オーディオ
フォノ用ヘッドホンアンプの製作 製作編
◎基板設計
図16に基板サイズと部品配置図を示します。
(ジャックなどの機構部品は部品表の部品番号と一致していますが、電子回路部の部品番号は一致していません)
図17はケースの部品配置です。フロント側にボリューム、ヘッドホンジャックを配置し、RCAピンジャックはリア側です。
これを元に基板上の部品を配置しています。
基板は75mm×100mmの片面(NZ-P10K)です。
ボリュームを基板実装したかったのですが、ケースとの位置合わせが面倒になり、
パネル実装としています。
図16のように片面でこのサイズの場合、部品点数はこれが限界です。
▽クイックポジ感光基板 片面 1.6t×75×100【NZ-P10K】
http://www.marutsu.co.jp/SearchCategoryList.jsp?path=&q=NZ-P10K
◎基板製作
写真1に基板の様子を示します。
2時間ほどで部品実装することができました。
◎ケース組み込み
ケースは本装置専用のものをケース屋さんで製作してもらう予定です。
とりあえず、市販のケースを加工して基板を組み込みました。
用いたケースはTAKACHIのYM-150で、その様子を写真2に示します。
シルバー部がこのケースの本来のカバーになるのですが、今回はこれをシャーシとし、黒のケースをカバーとしています。アースターミナルはレコードプレーヤ用です。
レコードプレーヤからの接続ケーブルはL/Rの信号とGND接続用があり、GND線は
本装置の信号GNDに接続する必要があります。(図18)
▽YM型アルミケース【YM-150】
http://www.marutsu.co.jp/SearchCategoryList.jsp?path=&q=YM-150
アースターミナルはシャーシ(リア側)に取り付け、基板のGNDとは図19のように電気的に接続されます。
基板の4隅の取付穴は1か所のみGNDパターンと接続されています。
基板は金属スペーサでシャーシに固定するので、電気的にアースターミナルと基板GNDが接続されることになります。
GNDのランド部ははんだを少し盛っていますが、菊座ワッシャ(菊座金)などを用いれば、さらに良いかもしれません。
◎電気的特性の測定
各部の電圧、波形などを一通りチェックした後、主な電気的特性を測定してみました。
測定系統図を図20に示します。
電源は市販の安定化電源を用い、ヘッドホン出力のダミー抵抗は33Ωです。
★イコライザーアンプ部ゲイン
設計値は+34.1dBです。
用いている抵抗の誤差は±5%品ですが、ほとんどずれていません。
これは偶然の結果です。
表6
ゲイン | |
---|---|
Lch | +34.1dB |
Rch | +34.2dB |
★RIAA偏差
意外な結果です。
用いている抵抗とコンデンサはどちらも誤差±5%品ですが、20Hz以外はほとんどずれていません。もう少しずれが大きいと思っていました。
20Hzにおいて偏差が大きいのはヘッドホンアンプ出力部の周波数特性の影響と思われます。約2dBのずれですが、これが実際の音楽でどのような影響を与えるかは筆者には不明です。
したがって、この件に関しては筆者の許容範囲ということで結果OKとします。
なお、100μFのコンデンサ容量を大きくすれば改善されると思います。
表7
周波数 | Lch | Rch |
---|---|---|
20Hz | -2.2dB | -2.32dB |
100Hz | -0.05dB | -0.06dB |
10kHz | +0.01dB | -0.02dB |
20kHz | 0 | -0.04dB |
★SN比
比較機種がないので、こんなものでしょうか。
表8
SN比 | |
---|---|
Lch | 81.8dB |
Rch | 82dB |
(条件)
1kHz 0.5V出力時
JIS-A
入力47kΩ終端
★チャンネルセパレーション
数値に関しては、まずまずの性能と思います。
数値のアンバランスの原因はGNDの影響なのかまたは部品配置などが考えられます。時間が無くて解析できていません。
表9
L→R | -61dB |
R→L | -69dB |
L→R-61dBR→L-69dB(条件)
1kHz 0.5V出力時
JIS-A
入力47kΩ終端
★最大出力
ひずみ率が1%となるポイントの出力です。
これについては前回、見込んでいて、ほぼ見込(予想)どおりの結果です。
表10
電圧 | 電力 | |
---|---|---|
Lch | 1.16V | 40mW |
Rch | 1.16V | 40mW |
(条件)
ひずみ率1%
★ひずみ率特性
THDNで測定しています。
0.5V時に若干悪化しているのが不明で、用いたオーディオアナライザのせいかもしれません。とりあえず、この項目については深追いをしないことにします。
表11 ひずみ率特性
出力(V) | Lch | Rch |
---|---|---|
0.1 | 0.041 | 0.041 |
0.2 | 0.017 | 0.017 |
0.3 | 0.0125 | 0.0134 |
0.4 | 0.009 | 0.0086 |
0.5 | 0.0093 | 0.0094 |
0.6 | 0.007 | 0.0073 |
0.7 | 0.0062 | 0.0062 |
0.8 | 0.0046 | 0.0047 |
0.9 | 0.0014 | 0.002 |
1 | 0.0013 | 0.0017 |
◎試聴
★使用電源について
当初、手持ちのスイッチング方式ACアダプタ(24V)を考えていたのですが、型番によってはノイズが入って使えませんでした。
測定時に用いた市販のシリーズ型電源(A&DのAD-8723)であれば問題ありません。
(注意:この型番は現在販売終了品。後継機種はあるようです)
この電源は実験等で普段用いていますので、、本装置専用の電源を自作しようかと迷っていました。
結局、手持ちのスイッチングACアダプタをすべて実験した結果、以下の型番の場合ノイズが聞えないので、これを本装置専用としています。
▽型番:ATS065-A240
メーカー:Linkman
http://www.marutsu.co.jp/GoodsListNavi.jsp?path=&q=ATS065-A240
★試聴
今までレコードをヘッドホンで聴くという発想が無かったので、作って良かったなと実感しています。
実験的に、一般のカーボン抵抗とオーディオ用抵抗を載せ替えて比較してみたのですが、筆者には音が変化したように感じられました。
◎まとめ
ヘッドホンアンプを内蔵したイコライザーアンプを製作しました。
今、仕事場のメインデスクの脇にプレーヤを置いて聴いています。
オペアンプを用いたので部品点数を少なくすることが出来、コンパクトに仕上げることが出来ました。
レコードは中古品を時々買っているのですが、大人買いをしてしまいました。ケースは今回、仮の姿です。
ケース屋さんで出来上がりましたらレポートしたいと思います。
◎参考 ケース加工図を公開中です。加工の指示書作成のご参考にどうぞ
今回製作したケースの加工指示書を下記に公開中です。
◇マルツではケース加工サービスも承ります。
http://www.marutsu.co.jp/pc/static/business/case_kakou/index
>>お見積、ご注文は、上記のリンク先からお願いいたします。
◇ケース加工発注の参考にどうぞ。マルツの技術情報「ケース加工図面の描き方」
http://www.marutsu.co.jp/pc/static/large_order/case-kakou