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産業オートメーション機器の長距離運用でギガビットEthernetの完全性を確保する方法

著者 Bill Giovino 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-10-13

マルツ掲載日:2022-02-07


 ツイストペアのEthernetケーブルは、長年にわたり10Base-Tや100Base-Tのデータレートで信頼されており、信頼性の高い成熟した技術と考えられています。しかし、高速Ethernetのトラフィックが1Gビット/秒以上になると、設計者は信号がケーブルの非一貫性に寛容でなくなり、干渉、クロストーク、インピーダンスロス、反射信号によるリターンロス、減衰の影響を受けやすくなるという現実に対処しなければなりません。

 このような問題は、産業用オートメーション施設などでケーブルが長くなると、さらに悪化します。これに加えて、レイアウト時およびロボティクスやその他の機械アプリケーションなどにおけるEthernetケーブルのねじれや屈曲といった複雑な問題があります。このような繰り返しの屈曲により、ツイストペアが分離し、ケーブルの電気的性能が損なわれます。

 その結果、信号が減衰し、データの損失が断続的に発生し、時間の経過とともに悪化します。この種のエラーは、特定やトラブルシューティングが困難なことで知られており、長期間にわたりコスト損失が発生するシステムのダウンタイムの原因となります。

 この記事では、高速のデジタルEthernetデータをツイストペア導体上で送信する際の課題について説明します。そして、ボンデッドペアのEthernetケーブルを使用することで、信号損失の低減や物理的な負荷への耐性など、長距離の高速Ethernetデータに安定した性能を提供する方法を説明します。

 その後、Beldenが提供するボンデッドペアEthernetケーブルの2つの例を紹介し、産業環境においてEthernet信号の完全性を確保するためにどのように使用できるかを示します。

ギガビットEthernetデータを確実に送信

 一般的なEthernetケーブルは、ツイストペアの銅線でデータを送ります。従来の安価なケーブルでは、2本のツイストペアしか使用されていないこともありましたが、現在の一般的なEthernetケーブルでは、高速データ転送とPoE(Power over Ethernet)伝送のために4本のツイストペアが使用されています。

 どのEthernetケーブルでも、ケーブルの構造、ケーブルの長さ、干渉、データレートなどにより、ある程度の信号劣化が発生します。高速データを10m以上の長さのケーブルで送る場合、余分な信号劣化を防げるかどうかはケーブルの構造次第です。

 商用や低速の産業用Ethernetケーブルの多くは、銅撚り線のツイストペアが使用されています。銅撚り線は非常に柔軟で加工しやすいため、角で曲げることができ、床や取り付け部にテープで固定してもしっかりと動かないケーブルになります。しかし、銅撚り線は、特に長距離では、銅単線に比べて電流フローへの抵抗が大きくなります。

 そのため、高速データでは一般的に信号電圧が低く、ワイヤの抵抗による信号の減衰やデータの損失が起こりやすくなるため、銅単線の方が高速データに適します。また、PoEでは、銅単線は銅撚り線に比べて、より多くの電流を流すことができ熱の発生も少ないため、より適切な選択肢となります。

 銅単線の欠点は、銅撚り線に比べて柔軟性が悪く、曲げることに抵抗するため、ケーブルを敷設する際に多少の工夫が必要になることです。

 ツイストペアのEthernetケーブルは、RJ45プラグのレシーバとトランスミッタに特性インピーダンスを与えます。一般的に、このインピーダンスは100Ωで、ケーブルの長さ全体で一定である必要があります。インピーダンスは、ツイストペアの2本の導体の中心間距離に影響されます。

 重い物体をぶつけたり、ケーブルを伸ばしたり押したりしたときの応力で、ツイストペアが分離し、部分的に中心間距離が変わることがあります。その結果、ケーブルのインピーダンスが変化し、信号が劣化してしまうのです。この現象は、10Mビット/秒(10Base-T)や100Mビット/秒(100Base-T)の速度では気にならないかもしれませんが、ギガビット単位(1000Base-T)の速度ではデータ損失の原因となります。

 また、クロストークも信号劣化の原因の1つです。2本の高速ワイヤを並行に配置すると、それぞれの導体がもう一方のワイヤに電流を誘導することになり、クロストークの最悪の状況に陥ります。

 クロストークや信号損失のリスクを最小限に抑えるため、配線は自己遮蔽されたツイストペアで行われます。しかし、インピーダンスロスと同様に、ツイストペアの2本のワイヤがケーブルに対する外力によって押し込まれたり、ずれたりすると、ペア間のクロストークが増え、信号の信頼性が低下します。

 インピーダンスロスとクロストークの組み合わせは、距離によるケーブルの電気抵抗と相まって、信号が反射して元に戻ることによるリターンロスを発生させます。リターンロスは予想されるものであり、終端でエコーキャンセルを使用して補正されますが、過剰なリターンロスは、断続的なデータ損失を引き起こす深刻な問題となります。

