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ハイブリッドヘッドホンアンプの製作 データ取り編

◎ハイブリッドヘッドホンアンプ

筆者はオーディオアンプ特にヘッドホンアンプを自作して楽しんでいます。
主に半導体を用いたものですが、デバイスとしては真空管なども考えられます。
真空管は一般的に高電圧で動作し慣れていないと危険です。
そこで、真空管を低電圧動作とし、これに半導体回路を組み合わせたハイブリッドヘッドホンアンプを製作しましたので紹介します。

◎真空管の増幅動作

★2極管

真空管は2極管、3極管、5極管などがあり、増幅用としては3極管、5極管になるのですが、真空管の基本である2極管を図1に示します。
電極はプレート、カソードの2つで、ヒーターはカソードを加熱するためのものです。
プレートに接続する電源をB電源、ヒーター用電源をA電源と言い、図1 b ) のように各電源を接続します。
図ではA電源を直流のシンボルにしていますが、この部分は直流、交流どちらでも良いです。

カソードをヒーターで加熱するとカソードから電子が放射され、この電子はプレートのB電源のプラスによって引き付けられてプレート→カソードへ電流が流れます。
逆にプレートのB電源をマイナスにすると電子はプレートのマイナスに反発し電流は流れません。
つまり、B電源がプラスのときに電流が流れますのでダイオードの働きです。

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2極管はこのようにダイオードの働きをしますので主に電源部の整流用に用いられ、特に整流管と呼ばれます。
写真1に整流管の外観例を示します。
形状によりST管、mT管などがあり、12FはST管、5M-K9はmT管です。

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★3極管

2極管はプレート、グリッドの2つの電極でしたが、これに3番目の電極であるグリッドを付けたものを3極管と言い、図2に示します。
ヒーターを加熱すると2極管と同様にカソードの電子がプレートに向かって放射されグリッドはプレートにたどりつく電子の量を制御する電極です。

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図3に接続と特性を示します。
グリッドにはカソードを基準としてマイナス極性の電源を印加し、この電源をC電源と言います。
以下、このC電源をグリッド電圧と表現します。
図3のようにグリッド電圧が0Vでも一定のプレート電流が流れ、グリッド電圧を大きくしていくとプレート電流が減少します。
このように、グリッド電圧でプレート電流が制御できます。

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例えば図4のようにグリッドに直流電圧と入力信号(交流)を加えれば入力信号に応じてプレート電流が変化し、これに抵抗Rを接続すればRの両端にプレート電流の変化が電圧波形として現れます。
つまり、これが増幅作用です。

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このような動作は「接合型FET」と同じで、図5にnチャネル接合型FETの特性を示します。
ゲート電圧を大きくしていくとドレイン電流が減少し、このような特性をデプレッション特性と言い、ドレイン→プレート、ソース→カソード、ゲート→グリッドに対応します。

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◎真空管を低電圧で使う

低周波増幅などの回路での一般的な電源電圧を図6に示します。
ヒーター用のA電源は6.3Vまたは12.6Vが一般的で、C電源は内部回路で作るので不要です。
プレートは動作条件として100V~250V程度で性能等が規定されます。
したがって、供給元のB電源は抵抗Rの電圧降下分を考慮し、プレート電圧より高くする必要があります。
A電源は用いる真空管によりますが、消費電流は数100mA~数Aになり、用いる真空管数で増えます。
B電源は電圧増幅または電力増幅などの回路により異なり、数mA~数10mA程度です。

結局、電圧の異なる2つの電源が必要で、特に高圧のB電源には扱いに慣れないと感電が心配です。

そこで、思い切って図7のように低電圧で真空管を動作させてみたらどうかと思いつきました。
真空管のヒーター電圧は一般的には6.3Vと12.6Vです。
12.6V用の真空管を用い、A電源をB電源と一緒にしてはどうかということです。
これであれば電源は1つで済みますし市販のスイッチング式ACアダプタが使えそうです。

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◎低電圧動作のデータを取る

★測定回路

前述のように真空管のB電源は高圧ですので、低電圧動作での特性データがありません。
そこで、低電圧動作時の特性を取ることにしました。
図8が測定回路で、グリッド電圧およびプレート電圧を可変し、その時のプレート電流を測定します。

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写真2に実験に用いた3極管を示します。
1本の中に3極管が2個入っており、双3極管と呼ばれるものです。
ヒーター電圧は12.6Vで、一般的にはプレート電圧100V~250Vで用いられます。

