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B-L4S5I-IOT01AディスカバリキットIoTノードを使ってIoTデバイスを迅速に試作する方法

著者 Jacob Beningo 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-09-22

マルツ掲載日:2022-01-24


 IoTへのデバイスの接続が進むにつれ、ゼロから始める開発者は、スケジュールが厳しくコストが限られている場合は開発が簡単ではないことに気付きます。信頼性、安全性、サポート体制の整った開発環境の選択から、互換性のあるソフトウェアやハードウェアの選択に至るまで、IoTデバイスの設計と構築には幅広いスキルが必要であることがわかります。

 開発者が必要としているのは、安全なソリューション、クラウド接続ライブラリ、RTOS、そして容易に統合できるセンサを提供する互換性のあるハードウェアとソフトウェアの開発プラットフォームへの容易なアクセスであり、これらすべてが1つの拡張可能なパッケージになっていることです。

 この記事では、IoT設計者がSTMicroelectronicsのB-L4S5I-IOT01AディスカバリキットIoTノードを使用して、製品を迅速に試作する方法について説明します。また、オンボードマイクロコントローラの機能、さまざまなセンサと構成オプション、Amazon Web Services(AWS)に接続して試作と最終製品の構築を迅速に開始する方法を検証します。

B-L4S5I-IOT01AディスカバリキットIoTノードの紹介

 B-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードは、ほぼすべての組み込みIoTデバイスの試作に使用できる、ワンストップの開発ボードです(図1)。このボードには、十分な処理能力、センサ、拡張性が備わっており、あらゆる組み込み開発者に自分が作れるアプリケーションを空想させてくれます。

 B-L4S5I-IOT01Aボードは、120MHzで動作する低消費電力のArm Cortex-M4プロセッサSTM32L4S5VIT6をベースにし、2MBのプログラムフラッシュと640KBのSRAMを搭載しています。また、STM32L4S5VIT6は、IoTアプリケーションに最適な以下のような特長も備えています。

・浮動小数点ユニット(FPU)
・14チャンネルのDMA(ダイナミックメモリアクセス)コントローラ
・AESおよびHASH暗号化ハードウェアアクセラレータ
・高度なグラフィックス機能
・233 ULPMark CPのエネルギーベンチマークスコア


図1:B-L4S5I-IOT01Aは、最大120MHzで動作するArm Cortex-M4プロセッサをベースにし、2MBのフラッシュメモリ、640KBのRAM、ワイヤレスコネクティビティ、および複数のセンサを備えています。(画像提供:STMicroelectronics)

 処理能力やエネルギー効率だけでは、優れたラピッドプロトタイププラットフォームにはなりません。このディスカバリボードには、Inventek Systemsの802.11b/g/n対応Wi-Fiモジュール(ISM43362-M3G-L44)とSTMicroelectronicsのBluetooth 4.1モジュールによるワイヤレスコネクティビティ、および各種センサが搭載されています。また、MP34DT01デジタル全方向マイクが2個、HTS221静電容量式デジタルセンサ(相対湿度・温度用)が1個、LIS3MDL高性能3軸地磁気センサが1個も含まれます。

 上記のリストは決して包括的なものではなく、より詳細な説明はこちらでご覧いただけます。次に、開発を加速するために利用できるソフトウェアツールやスタックを検討することが重要です。

STM32エコシステム

 開発ボードを取り巻くエコシステムにより、チームが試作品を迅速に作成できるかどうかが決まります。たとえば、B-L4S5I-IOT01Aを搭載したIoTデバイスを試作するためには、コンパイラ、統合開発環境(IDE)、ドライバライブラリ、構成ツール、ファームウェアアップデート用のソフトウェアなどを利用する必要があります。B-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードは、これらすべてのニーズに対応しています。

