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高電圧アプリケーションに対応するBroadcomの15mm幅ACNTオプトカプラ

著者 Foo Chwan Jye 氏
Broadcom Ltd. 提供
2019-06-13
マルツ掲載日:2019-09-17


はじめに

 BroadcomのACNTオプトカプラファミリは、高電圧絶縁アプリケーション向けに15mmの沿面距離と14.2mmのクリアランスを提供します。これらのオプトカプラは、小型の面実装ストレッチSO-8パッケージを使用しており、2,262VPEAKの動作絶縁電圧定格、12,000VPEAKの過渡過電圧定格を実現します。

 ACNTオプトカプラの製品タイプは幅広く、各種のガルバニック絶縁の要件や機能に対応します。具体的には、ACNT-H343ゲートドライブオプトカプラ、ACNT-H61L低電力10MBdデジタルオプトカプラ、ACNT-H790/H79A/H79B電流センシング用の高直線性絶縁アンプ、ACNT-H870/H87A/H87B電圧センサ、ACNT-H50L/H511低速アナログオプトカプラがあります。

 DC/AC電源を負荷(モータ)に変換する3相インバータを例に、図1に各所の絶縁位置と各ACNTオプトカプラ製品タイプごとの目的を示しています。ACNTオプトカプラは信頼性が高く、使いやすいデバイスです。


図1:インバータのさまざまな絶縁ニーズに対応するACNTオプトカプラ。(画像提供:Broadcom Limited)

高電圧の傾向と要件

 再生可能エネルギー(太陽光や風力)、牽引、ヘルスケアの各システムの市場部門では、より高いDCバス電圧や高い過渡電圧耐性を要件に含める傾向があります。新しい太陽光発電(PV)システムは、1000VDCから1500VDCへと移行しています。このアップグレードには、エネルギー効率の向上とコストの低下という利点があります。

 より多くのPVブロックを含むストリング(PVアレイのより長いストリング)を形成できるということが、この両方の利点を実現する要素となっています。コンバイナボックスは、入力電力を1つの主なフィードに統合します。PVストリングをより長くしてストリング数を減らすことで、必要なコンバイナボックスが減ります。また入力DC電圧が高いと、配線(銅)の電力損失も減少します。

 1500Vシステム全体では、1000V以下のDC電圧システムと比べてPVストリングアレイとインバータ間の接続が少なくなります。さらに、電力密度が高くなり、装置の数が少なくなれば、メンテナンスのための人件費も減ります。ただし、1500Vシステムには課題もあります。それはコンポーネントの電気安全基準と幅広い認証基準です。制御モジュールと電源製品間の絶縁は、高電圧(定常および過渡)および関連する沿面距離の条件に耐えられるものでなければなりません(図2)。Broadcomの15mm幅ACNTオプトカプラなら、これらの要件を満たすことができます。


図2:PV発電システム - 1500V。(画像提供:Broadcom Limited)

 再生可能エネルギー分野の風力発電ソリューションでは、原子力発電から再生可能エネルギーへ転換するための国家レベルによる配電網更新プログラムの一環として、ACNTオプトカプラが欧州各国で広く利用されています。

 図3は、15mm幅ACNT-H61L 10MBd低電力オプトカプラを使用した周波数コンバータの絶縁を示しています。これらのコンポーネントは、低電圧制御と高電圧IGBT間の制御とフォールトフィードバック信号を分離します。配電網の別のサブセグメントでは、スマートグリッド採用の一環として、低電圧または中電圧の配電ラインの計量がより高度化されています。

 3相(400VAC超の電力計量)では、データ通信の安全性と高電圧絶縁のために、より長い沿面距離が必要です。また、スマートグリッドではセキュリティもより重要になります。低速アナログオプトカプラACNT-H50Lは、その長期にわたる信頼性により、データ通信の絶縁を確保できます。


図3:再生可能エネルギー - 風力発電ソリューションの周波数コンバータ。(画像提供:Broadcom Limited)

 もう1つの高電圧アプリケーションの例として、ライトレールまたはモノレールシステムの牽引制御があります。これらのシステムでは、ACNTオプトカプラは1500VのDC/DC変換に使用します。

 図4は、1500VDCバス電圧のモノレール用パワーコンバータを示したものです。絶縁型高電圧 - 低電圧制御インターフェース用に4種類のデジタルオプトカプラ、絶縁型電圧レベル制御用に2種類の電圧センス絶縁型アンプ、そして絶縁型I/O通信用に低速アナログオプトカプラがあり、ノイズの多い環境での信頼性とロバストネスをともなう高電圧絶縁を可能にします。


図4:牽引アプリケーションでのパワーコンバータ。(画像提供:Broadcom Limited)

 ヘルスケアシステムでは、医療規格IEC 60601-1-2第4版において、接触放電と空気放電のタイプに応じたより高いESDレベルが規定されています。 このESD耐性タイプの試験は、患者が機器と直接接触するセンシング回路(血圧、ECGなど)と患者モニタリング装置の制御ボードとの間に適用されます。ACNT-H61Lは、12,000VACの過渡過電圧によりこの改訂要件を満たします。長い沿面距離とクリアランスを持つACNT-H61Lでは、より長い絶縁距離が可能になり、電弧を最小限に抑えます。

