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産業用アプリケーションのガスフローを精密に監視・制御する方法

著者 Bill Giovino 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2022-01-04

マルツ掲載日:2022-04-11


 多くの産業用オートメーション(IA)や製造設備では、様々なプロセスやアプリケーションで空気、酸素、窒素、水素、ヘリウム、アルゴンなどのガスを使用する場合が多くあります。その際には、洗浄、切断、溶接、化学製品製造を行います。

 多くの場合、精密機器や化学プロセスでは、診断が困難な機器の故障やプロセスの失敗が起こらないように、極めて精密なガス制御が求められます。また、ガスフローが過剰だと、効率が低下し、ガス容器の交換に必要な余分なコストも発生します。

 標準リットル(SLM:standard liters per minute)を単位として測定される正確なガスフローは、その測定精度が圧力や温度、さらにはセンシング機構の精度に左右されるため、一考に価する問題です。

 ガスフローを制御するために標準的なマスフローコントローラがよく使用されますが、これらは時間の経過とともに精度が低下し、耐用年数の間に定期的な校正を必要とするため、寿命全体におけるコストが増加します。技術の進歩により、ガス温度のマイクロ熱を測定することで、正確なSLMでのボリュームフロー(体積流量)を正確に決定できるようになりました。

 この記事では、産業用ガスの重要性と、ガスフロー制御の不備による問題点について解説します。次いで、先進のガスフローセンシング技術を備えたSensirion製マスフローコントローラに注目します。そして、このコントローラを効果的にセットアップ、使用することで、効率、信頼性、生産性を向上させると同時に全体的なコストを削減するための方法について説明します。

精密な制御が必要な産業用ガス

 産業用施設では、個々のガスの特性に応じて様々な用途のガスが使用されています。HVAC(冷暖房空調設備)システムのように、ガスフロー制御に多少の誤差があっても構わないシステムもありますが、CVD(気相成長)、ガス・液体クロマトグラフィ、質量分析などを行う精密機器では、機器の故障やプロセスの失敗を避けるために、極めて精密なガス制御が必要となります。このような機器の故障は診断が難しく、長時間かつ高額のダウンタイムが発生する可能性があります。

 水素、アセチレン、ブタンなどの可燃性ガスを酸素と混合することで、熱、炎、または制御された爆発を起こします。ガスは、プロセスに適した濃度で混合する必要があるのです。自動車の内燃機関と同じように、混合した可燃性ガスの量が多すぎたり少なすぎたりすると、火炎の温度が適切でなくなるため、プロセスの効率が悪くなったりプロセスが失敗したりする原因になります。

 酸素、一酸化窒素、空気などの圧縮ガスは、酸化剤として、また燃焼を助けるために使用されます。圧縮ガスの量が少なすぎると化学プロセスが失敗しますが、かといって多すぎても、効率の低下、ガスの浪費、コストの増大につながります。

 アルゴン、二酸化炭素、窒素などの不活性ガスの用途は通常、火災や酸化の防止など重要な安全操業用のほか、一部の化学反応を抑制するためとなります。ガスが少なすぎると火災の抑制に失敗し、多すぎるとガスが無駄になって関連コストが増大します。

産業用マスフローコントローラによるガスフロー制御

 マスフローコントローラは、適切な量のガスを計量するためのものです。最もシンプルな形式のマスフローコントローラは、電源を必要としない完全手動式のものです。ガスの量は、ダイヤルを回して適切な設定値にすることで調整します。

 しかし、手動式マスフローコントローラは、常温での体積しか測定できないため、気体の圧力や温度の変化による体積変化を考慮することができません。このため、ガスの精密制御には電子式マスフローコントローラが使われています。

 産業用ガスのボリュームフロー(体積流量)の測定単位であるSLMは、標準ガス温度0°C、標準ガス絶対圧1バールの条件で1分間のガスフローのリットル数として定義されています。ガスの体積は温度や圧力によって変化するため、マスフローコントローラには周囲の環境変化を考慮してフローボリューム(流量)を変化させる機能が必要です。

 大半の電子式マスフローコントローラは、温度や圧力の変化に対して精密なフロー制御を行うために、対象となるガスに対して校正されますが、この校正は時間の経過とともにドリフト(変動)することが多く、稼働中に定期的な再校正が必要となります。再校正を行うということはメンテナンス作業が増えることですが、かといって校正を省略すればシステムの効率が低下します。

稼働中の校正を必要としない精密マスフローコントローラ

 これを解決するのが、稼動中の校正を必要としない精密マスフローコントローラファミリです。Sensirionが提供するソリューションは、SFC5500シリーズ マスフローコントローラです(図1)。SFC5500シリーズでは、ガスのマイクロ熱を測定することで、ガスの温度や圧力の変化に左右されない正確な体積のSLM値測定を実現しています。

     
図1:Sensirion SFC5500 マスフローコントローラファミリは、マイクロ熱CMOSens技術を用いて、温度や圧力の変化に左右されない、ガスフローチャンネル(ガス流路)を流れるガスの量を正確に測定します。(画像提供:Sensirion)

