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スーパーキャパシタを使用してIoTノードをブラウンアウトから保護

著者 Bill Giovino 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-08-25

マルツ掲載日:2020-12-14


 IoTや産業用IoT(IIoT)のネットワークを、住宅地と同じパワーグリッドを電源として使用すると、それらのネットワークは電力の変動や電圧低下、数十秒間の完全な停電の影響を受けます。

 ステートレスノードは電源が入ったときに動作を再開できますが、ステートを持続的に維持しなければならないノードは電源が入るとリセットされ、ネットワークの誤動作や遅延、性能低下を引き起こす原因になります。

 リセットを回避する1つの方法にバックアップ電池がありますが、電池の寿命は限られており、デバイスの寿命を考慮するとコストが割高になる可能性があります。代わりに、スーパーキャパシタ(定格が1F以上の有極性電解コンデンサ)を使用できます。

 この記事では、重要なプロセスを実行しているIoTやIIoTデバイスへの給電を維持することの重要性について説明します。次に、AVX CorporationとIllinois Capacitorから提供される2つのサンプルデバイスを使用して、ブラウンアウトや電力低下の保護にスーパーキャパシタを応用する方法について説明します。

IoTノードを住宅用主電源で使用する際の問題

 重要なプロセスを実行する産業施設には、電力会社の一時的な停電に備えて、バックアップ用の発電機が設置されていることがよくあります。冗長性と複数の発電機を備えていれば、停電がよほど長時間続かない限り電力を常に維持できます。

 また、メインのパワーグリッドから専用パワーラインを敷設している工場もあり、これにより電力供給を持続的に確保し、グリッドの他の部分が停電しても影響を受けずに済みます。

 小規模や重要でないIoTノードの多くは、高価なバッテリバックアップシステムを持たないエリアの一般家庭が使用するのと同じ住宅地用パワーグリッドの電力を使用しています。ネットワークの設計によっては、ブラウンアウトや一時的な電源喪失が原因でシステムがリセットされ、マシンがシャットダウンして、データ喪失やパフォーマンス低下が生じる可能性もあります。

 このようなデータ喪失を防ぐには、いくつかの方法があります。ガソリンや天然ガスで駆動する補助発電機を使えば長時間にわたって給電できますが、材料や設備の面で高価です。補助発電機には定期的なメンテナンスやテストも必要になります。これらのコストや作業の増加によって、IoTネットワークがコスト効率の良いものではなくなり、当初の目的に照らして実用的でなくなる可能性もあります。

 もう1つの選択肢は、バッテリバックアップユニットです。このユニットは鉛蓄電池を使用しており、短期間であればバックアップ電力を賄うのに確実な方法です。ただし、定期的な検査やテストが必要になります。

 また、鉛蓄電池の寿命は限られており定期的に交換する必要もあるので、その分コストと作業が増えます。さらにメンテナンスが複雑になる要因は、バッテリバックアップユニットの鉛蓄電池が予想通りに故障せず、停電時にアクティブになった途端に故障する可能性があることです。

 補助発電機とバッテリバックアップユニットはどちらもかさばり、さらなるスペースも必要になります。小規模なIoTネットワークにこれらのソリューションを実装するのは、現実的でないか不可能です。

 一般的な選択肢には、IoTノードに小さなバックアップバッテリを設置する方法があります。この方法は、発電機やバッテリバックアップユニット(鉛蓄電池)に比べて安価です。リチウムイオン(Liイオン)電池はスペースをそれほど占有せず、必要なメンテナンスも限られます。

 しかし、Liイオン電池の寿命は限られており(充放電サイクルは500回ほど)、定期的なバッテリ交換が必要になります。Liイオン電池は、動作温度もごく限られています。氷点下の温度ではLiイオン電池の容量が減り恒久的な損傷にもつながる一方、非常に高温な場所ではバッテリが徐々に損傷し、熱暴走の原因にもなります。

