教育分野

電子工作に必要な工具の種類と使い方 その3【測定編】

電子工作をするには、さまざまな種類の工具があり多くのメーカーもあってどれを選べばよいか迷ってしまいます。

また、実際にどのように使用するのか、こんな時はどの工具を使えばいいのか場面に合わせた工具とその使い方の紹介をします。


その3では、測定について必要な機材と使い方について説明します。

 

3.測定器

 

電子工作に欠かせないのが測定です。

部品が正しいか確認したり、ハンダ付けの不良がないかチェックしたり、電圧が正常か確認したりなど、いろいろな場面で測定する必要が出てきます。

そこで、測定に必要な機材とその使い方について説明いたします。

前半は、テスターの使用方法、後半は、特にオーディオ機器をパソコンを使ってチェックする方法について説明します。

 

(1)必要な工具

測定器には様々な種類があり、多くの場合大変高価ですので、必要最低限のものを紹介します。

 

1.テスター

 

なんと言っても電子工作には必需品です。

部品の値を測定したり、電圧を測定したりと一番活躍するものです。

最近は多機能で価格の安いデジタルテスターが多く発売されています。

 

・A&D デジタルマルチメーター 導通チェック/周波数/コンデンサー測定機能付【AD-5502】

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2.測定補助機器

 

テスターなどで測定を行う時にあると便利なパーツです。

・テイシン電機 テストリード 0.1SQ ミノムシクリップ付き 赤/黒/緑/黄/白 各2本10本組【TLA-1】

・テイシン電機 ICテストリード【TLA-101】

 

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3.オーディオ測定用機材

 

パソコンを使用してオーディオの信号発生器や、周波数特性の測定などが可能になります。

 ・クリエイティブ Sound Blaster Digital Music Premium HD r2【SB-DM-PHDR2】

 

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 (2)テスターの使い方

 

 1.抵抗値測定

 

電子部品で一番多く目にするのが抵抗だと思いますが、カラーコードがついていてもしっかり確認するほうが良いと思います。

特にチップ抵抗は、どれも同じに見えますから、作成時には、直前に測定してから取り付けるようにしていれば安心です。

 

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このような部品の測定は、直接テスターを当てて測定すれば良いです。

今回は撮影のためにテストリードを使用しています。10KΩの抵抗値が、9.92KΩと測定されています。

 

<ポイント1> テスターで数Ωのような低い抵抗値を測定する場合は、接触抵抗や、ワイヤーの抵抗も影響することがあります。

テスターの測定端の金属部分はよく磨いて、しっかりと圧着させて測定しましょう。

 

2.ダイオード測定

 

このテスターには、ダイオードの測定モードがついています。

ダイオードは方向性がありますので、向きによって、測定値が変わります。

 

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このように+(赤)をアノード側、-(黒)をカソード側に接続した時に、電圧が表示されます。

この場合は、VF(順方向電圧)が0.696Vです。

逆に接続すると、電圧が出ません(0L表示)から、正常に動作していることになります。

 

<ポイント2>ダイオードの測定は、方向によって値が変化します。順方向では、0.5V~0.8Vが正常な値です。

ダイオードの種類によっては、0.1V~0.3V程度のものもあります。逆方向で電圧が表示されないのは、どのダイオードも同じです。

 

3.コンデンサー測定

 

最近のデジタルテスターは、コンデンサーの容量も測定できるものが多く発売されています。

測定する前に0調整するのが一般的です。(この機種ではRELATIVEボタンです。)

 

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あまり小さい容量は精度よく測定するのは難しいようです。

22pFのコンデンサーは27pFと測定されています。

こちらは、47nFを測定したところ49.5nFと測定されました。

 

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47μFです。このような大きな容量の場合、10秒程度測定に時間がかかります。

 

<ポイント3>コンデンサーの容量は、素子自体のばらつきも大きいので桁が違うほど大きくずれていなければ正常です。

 

4.直流電圧測定

 

電源や、ICなどにかかっている電圧を測定します。

 

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電池を測定してみました。006Pタイプを測定したところ9.45Vの電圧が測定されました。

 

<ポイント4>こうしたデジタルテスターは、AC電源から完全に分離されているので、-(黒)側を必ずGNDにする必要がありません。逆に接続すれば、表示が-になるだけです。

従って、片側がGNDでない場所の電位差の測定もすることが可能です。

 

5.交流電圧測定

 

交流と言えば家庭にあるコンセントがAC100Vですが、それ以外にもオーディオ信号のサインウエーブなど測定対象がいろいろあります。

 

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これは、100Hzの2Vrmsのサインウェーブ出力を測定した時の表示です。 交流はpeakではなくrmsで測定しますので、このように2Vrmsは、2.05Vと測定できます。

 

<ポイント5>交流の測定には、周波数が影響します。このテスターの場合、周波数範囲が、40Hz~400Hzですので、この範囲以外の周波数では、正常な電圧値になりません。

 

RMSって?

