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相互運用性の確保、コスト削減、信頼性向上のための産業用USB-Cケーブルの使用方法

著者 Bill Giovino 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-11-11

マルツ掲載日:2022-03-07


 産業用施設では、IoTノードのネットワークやデジタル電子機器の相互接続など、複雑に絡む配線が増えています。デジタルネットワークは、EthernetやBACnetなどの有線プロトコルや、Wi-FiやBluetoothなどのワイヤレスネットワークプロトコルを使用して標準化されていますが、シングルボードコンピュータ(SBC)やプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの制御コンピュータと、センサやアクチュエータなどの周辺機器との間のデジタル相互接続は、大きく異なります。

 さらに困ったことに、相互接続にはさまざまなケーブル、コネクタ、ピン配列が使用されており、見た目はよく似ていますが、まったく互換性がありません。

 産業環境の厳しい条件にもかかわらず、システム設計者には、これらの非互換性を低減して相互運用性を確保するとともに、コストの削減、システムアセンブリの迅速化、信頼性の向上を図ることが求められています。

 これを実現する1つの方法は、IP67定格やIP68定格のUSB-Cケーブルアセンブリを標準化することです。これにより、さまざまな装置においてケーブルアセンブリの互換性が向上し、技術者の作業が非常に楽になります。

 この記事では、産業用アプリケーションにおけるデジタル相互接続の問題点と、シンプルなデジタル相互接続のためのUSB-Cケーブルとコネクタの標準化により、これらの問題の多くをどのように解決できるかについて説明します。

 次に、PEI-Genesis、Amphenol LTW、Bulginが提供する、IP67準拠などの固有の特徴を持つさまざまなUSB-Cコネクタとケーブルアセンブリを紹介してから、コンピュータとセンサ/アクチュエータ間のアプリケーション向けに、ユビキタスで信頼性の高い堅牢な接続性をもたらす方法について説明します。

産業用オートメーションにおけるデジタル相互接続

 産業用装置は、SBC、PLC、または近隣のラップトップなどの制御コンピュータによって管理されています。制御コンピュータは多くの場合、装置が必要とする近隣のデバイス(広義にはセンサ)と接続されます。

 これらには、スイッチ、光センサ、環境センサ、モータ、ソレノイド、ライトなどのアクチュエータが含まれます。ほとんどの重産業装置では、装置メーカーの設計者が、ケーブルエンドに使用するコネクタのタイプと、使用する電気プロトコルを選択します。

 カスタムの産業制御では、エンジニアや技術者がコンピュータ、アクチュエータ、センサ、コネクタ、ケーブルを選択して設置します。コネクタのタイプと電気プロトコルが選択されると、後から変更するには時間と費用がかかります。

 そのため、産業運用を計画する際には、設計の初期段階で、センサやアクチュエータにどんなタイプのデジタル相互接続を使用するかを決定することが重要です。相互接続されたデジタルシステムを多用するシステムでは、運用規模が大きくなればなるほど、ケーブルなどの装置を標準化することで時間とコストを削減できます。

 装置の設定や再構成を行う際には、互換性のあるコネクタ終端を備えた適切なケーブルをすぐに入手する必要があります。電気的に互換性のない2つのケーブルアセンブリは、一見同じように見え、類似したコネクタもほとんど適合しそうに見えますが、実際には適合しません。

 このような明白でない互換性は、技術者を苛立たせ、システムの導入を遅らせる原因となります。適切なケーブルを使用していても、ケーブル上の非可逆的なキー付きコネクタを装置に適切に配置して確実に接続するには、何度も試行錯誤する必要があります。

 光量の少ない環境や展開の速さが重要な場合は、ケーブルアセンブリを1つに標準化することで、ストレスを軽減しつつ、マシン間の相互運用性も確保することができます。これは時間の節約になるだけでなく、ケーブルアセンブリを大量に購入することができるため、コスト削減にもつながります。

デジタル相互接続におけるUSB-Cの利点

 ユビキタスなデジタル相互接続の問題に対処するためのUSB-Cケーブルアセンブリは、産業装置間のほとんどのアプリケーションに適しています。USB-Cのプラグとレセプタクルは、回転対称のキーレス両面ブレードコネクタです。

 これにより、最初の挿入で確実に接続でき、時間とストレスの削減につながるため、キー付きコネクタを正しく配置するために手探りで作業する必要がなくなります。また、USB-Cケーブルには、センサやアクチュエータに電力を供給できるという利点もあります。

 産業用施設では、制御コンピュータとセンサ/アクチュエータ間のほとんどのデジタル相互接続用にUSB-Cケーブルとコネクタを標準化することで、ケーブルアセンブリの在庫とコネクタの相互運用性を簡素化することができます。

 産業用のIP67 USB-Cケーブルやコネクタは耐久性が高く、過酷な産業用施設で一般的に見られる熱、溶剤、液体に耐えることができます。また、USB-C産業用ケーブルは、電力と信号の損失を最小限に抑えるように作られており、曲げやねじれの力による酷使にも耐えられるようになっています。