 これに代わり、ブラウンアウトや短期間の電力損失時に一時的な電力を即座に供給する簡単でコスト効率の良い方法は、IoTノードにスーパーキャパシタを配置することです。

スーパーキャパシタの特性と機能

 スーパーキャパシタは、定格が1F以上の有極電解コンデンサです。コンデンサとして数秒で充放電できるので、IoTノードで短期的な充電式電池のように機能します。定電流放電によって、スーパーキャパシタ端子間の電圧は時間とともに直線的に低下します。

 スーパーキャパシタのサイクル時間は事実上無制限で100万サイクルを超えており、容量や寿命への影響なく常に充放電できます。化学電池とは異なり、スーパーキャパシタでの充電サイクルがコンデンサの誘電体や電極に与える影響は最小限です。スーパーキャパシタは熱や冷温に影響されにくく、Liイオン電池の損傷原因となる極端な温度でも安全に動作します。

 コンデンサの過充電は起こらないため、スーパーキャパシタの充電は簡単で、充電状態を維持するための高度な回路は必要ありません。ただし、有極性の端子に逆電圧を印加したりスーパーキャパシタに定格最大値より高い電圧を印加したりすると、寿命が短くなる可能性があります。

 スーパーキャパシタの選択は、トレードオフの連続です。もちろん、すべての条件が同じなら、容量が大きいほど給電できる時間が長くなります。しかし、容量が増えれば高コストになるだけでなく、サイズも著しく大きくなります。

 スーパーキャパシタはかさばる部品であり、特に後から大型スーパーキャパシタのスペースを確保する必要がある場合などは、プリント基板のレイアウトでスーパーキャパシタの長さと直径が重要な考慮点になります。

 アプリケーションによっては、プリント基板のサイズを増やすことが許容できない場合があり、スーパーキャパシタの容量が制限されます。スーパーキャパシタが大きいとIoTノード周囲の空気がうまく流れず、熱放散を妨げる可能性があります。これらはいずれも、ブラウンアウトや電力ドロップアウトの保護に使用するスーパーキャパシタを設計する際の重要な考慮事項です。

スーパーキャパシタの放電時間

 式1を使用してスーパーキャパシタの推定放電時間を計算し、電力損失が起きたときに回路を駆動できる時間の長さを適切に推定できます。

      (式1)

 ここで、式の要素は次のとおりです。

  tseconds:スーパーキャパシタが回路に電力を十分供給できる時間(秒単位)
  CFarads :静電容量(ファラド単位)
  Vmax    :放電初期時間のコンデンサの電圧
  Vmin     :コンデンサが回路への給電に不十分になる前に放電できる最小電圧
  Imax     :回路の最大(最悪ケース)電流消費(アンペア単位)

 あらゆるコンデンサと同様に、スーパーキャパシタにも等価直列抵抗(ESR)があります。ただしESRは、温度、コンデンサの電圧、電流消費に応じて変わります。1Fを超えるコンデンサ値の場合、ESRは10mΩ未満で、放電時間に対するESRの影響が最も少なくなります。

 ブラウンアウト保護で効果的に使用するために、エンジニアは目的の用途で式1を満たすことができるスーパーキャパシタを選択する必要があります。また開発者は、ブラウンアウトと電力損失をシミュレートした条件でシステムのテストを実施し、選択した基板コンポーネントを使用して実際の動作を観察する必要があります。

 コンデンサは当初、回路に必要な動作電圧より高い電圧に充電される場合があるため、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)によりコンデンサの電圧出力を管理することが推奨されます。

ブラウンアウトと電力低下のシンプルな保護

 数秒間のみライン電力が低下する場合の簡単なブラウンアウト保護、または1分間に満たない電力低下保護では、小型のスーパーキャパシタを使用して小規模なIoTノードの動作を維持できます。たとえば、AVX CorporationのSCMR22L105SRBB0 1.0Fスーパーキャパシタは、厚さ8mm、幅22mmのサイズです(図1)。

