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ワイヤレス環境発電スイッチを利用してIIoT施設で時間とコストを節約

著者 Bill Giovino 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-02-26
マルツ掲載日:2020-06-01


 産業用IoT(IIoT)の進歩によってセンサベースの監視が向上した結果、工場や製造設備における効率が高まっています。タッチスクリーンやメンブレンスイッチのようなヒューマンインターフェースデバイスの向上も、こうした状況を後押ししています。

 それでも、制御システムの耐久性や使いやすさを考慮して、機械的なスイッチが必要とされる場合がまだあります。問題が発生する可能性があるのは、制御対象の装置からある程度離れた場所からスイッチを使用しなければならない場合です。

 こうした状況として考えられるのは、フォークリフトの運転手が通用口を制御しなければならない場合や、制御対象のデバイスが、通常はアクセス不可能だったり、環境面で保護された場所に置かれたりしている場合などです。

 有線の使用が現実的でなかったり、費用が高くなったりする可能性がある場合の選択肢として適しているのがワイヤレススイッチです。ただし、ワイヤレススイッチを使用する場合もバッテリ寿命の影響があるので、充電やバッテリを定期的に交換するためのメンテナンスは必要になります。

 この記事では、ZF Electronics(旧Cherry Industrial Solutions)のバッテリレス環境発電スイッチを使用して、こうした問題に対処する方法について紹介します。

IIoTと環境発電スイッチのアプリケーション

 IIoTフレームワークへ移行する場合、既存の装置を利用できることがよくあります。特に従来型のウォールマウント装置や光スイッチが使用されている場合、電力はすでにこれらの場所で利用できるようになっています。

 ただし、製造設備の多くは、現在のアセンブリラインをすばやく撤去して、別の製品を製造するために簡単に再構成できるように構築されています。再構成はダウンタイムの面でコストが発生する可能性があるため、設計者や工場の技術者が次の候補として検討すべきなのは、再構成の期間を短縮できる技術やソリューションです。時間の節約に役立つソリューションの1つが環境発電スイッチです。

 工場で使用される機械の多くは、メインの制御ハブにネットワーク接続されており、一元的な場所から構成することができます。しかし、装置を工場現場で操作しなければならない状況もあり、こうした状況において、装置のある場所でシステムを制御することが現実的でなかったり、不便だったりする場合があります。

 こうした状況の例には、リモートでの扉の開閉、高電圧機器の作動と作動停止、装置エレベータの操作、バルブの開閉、環境面で保護されていたり高感度だったりする装置やデバイスの制御、通気システムの構成などがあります。

 また、動作スイッチを1か所に取り付けることができず、モバイルにしなければならない場合や、取り付け場所がガラスやコンクリートのため、取り付けブラケットを保持できない場合があります。

 こうした状況でのスイッチの用途は実に多様ですが、共通しているのは、通常の取り付け、有線接続、保守の手順が適用できない、非標準的なスイッチの用途だということです。通常とは異なるこうした用途のために、ZF ElectronicsはAFIS-5003環境発電ロッカスイッチなど、ワイヤレスでバッテリ不使用のスイッチを開発しました(図1)。このスイッチは自己完結型でメンテナンスの必要がなく、正常な動作のためにコンポーネントの追加が不要です。

   
図1:ZF ElectronicsのAFIS-5003は、外部電源やバッテリを使用しません。この製品は、スイッチが押されると生成されるエネルギーを使用して、ワイヤレス信号を送信するための電力を生成します。(画像提供:ZF Electronics)

 AFIS-5003の外見は標準的なロッカスイッチであり、標準の27mm×12mmの実装穴に取り付けることができます。ただし、背面に2つのコンタクト実装タブがある代わりに、このスイッチからは70mmのワイヤが1本、垂直に突き出しています。

 このワイヤはアンテナで、スイッチの動作を互換性のあるレシーバに送信するために使用されます。このスイッチは、スイッチが押されたときに生成されるエネルギーを変換することで電力を生み出しています。スイッチの一方を押し下げるには1.12ポンドの力が必要であり、この力は小さな内部発生器によって使用されます。