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左:12AU7A
中:12AX7A
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/515553/
右:12AT7
http://www.marutsu.co.jp/pc/i/258648/
すべて電圧増幅用双3極管

★12AU7Aの場合

グラフ1に12AU7Aのプレート電圧Epとプレート電流Ipの関係を示します。
グリッド電圧を各値に固定し、各プレート電圧におけるプレート電流の特性です。

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グラフ1の特性で増幅度の見当がつきます。
この特性は図8測定回路のようにプレート電流を測定したものですが、このままでは増幅とどのような関係があるのか良く分かりません。
そこで、図9のように負荷抵抗を接続して考えます。
負荷抵抗とは図9のように抵抗を接続することによりプレート電流を電圧に変換するものです。

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負荷抵抗を入れることにより実際の動作が分かるようになり、グラフ2はEgを3ポイント抜き出して書き直したものです。
例えばプレート電流がゼロの場合、抵抗の電圧降下はゼロです。
供給電圧と各部電圧関係は電源電圧をEbb、抵抗の電圧降下(両端電圧)をVr、プレート電圧をEpとすれば、次の関係があります。

Ebb = Ep + Vr

プレート電流がゼロですから、Vrはゼロ、したがって、Epは 12 = Ep + 0 つまり、Ep = 12Vです。
プレート電流がゼロでプレート電圧が12VとなるA点に点をとります。
次にプレート電圧がゼロとなるのは負荷抵抗に最大の電流が流れた時です。
最大電流は供給電圧を負荷抵抗で割った値ですから、12V/47kΩ≒0.255mAで、プレート電圧がゼロであるB点に点をとります。
A点とB点を結んだ直線を負荷抵抗線と言い、プレートの電圧と電流は必ずこの直線上になります。
例えばグリッドに-0.1Vを印加すればプレート電圧は5Vになり、-0.2Vでは6V、-0.3Vでは7Vになることが分かります。
これを整理したものを図10に示します。

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 以上の確認は直流での話でしたが、例えば図11のようにグリッドに直流の-0.2Vを印加しこれに交流信号を重畳させた場合を考えてみます。
交流信号の大きさを0.2Vp-pとすればプラス方向(0V方向)に振れた場合-0.1Vまで振れますので、その時のグリッド電圧は-0.1Vです。
今度はマイナス方向に振れた場合、-0.3Vまでグリッド電圧が変化します。
したがってグラフ2の負荷抵抗線がグリッド電圧-0.1V~-0.3Vと交わる範囲内で変化し、プレートには2Vp-pの大きさとなって現れます。
グリッドの交流信号とプレートの交流信号の比が増幅度になりますからこの場合10倍です。
今度はグリッドとプレートの交流信号の位相について考えてみます。
グリッドに交流信号が無ければグリッド電圧は-0.2Vでプレート電圧は6Vの直流です。
交流信号がプラス方向(0V方向)に変化するとプレート電流は増加し、マイナス方向に変化すればプレート電流は減少します。
供給電源と負荷抵抗は固定値ですから、プレート電流の増加→プレート電圧の減少、プレート電流の減少→プレート電圧の増加となって、グリッドとプレートの電圧波形が反転します。

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グラフ3はプレート電圧Epを6V固定とした時のグリッド電圧Eg対プレート電流Ipの特性です。
手元にあった12AU7Aの中から任意に3本を選んで測定してみました。
筆者は真空管の特性バラツキがどのようなものなのか分からないのですが、こんなものでしょうか?

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グラフ4は本来の動作条件であるプレート電圧Epが100Vの時のEg-Ip特性です。
グラフ3と異なり、横軸および縦軸の数値に注意願います。
本来、このような特性で使用されるもので、1桁大きな値です。

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★12AT7の場合

グラフ5は12AT7のEp-Ip特性です。
12AU7Aと比較するとプレート電流が若干多く流れる特性です。
縦軸の数値がグラフ1と異なることに注意してください。

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グラフ6はEg-Ip特性ですが、縦軸/横軸の傾斜がグラフ3よりきつくなっていることに注意してください。

