を成しているのは、接点が正駆動されることを保証する技術です。つまり、制御された信頼性の高い方法で開状態と閉状態の間の移行を可能にします。この機構により、リレーや制御回路の故障に関係なく、意図しない接点動作が生じる可能性が排除されます。その結果、リレーでは性能を損なわずに安全性が優先されます。

 WeidmüllerのSAFESERIES接点拡張はEN61810-3タイプAに準拠しており、強制ガイド接点を持つリレーで構成されています。このため、人と機械の両方の安全に関わる用途での信号監視に特に適しています。

 SAFESERIESは、以下の接点バージョンにおいて適合するネジソケット付きの4つの個別プラグ式リレーで構成されています。

・2NO+2NC
・3NO+1NC
・4NO+2NC
・3NO+3NC

 EN/ISO13849-1規格に従って設計されている場合に、用途に応じたPL「e」の最高パフォーマンスレベルを達成できます。この基本コンポーネントは、IEC/EN62061に従って安全性を備えたアプリケーションにも使用され、安全度水準SIL3を達成することができます。

 図2は、DINレールアプリケーションに適したアセンブリに取り付けられているWeidmüllerの2759070000安全リレーモジュールを示しています。4ポジションの汎用リレーで、3つのNO接点と1つのNC接点、DC24V±10%のコイルを備えています。デバイスは、コイル定格DC電流20mA、定格スイッチング電圧250VAC、定格連続電流6AのAgSnO金メッキ接点により通電可能です。負荷側の最大スイッチング電圧は400VAC、250VDCです。

 図1の構成図に示すように、このリレーはステータスインジケータ(緑色のLED)と保護用のフリーホイールダイオードを内蔵しています。スイッチオンとスイッチオフの遅延は20ms未満で、デバイスの寿命は10×106スイッチングサイクルです。


図2:Weidmüllerの2759070000 SAFESERIESリレーモジュール。(提供:DigiKey)

 SAFESERIESのもう1つの製品である産業用ミニチュアリレー2759070000図3に示しています。3つのNO接点と1つのNC接点を備えたこの強制ガイド接点付きリレーは、汎用アプリケーションに適しており、スルーホール実装が可能です。


図3:Weidmüllerの2759030000 SAFESERIESリレーモジュール。(提供:DigiKey)

まとめ

 リレーモジュールは、信頼性の高い制御を保証し、重要な役割を担うため、機能安全システムにとって不可欠なコンポーネントです。その堅牢性、フェイルセーフ設計、冗長性および適合性により、最高レベルの安全性が要求される用途でよく選ばれています。

 リレーモジュールは、適用される規格に準拠して正しく使用された場合に、産業用および自動車用システムの全体的な安全性と信頼性に大きく貢献します。リレーモジュールは、技術の進歩とともに発展し続け、ますます高まる機能安全の要求を満たせるように、複雑さの増した機能が追加されています。




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