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医療用アプリケーションでの基板実装DC/DCコンバータ

著者 RECOM Power
2019-07-23
マルツ掲載日:2019-10-15


 欧州連合の市場で販売される医療機器は、指令MDD:93/42/EEC、Article 3の基本要件に適合する必要があり、市場で販売される製品はArticle 3、Annex I、ER1、Annex II、Annex III、Annex VIIに規定されるリスク分析の基本要件を満たす必要があります。

 これらの規制は、装置の安全性と基本性能を確保し、特に患者とオペレータを感電から保護するために制定されています。製品が現行のES/EN/IEC 60601-1第4版に準拠している場合は、前述の指令に適合していると見なされます。

絶縁の必要性

 AC/DCコンバータが医療用アプリケーションの設計に組み込まれる場合、その危険性は明らかです。絶縁に支障があると、オペレータや患者、または手術中の内臓と接触しているセンサや機器への接続に際して致命的な電圧が印加される可能性があります。このため、前記の安全基準では絶縁要件に重点が置かれており、「保護方法」(MOP)として定義されている各レベルでは、オペレータ保護(MOOP)に比べると患者接続(MOPP)にはより厄介な要件が伴います。各カテゴリには全体で少なくともMOPが2つ必要になり、さらに3つの接続分類があります。

  タイプB:患者との電気的接触がなく、場合により接地される
  タイプBF:患者への電気的接続があるが心臓に直結しない、フローティング
  タイプCF:患者の心臓に電気接続が直結する、フローティング
  
 これらの基準を満たすため、機器の構造上の要件は、汚染度、システム電圧、AC電源の過電圧カテゴリ、高度などの環境要因からも影響を受けます。また接地方法として、機器が「Class II」アース不要か、あるいは機能接地(FE)または保護接地(PE)接続が存在する「Class I」かも重要な要素になります。

場合によりDC/DCコンバータでも絶縁が必要

 DC/DCコンバータは医療機器によく使われており、AC/DCコンバータやバッテリから1つの低電圧を、3.3Vのプロセッサ電源やセンサ電源などの用途のために別の低電圧に変換します。

 機能的には、絶縁は必要ないとも考えられますが、グランドループの可能性の遮断、負レールの提供、または場合により電磁妨害(EMI)による影響を削減するために、絶縁が含まれることもよくあります。ただし、入力/出力電圧が低い場合でも、「安全」レベルの定義の中では、さまざまな理由から患者やオペレータの安全のために絶縁が必要とされます。

DC/DCコンバータは全体的な「安全性システム」の一部の場合もある

 最高カテゴリの「適用部品」向けに、医療安全規格IEC 60601(欧州ではEN 60601、米国ではANSI/AAMI ES 60601)による完全な認証を受け、必要な2×MOOPまたは2×MOPPの絶縁定格を備えたAC/DCコンバータを調達することも可能です。しかしこれらの部品は、機能的には同じでもEN-60950-1(または現行のEN-62368)安全基準に適合するITまたは産業グレードの部品に比べてニッチな市場向けなので、必然的に高価になります。

 一方で、医療規格では、より高いグレードを実現するために絶縁レベルを「直列」にすることが許容されます。たとえば、ITグレードのAC/DCコンバータに続けて適切な仕様の絶縁型DC/DCコンバータを配置し、患者やオペレータに触れる可能性のある機器部品にのみ電力を供給することで、全体的なコストを大幅に削減できます。

 ただし、ITグレードのAC/DCコンバータには多少の改造が必要になる場合があります。クラスIの場合、内蔵のEMC抑制部品、つまりライン、ニュートラル、グランド間の「Y」コンデンサにより、AC主電源のリーク電流関係の医療規格をほぼ確実に超えることになります。しかし、最新のIEC 60601第4版で変更された法定制限に適合するように何らかの方法でEMCが抑制される場合、このコンデンサは省くことができます。

 医療規格では、ACライブとニュートラルの両方に1500Aの遮断容量のヒューズを設けることが求められており、多少手間がかかりますがITや産業グレードのコンバータの使用は現実的なソリューションであると言えます。

 たとえば、EN 62368に準拠したIT向けAC/DCコンバータは、2×MOOPまたは1×MOPPに相当する「強化絶縁」を備えている場合があります。さらに、1×MOPPの絶縁定格に相当するDC/DCコンバータをつなげることで、全体として2×MOPPを実現できます(図1)。

図1:「保護方法」を追加できます。(画像提供:RECOM Power)

他の機器から患者への故障電流を防ぐ必要性

 医療機器のリスク分析では、同じオペレータや患者に接続される可能性のある他の無関係な機器の故障が考慮されます。最悪の場合として、他の機器の故障によって致命的な電流をともなう高電圧が外部接続を通じて接続され、患者を通してグランドに流れるケースがあります。

 このため、50/60Hzでの最大リーク電流が許容可能なレベルになるように、患者への接続はグランドから規定のレベルまで絶縁する必要があります。許容可能なレベルは用途によって異なりますが、「通常」の状態では患者接続タイプCFで10μAの低さが求められます(図2)。