 多くの開発者は、EclipseとGNU Cコンパイラを開発環境に使用しています。STMicroelectronicsは、開発者がソフトウェアプロジェクトを記述して構築するための無償ツールSTM32CubeIDE(図2)を提供しています。STM32CubeIDEでは、ソフトウェア開発環境、マイクロコントローラの構成ツール、およびデバッギング環境にさまざまな角度からアクセスすることができます。


図2:STM32CubeIDEは、IoTデバイスの組み込みソフトウェアを作成、設定、管理するためのIDEを開発者に提供します。(画像提供: Beningo Embedded Group)

 STM32CubeIDEは、ソフトウェアプロジェクトを作成、構築、管理する方法を提供するだけでなく、STM32CubeMxへのインターフェースも備えています。STM32CubeMxは、開発者がクロックツリー、ペリフェラル、センサ、およびミドルウェアを設定できるマイクロコントローラ設定ツールです。

 開発者が設定を行うと、ツールチェーンがドライバや設定ファイルを生成するため、開発時間が大幅に短縮され、開発者は標準的なインフラのコードではなく、アプリケーションのコードに集中することができます。

 STM32エコシステムには、コードベースを設定してデプロイするだけでなく、最先端で働く開発者のための便利なツールがいくつか用意されています。たとえば、機械学習をアプリケーションに活用したいと考えている開発者は、STM32Cube.AIの拡張機能であるX-CUBE-AIを利用することができます。これは、STM32上で推論の変換、検証、実行を行うための合理的なフレームワークをチームに提供します。

 たとえば、開発者はTensorFlow Liteを使ってモデルをトレーニングし、そのモデルをわずか数分で、マイクロコントローラ上で動作するCコードに変換することができます。さらに、ソフトウェアをすぐに実行できる以下のような拡張パックも用意されています。

・顔認識アプリケーション用のFP-AI-FACEREC
・状態監視アプリケーション用のFP-AI-NANOEDG1
・画像分類アプリケーション用のFP-AI-VISION1
・音声およびシーン分類アプリケーション用のFP-AI-SENSING1

 すべてのIoTデバイスは、たとえラピッドプロトタイピングの段階であっても、セキュリティを考慮する必要があります。今日のウェブは、絶え間ない攻撃、セキュリティ侵害、企業データや顧客データの悪用であふれています。したがって、いかなる高速な試作用プラットフォームも、本番環境システムに効率的にスケールアップできる機能を備えている必要があります。

 このディスカバリボードは、STMicroelectronicsのSecure Boot Secure Firmware Update(SBSFU)ソフトウェアスタックを活用して、この機能を提供することができます。SBSFUは、X-CUBE-SBSFU機能パックで利用でき、以下を提供します。

・ルートオブトラスト(RoT)サービス
・安全なキー管理サービス
・暗号システム
・安全なファームウェアアップデートサービス

 B-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードを取り巻くエコシステムは充実しており、開発者がすぐに使用を始められるように、多くの機能パックやツールが用意されています。多くのIoT開発者が関心を持っているのが、AWSを利用する際のクラウド接続に必要な要素をすべて揃えたX-CUBE-AWSパッケージです。ここでは、開発者がどのようにしてそれを使用するかを考えてみましょう。

クラウドへの接続

 クラウドを利用するためには、X-CUBE-AWSをダウンロードする必要があります。このソフトウェアパッケージでは、B-L4S5I-IOT01A上で動作するように設計された以下のようないくつかのプロジェクトが、ZIPファイルとして提供されます。

・Bootloader_KMS
・Bootloader_STSAFE
・Cloud

 これらのプロジェクトは、以下の場所にあります。

Projects/B-L4S5I-IOT01A/Applications/

 AWSクラウドプロジェクトは、以下の場所にあります。

Cloud/aws_demos

 このクラウドプロジェクトは、STM32Cube IDE、Keil、IARで利用可能です。もちろん、開発者はこれらを他のIDEに移植することもできますが、この3つが業界でよく使われています。