 この発生器は、一連の330µWの48ビットデータパケットを瞬時に送信するのに十分な電圧を出力します。このデータパケットはテレグラムと呼ばれ、互換性のあるレシーバに対してスイッチの状態を送信します。AFIS-5003は915MHzの帯域で送信を行い、テレグラムは3回送信されます。ただし、信頼性を強化するために、このスイッチは最大7回までテレグラムを送信できるように構成されています。

 各テレグラム送信間の遅延間隔は疑似ランダムに設定されるため、同時にアクティブ化される別のAFIS-5003スイッチなどによる周期的なRF干渉に対処するのに役立ちます。各テレグラムには、スイッチの一意のID番号、スイッチングの状態、当該スイッチの作動に対して送信されるテレグラムの合計数が含まれます。

 AFIS-5003スイッチは100,000の作動に対応すると評価されており、頻繁な使用に対する堅牢性を備えています。動作温度は-40℃~+85℃であるため、ほとんどの産業環境に適しています。

 このスイッチはIP40定格であるため、多少の粉塵には耐えることができますが、防湿性は備えていません。産業環境では、このスイッチを小型のエンクロージャに取り付けることをお勧めします。金属は無線信号の送信に干渉するため、エンクロージャはプラスチック製のものを使用してください。

 このスイッチは電源やバッテリの充電または交換を必要としないため、コストのかかる定期的なメンテナンスが不要になります。バッテリ寿命の診断が不要であるため、テレグラムの受信で問題が発生した場合のトラブルシューティングの負荷も軽減されます。

 さらに、スイッチに対して外部電源を稼働させる必要もないので、工場のレイアウトをシンプルにすることができます。このスイッチは必要に応じて別の場所にすばやく簡単に移動することができるため、スイッチと電源を再配置するために保守要員のスケジュールを設定する必要もありません。

エレベータの操作

 このスイッチは2本のアンテナを備えています。内部プリント基板アンテナの範囲は、エンクロージャと環境の両方の影響に応じて制限されます。距離が長い場合は、スイッチの背面にある2.756インチのワイヤアンテナにより、最大100フィートまでテレグラムが送信されると評価されています。ただし、ZF Electronics独自の試験では、見通し線上に障害物がなく、干渉が最小限であれば、この環境発電スイッチは最大980フィートまで送信できることが明らかになっています。

 その他、すべての無線周波数(RF)トランスミッタと同様に、スイッチの効率を最大にするにはアンテナを適切に配置することが重要です。ワイヤアンテナをねじったり、金属面に接触させたりしてはいけません。どちらもアンテナの範囲が制限される要因になります。

 AFIS-5003スイッチの現実的な用途の一例が、フォークリフトエレベータです。フォークリフトの操作員はエレベータに乗り込み、フロア間でエレベータを動かす必要があります。ZF ElectronicsのAFIS-5003スイッチを使用すれば、フォークリフトの操作員はそのままエレベータを稼働させることができるため、フォークリフトから降りて壁のスイッチを操作する時間が不要になります。

 これは、作業中に別の施設のフォークリフトを一時的に工場に持ってきたり、別のフォークリフトを別の施設に割り当てたりするような場合に非常に便利です。AFIS-5003スイッチのプラスチック製ボックスは、フォークリフト内の操作員の手が簡単に届くところに、一時的に取り付けることができます。

 スイッチはエレベータ内で送信するだけでよいため、スイッチ内部のプリント基板アンテナのみが使用されるという点がこの用途の利点です。これにより送信範囲が制限されるため、他のスイッチや近くにあるデバイスに干渉する可能性が低くなります。

環境発電スイッチレシーバ

 このスイッチは、AFZE-5003レシーバモジュールなど、互換性のあるZF Electronicsのレシーバに信号を送信します(図2)。レシーバのペアリングボタンを押すと、スイッチのトランスミッタがレシーバとペアリングされ、環境発電スイッチがアクティブ化されます。レシーバでは、ペアリングが成功したことを示すライトが点滅します。

