教育分野

懐かしのラジオで、ラジオの基本をおさらい 第2回

◎各半導体式ラジオ

感度比較用の半導体式ラジオを紹介します。特にことわりのない限り、現在製造、販売されていません。

★ACE AR-606 6石スーパーラジオキット

写真17はACEの6石スーパーラジオキットAR-606です。
この機種を組み立てられた方も多いと思います。
私はこの6石ではなく、8石のAR-808を組み立てています。
たぶん、ラジオ製作は1石ラジオから始まり、その次に8石スーパーラジオを組んでいると思います。
2台目のラジオ製作にしては8石はかなりハードルが高いのですが、見事に完成しています。

6石のAR-606は20年ほど前に青空骨董市で見つけたもので、そのお店の数m先からこのラジオが分かりました。
私が製作した8石タイプではありませんが、その場で音が出るか確認して購入しています。
ケースが凝った作りになっています。
2石、4石などのラジオは完成品もありましたが、このキットの完成品があったのかは分かりません。

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このラジオの販売開始時期が分かりません。
昭和40年代中ごろには雑誌に登場しています。
私もそのころに組み立てていて、ゲルマニウムトランジスタです。
図8のように標準的な構成で現在でもこのようなキットは販売されています。
異なるのは用いるトランジスタが現在ではシリコントランジスタになっていることです。
シリコントランジスタとゲルマニウムトランジスタには音の差があるのでしょうか?

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スーパーラジオは組立後にIFTなどの調整が必要です。
放送局を受信しながらでも調整可能ですが、写真19のテストオシレータがあると便利です。
ラジオ調整用の簡易的な高周波発振器で、写真20のように1KHz、100Hzなど周波数を細かく設定することはできませんが、スーパーラジオなどの調整には十分です。
IFT調整用に455KHzの周波数ポイントにマークがあります。
なお、LSG-17は現在、製造・販売されていません。

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★HOMER 4SP-420 4石レフレックスラジオキット

写真21はHOMERの4石レフレックスラジオで、これも金属パネルを用いて高級感があります。
タバコの箱より若干大きいサイズでスピーカを内蔵し、胸ポケットに入ります。
このキットは昭和61年に購入したもので、トランジスタはシリコンです。
組み立てないで保存していたのですが昔のレフレックスラジオの音が聴きたく、とうとう数年前に組み立ててしまいました。
感度、選択度などはスーパーラジオに劣りますが、素直な音だと思います。
今、このレポートを書きながら高校野球放送を聴いています。
疲れない音がいいですね。

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レフレックスラジオには思い入れがあり、最初に購入したラジオがACEのAR-205という2石レフレックス(スピーカ式)の完成品です。
図9のブロック図では電力増幅(スピーカアンプ)がプッシュプルですが、2石スピーカ式の場合、低周波増幅部を1石の電力増幅に構成したものと思われます。
その後、1石ラジオ、8石スーパーの製作になるのですが、ずいぶん大人になってからAR-205のキットを製作したく探したものです。

★ACE AR-102 1石レフレックスラジオ

写真23はACEの1石ラジオで、トランジスタはゲルマニウムです。
このラジオの記憶がなく、はんだ付けがきれいなので完成品で購入していると思います。
ACEのイヤホン式には2石のAR-200などがあり、添付のラジオキットカタログを見ると、写真23に外観がそっくりなAR-100が掲載されています。
AR-100はパネルがブラックで、AR-102との違いが分かりません。
1石のレフレックスは実用的ではありませんが、とりあえず比較してみようと思います。

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★SONY TR-84 8石スーパー

写真25のラジオはキットではありません。
SONYのTR-84スーパーラジオで、昭和34年ごろの販売と記憶しています。
トランジスタはゲルマニウムのようなのですが型番が分かりません。
ポリバリコンではなくエアバリコンを用い、抵抗はカラーコード表示なのですが、形状が今のものと異なります。
これは中古で購入しています。たぶん、55年くらい経過しているはずなのですが、元気に鳴っています。
バーアンテナの長さが16cmほどあり、パネルに「Super Sensitivity」の文字があります。
電源は単2電池を3本用い、スピーカはマグネットが大きい直径9cmくらいのもので、このラジオから出てくる音が気に入っています。

