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重要な負荷に高品質な電力を効率的に供給し、基板スペースへの影響を最小限に抑える

著者 Art Pini 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-11-16

マルツ掲載日:2022-03-07


 多くの場合、ビッグデータサーバや、機械学習、人工知能(AI)、5Gセル、IoT、エンタープライズコンピューティングなどのアプリケーションでは、低電圧での高電流、コンパクトなフットプリントでの高電力密度を要求する強力なASIC、FPGA、GPU、CPUが必要になります。

 システム全体の電源安定性を確保するために、DC/DC電源をポイントオブロード(POL)、すなわち高性能プロセッサに直接供給する分散型電源管理システムが採用されています。このようなDC/DC電源コンバータは1枚の基板上に多数存在することがあるため、設計者にとって、これらのデバイスをできるだけ小さくして基板のスペースを節約することが課題となっています。同時に、性能、レイテンシ、熱、効率、信頼性などの要件を満たしながら、設計プロセスを簡素化し、コストを抑え続ける必要があります。

 こうした問題の土台を解決する手段として、高性能な半導体と受動部品を高度なパッケージ技術で組み合わせ、より高レベルのシステム統合を実現します。これにより、現在利用可能な他の技術と比較して、熱管理を強化しつつ、小型化と薄型化を実現できることが示されています。同時に、統合されたアプローチにより、在庫管理や開発期間を含めたデザインインのコストも抑えることができます。

 この記事では、分散型電源ネットワークの必要性とPOL電源デバイスの役割について説明します。次に、高度なパッケージ技術を使用して要求される性能特性を実現しているTDK CorporationのPOL DC/DCコンバータのクラスを紹介します。また、この記事では、これらの製品の突出した特性も考察し、POLの電力供給要件を適切に満たすための展開方法を説明します。

POL DC/DCコンバータ電源を採用する理由

 コンピュータやサーバなどのデジタル機器では、FPGAやASICなどの高度なICデバイスの使用が増えており、システム電源では得られない複数の電源電圧が必要になります。さらに、正しい順序と最小レイテンシでそれらの電圧を必要とします。システム電源は一般的に、1V、3.3V、5Vのようないくつかの固定電圧を提供します。一般的なFPGAは、1.2~2.5Vの電圧を必要とします(図1)。


図1:一般的なFPGAでは、プロセッサ内の特定の機能に特化した複数の電圧が必要になります。このプロセッサは、3つの異なる電圧を利用する8つの専用電源入力を使用しています。(画像提供:Art Pini)

 FPGAは最低でもコア部とI/O部に別々の電源が必要です。この例のFPGAは、コアを1.2V、I/O機能を2.5Vで動作させています。さらに、補助回路のために他の6つの電源レベルが必要となります。

 7つの電源をFPGAの近くに配置することが、プリント基板のレイアウト設計に負担をかけることは明らかです。また、熱放散の問題も考慮する必要があるため、電源は小型で効率的なものが求められます。

独自のシステム統合を実現する特許技術

 サイズ要件を満たすため、TDKは独自設計のPOL DC/DCコンバータを開発し、サイドバイサイドのディスクリート部品レイアウトをなくしました。その代わりに、SESUB(Semiconductor Embedded in SUBstrate)システムインパッケージ(SiP)技術に基づく3D統合を採用しています。

 250μmのプリント基板の中に、パルス幅変調(PWM)コントローラやMOSFETを組み込んだ高性能半導体を内蔵し、降圧(バック)コンバータを形成しています。また、回路出力のインダクタとコンデンサも3Dレイアウトに組み込まれており、超小型で放熱性に優れたパッケージとなっています(図2)。


図2:特許取得済みのSESUB技術は、高度な電源コントローラICとMOSFETを250mmの基板に統合し、さらに回路出力のインダクタとコンデンサを加えて、高度に統合されたDC/DCコンバータモジュールを形成します。(画像提供:TDK Corporation)

独自のPOL電源ソリューション

 TDKは、SESUBを小型DC/DC電源モジュールのμPOL(マイクロポール)ラインの基盤としています。モデルFS140x-xxxx-xxとして指定されるこの製品ファミリは、出力電圧レベル5、3.3、2.5、1.8、1.5、1.2、1.1、1.05、1、0.9、0.8、0.75、0.7、0.6Vに対応する19の選択肢を備えています。モデルに応じて3~6Aの連続負荷電流に対応し、3.3×3.3×1.5mmのパッケージに収められています(図3)。


図3:μPOL DC/DCコンバータは、わずか3.3×3.3×1.5mmの大きさでありながら、最大15Wの処理が可能です。(画像提供:TDK Corporation)

 独自の物理設計により、このDC/DCコンバータファミリーは、1mm3あたり最大1Wの電力密度を実現し、この小さなパッケージで最大15Wの処理が可能です。

 公称出力電圧は、工場出荷時に±0.5%以内で設定されています。I²Cインターフェースを搭載しており、コンバータのローカル制御が可能です。出力電圧は、あらかじめ設定された公称電圧に対して±5mVステップでトリミングすることができます。

