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ペルチェモジュールの信頼性向上のための重要な要素

著者 Jeff Smoot 氏
VP of Apps Engineering and Motion Control at CUI Devices
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-05-19

マルツ掲載日:2020-09-07


 ペルチェモジュール(熱電クーラー(TEC))は、信頼性のあるソリッドステート構造と精密な温度制御機能により、使用される機会が多くなっています。このモジュールの基本的な仕組みは、電力が印加されると、熱がモジュールのある側からもう一方の側へと移転するというものです。

 設計におけるあらゆるコンポーネントと同様に、ペルチェモジュールの信頼性は重要です。そのため、ペルチェモジュールの実装と構造について基本的な知識を身に付けることは、適切なアプリケーションの設計に非常に役に立ちます。発展を続けるこの技術について技術者が理解できるよう支援するために、この記事ではペルチェモジュールの構造を簡単に確認し、全体的な信頼性向上のために回避が必要な、よくある故障の原因について説明します。

基本的な構造

 動作するパーツがないソリッドステートデバイスである熱電クーラーは、幅広い温度範囲で稼働することができます。大まかに言うと、ペルチェモジュールは、電気的に絶縁されているが熱を伝導する2枚のセラミックプレートの間に配置された半導体ペレットで構成されています。この半導体ペレットも、正または負の電荷のいずれかを運ぶようにドープされています。

 それぞれのセラミックの内面は導電性のメタルパターンでめっきされており、半導体ペレットがはんだ付けされています。これらは電気的には直列で、機械的には平行な状態で構成されています。この電気的な構成と機械的な構成が、温度に関するペルチェモジュールの基本的な動作原理を実現することになります。この原理では、セラミックの低温の面から吸収された熱が、セラミックの高温の面から放出されます。

 この基本的な動作原理と構造に関する詳細については、CUI Deviceのホワイトペーパーをこのトピックの詳しいリソースとして参照してください。


図1:一般的なペルチェモジュールの構造(画像提供:CUI Devices)

よくある故障についての説明

 ペルチェモジュールで最もよく発生する故障の原因は、半導体ペレットや関連するはんだ接合における機械的な断裂です。こうした断裂は、最初はペレットやはんだ接合の一部に留まっていますが、断裂がこの2つの領域全体に広がってしまうと、重大な故障が発生する場合があります。

 ただし、重大な故障が発生する前に、ペルチェモジュールの直列抵抗が著しく上昇し、全体的な効率が低下することから、こうした断裂を検知できる場合があります。

張力とせん断力

 ペルチェモジュールは一般に、TECモジュールの低温側が冷却対象に面して設置され、熱放散を向上させるために高温側にはヒートシンクが使用されているアプリケーションで使用されます。ただし、ヒートシンクと冷却対象が補助的な機械構造なしでセラミックプレートに取り付けられている場合は、TECモジュール全体に大きなせん断力や張力が発生することがあります。

 ペルチェモジュールではこうした負荷に耐えることが想定されていないことから、このような力によってモジュールが壊れたり、別の機械的な故障が発生したりする可能性があります。


図2:一般的なペルチェモジュールアセンブリにおける張力とせん断力の様子(画像提供:CUI Devices)

 このようなせん断力や張力に対処するために、多くのペルチェモジュールは対象物とヒートシンクの間でクランピングされています。これは、ペルチェモジュールがクランプからの大きな圧力に耐えることができるためです。一方、クランプは、対象物およびヒートシンクからのせん断力や張力をすべて吸収することができます。


図3:ペルチェモジュールにかかる一般的な応力(画像提供:CUI Devices)

圧力

 クランピングによってペルチェモジュールに悪影響を与える力の多くに対処できる一方、適切に使用されないと、クランピング自体が問題の原因となる場合があります。ペルチェモジュールにヒートシンクや対象物をクランピングする場合は、必ずクランピングの力を均等にかけて、TECモジュールにかかるトルクの力を最小化し、損傷の可能性を低減する必要があります。クランピングの力が不均一だと、トルクと圧力が発生して、機械的な故障の原因となる場合があります。