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★12AX7Aの場合

グラフ7のようにプレート電流がかなり小さな値です。縦軸/横軸の傾斜が他と比較してゆるやかに感じられます。

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グラフ8はEg-Ip特性ですが、傾斜がゆるやかです。

以上、3種類の真空管の低電圧動作時の特性を測定しました。
これを元に、増幅動作に必要な各定数を算出してみます。

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◎三定数

トランジスタのhパラメータなどのように特性を表すものとして真空管の場合、三定数というものを用います。
三定数の説明の前に等価回路について説明します。

図12 a ) は基本的な増幅回路です。
交流信号Viをグリッドに入力すると、プレート電流が変化し、これを負荷抵抗Rで電圧に変換します。
これが増幅作用ですが、交流信号から見れば、B電源、C電源はなんの作用をしていません。
具体的には直流電源は内部抵抗ゼロとして考えます。
したがって、交流信号から見ればB電源、C電源は抵抗ゼロですから図12 b ) のように各電源を削除(両端をショート)して考えます。

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今度は増幅度について考えます。
図13 a ) の等価回路を定電流源で表現すると図13 b ) になります。
定電流源はViにgmを掛けたもので、gmを相互コンダクタンスと言います。
コンダクタンスは抵抗の逆数、つまり、1/Rなので電圧Vに1/Rを掛けると V×(1/R) = I ですから電流です。
参考としてトランジスタのhパラメータでの等価回路を図14に示します。
この場合、hfeは定数ですからこれにベース電流の変化分⊿Ibを掛けたものですから電流です。
rpは内部抵抗と呼ばれるもので、図14のhパラメータにおける1/hoeに相当するものです。
hoeは出力コンダクタンスと呼ばれるコンダクタンスです。
コンダクタンスですから図14では1/hoeとして抵抗に変換しています。

定電流源の電流は図13 b ) のように負荷抵抗Rと内部抵抗rpの並列合成抵抗に流れます。
出力電圧Voはこの抵抗の両端電圧ですから①式で表わされます。
なお、マイナスの符号が付いているのは入出力の位相が反転することを表しています。
電圧増幅度AvはVoとViの比ですから、①式をViで割れば②式で表わされます。

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三定数は相互コンダクタンスgm、内部抵抗rp、増幅定数μの3つで③、④、⑤式に定義を示します。

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相互コンダクタンスgmは③式のようにプレート電圧Ep一定時におけるプレート電流Ipの変化分⊿Ipとグリッド電圧Egの変化分⊿Egの比です。
電流を電圧で割っていますので、これはコンダクタンスです。
オームの法則で電圧Vを電流Iで割れば、V / I = R になりますが、I / V = 1 / R です。

抵抗の単位はΩですが、コンダクタンスの単位はΩの文字を上下反転させた「モー」です。
(ワープロでこの文字が出ないのでご容赦願います)最近では「モー」の替わりにジーメンス(記号はS)を用います。
内部抵抗は④式のとおりプレート電圧の変化分⊿Epをプレート電流の変化分⊿Ipで割ったものですから抵抗です。
意味はプレートを外から見た時にプレート内部に抵抗が存在するということです。

増幅定数μは増幅率とも言い、⑤式のようにプレート、グリッドの各変化分の比です。
これについては後で説明しますが、各定数の間には⑥式の関係があります。

各定数は特性グラフから読み取ることができます。
グラフ9は12AU7Aのプレート電圧Epが一定時のグリッド電圧Egとプレート電流Ipの特性です。
相互コンダクタンスgmは③式の定義により変化分の比ですから、Egが-0.2V近辺での値を読むことにより求められます。
他の定数についても必要なグラフを作成し、読むことにより求められます。
⑥式から分かるように3つすべてを求めなくても2つが分かれば残りの1つは計算で求められます。
図15に今回測定したデータから必要なグラフを作成して求めた三定数を示します。
gmとrpはグラフから求め、残りのμはμ = gm × rp で求めました。

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電圧増幅度Avは②式に各定数を入れれば求まりますので図15のように負荷抵抗Rが47kΩでは9.6倍と計算され、グラフ2での作図による結果と、ほぼ一致します。

以上、gmとrpを用いて増幅度を計算しました。
三定数の残りのμですが、これは以下のように用います。
図13ではViにgmを掛けた電流源で考えましたが、この部分を電圧源で考えた等価回路を図16に示します。

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μは定数ですからこれに電圧を掛ければ電圧です。
図16のVi・μは入力信号Viがμ倍されて現れることを示しています。
内部抵抗rpは負荷抵抗Rに対して直列になっていることに注意してください。