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★Panasonic RF-U700A

写真27が私の最新式ラジオPanasonicのRF-U700A、数年前に新品で購入しています。
ジャイロアンテナが最大の特徴です。
通常のバーアンテナはラジオ本体に固定されていますが、バーアンテナ部を回転させることで受信状態を良くすることができます。
受信感度が良い方向にラジオを向けてもスピーカと聴く位置が合わない場合があります。
このような時、ラジオを聴きやすい位置に設置してバーアンテナを回転させれば良いので便利です。
なお、RF-U700Aは2015年3月現在、販売されています。

写真28は昔のBCLラジオCOUGAR115です
ジャイロアンテナを搭載したラジオがいつごろから登場したのか分かりません
1970年代にBCLブームがありました
COUGAR115はその当時のもので、各メーカーからそれぞれ特徴のあるラジオが販売されていました
SONYのスカイセンサー5800、三菱のジーガム、サンヨーのラシーバなどで、特にスカイセンサー5800にはあこがれたものです
学校のクラスの中でこのようなラジオを持っている人は2~3人いたと思います
私はこのようなラジオを買うことができなかったので、写真29の0-V-2キットを製作し、これで短波放送を受信していたものです
5800と0-V-2、ずいぶん違いますね
当時のカタログが残っていて同じものが3部あります
この当時のカタログ請求はハガキです
スカイセンサー5800、new5500、5500、5400の4機種が並んでいて、これを見ると全部欲しくなります
115と5800はずいぶん大人になってから(1990年ごろ)中古で購入することができました

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◎受信比較

★受信条件

AM(中波)放送は昼間と夜間で受信状況が異なり夜間のほうが遠くの放送局を受信することができます。
ただし、混信などの状況が悪化する場合がありますので、昼間に比較することにしました。
時間帯はお昼です。
図10に使用アンテナと環境を示します。
真空管式ラジオは外部アンテナを使用します。
アンテナ(線)は長いほど感度が上がるのですが、逆に混信がひどくなる場合があります。
そこで3mほどの短いアンテナとし、SA端子に接続します。
半導体式ラジオはすべて内蔵バーアンテナです。
建物はプレハブです。
室内から窓際にアンテナを張り、半導体式ラジオは最大感度となるようにバーアンテナ(本体)の向きを放送局により変えます。
ビルなどの高い障害物はありません。
周囲は田んぼと畑なので受信環境は良いです。

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★比較結果

表3は私の住んでいる地域で受信できる放送局の一覧です。
正確には送信所の地点と距離などが重要になりますが、調べるのが大変なので周波数、局名、送信出力を記入してあります。
ちなみに、NKHの送信所が私からは一番近い位置関係になっています。
結果はSINPOコードで表しています。
SINPOコードとは数字で受信状態を表すもので、感覚的なものです。
Sは信号強度のことで、数字が大きいほど電波が強く、Iは混信の程度を表します。
Nの雑音、Pの伝搬障害も含めてOで総合的に表します。
例えば、SINPO = 45454 であれば、信号が強く、混信は無し、雑音は少しで伝搬障害も無く、総合的に良いという意味です。
一般的に地元局を受信した場合が一番良好ですから55555になります。
点数は直観的に付けました。
人によっては点数が異なると思いますが結果についてはご容赦願います。

表2 SINPOコード

数字信号強度S混信I雑音N伝搬障害P総合品位O
5 最も強い なし なし なし 最も良い
4 強い 弱い 弱い 弱い 良い
3 良い 中位 中位 中位 中位
2 弱い 強い 強い 強い 不良
1 微弱 最も強い 最も強い 最も強い 不可

伝搬障害:フェーディング
(参考資料)アマチュア無線入門ハンドブック CQ出版社 昭和49年

表3 受信比較結果 (受信日 2015年4月21日 11時~14時)

