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スマートPoEスイッチを使用した産業用Ethernetネットワークのシンプル化
著者 Bill Giovino 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-03-05
マルツ掲載日:2020-06-15
産業用IoT(IIoT)アプリケーションで最も広く使われている有線ネットワークプロトコルは、Ethernetです。そのため、Ethernetケーブルは、あらゆる産業用オートメーション施設のいたるところで見られます。Ethernetの設置場所ではどこでも電力も必要とするため、パワーラインもEthernetケーブルが敷設されているほぼすべての場所で、通常は同じケーブル束内に見つかります。
PoE(Power over Ethernet)は、産業用オートメーション施設を大幅にシンプル化するために登場しました。Ethernet接続と同一のケーブルで電力を送ることで、施設に設置しなければならないケーブルが減り、製造現場の構成および再構成が簡単になります。
この記事では、PoE対応の産業用スマートEthernetスイッチによって、コストを低減しつつ工場レイアウトのシンプル化ができることを示します。次に、同一のEthernetケーブルでネットワーク接続と電力供給の両方ができる、Henrich Electronics製DINレールEthernetスイッチを2機種紹介します。
産業用オートメーションのケーブルレイアウトのシンプル化
多くの産業用オートメーション施設は、再構成が容易にできるように設計されています。たとえば、製造施設の組み立てラインでは、異なる製品を製造するために解体して組みなおすことが必要になる場合があります。
EthernetにPoEを組み合わせると、一部の装置をほぼプラグアンドプレイ式(ネットワーク接続と電力供給の両方ができるEthernetケーブルを差し込むだけ)にすることで、工場フロアのモジュール性が増します。これにより工場のシステム構成がシンプルになり、装置へのケーブルの取り回しが容易になります。
また、追加ケーブルのコストとケーブル敷設に要する労力を低減しつつ、施設設計の時間も短縮できます。さらにPoEは、ネットワーク上の各PoEエンドポイント(PD(Powered Device))に対して単一の中央電源を用意することにより、保守点が単一となります。
PoE対応のスイッチやハブは、各PDに対して最大90Wの電力を安全に供給できるため、PoEはカメラや小型制御パネルに加え、バルブやドアなど一部の工場装置に適しています。またPoEは、その他の配線スペースを空けることにも貢献します。産業用設備のほとんどのケーブル束は、熱の問題のため24本程度のケーブルまでに制限されています。
同じケーブル束に含まれるケーブルは通常、ケーブル同士を強く束ねる高耐久のビニタイでまとめられています。そのため、束に含まれるすべてのケーブルが熱を共有して閉じ込め、ケーブル束全体の温度が上昇します。これは「温度上昇(temperature rise)」と呼ばれます。
抵抗は温度と共に増加するため、温度が上昇するにつれて、熱による電力および信号の損失によってケーブル束の各ケーブルの電力効率が低下します。PoEでは、産業用オートメーションで使用される電源ケーブルの多くが不要になるため、ケーブル束のケーブル数が減って熱が低減され、Ethernetのツイストペアにおける信号劣化を防ぐことができます。これにより、装置への送電効率も向上します。
現在、標準のCat5e EthernetケーブルでPoEを提供するための規格には、以下の3つがあります。802.3afは、電源装置から各PDに最大15.4Wの直流電力を供給できます。802.3at(PoE+)は最大25.5W、最新規格である802.3bt(PoE++)は標準のCat5e Ethernetケーブルで最大60Wの電力を供給できます。802.3btの場合、さらに太いゲージワイヤで送電するCat6またはCat6aのケーブルでは、最大90Wの電力も供給できます。各規格は下位互換性があります。
新規産業用オートメーション施設へのEthernetおよびPoEの設置
新規ネットワークの構築時にPoEを導入する最も簡単な方法は、PoE対応のEthernetスイッチを組み込むことです。簡単な解決法の1つは、Henrich ElectronicsのDINレール用5ポートアンマネージドPoE EthernetスイッチHES5A-4E60-VLを使用することです(図1)。