出力電圧Voは電圧源からの電圧をrpとRで分割したものですから⑦式で表わされ、電圧増幅度はこれを入力電圧Viで割ったものになりますから⑧式で表わされます。
図17にμを用いた計算結果を示します。
結局、増幅度はgmまたはμを用いても結果は同じです。

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今回の実験から読み取った各真空管の三定数を表1に示します。
プレート電圧Epが100V時のデータは参考文献の「オーディオ用真空管マニュアル」から抜粋しました。
各真空管の特徴は12AX7Aと12AT7は高μ、12AU7Aは中μと表現されています。
この特徴は低電圧動作でも変わらないと思われます。

表1 各真空管の三定数

12AU7A 12AT7 12AX7A
Ep=6V Ep=100V Ep=6V Ep=100V Ep=6V Ep=100V
相互コンダクタンスgm 0.58mS 3.1mS 2mS 4mS 0.26mS 1.25mS
内部抵抗rp 25.6kΩ 6.5KΩ 21.2KΩ 15kΩ 250KΩ 80kΩ
増幅定数μ 14.8 20 42.4 60 65 100

Ep=100V時のデータは「オーディオ用真空管マニュアル」から抜粋

gmの値は表1のとおりミリジーメンスです。
この値がどれほどのものなのか分かりにくいと思いますので、トランジスタの場合で考えてみます。
図18はhfeを用いた等価回路で増幅度は⑨式で求まります。
交流に対する電流増幅率hfe、入力抵抗hie、出力コンダクタンス(1/hoe)の3つが分かれば計算できます。

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図19は真空管の例と同じように相互コンダクタンスgmで表現した等価回路で、⑩式にこの場合の増幅度の計算式を示します。
相互コンダクタンスgmと出力コンダクタンス(1/hoe)の2つが分かれば計算できます。

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gmはトランジスタのコレクタ電流(動作電流)の大きさで決まります。
周囲温度によってこの値が変化するのですが常温(23℃くらい)では1mAのコレクタ電流を流した時に約39mSです。
この値はコレクタ電流値と比例関係があり、例えば0.1mAのコレクタ電流では1/10の3.9mSになります。

図20はトランジスタでの計算例です。
今回の真空管実験と同じ条件(電源電圧、負荷抵抗、動作電流)としてあります。
コレクタ電流が0.1mAですからこの時のgmは3.9mS、1/hoeは1.4MΩと過程しています。
1/hoe≫R ですからこれの並列合成抵抗値は、ほぼRです。
これにより計算すると増幅度は183.3倍です。
表1における低電圧動作でgmの値が大きいのは12AT7の2mSです。
ただし、トランジスタと比較すると内部抵抗rpが21.2kΩとかなり低いです。
トランジスタではrpに対応する1/hoeが高いので、数10kΩの負荷抵抗では増幅度の点からは有利です。

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参考として接合型FETでのgmの計算例を図21に示します。
IDSSはドレイン飽和電流と呼ばれるものでゲート・ドレイン間電圧VGSがゼロの時に流れる電流です。
この値はバラツキがあるのでYランク、GRランクなどと分類されています。
VGS(OFF)はドレイン電流がゼロ(厳密にはゼロの測定はむずかしいので0.1μA、1μAなどで規定)の時のVGSです。
gmは⑪式で計算でき、図21の各値は2SK30ATMのデータシートから読み取った値です。
(読み取り誤差についてはご容赦願います)真空管の場合もそうですが、VGSのポイントでgmの値は異なります。
VGSが-0.8Vのポイントでのgmは3.06mSと計算されます。

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各デバイスのgmについて比較しました。
gmの値だけで性能の優劣は付けられませんが真空管の場合、内部抵抗rpを無視することができません。
トランジスタ、接合型FETは内部抵抗(出力コンダクタンス、ドレイン抵抗)が大きいのでほとんどの場合、この成分を無視して考えることができます。

◎測定について

真空管に不慣れなことと特性を把握していないことで低電圧特性を測定しました。
参考として今回用いた機材を写真3~5に示します。

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(電源 PMC18-1A)KIKUSUI
0V~18V/0A~1A CV/CC。ヒーター電源用。