 この問題は診断が難しいことで知られており、過剰なダウンタイムを引き起こす可能性があります。この問題は、高振動の産業環境ではさらに悪化する可能性があります。Ethernetケーブルの位置が移動することで電気的特性が変化し、データ信号の問題が発生しますが、振動や動きが止まると不思議なことに消えてしまいます。

ボンデッドペアEthernetケーブル

 前述したように、インピーダンスロス、クロストーク、リターンロスはすべて、ケーブル長に沿ったツイストペアの中心間距離の不一致に大きく影響されます。Beldenは、過酷な環境で高速Ethernet接続のルーティングを行う設計者のために、ギガビットEthernet用の10GX CAT6とCAT5EボンデッドペアモジュラーEthernetコードで問題に対処しています。

 ボンデッドペアケーブルは、ツイストペアのワイヤを物理的に接着することで、導体同士の中心間距離を一定に保ち、一時的な分離も防ぐことができます(図1)。これにより、インピーダンスロスやクロストークのリスクが大幅に軽減されます。


図1:左に示すノンボンドのツイストペアでは、ペアをねじったり曲げたりしたときに生じる隙間により、導体の中心間距離が損なわれます。右側のボンディングされたツイストペアは、外力にもかかわらず、その中心間距離を維持しています。(画像提供:Belden)

 BeldenのボンデッドペアEthernetケーブルは、ツイストペアの導体に銅単線を使用しているため、電気抵抗が少なくなっています。また、PoE用途では、銅撚り線に比べて、より多くの電力をより少ない損失で扱うことができます。さらに、ケーブルの抵抗による発熱を抑え、安全性を向上させています。

 ケーブルの電気抵抗を減らし、インピーダンスロスを減らし、クロストークを最小限に抑えることで、過酷な環境下でもギガビットEthernetのデータの完全性を大幅に向上させることができます。

 ギガビットEthernetパッチコードについては、Beldenが10フィートのボンデッドペアEthernetケーブルアセンブリC601106010を提供しています(図2)。これはCAT6+のケーブルアセンブリで、24AWGの銅単線のツイストペアが4本ボンドされています。

 端部は、ポリ塩化ビニル(PVC)製の外部ジャケットにエラストマ製のブーツを成形したRJ45プラグで終端されており、分離しにくい強力なストレインリリーフを形成しています。また、RJ45終端部でのツイストペアのねじれや分離を防ぎ、水や埃に対する保護機能も備えています。


図2:BeldenのC601106010 Ethernetコードは、2つのRJ45プラグで終端され、PVCジャケットの上にエラストマブーツのストレインリリーフが成形されており、ケーブルの終端部を埃や水分から保護しています。(画像提供:Belden)

 青色のEthernetケーブルは、Ethernetケーブルとしては一般的な直径5.715mmです。C601106010は、ボンデッドペアと単線導体によってケーブルアセンブリの体積が増えることがないため、市販のケーブルを配線するあらゆる用途に適します。

 ケーブルアセンブリの電流定格は、1コンタクトあたり1.500Aです。C601106010は、ギガビットの速度定格と相まって、ロボティクスや産業用IoT(IIoT)のエンドポイントなどの産業用PoEアプリケーションに適しています。最大接触抵抗は0.020Ωで、1.500Aでの発熱量はわずか0.300Wと、産業用途としては許容範囲内の値です。

 このCAT6+ケーブルアセンブリは、1000Base-Tアプリケーションに対応しており、動作温度は-10℃~+60℃であるため、温度変化の激しい高速産業用オートメーションアプリケーションに適しています。

 長距離用には、Beldenが提供する25フィートのボンデッドペアEthernetケーブルアセンブリCA21106025があります。これは、Belden C601106010と同じ基本的な電気仕様を持つCAT6aケーブルアセンブリで、図2に示すように同じ終端を持っています。しかし、CA21106025はケーブルが長いため、外部からの干渉を受けやすくなっています。

 25フィートのケーブルでギガビットの速度を出すと、周囲の電子機器からの電磁放射を拾うアンテナとして機能してしまいます。信号の完全性を確保するため、CA21106025ではアルミホイルの外部シールドを採用しています。その結果、直径は6.731mmとなり、市販のケーブルより若干大きくなりますが、ケーブルガイドや一般的なルーティング方法の許容範囲内に収まっています。

 BeldenのCA21106025ケーブルアセンブリは、このシールドによって10GBase-T(10Gビット/秒)の速度に対応しており、非常にハイエンドな産業用オートメーションアプリケーションや、施設内での高解像度ビデオのストリーミング用途に適しています。

まとめ

 ギガビットEthernetは、産業用オートメーション設備に対し、より高いデータレートをもたらします。そのようなデータレートでは、干渉、クロストーク、リターンロスなどのリスクが高まり、データ接続が断続的になる可能性があります。これは、ケーブルが繰り返し屈曲されることで、ケーブルの電気的性能が損なわれる可能性がある産業用途では、特に顕著です。

 ボンデッドツイストペアのEthernetケーブルを使用し、固定された中心間距離を確保することで、ネットワークのアップグレードや新規導入時のPoE要件を満たしながら、より長い距離で快適に高速通信を行うことができます。




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