FS1406 μPOLコンバータの内部構造

 FS1406-1800-AL 1.8V DC/DCコンバータの機能ブロック図は、その小さなサイズにもかかわらず、デバイスに多くの高度な回路機能が詰め込まれていることを示しています(図4)。


図4:FS1406-1800-AL DC/DCコンバータの機能ブロック図は、内部のPWM、I²Cポート、制御ロジック、出力MOSFETなど、回路の高度な機能規模を示しています。(画像提供:TDK Corporation)

 FS1406-1800-ALの公称出力は1.8V、連続負荷容量は6Aです。その出力電圧はI²Cで、0.6~2.5Vでプログラム可能です。必要な入力電圧は4.5~16Vで、指定された動作温度範囲は-40℃~+125℃です。

 このDC/DCコンバータの中核は、高速な過渡応答を実現するために設計された独自のPWM変調器です。PWM変調器は、コンバータの出力電圧に比例したスイッチング周波数で動作します。また、安定性補償機能を内蔵しているため、外部補償ネットワークを必要とせず、さまざまな種類の出力コンデンサに対応することができ、「プラグアンドプレイ」が可能です。

 変調器のPWM出力は、MOSFET電源デバイスのゲート回路を駆動します。前述のように出力フィルタインダクタをパッケージ内に内蔵することで、外付け部品をさらに最小限に抑えています。

 FS1406には、内部回路とMOSFETに電力を供給するために約5.2Vで動作する低ドロップアウト(LDO)電圧レギュレータが内蔵されていることに注意してください。

 また、設計者は、ソフトスタート保護、「パワーグッド」ステータスライン、過電圧保護、プリバイアス起動、自動回復機能付きサーマルシャットダウン、ヒカップモード付き熱補償型過電流保護などの保護機能が内蔵されている点にも注目する必要があります。ヒカップモードは、過電流イベントが検出されると一定時間電源を遮断し、障害が解消されるまでそのシーケンスを繰り返します。

 出力電圧の設定にはI²Cインターフェースを使用します。また、起動機能や保護機能などのシステム最適化パラメータの設定も可能です。

代表的なアプリケーション

 FS1406ファミリは完全に統合されており、指定されたターゲット電圧に工場でトリミングされているため、出力分圧器は必要ありません。この設計では、許容できる出力リップルと負荷安定化を確保するために、最小限の出力静電容量を追加する必要があります。また、入力電流要件を処理するために、入力コンデンサも必要になります。追加する必要のある最小限の回路部品を図5に示します。


図5:代表的なアプリケーションでFS1406 μPOL DC/DCコンバータファミリが最低限必要とするのは、入力と出力のコンデンサの追加のみです。(画像提供:TDK Corporation)

 入力と出力のコンデンサは、等価直列抵抗が低いものを使用してください。多層セラミックコンデンサが推奨されています。FS1406のデータシートには、入力と出力の両方の静電容量値の計算に関する詳細なガイダンスが記載されています。

設計者がスタートアップするのに役立つ評価ボード

 1.8VバージョンのμPOLコンバータの評価ボードはEV1406-1800Aで、1.8V出力と12V入力ソースを備えたDC/DCコンバータ向けの設計を提供します。出力電流は0~6Aで、サイズは63×84×1.5mmです(図6)。


図6:EV1406-1800A評価ボードの寸法は63×84×1.5mmです。μPOL DC/DCコンバータは黄色で囲まれている部分で、そのサイズの小ささを示しています。(画像提供:TDK Corporation)

 μPOLのサイズと電力供給機能により、これらのデバイスのいくつかをFPGAやASICの周りに簡単に配置することができます。この評価ボードは、設計例を提供するだけでなく、入出力静電容量値でユーザーが実験できるように、スルーホール部品の位置をオープンにしています。また、FS1406-1800の内部バイアス電源または外部電圧源を選択するためのヘッダを備えています。もう1つのヘッダにより、I²Cインターフェースに簡単にアクセスできます。

I²Cプログラミングドングル

 設計支援として、TDKは出力電圧を±5mVステップで変化させるために使用されるTDK MICRO-POL DONGLE I²Cプログラミングボードを提供しています。また、システム保護パラメータのプログラミングも可能です。このドングルは、TDKが提供する無償のGUIソフトウェアパッケージと連動しており、コンバータの調整を容易に行うことができます。

まとめ

 基板スペースへの影響を最小限に抑えつつ、信頼性の高い高品質なPOL電源を供給する必要がある設計者にとって、TDKのμPOLラインの19個のDC/DCコンバータは、幅広いアプリケーションに適したソリューションを提供します。

 このファミリは14の一般的な出力電圧レベルをサポートしており、それぞれの電圧レベルはI²Cポートを使用して±5mVステップで調整可能です。μPOLは、特許取得済みのSESUBをベースとした独自の構造により、最小限のサポート部品で高い電力密度を実現しています。




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