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マルチプロトコル、マルチバンドワイヤレスSoCを使用したIIoTネットワーク展開の簡素化

著者 Barry Manz(バリー・マンズ) 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2019-12-19
マルツ掲載日:2020-03-16


 絶え間ないイノベーションの結果、IoTアプリケーションには互換性のないワイヤレスオプションが複数存在するようになりました。選択肢があるのは良いことですが、特に複数のワイヤレスネットワークがすでに展開されていたり、数百あるいは数千のセンサを複数の施設全体に追加する必要がある従来の産業用IoT(IIoT)環境の場合は、ワイヤレスネットワークの展開が複雑になるという問題が生じます。

 この問題を解決するために、IoTトランシーバのメーカーは、複数のRF帯域にわたって複数のプロトコルをすべて1つのデバイスでサポートする、低コストで低電力のシステムオンチップ(SoC)ソリューションを開発しています。

 この記事では、複数の短距離ワイヤレス通信規格ならびに仕様の普及により生じている設計上の課題を簡単に説明します。また、複数のRFインターフェースに対応する柔軟性を設計者に提供する、NXP、Texas Instruments、Silicon Labs、Analog Devicesのシステムオンチップ(SoC)の概要を説明し、それらのSoCの機能とサポートされるワイヤレスプロトコルを見ていきます。

ワイヤレスオプションの課題

 ほんの数年前まで、複数のワイヤレスプロトコルをサポートするIoTトランシーバやマイクロコントローラSoCは非常に少なく、エッジデバイスのメーカーはいずれかのSoCを1つ選択し、製品ライン全体で使用していました。

 たとえば、最もわかりやすいIoTアプリケーションであるホームオートメーションにおいて、スマート照明製品のあるメーカーはZigbeeを使用していますが、Z-WaveやWi-Fiを使用するメーカーもあり、もともと複雑な新しいテクノロジが消費者にとってさらにわかりにくいものになることがあります。

 IIoT市場は今でも同じ課題に直面していますが、さらに規模が拡大しています。地理上で明確に定義されたエリアを本拠地とする場合とは異なり、大手メーカーは世界中に施設があり、さまざまな装置と規制要件をサポートする必要があります。マルチプロトコル、マルチバンドトランシーバのマイクロコントローラSoCの登場により、このようなデバイスを展開する技術者やシステムやネットワークの設計者は、この状況に容易に対応できるようになりました。エッジデバイスへのSoCの採用が広がるにつれて、1つのベンダが提供するSoCを使用してエッジで複数のワイヤレスプロトコルを使用するネットワークを構成できるようになってきました。

一般的なIoT SoCの機能

 IoT向けの一般的なSoCには、Low-Rate Wireless Personal Area Network(LR-WPAN)向けIEEE 802.15.4物理レイヤ(PHY)ワイヤレスインターフェースに基づくベースバンドとRFセクション、Armホストプロセッサとコプロセッサ、ある程度の暗号化(AES-128など)、および真の乱数発生器(TRNG)が含まれています。

 また、電源とセンサ管理回路、複数のクロックとタイマ、いくつかのI/Oオプションなども含まれています(図1)。Zigbeeは産業用アプリケーションのプロトコルとして非常に人気が高いため、Threadなどの同様の低データレートプロトコルとともに、これらのデバイスでほぼ例外なくサポートされています。

図1:この図に示すようにTexas InstrumentsのSimpleLink SoC CC26xxシリーズは、ワイヤレスIoT SoCを代表する製品です。ホストプロセッサはArm Cortex-M3で、Arm Cortex-M0コプロセッサでサポートされています。(画像提供:Texas Instruments)

 Bluetooth Low Energy(バージョン4)もこの例に含まれ、Bluetooth 5(バージョン5.1)のサポートも広がっています。バージョン5.1では、メッシュネットワークが採用されているため、Bluetoothは大規模なIoTのもう1つの候補といえます。しかし、すべてのSoCがこのバージョンをサポートしているわけではないため、IIoTの候補デバイスがバージョン5.1をサポートしているかどうか確認することが重要です。

 デバイスによっては、802.15.4 PHYに基づいてInternet Engineering Task Force(IETF)で定義されたオープン標準である、IPv6 over Low-Power Wireless Personal Area Network(6LoWPAN)もサポートしています。

 6LoWPANには、IPv6、802.15.4 PHYの標準TCP/UDPレイヤ、およびメディアアクセスコントロール(MAC)レイヤの実装に必要なIPヘッダ圧縮(IPHC)が組み込まれ、900MHz以下の周波数と2.45GHzで動作します。

 インターネットへのアップリンクは、複数のPCやサーバにも接続されているIPv6エッジルータを通じて処理されます(図2)。6LoWPANネットワーク自体は、独自のエッジルータを使用してIPv6ネットワークルータに接続されます。