図4:ペルチェモジュールに対する適切なクランピングと不適切なクランピング(画像提供:CUI Devices)

熱サイクル

 熱電クーラーのセラミックプレートと半導体ペレットには、それぞれに関連する熱膨張(CTE)係数があります。TECモジュールが加熱と冷却という熱サイクルを通過すると、セラミックや半導体のCTEの不整合が原因で機械的応力が発生し、半導体ペレットやはんだ接合で断裂が発生する場合があります。

 ペルチェモジュールの絶対温度の変化に加えて、モジュールの温度における変化の熱勾配や速度も、CTEによる機械的応力の原因となる場合があります。熱勾配が大きく、スルーレートが高温である極端な温度の中でのTECモジュールの稼働も、やはり機械的応力が発生する原因となる場合があり、デバイスが故障する可能性が高くなります。

外部の汚染物質

 外部の汚染物質への暴露も、ペルチェモジュールの半導体ペレット、はんだ接合、金属伝導パターンに対する機械的な故障の原因となる場合があります。こうした汚染物質への暴露を最小限にするために、一般にはTECモジュールの周辺、2枚のセラミックプレートの間にシーラントが使用されます。

 シーラントを使用するこの一般的な手法では、機械的な適合性に対応していることからシリコーンゴムがよく使用されています。ただし、厳しい稼働条件における蒸気バリアとしては、シリコーンゴムには効果がないことがあります。

 この問題に対処するため、湿度が高い環境では代替のシーラントとしてエポキシを使用できます。ただし、エポキシの機械的な適合性はシリコーンゴムに劣ります。最終的には、エンドアプリケーションとその稼働条件に応じて、どちらのシーラントを使用するか決定することになります。

信頼性の向上

 ペルチェモジュールのはんだ接合や半導体ペレットにおけるひび割れの原因となる機械的応力に対処するために、CUI Devicesが開発したのがarcTEC™構造です。この独自の構造は、信頼性、サイクル寿命、そしてパフォーマンスの向上のために、CUI Devicesの高性能ペルチェモジュールに実装されています。

 arcTEC構造では、TECモジュールの冷却面にあるはんだ接合を、はんだよりも機械的な適合性が高い導電性樹脂で置き換えることで熱疲労の影響に対処しています。これにより、従来のペルチェモジュールで発生する応力と亀裂の可能性を最小限にすることができます。残りのはんだ接合は、従来型で低温のビスマスはんだ(BiSn、138℃)よりも機械的応力への対処に優れている高温のアンチモンはんだ(SbSn、235℃)に置き換えられています。

 CUI Devicesのペルチェモジュールでは前述したシリコーンゴムの蒸気バリアも利用することができ、要望に応じてエポキシおよびその他の蒸気バリアを利用して、機械的な適合性を強化することができます。

 arcTEC構造の強化された信頼性を示すために、下のグラフでは熱サイクルの数に対する抵抗がプロットされています。抵抗の変化が多くなるにつれて故障の可能性も高くなることから、熱サイクルの数が多い場合は、標準的なペルチェモジュールに対して、CUI DevicesのarcTEC構造の方が性能が安定していることがはっきりと分かります。


図5:arcTEC構造の性能の方が信頼性が高いことを示しているグラフ(画像提供:CUI Devices)

結論

 機械的設置、稼働条件、外部の汚染物質など、ペルチェモジュールの性能ならびに信頼性の向上や低下の原因になる要因は多数あります。ペルチェモジュールを選択する場合は、適切な実装方法および稼働パラメータを確認することが重要です。

 CUI Devicesの多数のペルチェモジュールで使用されているarcTEC構造は、よくある故障の一部が発生する可能性を低減し、モジュールの全体的な信頼性を向上させるのに役立ちます。CUI Devicesは、豊富なサイズと熱定格のさまざまなペルチェデバイスを提供しており、技術者が熱管理のニーズに合わせて選べる多数の選択肢を提供しています。



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