RF-U700A5球
スーパー
高1ラジオ3球ラジオ
(再生式mT)
3球ラジオ
(再生式ST)
8石
スーパー
TR-84
6石
スーパー
AR-606
4石レフ
4SP-420
1石レフ
AR-102
594KHz
NHK第1
300KW
55555 55555 55555 45554 35554 55555 55555 55555 55555
693KHz
NHK第2
500KW
55555 55555 55555 55555 45554 55555 55555 55555 55555
810Hz
AFN
50KW
55555 55555 ①24553 35554 25453 45454 45555 × ×
864KHz
栃木放送
那須
1KW
15242 × × × × 25342 15251 × ×
954KHz
TBS
100KW
45555 45555 45554 35553 25453 45555 45454 ①21452 ×
1062KHz
栃木放送
足利
1KW
35353 35353 ②24253 25453 15451 35353 35353 × ×
1134KHz
文化放送
100KW
55555 55555 55555 45554 25453 45555 45555 ①44554 ①34554
1197KHz
茨城放送
水戸
5KW
25252 25353 × × × 25252 25252 × ×
1242KHz
ニッポン放送
100KW
35353 35454 25353 25453 25453 35353 35353 × ×
1422KHz
ラジオニッポン
50KW
35353 25353 × 15451 × 35353 25353 × ×
1458KHz
茨城放送
土浦
1KW
25252 25252 25252 25452 × 25253 25253 × ×
1530KHz
栃木放送
宇都宮
5KW
25152 × × × × 35152 25152 × ×

×受信できず
① 693KHz混信
② 1134KHz混信

(全般的な点)

やはり、真空管、半導体によらずスーパー方式は安定して受信できています。
私の所からは864KHzの局が受信条件が悪いのですが、6石のスーパーキットAR-606でも確認することができています。

(真空管式の方式の違い)

真空管式ラジオはスーパー、高1、再生式の3つの方式です。
スーパーが一番性能が良いことはもちろんですが、高1と再生式の比較が面白いです。
図11にブロック図を示します。
a ) の再生式は正帰還をすることにより感度アップと選択度(分離)を良くする方式です。
これに高周波増幅を追加すれば b ) の高1ラジオになるわけですが、今回用いた高1ラジオは c ) の方式です。
この方式は検波を2極管検波とし、これに高周波増幅を追加したものです。
表3の結果から感度の点では高1のほうが再生式より優れています。
しかし、高1は810KHzと1062KHZでは混信が発生しています。
作り方にもよると思いますが、今回の比較では高1よりも再生式のほうが総合的に良い結果です。

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▽アンテナについて

真空管式ラジオすべてが864KHzと1530KHzを受信することができていません。
用いたアンテナは3mほどのものですが、窓際に設置しているので固定です。
アンテナの向きを調整すれば受信できるのかもしれません。
半導体式はバーアンテナです。
図12のように一般的にはバーアンテナはラジオ本体に固定です。
最大感度となるようにラジオ本体の向きを変える必要があるのですが、ジャイロアンテナは本体はそのままでアンテナを回転させて向きを変えることができます。
また、最大感度ではなく向きにより混信が緩和されるので便利です。

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▽レフレックスラジオについて

他の方式と比べて感度、選択度が劣ります。
表3には明記していませんが、2台とも同調ダイヤル700KHzから上では常に594KHzと693KHzが混信したままです。
4石の4SP-420では1134KHz受信時にバーアンテナの向きを変えて混信を緩和することにより総合評価を4としています。
私の地域では594KHzと693KHzが地元局であり、送信出力も大きいです。
このような状況なので混信が特にひどいのかもしれません。
この結果からレフレック方式は地元局専用のラジオと言えそうです。
音に関してはスーパー方式特有のノイズがないので、素直な音で疲れません。

◎まとめ

細かく評価できていないところがあると思いますが、結果をまとめます。

(スーパー方式)

・感度、選択度の点で優れている。
・6石キットなどでも十分実用的。

(高1、再生式)

・地元局用途で実用的。
・雑音が少ない。

(レフレックス方式)

・選択度は劣るが地元局専用。
・雑音が少ない。

「オレの再生式ラジオは感度も選択度も良い」と言われると困ります。
製作方法によっても性能が変わることもありますので、今回の比較はあくまでも私の自作品と各コレクションでの結果です。
現在ではラジオと言えばスーパー方式ですが、高1、再生式、レフレックスなどもそれぞれ特徴があり、侮れないところがあります。
高1、再生式、レフレックスはスーパーと比較すると性能は劣りますが、ノイズが少ないことが良い点です。
今回の高1ラジオは図11 c ) の方式でしたが、図11 b ) の方式を製作し、比較するとどうなるか興味のあるところです。
真空管式レフレックスラジオを製作したことがないことに気づきました。
このテーマも面白そうです。
いずれにしてもラジオ製作の趣味はやめられません。

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