図2:6LoWPANメッシュネットワークを含むIPv6ネットワーク。インターネットへのアップリンクは、IPv6エッジルータに接続されているIPv6ルータとして機能するアクセスポイントで処理されます。IPv6エッジルータには複数のPCやサーバも接続されている場合があります。6LoWPANネットワークはエッジルータを使用してIPv6ネットワークに接続されます。(画像提供:Texas Instruments)

 6LoWPAN固有の特性の1つは、標準のインターネットプロトコルを使用してエンドツーエンドのパケット配信を提供できる機能です。これにより、設計者はMQTT、CoAP、HTTPなどの高度なメッセージングプロトコルをすべてのアプリケーションで使用することができます。

 この記事で説明する他のプロトコルと同様に、このプロトコルは2.4GHzに加え、Sub-1GHz無線でも実行することができ、伝搬特性に優れています。たとえば、6LoWPANのデモンストレーションでは、RF出力電力が+12dBmのトランシーバを使用して900MHzで4マイルまでの距離をカバーしました。

 低周波数は、壁を貫通しやすいため特に屋内で有用です。適切に設定し、最適なブリッジを使用することで、6LoWPANは、EthernetやWi-Fi、あるいはセルラーデータネットワークなど、他のどのIPネットワークとも互換します。

基本のプロトコル

 今のところ、IoT内で使用されるすべてのワイヤレスプロトコルをサポートするSoCはありません。消費者市場ではThreadやZ-Waveなど一部のプロトコルが採用されているため、この点はIIoTネットワークの設計者にとって特に重要ではありません。

 これにより、6LoWPANやBluetoothとともに産業用IoTとして断トツの人気を誇るプロトコルであるZigbeeの競争相手は減っています。とはいえ、802.15.4規格をサポートするSoCは、Zigbee、LPWAN、Threadなど、さらにソリューションが同じ帯域で稼働できる場合は独自のソリューションでも機能できなければなりません。

 通常、Wi-Fiは比較的消費電力が高いため、小型バッテリで駆動する低電力エッジデバイスアプリケーション用のマルチプロトコルSoCには含まれていません。IoTでは、Wi-Fiは主に消費電力が重要なメトリックではないバックホールやゲートウェイからインターネットへのアクセスに使用されます。しかし、都市で照明、監視、その他のインフラストラクチャをアップグレードする場合、高データレートまたは普及の拡大から、Wi-Fiは欠かせないものになっています。

 これらのアプリケーションでは、Wi-FiオンチップのSoCが数年間利用されており、このテクノロジは非常に高速なデータレートを必須とする多くのIoTアプリケーションに欠かせないため、このSoCの使用は拡大しています。これらのWi-Fi専用SoCの1つがTexas InstrumentsのCC3100R11MRGCR Wi-Fiネットワークプロセッサです。

 このプロセッサには、オンチップウェブサーバとTCP/IPスタックを備えた2.4GHzのWi-Fi無線とネットワークプロセッサが搭載されています。TIやいずれかのメーカーのマイクロコントローラと組み合わせることで、2つの小型デバイスに完全なWi-Fiソリューションが作成されます。

 とはいえ、Wi-FiとBluetoothはどちらも人気があり補完し合うものでもあるため、これらのプロトコルを結合したSoCは非常に少ないのが現状です。たとえば、Texas InstrumentsのWiLink 8 Wi-Fi/Bluetoothコンボモジュールファミリに含まれるWL1831MODGBMOCRは、 BluetoothとBluetooth Low Energyをサポートします。

 Wi-Fiの場合は、Wi-Fi Directとともに、最大データレート100Mbit/秒のIEEE 802.11b/g/nが含まれます。その2 x 2 MIMO機能は、1つのアンテナを使ってデバイスの範囲を1.4倍にし、Wi-Fiモードでの消費電力は800µA未満です。

 Bluetooth機能には、Bluetooth 4.2セキュア接続コンプライアンス、UARTでのBluetooth向けホストコントローラインターフェース、およびAdvanced Audio Distribution Profile (A2DP)のサブバンドコーデックをサポートするオーディオプロセッサが含まれます。

 その13.3×13.4×2mmのパッケージ内には、電源管理やその他のリソース(4ビットのSDIOホストインターフェースなど)に加え、RFパワーアンプとスイッチ、フィルタ、およびその他の受動部品が搭載されています。

 Silicon LabsのMighty Gecko EFR32MG13P733F512GM48-DマルチプロトコルSoCでは、マイクロコントローラと、169MHz~2.450GHzの主要周波数で動作するトランシーバを組み合わせるという興味深いアプローチを採用しています。

 このアプローチにより、このSoCはBluetooth Low EnergyとBluetooth 5.1、Zigbee、Threadに加え、802.15gとも互換します。802.15gは、広く分散しているエリアに数百万の固定エンドポイントが存在する可能性のあるスマートグリッドネットワーク内の非常に大規模なユーティリティアプリケーション向けに設計された規格です。