(電源 PA18-3A)KENWOOD
0V~18V/0A~3A CV/CC。B電源用。

(電源 PA350-0.2B)KENWOOD
0V~350V/0A~0.2A CV/CC。B電源用。

(電圧、電流発生器 R6144)ADVANTEST
32V/160mA 1μV/100nAステップ。グリッド電圧用。

(マルチメータ AD7461A)ADVANTEST
プレート電流測定用。

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電源はデジタル表示が楽です。
電圧設定は今回の使用機器ではボリュームですが、キー入力設定のほうが操作は早いです。
ヒーター用電源はデジタル表示である必要はありません。
ヒーター電流は電源投入直後に安定化電源を用いると1Aを超えます。
これは突入電流によるもので、このままでは真空管が少し心配ですから、電源のCC設定で0.4~0.5Aくらいに設定しておきます。
このように設定して電源ONすれば数秒で定格の0.15Aくらいに落ち着きます。
なお、電源のCVは定電圧、CCは定電流の意味です。
B電源用のPA18-3Aは最大出力電流が3Aですが、プレート電流は数mAですから、出力設定値を数10mA程度にして実験を行っています。
不要に出力電流が流れるのはトラブルの元です。
真空管は電源投入直後安定していません。
少しエージングを行ってから測定開始すれば安定なデータになります。
ちなみに、1本の真空管データをとるのに私の場合、約20分ほどかかっています。

写真4、5は実験機シャーシの様子です。
不要になった金属ケースを利用し、各種真空管ソケットが実装できるように加工してあります。
シャーシ横にも各種コネクタが実装できるようになっています。

参考として今回測定した12AU7Aのデータを表2~4に示します。
表2.3はグラフ1の元データで、横に書ききれなかったので表を2つにしています。
表4はグラフ3の元データです。

表2 12AU7A Eg 0V~-0.7Vまで

Ep(V)Eg=0Eg=-0.1Eg=-0.2Eg=-0.3Eg=-0.4Eg=-0.5Eg=-0.6Eg=-0.7
1 0.048 0.025 0.012 0.005 0.002 0
2 0.085 0.047 0.024 0.012 0.005 0.002 0
3 0.128 0.075 0.042 0.022 0.011 0.005 0.002 0
4 0.175 0.11 0.065 0.036 0.019 0.01 0.004 0.002
5 0.228 0.15 0.093 0.055 0.031 0.016 0.008 0.004
6 0.286 0.196 0.128 0.08 0.047 0.027 0.015 0.007
7 0.348 0.246 0.167 0.109 0.067 0.04 0.023 0.012
8 0.414 0.302 0.212 0.143 0.092 0.057 0.034 0.019
9 0.484 0.363 0.262 0.182 0.12 0.078 0.049 0.029
10 0.555 0.427 0.317 0.226 0.156 0.104 0.067 0.042
11 0.629 0.493 0.375 0.275 0.195 0.134 0.09 0.058
12 0.705 0.563 0.437 0.328 0.238 0.169 0.115 0.077
13 0.785 0.637 0.504 0.386 0.287 0.208 0.147 0.1
14 0.867 0.712 0.571 0.447 0.339 0.251 0.181 0.127
15 0.951 0.79 0.643 0.511 0.397 0.299 0.22 0.159

表3 12AU7A Eg -0.8V~-1Vまで

Ep(V)Eg=-0.8Eg=-0.9Eg=-1
1
2
3
4 0
5 0.002 0
6 0.004 0.001 0
7 0.006 0.003 0.001
8 0.01 0.005 0.003
9 0.017 0.009 0.005
10 0.025 0.014 0.008
11 0.036 0.022 0.012
12 0.05 0.03 0.019
13 0.067 0.043 0.027
14 0.087 0.058 0.037
15 0.111 0.076 0.051

表4 12AU7A Ep = 6V固定

12AU7Ep = 6V 固定
Eg(V) No.1 No.2 No.3
-1 0.005 0.005 0
-0.9 0.009 0.009 0.001
-0.8 0.017 0.014 0.004
-0.7 0.029 0.024 0.007
-0.6 0.049 0.038 0.015
-0.5 0.078 0.06 0.027
-0.4 0.12 0.091 0.047
-0.3 0.182 0.134 0.08
-0.2 0.262 0.192 0.128
-0.1 0.363 0.269 0.196
0 0.484 0.367 0.286

参考資料・文献

・「ステレオ・アンプの設計自由自在」 奥沢清吉 著 誠文堂新光社 昭和44年
・「オーディオ用真空管マニュアル」 一木吉典 著 ラジオ技術社 昭和62年

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