 USB-Cコネクタは、USB2.0とUSB3.1に対応しています。USB-C規格では、USB 3.1のポートおよびケーブルアセンブリに対し、USB 2.0の480Mbits/sという速度との下位互換性が求められています。これにより、USB 2.0のポートでもUSB 3.1と同じケーブルアセンブリを使用することができ、互換性の問題を防ぐことができます。

 しかし、USB3.1ではより高速な通信が可能になります。USB 3.1 Gen1のケーブルアセンブリは最大5Gbits/s、USB Gen2のケーブルアセンブリは最大10Gbits/sをサポートしています。伝送速度を識別するために、USB-Cコネクタを両端に備えたケーブルアセンブリには、ケーブルアセンブリの最大電力とデータ送信速度を識別するeMarkerチップをコネクタのハウジングに組み込むことが、USB仕様で義務付けられています。

 eMarkerチップのデータは、最初の挿入時にUSBホストに読み取られ、ケーブルの最大伝送速度がUSBホストに通知されるため、USBホストはデータを適切に送信することができます。USB 2.0の速度のみをサポートするUSB-Cケーブルアセンブリでは、eMarkerチップを搭載する必要がないため、チップデータが送信されなければ、USBホストは480Mbits/sでデータを送信します。

 USB-C規格では、5VDCで最大3A、合計15Wの電力を供給することができます。これは、一般的なUSBケーブルアセンブリの規格です。しかし、USB3.1 Gen1以降の仕様では、20Vで5A、100Wの電力を供給できるようになっています。

 USB 3.1の電力供給用に設計されたUSB-Cケーブルアセンブリには、電力供給容量を識別するeMarkerチップを搭載する必要があります。搭載しない場合、USBホストはデフォルトで15Wになります。これにより、ケーブルが破壊されるような電力過多の状態を防ぐことができ、安全性が向上します。

 ここでは、デジタル相互接続用のUSB-Cケーブルアセンブリの標準化に焦点を当てていますが、ケーブルアセンブリの容量には以下の3種類があることを認識しておくことが重要です。

(1) USB 2.0モード:eMarkerなし、15Wの電力と480Mbits/sのデータを供給可能
(2) USB 3.1 Gen 1:eMarkerあり、100Wの電力と5Gbits/sのデータを供給可能
(3) USB 3.1 Gen 2:eMarkerあり、100Wの電力と10Gbits/sのデータを供給可能

 低容量のUSB-Cケーブルを、適切に設定された高容量のUSB-Cホストやデバイスと一緒に使用した場合、USBホストは低容量の方に合わせて電力とデータを調整します。これにより、ケーブルの電力過多を防ぐことで安全性を高め、データレートの互換性を確保することで信頼性を向上させます。

 施設では、必要な電力とデータの最大供給量を提供する規格のみを使用することで、これをさらに簡素化できます。ライブビデオのストリーミングのような高データ処理を行う産業用オートメーション施設でなければ、USB 3.1 Gen 1のケーブルアセンブリを標準化することは安全な選択です。

 一般的に、5Gbit/sのUSB 3.1 Gen 1ケーブルは、制御コンピュータと近くのセンサやアクチュエータに接続するのに十分な、最大2mの長さが指定されています。10Gbit/sのデータを確実に送信する必要がある場合、USB 3.1 Gen 2のケーブルは最大1mと規定されています。これより長いケーブルで10Gbit/sのデータを送信すると、信号の反射や減衰により、ケーブル長がデータ損失の原因になる可能性があるためです。

USB-Cケーブルアセンブリ

 過酷な環境で高速データを送信することを想定している設計者には、堅牢で信頼性の高いソリューションが数多くあります。たとえば、PEI-Genesisは、IPUSB-31WPCPC-1M Sure Seal IP67 USB 3.1 Gen 2ケーブルアセンブリを提供しています(図1)。

 このケーブルの長さは1mで、ほとんどの過酷な産業環境に適した-20℃~+85℃での動作に対応しています。ケーブルジャケットには、耐水性と紫外線(UV)耐性に優れたポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を採用しています。商用ジャケットは、日光に長時間さらされると、ひび割れや変色を起こすことがあります。


図1:Sure Seal IPUSB-31WPCPC-1Mは、産業用アプリケーション向けに作られた1mのUSB-Cケーブルアセンブリです。ロックナットガスケット付きのコネクタは、センサやアクチュエータに対し、IP67の防水性能で確実に接続することができます。寸法は、ミリメートルで表示しています。(画像提供:PEI-Genesis)

 IPUSB-31WPCPC-1Mは、一端のUSB-C標準プラグコネクタがPVC樹脂で成形されており、ステンレス鋼製のUSB-Cプラグが付いています。この終端は、SBCやPLCのUSBホストコネクタに接続します。他端には、ナイロンロックナットとゴムガスケットを備えた密閉型の成形プラグが付いています。これにより、センサやアクチュエータにIP67の強固で安全なシーリングをもたらします。

 Sure Seal IPUSB-31WPCPC-1Mには、接続した装置に対する容量を識別するeMarkerチップが組み込まれています。このeMarkerチップは、ケーブルアセンブリの-20℃~+85℃の全温度範囲で動作します。これにより、両極端の温度環境下で装置の電源を入れた場合でも、ケーブルを正しく識別することができます。

