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産業用フロート式液面センサの選び方・使い方

2021-09-02
マルツ掲載日:2022-01-04


 設計者は、システムを安全かつ効率的に運用するための重要な装置として液面センサ(液面スイッチ、フロートセンサとも呼ばれる)を使用しています。その需要は、HVAC(暖房・換気・空調)、水処理、下水処理、化学・石油化学処理システム、食品・飲料製造など、さまざまな産業分野に広がっています。

 精度やエネルギー効率、耐久性など、ますます厳しくなる要求に応えるため、ゼロから液面センサを設計することも可能ですが、その場合、センサ技術のオプション、パッケージング、インターフェース、規制要件などを設計者が見極めて分別することになります。このため、複雑で時間のかかる、最終的にはコストもかかるプロセスになってしまいます。

 その代わりとなるのが、リードスイッチによるセンシング機能を備え、必要なものがあらかじめすべて組み込まれたパッケージソリューションです。このタイプのソリューションは、すぐに使用できるうえ、ULやIP65など、規制当局の認可も受けています。また、リードスイッチの技術を使用しているため、1,000万回以上の耐久性を持つものが多く、低接触抵抗で高電力負荷に対応して効率を高めることができ、消費電力もゼロに抑えられます。

 この記事では、フロート式液面スイッチを選択する際の設計上の主な考慮事項を紹介します。その後、リードスイッチ技術を使用することの利点を説明し、TE Connectivity(TE)が提供するいくつかの液面/フロートセンサソリューションとその応用方法を紹介します。

フロート式液面センサの選択

 フロート式液面スイッチは、液面が上昇したり危険な状態になったときの警報、機器の過熱防止、材料の適正な混合比率の維持、火災リスクの低減など、さまざまな目的で使用されています。フロート式液面スイッチを特定の用途にあわせて選択するには、以下の点に関する設計条件や要求事項を明確に理解する必要があります。

・液体の種類は何か、その温度と圧力はどの程度か?
・必要なスイッチはノーマリオープン(N.O.)かノーマリクローズ(N.C.)か?
・必要なスイッチ方式は単極単投(SPST)か単極双投(SPDT)か?
・スイッチの向きは、横から見て水平、上にマウント、下にマウントのどれにすべきか?
・液面の状態を示すインジケータは、「満杯」「部分的に満杯」「空」といった単一レベルで十分なのか、それとも複数のレベルを監視する必要があるのか?

 液体とその状態は重要な考慮事項であり、スイッチ本体の材質は用途に応じて異なります。高温の水、燃料、油など、条件の厳しい応用分野では、温度は+130℃、圧力は4.7バールまでに対応したガラス繊維入りポリフェニレンサルファイドのハウジングが必要になることがあります。

 垂直液面スイッチは、本体の長さが1mにもなり得るため、各種プラスチックや真鍮、ステンレス鋼などの硬い素材が使用されることもあります。条件の厳しくない水タンクなどでは、+60℃、0.34バールまでに対応できる比較的安価なアセタールや発泡ポリプロピレンの本体を使用することができます。液面センサの仕様を決める際には、適切なスイッチ本体の材質を採用することに加えて、スイッチング技術を選択することが重要です。

リードスイッチ技術の利点

 リードスイッチは、成熟した信頼性の高い技術です。リードスイッチ技術を用いたフロート式液面スイッチは、パッシブデバイスであり、外部電源なしで機能できます。これらのセンサのスイッチング動作は、フロート内の永久磁石が固定されたリードスイッチと相互作用することで開始されます。

 磁石が埋め込まれた可動式のフロートを利用して、センサ本体にある1つ以上のリードスイッチを作動させます(図1)。磁石は、液面が上がるとスイッチの下から上に移動(フロート)し、液面が下がると下に移動します。磁石がリードスイッチに近づいたり遠ざかったりすると、構成に応じてスイッチがオンになったりオフになったりします。


図1:液面の上昇・下降にあわせて、フロートがステム(左)を上下します。ステムの中には固定されたリードスイッチ(中央)があり、フロートの中の磁石(右)が近づくと、設計に応じてスイッチが開いたり閉じたりします。(画像提供:TE Connectivity)

 これらのセンサの信頼性は、可動部が1つであること、液体に適合した素材を本体に使用していること、1,000万回以上のスイッチング動作が可能なルテニウムのコンタクトポイントを持つ気密封止(ハーメチックシール)されたリードスイッチを搭載していることなどの要因によります。

 リードスイッチは、高温の環境下でも確実に動作します。スイッチがオフの状態では高い絶縁性を持ち、電流消費はソリッドステートスイッチ技術よりも低くなります。リードスイッチを使用することで、電磁両立性(EMC)の要件を満たすことが容易になり、最小限のテストしか必要ありません。