図1:Henrich Electronics製EthernetスイッチHES5A-4E60は5つのEthernetポートを備えており、うち4つは802.3bt PoE++対応。(画像提供:Henrich Electronics)
Henrich Electronics製アンマネージドEthernetスイッチのHES5A-4E60は、標準のDINレールやパネルに取り付けます。わずか92×116×67.2mmと小型で、スペースに制約のある設置に適しています。
HES5A-4E60-VLは、フロントパネルに5つのEthernetポートがあります。1つは標準的な10/100Base-Tポートで、4つは各PDに最大60Wの電力を供給できるEthernet PoE++ポートです。Cat6/aケーブルを使用すれば、HES5A-4E60-VLは最大90Wを供給できます。保護等級はIP40で、-40℃~+60℃で使用できるため、ほとんどの産業用オートメーション施設に適します。
また、HES5A-4E60-VLは、PoEの旧規格である802.3af(1エンドポイント当たり15.4Wを供給可能)や802.3at(1エンドポイント当たり25.5Wを供給可能)と下位互換性があります。
ケーブルを4つのPoE++ Ethernetポートのうちの1つに差し込むと、HES5A-4E60-VLはPDとの短いPoEハンドシェイクプロトコルを開始します。このハンドシェイクにより、エンドポイントがPoE電源を必要としているかどうか、また必要ならばどれだけの電力をエンドポイントが要求しているかを判別します。
これにより、PoEスイッチはEthernetエンドポイントに要求された電力を安全かつ効率的に供給でき、Ethernetケーブルの接続が切断されるかエンドポイントが応答を停止した場合には、そのPDから安全に電源を切断することができます。PDに適切に電力供給されると、スイッチにあるそのPoEポートのLEDインジケータが点灯し、ポートが電力を受けていることを示します。
これは、電源のあらゆる問題の診断にも役立ちます。たとえば、あるPDが稼働しておらず、対応するPoEインジケータが消灯している場合、それはケーブルの損傷や切断、あるいはそのエンドポイントがPoEハンドシェイクを正常に完了していないことを示している可能性があります。
HES5A-4E60-VLはアンマネージドスイッチであり、これはプラグ&プレイであることを意味しています。5つのポートのいずれかにEthernetケーブルが差し込まれると、スイッチはそのエンドポイントのEthernet MACアドレスを要求します。
HES5A-4E60-VLは、IPアドレスに対する既知のMACエントリの格納用に1,024件分のMACテーブルを備えています。そのMACアドレスがMACテーブルにない場合は、新しいIPアドレスが割り当てられます。そのMACアドレスがテーブルにある場合は、MACテーブルのエントリからIPアドレスを読み出してエンドポイントに割り当てます。このスイッチには、いかなる設定や管理も必要ありません。
Henrich Electronicsは、さらに高機能な産業用オートメーションネットワーク向けに、DINレール用6ポートマネージドPoE+ EthernetスイッチであるHES6GM-4E-2SFP-VLWを提供しています(図2)。保護等級IP30のこのEthernetスイッチは、定格動作温度が-40℃~+75℃と広く、人間が長時間耐えることのできない極端な温度になる場合のある、乾燥した防塵の産業用環境に適しています。
4,096件分のMACテーブルを備え、10/100/1000Base-T対応のため、最新のギガビットEthernet規格に適合しています。各PD当たり最大30Wを供給できます。

図2:Henrich Electronics製DINレールEthernetスイッチであるHES6GM-4E-2SFP-VLWは、6つのEthernetポートを備えており、うち4つがPoE+対応。各種動作に関するアラームおよび警告をウェブブラウザで設定可能。(画像提供:Henrich Electronics)
HES6GM-4Eシリーズは、DINレールやパネルに取り付けることができます。HES5A-4E60と同様、完全なプラグ&プレイ式で使えるマネージドスイッチですが、いずれかのEthernetポートに接続したPCからウェブブラウザで設定することも可能です。
セキュリティ機能により、10個までのIPアドレスにウェブブラウザインターフェースの利用権限を付与できます。その他のウェブブラウザ設定インターフェース機能には、セキュリティ問題に関する自動電子メールアラート、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)パラメータ設定、ポートによるトラフィックの制御および制限、ポートフォワーディング、システムログへのアクセスなどがあります。ブラウザインターフェースは、確認、編集、削除のために4,096件分のMACテーブルにアクセスすることもできます。
過酷な産業環境向けのケーブル
産業環境では、極端な温度や、非保護面を腐食させることのある塩水や油、ガソリンなどの液体に曝される場合もあります。ケーブルは、鋭い角の周りで引っ張られたりトラックにひかれたりするなど、絶えず物理的に酷使されることにより、ケーブルシールドの劣化または損傷、極端な場合にはデータおよび電力を伝送する導電体の断裂につながる恐れがあります。
このため、産業環境での酷使に耐えるように製造された、耐久性の高い産業用強度ケーブルが必要です。また、信号と電力の両方を伝送するため、PoEには高品質のケーブルが必要です。データと電力を供給するには、4つのツイストペアが必要です。熱の発生を最小限にして十分な効率でケーブル1本当たり60Wの電力を供給するには、ワイヤゲージが24AWG以上でなければなりません。
最も過酷な環境向けに、Samtec Inc.はCat5e EthernetケーブルアセンブリRCE-01-G-13.00-Dを発売しました(図3)。この13mのケーブルには、4つのツイストペア(データ用ペア2つとPoE電源用ペア2つ)が通っています。

図3:Samtec Inc.製のRCE-01-G-13.00-Dは、保護等級IP68のCat5eケーブルアセンブリです。このケーブルとRJ45コネクタはいずれも、最も過酷な産業環境に耐えられます。(画像提供:Samtec Inc.)
各RJ45オスコネクタは、スペースを節約する長方形の設計で、塵や液体に対して密閉されています。このコネクタには、押し込み密閉式のラッチ機構が採用されており、適切に挿入するとカチッという明確な音を発生します。このラッチは、最小限の手間で容易に取り外せるように設計されています。
Cat5eケーブルRCE-01-G-13.00-Dには、24AWGの導電線が使用されており、802.3afおよび802.3atによる電力供給に適しています。
まとめ
PoEは、電源を扱うことのできるEthernetスイッチの登場によって利用が容易になりました。産業用オートメーションの用途に適したPoE Ethernetスイッチを選択すれば、同一のケーブルで信頼性の高いネットワーク接続と共に安全で効率の良い電力供給ができると同時に、時間と費用を節約できます。
免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、Digi-Key Electronicsの意見、信念および視点またはDigi-Key Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。
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