 このレシーバでは最大32台のZF Electronics環境発電915MHzトランスミッタからの信号を受信できますが、メーカーに要望することにより、トランスミッタの数は256台まで増やすことができます。1台の環境発電スイッチとペアリングできるレシーバの数に制限はありません。

 1台のスイッチと複数のレシーバとのペアリングは、冗長性が要求されたり、同じシステムをそれぞれ距離の異なる複数の場所から制御するためにスイッチの範囲を拡張しなければならなかったりする重要な用途に便利です。

図2:ZF ElectronicsのAFZE-5003 915MHzレシーバモジュール(右側)は、最大32台の環境発電トランスミッタからの信号を受信でき、最大256台のトランスミッタへと拡張できます。このモジュールは、左の画像のようにハウジングなしでも使用できます。(画像提供:ZF Electronics)

 AFZE-5003は、任意のマイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、またはTTLロジックレベルを使用するRS-232またはRS-485に対応したUARTインターフェースを備えたコンピュータに接続できます。図2に示すように、右側のAFZE-5003はプラスチック製ハウジングに格納されており、産業環境に適しています。

 また、この製品は、アプリケーション開発用のホストPCに接続するためのUSB 2.0インターフェースも備えています。AFZE-5003の動作コンポーネントは、左に示されている切手サイズの基板です(図2を再度参照)。この基板は、さらに大規模なシステムへ統合するためのスタンドアロンユニットとしても使用できます。

 このレシーバには、USBインターフェースや5Vの外部電源から電力を供給することができます。また、電源から切断された場合でも、ペアリング情報は維持されます。AFZE-5003は中央PLCの近くに配置できます。ここでは、工場現場にあるすべての環境発電スイッチからのテレグラムが受信されます。次に、スイッチの状態がUART経由でPLCに送信されます。PLCは、EthernetまたはWi-Fi経由で適切な装置を構成します。

環境発電スイッチの開発

 ZF Electronicsは、開発用にAFIK-5002環境発電評価キットを提供しています(図3)。

図3:ZF ElectronicsのAFIK-5002評価キットには、ロッカスイッチ、押ボタン、スタンドアロンの発生器、レシーバなど、環境発電スイッチシステムを開発者が評価するのに必要なものがすべて用意されています。(画像提供:ZF Electronics)

 この評価キットには、前述したものと同じレシーバユニットとロッカスイッチが用意されています。USBケーブルも同梱されています。図3の中央手前にあるのは、レシーバ用のプラスチック製アンテナハウジングです。この評価キットには、環境発電押ボタンスイッチに加えて、ZF ElectronicsのAFIG-0007と同様のスタンドアロンの環境発電発生器も用意されています(図3にある黄色のコイルの発電機)。

 この発生器はZF Electronicsの環境発電押ボタンやロッカスイッチの中核であり、スイッチの動作を送信されるテレグラムに変換する役割を担います。開発者は環境発電発生器をそのままの状態で使用することも、この発生器を使用して独自の環境発電スイッチを製作することもできます。

 この評価キットは簡単に使用できます。レシーバはUSBを使用して、キットのデモソフトウェアを実行するPCに接続されます。用意されているスイッチのいずれか、またはすべてをこのレシーバとペアリングできます。

 このデモソフトウェアには、ペアリング動作の状態に加え、未加工の48ビットのテレグラムデータ、タイムスタンプ、スイッチの一意のID番号、スイッチの状態、そのスイッチの作動に対して送信されたテレグラムの数、信号の強度など、受信したすべてのテレグラムが表示されます。

 信号強度についての情報は非常に重要です。この情報は、信頼できる信号強度を実現するためのトランスミッタとレシーバの間の距離と配置を確認するのに非常に役立つからです。

まとめ

 環境発電スイッチにより、これまで解決が難しかったIIoTの状況に固有の問題を解決することができます。これまで説明してきたとおり、これらのスイッチにより、従来のソリューションでは対応が困難だった場所でのスイッチの配置に柔軟性が加わるため、産業用設備のレイアウトを大幅に簡素化することができます。



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