 開発者は、プロジェクトを立ち上げる方法を独自に考える必要はありません。すぐに開始できるように、いくつかの便利なドキュメントがあります。まず、プロジェクトのメインディレクトリ内に、Release_Notes.htmlというファイルがあります。このファイルには、プロジェクトに関する一般的な情報に加え、制限事項や貴重な参考資料が含まれています。

 次に、このプロジェクトを使ってAWSに接続する方法を説明した入門ガイドがあります。このドキュメントでは、AWSへの接続方法および、スタックやソフトウェアの情報を説明しています(図3)。

 このドキュメントでは、ソフトウェアスタックについても詳しく説明されており、ソフトウェアスタックがどのように構成されているか、そしてデバイスをクラウドに接続するために必要な変更点を理解するのに役立ちます。


図3:X-CUBE-AWSでは、AWSに接続し、AWSに接続可能なIoT Thingを開発するために必要なファームウェアとアプリケーション例を提供しています。(画像提供:STMicroelectronics)

 クラウドに接続する最も簡単な方法は、入門ドキュメントを読み、チュートリアルに従うことです。チュートリアルに加えて、開発者がソフトウェアパッケージを使いこなすための次のような参考資料がいくつかあります。

FreeRTOSの次のステップ
OTAアップデートのユーザーガイド
IoT Coreのアカウントと認証情報の設定

 開発者はこれらのドキュメントにより、独自のIoTデバイスアプリケーションの基盤として使用できるクラウドアプリケーションをすぐに立ち上げることができます。

B-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードを使用するためのヒントとコツ

 B-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードには、開発者が組み込み製品を迅速に試作するために活用できる多くの機能が搭載されています。以下では、開発者が心に留めておくべき、開発を簡素化してスピードアップするための「ヒントとコツ」をいくつかご紹介します。

(1) X-CUBE-AWSをフル活用して、AWSに簡単に接続することができます。ソフトウェアパッケージでは、FreeRTOSがすでに開発ボードに移植されており、開発者はクラウドに接続するためにデバイスをプロビジョニングするだけです。

(2) 入門ドキュメントをよくお読みください。ドキュメントには、ファームウェアアップデートの実行やAWSへの接続に必要な手順が記載されています。

(3) Over-the-Air(OTA)アップデート機能の例を試してみましょう。現場のIoTデバイスにパッチを当てたり、アップデートしたりすることは、非常に重要です。開発者は、セキュアなファームウェアアップデートの機能とその制限について認識しておく必要があります。

(4)STMicroelectronicsの機能パックを活用することで、開発者はゼロからのスタートを避け、デバイスの機能性を飛躍的に向上させることができます。これらの機能パックにより、開発が劇的に加速します。

(5) STSAFEのドキュメントをしっかりと読んで、セキュリティ要素がどのようにデバイスのセキュリティを向上させるかを理解してください。セキュリティは最初からデバイスに組み込まれていなければならないため、ラピッドプロトタイピングの段階で行うことが必須です。

 これらの「ヒントとコツ」に従えば、アプリケーションの試作に取り組む場合に大幅に時間を節約でき、悩み事が減るでしょう。

まとめ

 IoT接続デバイスをゼロから開発するには、まだ多くの障害や落とし穴があり、スケジュールの遅延やコスト超過につながる可能性があります。これらの問題を回避するために、開発者はB-L4S5I-IOT01Aディスカバリボードを活用して、コネクテッドアプリケーションを迅速に試作することができます。

 STMicroelectronicsのソフトウェアスタック、拡張パック、エコシステムは、ソフトウェアを容易に統合し、実装を加速するためのワンストップショップを開発者に提供します。また、B-L4S5I-IOT01Aは、クラウドコネクティビティ、OTAによる安全なファームウェアの起動、さらには基本的な機械学習アプリケーションの実行など、現代のデバイスのニーズにも十分に対応しています。




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