図2:各種の医療用アプリケーションでの最大許容リーク電流。NC=通常状態(画像提供:RECOM Power)

 しかし、最高仕様のAC/DCコンバータであっても、DC出力でこの最大レベルのリーク電流を超えないことを保証するのは容易ではありません。なぜなら、分散されたグランドへのリーク静電容量が合算されるからです。ただし、効果的なソリューションとして、非常に低い障壁容量、つまり低リーク電流を考慮した設計がしやすいDC/DCコンバータから患者接続へ電力を供給する方法があります。

 DC/DCコンバータの絶縁仕様は、その1次側に他にどのような接続があるか、クラスIまたはクラスIIのACラインやバッテリによる電源供給かどうか、意図的に接地されているかまたはデータインターフェースケーブル内の接地されたケーブルスクリーンなどを通じて不特定の接続によりなされるか、などに応じて異なります。

 図3の例では、2×MOOP絶縁定格のクラスII(プラスチックケース入り、アース不要)AC/DCコンバータが、1×MOPP絶縁定格のDC/DCコンバータに電圧を供給します。DC/DCコンバータへの入力はACとグランドから2×MOOP(240VAC)によって絶縁されており、他に外部からの接続の可能性がないので、全体で2×MOPPが実現され、BFまたはCFの接続タイプで直接患者への接続が可能です。これは、DC/DCコンバータのリーク電流が240VAC/60Hzで10μA未満の低さ(110pF未満の入力/出力静電容量に相当)である限り成り立ちます。

図3:高度な絶縁型DC/DCコンバータ、クラスII機器を必要とする可能な接続シナリオの一例。(画像提供:RECOM Power)

 一方、図4の例ではDC/DCコンバータへの入力に不特定の外部信号接続(SIP/SOP)があります。この場合、2×MOPPを実現するには、AC/DCコンバータの絶縁定格を問わずDC/DCコンバータ自体が2×MOPPの絶縁定格を備える必要があります。なぜなら、外部の障害によりSIP/SOP接続がライブになり得るからです。


図4:高度な絶縁型DC/DCコンバータ、クラスI機器を必要とする可能な接続シナリオの一例。(画像提供:RECOM Power)

 DC/DCコンバータ出力から金属ケース(E)への絶縁定格も1×MOPPが必要になります。SIP/SOP接続の絶縁定格がシステム電圧に対して2×MOOPと指定されており、常識的な範囲で意図せず置き換わることがなければ、絶縁バリアDは1×MOPPに減らすことができます。図中の「BOP」は、ACラインとニュートラルの間の「基本逆極性」絶縁を意味します。

その他のDC/DCコンバータ仕様

 通常の状態と単一障害の状態でのリーク電流と絶縁は、医療用途でのDC/DCコンバータの主な課題ですが、他にも要件があります。内部バリアトランスなどの重要な部品には温度制限があり、素材の難燃性レベルが適切である必要があります。発火、発煙、燃焼の危険性、および機械的な危険性など起こりうるすべての危険性を考慮して、リスク分析を実施し文書化する必要もあります。

医療用途でのDC/DCコンバータ設計の実用性

 小型のDC/DCコンバータ、特にトランスの内部と周囲に、必要な沿面距離とクリアランス距離を組み込むことは非常に難しいとも考えられます。トランスでは、複数の絶縁層を備えた特殊な電線が一般的に使用されています。ソリューションとしてよく見られるのは、適切な定格の絶縁素材を使用した3つのらせん状の重複層をともなう三層絶縁電線(TIW)で、少なくとも240VACで2×MOOPの絶縁定格を実現します。

 小型DC/DCコンバータの入出力静電容量は数pF程度と非常に低いレベルの場合もあり、リーク電流も低くなります。ただし、外付け入出力抑制コンデンサが必要にならないように、EMIエミッションが低いタイプを選択するべきです。外付け入出力抑制コンデンサは、リーク電流を生じさせます。使用する場合は、規制に適合するよう2個を直列に接続することが多い安全定格タイプでなければなりません。

すぐに入手可能なソリューション

 医療用途向けのDC/DCコンバータ設計の課題については、たとえばRECOM(1)が提供する低コストなREMxE各種モジュールが対応しています。定格電力には3.5W、5W、6Wがあり、パイプラインのSMTパーツを含むDIP24スルーホールパッケージを備えます。

 これらのDC/DCコンバータは、2:1の入力範囲で5V、12V、24V、48Vの公称入力電圧、さらにシングルとデュアルの完全安定化出力を選択できます。どのモジュールも250VACで2×MOPPの絶縁定格を備え、8mm超の内部/外部沿面距離とクリアランスがあり、リーク電流は最大1μAです。動作温度範囲-40℃~+85℃が標準で、3.5Wモジュールはディレーティングなしです。5Wと6Wのモジュールはそれぞれ80℃と75℃からディレーティングを伴います。

 医療機器の安全定格は、便利な基板実装の絶縁型DC/DCコンバータを使用することで実現できます。RECOMのモジュールは、要求される仕様に魅力的な価格で適合します。

参考資料
(1) RECOM:www.recom-power.com/medical



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