規制基準の改訂

 国際標準化団体ULとIECの調和プロセスの結果、沿面距離とクリアランスの要件がより厳しくなりました。2016年以降、UL 508C(パワー変換機器)はIEC 61800-5-1(可変速駆動システム)に移行しています。同じ定格仕様を維持するには、新しい駆動モデルのために、より長い沿面距離とクリアランスが必要になります。たとえば、690VAC定格の絶縁を強化するには13.8mm以上の沿面距離とクリアランスが必要です。

 医療システムでは、絶縁バリア全体で必要となる高いESD耐性の過渡過電圧放電への対処において、ACNTオプトカプラが役に立ちます。患者モニタリングアプリケーションでは、ESD耐性タイプの試験は、患者が機器と直接接触するセンシング回路(血圧、ECGなど)と患者監視装置の制御ボードとの間に適用されます。

 院外での使用が増えている医療機器における昨今の電磁妨害(EMI)の脅威に対処するため、新たに医療用電気機器規格IEC 60601-1-2第4版が発行され、医療機器の試験の際におけるESD耐性の放電レベルが引き上げられました(図5)。患者モニタリング装置に使用されるACNT-H61Lには、高過渡過電圧定格が12,000VPEAKで、沿面距離とクリアランスが15mm幅であるという利点があり、長い絶縁距離によってアーク放電を最小限に抑えることができます。

図5:医療システムの高絶縁電圧のニーズに適合 - ACNT-H61L。(画像提供:Broadcom Limited)

BroadcomのACNTオプトカプラ

 Broadcomのオプトカプラは優れた性能を備えており、高電圧サージ(1.2μs/50μsの電圧波形)に耐えることができます。部品安全規格IEC 60747-5-5に準拠するBroadcomのACNTオプトカプラは、25kV超で合格しています。合格基準は、5pC未満の部分放電で固体絶縁に亀裂や部分的な絶縁破壊が発生しないことです。

 図6に示されるように、ACNT-H50Lは、高電圧サージでアーク放電を排除するために空気なしの状況下で試験されています(TUVテスト結果レポートを参照)。

図6:BroadcomのオプトカプラはIEC 60747-5-5に準じた高電圧サージに適合します。(画像提供:Broadcom Limited)

まとめ

 ACNT-H343は新たにリリースされた5Aゲートドライブオプトカプラで、690VACモータドライブや1500Vソーラーインバータなど、高電圧でスペースに制約のある産業用アプリケーション向けに設計された15mm SSO-8パッケージを採用しています。

 ACNT-H343は、100kV/μsを超えるコモンモード過渡耐性(CMTI)を特長とし、ノイズの多い環境でのゲートドライバの誤動作を防止します。このデバイスは伝播遅延が最小限に抑えられており、前世代のデバイスよりも3倍高速で、高いスイッチング周波数によりIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やSiC/GaN MOSFETよりも効率的な駆動が可能になります。

 ACNT-H61Lは10MBdの低電力デジタルオプトカプラで、LED駆動には最小でわずか4.5mAの電流しか必要としません。検出器ICによるIDD消費は、動作温度範囲全域で最大2mAです。ディテクタICの出力は、CMOS出力です。内部ファラデーシールドにより、20kV/μsのコモンモード過渡耐性仕様が保証されます。ACNT-H61Lは、高電圧または過渡パワー変換システムにおける絶縁型通信ロジックインターフェースと制御に適しています。

 ACNT-H50L/ACNT-H511はシングルチャネル1MBdオプトカプラで、オープンコレクタトランジスタ出力を備えています。フォトダイオードバイアスと出力トランジスタコレクタの接続を別にすることで、ベースとコレクタ間の静電容量を減少させ、従来のフォトトランジスタよりもデータ伝送速度が最大100倍速くなります。ACNT-H50L/H511は、低速アナログ、絶縁フォールトフィードバックまたは電力制御フィードバックなどの用途に適しています。

 ACNT-H87B(ゲイン公差±0.5%)、ACNT-H87A(ゲイン公差±1%)、ACNT-H870(ゲイン公差±3%)電圧センサは、電圧センス専用に設計された光絶縁アンプです。2V入力範囲と1GΩの高い入力インピーダンスは、電子パワーコンバータアプリケーションの絶縁電圧センスの要件に適合します。一般的な電圧センス実装では、抵抗電圧分圧器を使用してDCリンク電圧を調整し、電圧センサの入力範囲に適合させます。入力電圧に比例する差動出力電圧が、光絶縁バリアの別の側に発生します。

 ACNT-H79B(ゲイン公差±0.5%)、ACNT-H79A(ゲイン公差±1%)、ACNT-H790(ゲイン公差±3%)アイソレーションアンプは、電子パワーコンバータアプリケーションでの電流/電圧センス用に設計されています。これらのオプトカプラは、ノイズの多いモータ制御環境におけるモータ電流の正確な監視に必要な精度と安定性を備えており、多様なモータ制御で円滑な(トルクリップルが少ない)制御を実現します。ACNT-H79B/H79A/H790は、優れた光結合技術との組み合わせにより、シグマデルタ(Σ-Δ)A/D変調、チョッパー安定化アンプ、および完全差動回路トポロジを使用して、比類のない絶縁モードでのノイズ除去、低オフセット、高いゲイン精度、安定性を実現します。



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