過酷な環境下でのUSB-C接続

 極めて過酷な環境に対応するため、Amphenol LTWは、UC30FL-NCML-SC001 USB-C 1mケーブルアセンブリを提供しています(図2)。ケーブルの全長をポリプロピレンプラスチック(PP)製コンジットで囲み、衝撃、切断力、角で曲がることによる歪みから保護します。また、このコンジットは、極端な振動を受けたときに、囲まれたケーブルを保護する役割も果たします。コンジットはケーブルの両端に接着されており、取り外すことはできません。


図2:UC30FL-NCML-SC01 USB-Cケーブルアセンブリは、PP製コンジットに囲まれており、囲まれたケーブルを衝撃や過酷な振動から保護します。寸法は、ミリメートルで表示しています。(画像提供:Amphenol LTW)

 このケーブルアセンブリの一端には、USBホストに差し込む共通のUSB-Cホストコネクタがあります。他端には、強化されたストレインリリーフを備えた頑丈な丸型コネクタが付いています。

 シリコーンガスケット付きの密閉型成形プラグは、ナイロンロックナットで固定されています。これにより、ほとんどの化学物質への耐性と、防水性と気密性のある密閉を実現します。ケーブルと丸型コネクタは、嵌合時、非嵌合時ともにIP67定格で、接続していない状態でも丸型USB-Cプラグを環境から保護します。

 UC30FL-NCML-SC01は、UL94V-0の耐火性を備えています。これは、PPケーブルが最大10秒間、炎に耐えることができるという意味です。また、PPケーブルは、オイル、ガソリン、ほとんどの溶剤に耐性があります。

 各プラグは-40℃~+85℃の温度範囲で動作し、ナイロンロックナットとPPコンジットは-40℃~+115℃のより高い温度に耐えることができます。そのため、このケーブルアセンブリは、産業用のガソリンエンジンや発電機に搭載されているセンサやアクチュエータの接続に特に適しています。

 また、ケーブルが5Gbit/sのデータ転送に対応していることを識別するeMarkerチップが組み込まれており、エンジンの動作を常に監視して効率を最大化する必要のある高速ガソリン発電機に適しています。

海洋アプリケーションにおけるUSBセンサ

 場合によっては、装置の制御コンピュータがUSB-Aコネクタを備えていても、USB-Cコネクタに接続する必要があります。この場合、BulginのPXP4040/C/A/2M00 USB-A to USB-Cケーブルアセンブリのようなケーブルが必要です(図3)。このケーブルには、一端にUSB-Aプラグ、他端に丸型USB-Cプラグが付いており、-40℃~+80℃で動作します。

 このUSB-Cコネクタとケーブルは、水深10mに2週間沈めても動作可能です。また、塩水にも耐性があるため、タンカーや貨物船に搭載される産業機械などの船舶用装置に適しています。ケーブルアセンブリはIP68定格ですが、USB-AコネクタはIP66定格です。


図3:PXP4040/C/A/2M00は、一端にUSB-Aプラグ、他端にUSB-Cプラグを備えています。塩水に耐性があり、USB-Cプラグは10mの水中に最大2週間浸しても耐えることができます。(画像提供:Bulgin)

 また、BulginのPXP4040/C/A/2M00は、UL94V-0の難燃性定格も備えています。ケーブルジャケットにはPVC樹脂を使用しており、マリンデッキ用アプリケーションに適しています。

 USB-Cケーブルのシェルには、自動車のバンパーによく使用される高強度素材のポリカーボネート-ポリブチレンテレフタレート(PC/PBT)を採用しています。PC/PBTコネクタのハウジングは、化学物質に対する耐性が高く、-40℃までの低温下で大きな衝撃にも耐えられる柔軟性があります。

 強い力で打撃を加えられても、コネクタは破断しにくく、割れにくい仕様になっています。これにより、コネクタを急速に凍結させてハンマーで叩くフリーズアタックなど、USBセキュリティセンサの耐タンパー性を実現しています。

 USB-Cの仕様では、一端がUSB-AプラグのケーブルにeMarkerチップを組み込むことはできません。このケーブルアセンブリは、2mの長さで最大5Aを供給し、最大5Gbit/sのデータレートをサポートするように設計されていますが、一部のUSB-C周辺機器にはeMarkerチップがなく、デフォルトで480Mbits/sになる場合があることに留意してください。

まとめ

 産業環境でのデジタル相互接続のためにUSB-Cケーブルアセンブリを標準化することで、ケーブルの在庫が簡素化され、プラグとレセプタクルの回転対称設計により、迅速で容易な接続が可能になります。

 USB-Cケーブルは、データ損失や危険な電力過多状態を防ぐために、ホスト制御コンピュータへの電力とデータ転送容量を識別することができます。また、産業用システムに適切なUSB-Cケーブルアセンブリを選択して使用することで、信頼性の向上、メンテナンスの削減、全体的なコストの削減にもつながります。




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