リードスイッチ式液面センサ

 TEの液面センサを使えば、リードスイッチ技術の利点を実感することができます。TEの場合、さまざまなスイッチ、フィッティング、ケーブルのオプションを備えた幅広い素材が使用された、6つのファミリで提供される約20種類の垂直および水平液面スイッチの中から選択することができます(図2)。


図2:TE Connectivityのフロート式液面センサは、垂直マウントやサイドマウント、最大90°の角度、ユニバーサルマウントフィッティングなど、さまざまな構成で利用できます。(画像提供:TE Connectivity)

 TEの液面スイッチの定格電流は交流(AC)250Vまたは直流(DC)200Vまでとなっています。自動車用製品ではISO/TS 16949、工業用製品では国際標準化機構(ISO)の認証を取得しています。一部のモデルは、UL認証と英国WRAS(Water Regulations Advisory Scheme)認証を取得しています。1,000万回以上のスイッチングサイクルに対応しており、設置やフィールドサービスが容易な設計となっています。スイッチの1つが破損しても、簡単に交換することができます。

 TEの液面センサは、タンクが完全に満杯、空、一部満杯の状態を測定し、一部のモデルは複数の液面を測定できます。VS801-51のようなガラス繊維入りポリプロピレンボディの垂直レベルセンサは、水中での使用を想定し、N.O.またはN.C.スイッチ、SPSTまたはSPDTの構成で提供されています。

 ガラス繊維入りナイロン6.6を使用したVCS-06は、SPST構成のN.O.またはN.C.スイッチが用意されています(図3)。どちらのセンサも、沸騰した水や燃料を扱う用途で使用でき、一部のモデルは+130℃、4バールの圧力で動作するようになっています。


図3:VCS-06シリーズのレベルセンサは、液体貯蔵タンクの上部または下部のいずれかに取り付けることができ、フロートはN.O.またはN.C.コンタクトを実現できるように向きを変えることができます。(画像提供:TE Connectivity)

 満杯と空の間の単一の液面レベルを測定する必要がある場合、設計者は水平方向の液面スイッチを使用できます。UL認証済みの例としては、以下のものがあります。

LS309-32は、ガラス繊維入りナイロン6.6を使用しており、油、燃料、非イオン性液体での使用を目的としています。SPST構成で、起動時のスイングは標準で40.4mm、定格電圧はDC200VまたはAC250V、負荷は70Wまでです(図4)。

LCS-03は、ハウジングにアセタール/ポリプロピレン、フロートに発泡ポリプロピレンを使用しています。スペースに制約のある上下水道分野での使用を想定しています。コンパクトな水平型ショートスイング(35.5mm)で、ケーブルまたは一体型のコネクタが付属しています。フロートが水平のときはN.C.で、定格DC48V、最大40Wです。

LDS309-11Nは、ハウジングとフロートにガラス繊維入りナイロン6.6を使用し、油、燃料、非イオン性液体で4.7バールまでの圧力で使用することを目的としています。動作と解除の間の応差距離が8.65mmと短いため、わずかな液面変化を感知することができます。SPST方式を採用しており、最大70Wの負荷、DC200VまたはAC250Vの電圧に対応しています。


図4:水平液面スイッチLCS309-32は、標準的な起動スイングが40.4mmで、油、燃料、非イオン性液体に使用できるように設計されています。(画像提供:TE Connectivity)

 単一の液面測定では不十分な場合、最大1mまで範囲を拡張できるスイッチもあります。たとえば、EVS312-51Nでは、2つのスイッチを使って3つの異なる液面状態を示します(図5)。HighスイッチはN.C.デバイス、LowスイッチはN.O.デバイスです。


図5:EVS312-51Nなど、範囲を拡張できるスイッチは、2つのスイッチを使って3つの異なる液面状態の表示を行います。(画像提供:TE Connectivity)

 フロートが上限にあるときは両方のスイッチが開き、下限にあるときは両方のスイッチが閉じ、上限と下限の間にあるときはHighスイッチが閉じられてLowスイッチが開きます(表1)。


表1:EVS312-51NのHighスイッチとLowスイッチは、3つの異なる液面状態を示すために使用することができます。(画像提供:TE Connectivity)

 EVS312-51Nは、本体にナイロン6.6、フロートにガラス繊維入りナイロン6.6を使用し、定格電圧はDC175VまたはAC125V、負荷は5Wまでとなっています。内部マウントと外部マウントの構成が可能です。

まとめ

 リードスイッチを使用した液面センサは、要求の厳しい過酷な応用分野で信頼性の高い長寿命の選択肢を設計者に提供します。このスイッチには、液体保持タンクが満杯か空か、あるいはその中間の所定のレベルにあるかを測定するためのさまざまな構成があり、中には複数の液面レベルを測定できるものもあります。また、外部電源を必要とせず、EMC要件にも容易に対応できます。

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