 このデバイスは過酷な環境に適し、動作温度範囲は-40℃~+65℃ですが、この温度でLiイオン電池を使おうとしても適しません。また、縦に実装するラジアルリード線により、プリント基板上のスペースを節約できます。


図1:SCMR22L105SRBB0はラジアルリード線付きスーパーキャパシタで、サイズは8mm×22mmです。(画像提供:AVX Corporation)

 SCMR22L105SRBB0ではESRがわずか840mΩであり、放電中の電力損失を非常に低く抑えます。最大充電電圧は9Vです。

 式1を使用して、消費電流80mAの簡潔なIoTノードの放電時間を計算できます。一般的な9V ACアダプタを使用してコンデンサを最大電圧まで充電する3.3Vシステムで、理想的な低ドロップアウトレギュレータ(LDO)を使用すると、この1.0Fコンデンサは最適な条件下で71秒間電力を供給できます。

 SCMR22L105SRBB0の静電容量許容差は定格温度/電圧で±30%のため、最悪ケースの静電容量0.70Fでは、80mAを50秒間供給できることが推定されます。これは個々のコンデンサの製造許容差に応じて異なるので、最悪ケースを想定して設計するのが最善の方法です。

 この例で最悪ケースの場合に50秒間電流供給できれば、SCMR22L105SRBB0はブラウンアウトの状況で電力低下に対応するのに十分すぎるでしょう。

 スーパーキャパシタをレイアウトするときは、リード線をパワートレースであるかのように配線して電磁妨害(EMI)を最小限に抑える必要があります。また、スーパーキャパシタの絶縁スリーブは、プリント基板などいずれの部品とも接触してはなりません。スリーブがはんだの極端な温度や外力によって損傷すると、スーパーキャパシタの金属缶が短絡し、回路の誤動作の原因になります。

 より高容量のアプリケーション向けには、Illinois Capacitor製の定格3.0V、400Fスーパーキャパシタ、DSF407Q3R0があります(図2)。このデバイスは直径35mm、長さ60mmで、前述のデバイスよりもかなり大きなサイズです。400Fスーパーキャパシタに逆極性を適用するとこの部品自体が破損するので、DSF407Q3R0にはキー付きの非接続ピンが2本あり、組み立て時の誤りを防ぎます。


図2:Illinois Capacitorの400Fスーパーキャパシタはサイズが直径35mm、長さ60mmのため、大きめの基板スペースが必要です。逆極性組み立て防止用に、キー付きピンが2本あります。(画像提供:Illinois Capacitor)

 式1において3V定格はそれほど印象的ではないかもしれませんが、400F定格によって十分な容量を確保できます。静電容量許容差は±30%で、最悪ケースの定格は280Fです。消費電流350mAの2.7Vシステムでは、式1により、コンデンサを3.0V定格に充電すると、400Fで標準的なスタンバイ電力の供給時間が343秒、最悪ケースの280Fでは240秒になります。

 これは理想的なLDOを想定しているため、インサーキットテストを実施し、ブラウンアウトや電力損失をシミュレートした条件でスーパーキャパシタの動作を確認することが重要です。

 400Fコンデンサは高温になる場合があるので、他の部品から適切に離すことが重要です。このコンデンサには上部にベントがあるため、熱を放散できるようにコンデンサ上方に十分なスペースを空ける必要があります。

結論

 スーパーキャパシタを使用することで、IoTやIIoTノードでブラウンアウトや短時間の電力損失状態が生じた場合にバックアップ電力を確保できます。Liイオン電池に比べて、スーパーキャパシタには実質的に無制限の充放電サイクル、優れた高電圧動作、高い効率と信頼性などの面で大きな優位性があります。

 住宅用AC電源で給電されるIoTやIIoTノードにスーパーキャパシタを適切に使用することで、メンテナンスとシステムのコストを削減しながら、ネットワーク全体の性能を向上させることができます。



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