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CUI Devicesプレゼンツ - DIPスイッチの基礎

著者 Ryan Smoot(ライアン・スムート) 
CUI Devices社テクニカルサポートエンジニア
2021-11-24

マルツ掲載日:2022-03-28


 DIP(デュアルインラインパッケージ)スイッチは、1970年代から使用されています。OEMやエンドユーザーが製造完了後の電子機器の機能を変更する際に、幅広く利用されています。たとえば、地域によって動作要件が異なる機器のリージョンコードを設定したり、ガレージドアオープナーで使用する無線チャンネルを変更したり、接続されたメモリの種類をPCマザーボードに伝達したりするために、よく使われます。

DIPスイッチの基礎

 DIPスイッチは、複数のスイッチを1つのユニット(パッケージ)にまとめたもので、通常はPCBやブレッドボードに実装されます。操作が非常に簡単なスイッチで、ポジションの切り替えを手動で行うため、システムの起動時にスイッチのステータスを簡単に判断できます。

 この点が、マイクロコントローラによるポーリングが必要なメンブレンキーパッドなどとは異なります。このシンプルなDIPスイッチは、スイッチの開閉を判断するのにそれほど計算能力を必要としないため、基本システムファームウェアへの入力に最適です。

 DIPスイッチは、シンプルで柔軟性があり、低コストであることから、多くのエレクトロニクスアプリケーションで継続的に使用されています。そのサイズ、構成、タイプ、電力定格はさまざまです。

 ユーザーは、各アプリケーションでの構成ニーズに応じて、DIPスイッチのポジション数を選択することができます。DIPスイッチには、手動で作動できるものと、スイッチのポジションを変えるために専用の工具やドライバーが必要なものがあります。


図1:一般的なDIPスイッチの例。(画像提供:CUI Devices)

 他のスイッチと同様に、設計者は「極」と「投」の数を指定しなければなりません。単極単投(SPST)スイッチは、閉じると電流を流すことができ、開くと電流を止めることができます(図2を参照)。


図2:SPST回路図。(画像提供:CUI Devices)

 単極双投(SPDT)スイッチは、図3に示すように、2つの異なる経路のどちらに電流を流すかを選択できます。図のように、左側に1つの「極」があり、右側に2つの端子があります。端子を選択することで、電流を「投」じたり、経路を変えたりすることができます。


図3:SPDT回路図。(画像提供:CUI Devices)

 双極双投(DPDT)スイッチは、機械的に相互接続された2つのスイッチを使用して、2つの回路を制御します。図4に示すように、一方の極のポジションが変わると、もう一方の極も同じように変化します。それぞれの極が、回路内の異なる経路に流す電流の方向を変えます。この方法は、複数のスイッチを組み合わせて複数の極と複数の投を利用する形で拡張することができます。


図4:DPDT回路図。(画像提供:CUI Devices)

 パッケージ内のスイッチの数はアプリケーションによって異なり、一般的には1~16ポジションです。一般的なDIPスイッチには、8つのポジションがあります。これは、2進数の8ビット(1バイト)で表される256通りの設定が可能ということです。スイッチの機能や一般的なスイッチの種類については、CUI Devicesの記事『スイッチの基礎』をご覧ください。

一般的なDIPスイッチの種類

 スライドアクチュエータ、ピアノアクチュエータ、ロータリアクチュエータなど、操作方法に応じて名付けられたさまざまな種類のDIPスイッチがあります。

 スライドDIPスイッチは通常、2つのポジション(閉または開、オンまたはオフ、1または0)を持ち、SPSTスイッチとして機能します。また、3つのポジションがあり、真ん中が通常はニュートラルになっているスライドDIPスイッチもあります。このタイプのスイッチは、両端に接点があるため、アクチュエータが両サイド間を移動することでオン/オフ/オンを設定することができます。

 DIPスイッチは、ノーマリオープン(接点が通常は開いていて、作動時に回路が閉じられる)、またはノーマリクローズ(接点が通常は閉じていて、作動時に回路が開く)に設定することができます。


図5:8ポジションのスライドDIPスイッチ。(画像提供:CUI Devices)

 DIPスイッチは、狭い筐体に実装される基板で使用されることが多いため、操作性を高めるうえで、その形状や大きさ、アクチュエータの動き方などが非常に重要となります。たとえば、ピアノDIPスイッチは、スライドDIPスイッチと同じ機能を備えていますが、スイッチの向きが異なり(スライド型は水平方向)、ピアノ型は上下の動きで作動します。標準のDIPスイッチは水平に実装されるため、前後の動きで作動させることができます。


図6:8ポジションのピアノDIPスイッチとその上下アクチュエータ。(画像提供:CUI Devices)

 ロータリDIPスイッチは、複数のポジション間で回転できるアクチュエータを備えており、多くの場合、回転させるために、上部にドライバー用の溝が付いたローレットノブを使用します。アクチュエータを回転させると、スイッチの出力がポジションに応じて変化します。


図7:フラット型と凸型のアクチュエータを備えたロータリDIPスイッチ。(画像提供:CUI Devices)

 これらのDIPスイッチの利点は、非常に多くの情報をコード化できることです。したがって、基板メーカーはこのDIPスイッチを使用して、さまざまな選択肢を提供できます。たとえば、4つの出力ピンを持つロータリDIPスイッチは、最大16種類の出力構成をバイナリコードで生成できるため、16進値を設定するのに便利です。図8には、数字の0~9とアルファベットのA~Fで表される、16ポジションのロータリDIPスイッチの16進コード表を示します。


図8:16ポジションのロータリDIPスイッチの16進コード表。(画像提供:CUI Devices)

 他のタイプのロータリDIPスイッチは、1つの極に2つ、3つ、または4つの投を備えたSPDTデバイスとして機能するように構成できます。たとえば、1つの信号を、DIPスイッチの設定に応じて最大4つの異なる送信先に送ることができます。

DIPスイッチの主な仕様

 DIPスイッチはシンプルですが、完全に互換性のある仕様として扱えるわけではありません。各アプリケーションに最適なDIPスイッチを選ぶには、表1に示した要素だけでなく、競合部品のデータシートも確認し、スイッチのポジション数やアクチュエータの種類などを比較するとよいでしょう。


表1:DIPスイッチを選択する際に考慮すべき仕様。

 これらの仕様はシンプルに見えますが、重要です。仕様の範囲外の方法でDIPスイッチを使用すると、接点間にアークが形成される(悪い)問題や、接点が溶接されて閉じてしまう(より悪い)問題につながります。こうした事象は、安全上の問題を引き起こすだけでなく、システムを停止させる可能性もあります。

まとめ

 DIPスイッチは、数十年前からデバイスの構成に使用されてきました。今では、家庭や工場に配置する前にIoTデバイスを事前構成してダウンタイムを抑制するためにも使用されています。その他の一般的なアプリケーションには、ガレージドアオープナーやリモコンのプログラミング、PCマザーボードの構成、電源投入せずに行う産業用機器のテストなどがあります。

 DIPスイッチには、他にもさまざまな形態があります。それらに共通するのは、シンプルさ、柔軟性、低コストです。これらを考えると、今後も新たな用途やアプリケーションが増えていくことでしょう。CUI Devicesは、さまざまな設計ニーズに対応するため、スライド、ピアノ、およびロータリアクチュエータなどの各種DIPスイッチを提供しています。

 設計者は、システムの信頼性を実現するとともにコネクタを使いやすくするために、1つの相互接続システムを標準とすることで、設計プロセスを簡素化することができます。




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