 Mighty Geckoファミリの一部のデバイスは、特定のアプリケーション用に調整可能な1GHz未満で動作するネットワークをサポートし、OOK、整形FSK、整形OQPSK、DSSS変調などのさまざまな変調スキームをサポートします。

 Texas InstrumentsのSimpleLinkプラットフォームには、Ethernet、CAN、USBを含む有線規格に加え、Bluetooth Low EnergyとBluetooth 5.1、Thread、W-Fi、Zigbee、Sub-1GHzソリューション(6LoWPANなど)をサポートするハードウェアが含まれます。

 モデルに応じて、1つのデバイスで2つまたは3つのワイヤレスプロトコルがサポートされます。ファミリ内のすべてのモデルが、1つのソフトウェア開発環境でサポートされます。

 たとえば、CC2650F128RHBR SimpleLinkマルチスタンダードワイヤレスMCUには、Bluetooth、Zigbee、6LoWPANに加え、Zigbee Radio Frequency for Consumer Electronics(RF4CE)などのリモート制御アプリケーションに対するサポートが含まれています。

 RF4CEはIEEE 802.15.4の拡張で、ネットワークレイヤとアプリケーションレイヤがあり、マルチベンダによる相互運用可能なソリューションを作成します。CC2650は、システム全体がスリープモードであっても自律的に動作するパワーセンサコントローラに適合するホストプロセッサとして32ビットのArm Cortex-M3を使用します。Bluetoothコントローラと802.15.4 MACは異なるArm Cortex-M0プロセッサを使用して、アプリケーションサポート用にメモリを解放します。

 NXP SemiconductorsのMKW40Z160VHT4 SoCは、ZigbeeとThreadのBluetooth Low Energyと802.15.4に対応し、2.36GHz~2.48GHzで動作します。また、Arm Cortex-M0+ CPU、Bluetoothリンクレイヤハードウェア、802.15.4パケットプロセッサを使用します。

 このSoCは主に完全なサブシステムとして使用されますが、Bluetoothや802.15.4のコネクティビティを既存の組み込みアプリケーションに追加するためのモデムとして、またはホストコントローラを必要としない組み込みアプリケーションでスタンドアロンのワイヤレスセンサとしても機能できます。

 Analog DevicesのLTC5800IWR-IPMA#PBFマルチプロトコルSoCには、前述した802.15.4ベースのプロトコルと、興味深い歴史を持つSmartMeshと呼ばれる別のプロトコルに対するサポートが組み合わされています。

 SmartMeshは、1990年代後半にカリフォルニア大学バークレイ校の電気工学とコンピュータサイエンス学科の教授であるクリス・ピステール氏により、DARPAのSmart Dustプロジェクトから資金の提供を受けて開発されました。このプログラムの目的は、バッテリからの電源供給または環境発電を利用した小型で信頼性の高い無線機を作成することでした。主な顧客は、厳しい環境条件で運用されることの多い、広く分散されたインフラストラクチャを持つパイプライン施設です。

 この技術を商業化するために、ピステール氏はDust Networksに共同出資して、SmartMeshと呼ばれるメッシュ型のワイヤレスセンサネットワークを作成しました。2011年に、この会社はLinear Technologyに買収され、2017年にはLinear TechnologyがAnalog Devicesに買収されましたが、SmartMeshは現在でもIIoTで利用されています。

 SmartMeshは、データを収集してリレーするノードの自己形成型マルチホップメッシュ(モート)、およびパフォーマンスやセキュリティを調整したり、データをホストアプリケーションと交換するネットワークマネージャで構成されています。

 信頼性がDARPAプログラムのコア要件の1つであったため、SmartMeshは厳しい環境条件下で運用する場合でも99%の稼働時間でこの機能を維持しています。その通信プロトコルは、ネットワーク内のすべてのモートをマイクロ秒内に同期するTime-Slotted Channel Hopping(TSCH)と呼ばれるスペクトラム拡散方式です。

図3:SmartMeshネットワークでは、すべてのノードがルータとして機能するため、新しいノードはどのポイントでも接続できます。このテクノロジは最大50,000個のノードをサポートします。(画像提供:Analog Devices)

 ネットワーク内のすべてのモートは1ms未満以内に同期され、バッテリ寿命は10年を超えます。電源デカップリング、水晶振動子、1個のアンテナのみがあれば、完全なワイヤレスノードを作成できます。全方向2dBiゲインアンテナを使用している場合、LTC5800-IPMの通常範囲は屋外で300m、屋内で100mです。

まとめ

 サポートを必要とするレガシーシステムもあるため、すべての種類のワイヤレスプロトコルの中から、IIoTの展開に使用する適切なワイヤレスインターフェースとプロトコルを選択するのは困難です。ここで説明したように、複数のRF帯域で複数の短距離ワイヤレスプロトコルをサポートするIoT SoCは、設計者に対する柔軟性を向上させることで、IIoTネットワークの展開を大幅に簡素化できます。



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