交流とは、一般的にこの図のように時間とともに電圧が変化しています。(上下方向が電圧、左右方向が時間)

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従って直流のように一定の電圧では表現できません。

このような波形(正弦波とかサインウェーブと言われます)の電圧を表現するのに用いられているのがRMS表示です。

一番低い電圧から一番高い電圧の差(Peak to Peak)を2√2で割ったものですが、エネルギーの平均値という事です。

ですから、1Vrmsは、2√2倍して 2.828VPeak to Peak という事になりますね。

 

6.周波数測定

 

コンデンサーの容量と同様に最近のデジタルテスターには周波数測定機能が搭載されているものが多いです。

交流電圧は、400Hzまでしか正しく測定できなくても、周波数は、100KHz程度まで測定できますので、オーディオのチェックなどには重宝します。

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これは、上の状態(100Hz2Vrms)で、周波数レンジに切り替えた場合です。

99.98Hzと測定されています。

右側は、1KHzの時の測定値です。電圧は範囲外ですが、周波数は測定できています。

 

 7.測定時のノウハウ

 

基板の状態で測定する場合の方法を説明します。

 

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このようにICテストリードを使用すれば、抵抗のリード(足)をつまんで測定することができます。

 

<ポイント6>テスターのテスターリード(棒)の先端を手で測定物に当てる場合は、他の部分に接触しないように細心の注意が必要です。

作成したキットなどを壊さないためにも、テストリードの使用をお勧めします。

 

(3)PCを用いた簡易信号発生器と波形、周波数の測定方法

 

ここでは、PCと入出力できるUSBオーディオを使用してフリーウエアのソフトを利用してサインウェーブなどの信号発生器と波形の観測、周波数特性の測定などについて説明します。

 

【注意】今回ご紹介する方法は、みなさんの環境によって動作が変わりますし、フリーウエアを使用しているので、その動作を完全に保証するものではありません。

あくまでも参考という形で見て下さい。

今回の動作環境  Corei5-2410M 2.3GHz ノートパソコン OS Winows10 Home Edition 64bit版

 

1.準備

SoundBlasterとフリーウエアのソフトをPCに接続、インストールしておいてください。

SoundBlasterのドライバーは、サイトから最新版をダウンロードしてインストールしました。

 

SoundBlaster最新ドライバーダウンロード

 

WaveGene,WaveSpectraをインストールします。

 

efuのページ

インストールの方法や使用法は、上記サイトに詳しく載っています。

 

2.WaveGeneの起動と設定

 

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WaveGeneの設定画面です。再生ドライバは、ASIOを選択してください。SoundBlasterのドライバーがきちんとインストールされていたら、「Creative Sound Blaster ASIO」というデバイスが表示されるはずですので、これを選択します。

 

<ポイント>WIndowsのSoundドライバーは、MME,DirectSound,WASAPIなどが標準で搭載されていますが、WASAPIの排他モード以外は、Windowsのカーネルミキサーを経由するためリミッターなどが自動で動作するようになっています。

オーディオ出力を測定信号に使用する場合は、WASAPIの排他モードかカーネルミキサーを通らないASIOドライバなどを使用する必要があります。

以前、実際に測定器を使って計測したところ、デジタル出力(S/PDIF)もアナログ出力も0dBフルスケールの出力が-0.13dBダウンしていました。

 

WaveGeneによるサインウェーブの再生

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このようにサンプリング96KHz24bitstereoで、1KHz0dBの信号をSoundBlasterから出力できます。

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テスターで周波数測定して確認しました。999.8Hzとなっています。

オシロスコープで確認したところ、ボリュームMAXで2.2Vrms程度の出力がでています。

 

3.WaveSpectraの起動と設定

 

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こちらも 録音側をドライバASIO、デバイスSoundBlaster ASIOに設定しました。

しかし、うまく動作しません。

 

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そこで、こちらは、ドライバ:WASAPI、デバイス:ライン入力(USB Soound Blaster HD)に変更したところうまく動作しました。

 

さきほどのWavwGeneの出力をそのまま入力へ差してみると

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このように、1KHzの波形が表示されます。0dB出力だと振り切ってしまうので-10dB出力にしています。

 

4.周波数特性の測定

 

では、この状態で周波数特性を測定してみましょう。

WaveGene 設定

20Hz-40KHz -10dB リニアスイープ 96KHz24bit 90秒

 

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WaveSpectra設定

96KHz24bit FFT 4096sampling Hanning Window

 

周波数測定の結果です。

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このように40KHzまでフラットな特性になっています。

オシロスコープによる測定でも40KHzのゲインダウンは、わずか0.16dBですので、これを基準にアンプなどの周波数特性を測定することができます。

 

【注意】 SoundBlasterのライン入力は、通常のラインレベル程度までしか入力できません。

(クリエイティブに確認したところ、入力レベルは最大2Vrms)

従ってスピーカー出力やヘッドホン出力など、過大な入力信号を入れると壊れるおそれがあります。

アッテネーターを入れるなど、入力レベルが過大にならないように注意してください。

また、出力がバランス出力(片側がGNDではない)の場合も直接接続すると壊れるおそれがありますので、十分注意してください。

 

以上で、説明は終了です。

テスターやこのような機器を有効に活用して電子工作をお楽しみください。

 

<関連記事>

 

・ 電子工作に必要な工具の種類と使い方 【ハンダ付け編】 【ワイヤー処理編】 【穴あけ編】

 

<今回紹介した機器>

 

・A&D デジタルマルチメーター 導通チェック/周波数/コンデンサー測定機能付【AD-5502】

・テイシン電機 テストリード 0.1SQ ミノムシクリップ付き 赤/黒/緑/黄/白 各2本10本組【TLA-1】

・テイシン電気 ICテストリード【TLA-101】

 ・クリエイティブ Sound Blaster Digital Music Premium HD r2【SB-DM-PHDR2】

 

<お勧め電子工作キット>

 

LV-2.0PREMIUMキット ステレオプリメインアンプ【LV2-KIT-PREMIUM】

LV-2.0BASICキット ステレオプリメインアンプ【LV2-KIT-BASIC】

LV-2.0MINIキット ステレオプリメインアンプ【LV2-KIT-MINI】

・USB-DAC内蔵ヘッドフォン・アンプキット(含 面実装キット)【MHPA-PCM2705U(R2)-FK】

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LV-2.0 フォノイコライザーキット【LV2-PE-KIT】

 

 

 

 

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