 Sensirionのガスボリュームフロー技術はCMOSensと名付けられており、ガス流路を流れるガスの量を正確に測定します。CMOSensとは、センシング、信号調節、処理を1つのCMOSデバイス上で行い、小型デバイスで長時間にわたって正確に制御を行うというSensirionのアプローチの総称です(図2の上側)。


図2:CMOSensは、センシング、信号調節、処理を1つのCMOSデバイス上で統合しています(図の上側)。ガスの流量を測定するアプリケーション(図の下側)では、温度センサとそれに関連する処理が、マイクロ熱測定を行って精度を保証します。(画像提供:Sensirion)

 CMOSensを使ったガス流量測定の実装では、上流と下流に温度センサを配置し、その間に、圧力安定化メンブレンに取り付けた調節可能なヒータを配置しています(図2の下側)。第3の温度センサは、ガスの温度を検出しています。

 2つのセンサとヒータにおけるガスフローから、2つのセンサで温度が測定されます。この2つの読み取り値とガス温度センサの読み取り値は、組み込まれており信号プロセッサによって読み取られ、該当のガス用に保存された校正設定を勘案して、圧力や温度に左右されない正確な体積流量の読み取り値が生成されます。

 SFC5500マスフローコントローラの通常のセトリングタイムは100ms未満のため、温度、圧力、流量の条件が急激に変化しても正確な読み取りが可能です。CMOSensテクノロジーは温度と圧力を補正するため、この設定では経時的なドリフトがゼロとなるので、ターゲットガスを変更しない限り、SFC5500を現場で再校正する必要はなくなります。

CMOSensを用いたマスフローコントローラ

 SFC5500マスフローコントローラの例としては、SFC5500-200SLMがあります。これは、空気、窒素、酸素のみを対象に設計されて校正される、大きな体積用のフローコントローラです。窒素&空気ガスでサポートされるフルスケール体積流量は最大200SLMで、制御精度はフルスケール流量の0.10%、つまり0.20SLMと規定されています。酸素ガスの流量でサポートされるフルスケール流量は最大160SLMで、制御精度はフルスケール流量の0.20%、つまり0.32SLMと規定されています。

 Sensirionでは、ガス流量が100SLMを超えると、このユニットの精度が若干低下する可能性があるとしています。SFC5500-200SLMは、空気や酸素の精密な制御を稼働中の校正なしに行うことができるように設計されています。

 Sensirion SFC5500-200SLMは、よく使用されるRS-485 DB-9コネクタによってホストコンピュータと接続します。また、DeviceNet&IO-Link通信にも対応しています。ガスの出入り口の接続部には、外径10mmのLegris製フレアレス管継手を使用しています。これは標準的な10mmのガス管継手と互換です。

 その他のガスに対応するため、SensirionではSFC5500-10SLMマルチガスマスフローメータも提供しています。このコントローラでは、空気、窒素、酸素のほか、水素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、亜酸化窒素、メタンにも対応します。

 亜酸化窒素、アルゴン、二酸化炭素に対してサポートしているフルスケール流量は5.0SLMですが、それら以外のガスに対してサポートしているフルスケール流量は最大10SLMです。ワーストケースの精度はフルスケール流量の0.30%です。

 サポートしている通信インターフェースは、SFC5500-200SLMと同じです。ガスの出入り口の接続部には、標準的な6mmのガス管継手と互換な、外径6mmのLegris製フレアレス管継手を採用しています。

 SFC5500-10SLMは1台のコントローラで柔軟に複数のガスに対応できるので、他のコントローラを持たないで済みます。制御対象となるガスに対してコントローラの操作を開始する前に、コントローラの設定と予備校正を行う必要があります。再設定せずに別のガスに使用することはできません。

設定と開発

 SFC5500マスフローコントローラは、操作開始前にターゲットガスの事前設定を行う必要があります。ガスの種類によって密度や特性が異なるため、ガスごとに異なる設定と校正が必要になります。設定、校正、評価を支援するために、SensirionはSFC5500シリーズ用の評価キット EK-F5Xを用意しています(図3)。なお、このキットにはマスフローコントローラ自体は含まれていないことにご注意ください。


図3:Sensirion EK-F5X評価キットにより、開発者はSFC5500 マスフローコントローラ(キットには含まれず)の稼働を開始する前に、その設定、校正、評価を行うことができます。(画像提供:Sensirion)

 SFC5500を稼働準備のために設定するには、まず制御対象のガスを接続する必要があります。EK-F5X 評価キットに付属しているカスタムDB-9ケーブルを、SFC5500の上部にあるDB-9コネクタに接続します。DB-9ケーブルは、稼働中のSFC5500に電源を供給するためのACアダプタと、ホストコンピュータに接続するためのUSBコネクタに分岐します。

 USB経由での接続を行う前に、USBフラッシュドライブに同梱されている、ホストコンピュータ用のSFC5500デバイスドライバとSFC5000ビューアソフトウェアをホストコンピュータにロードする必要があります。SFC5500の電源を入れた後、USBコネクタをホストコンピュータに接続します。

 コンピュータがUSB接続されたSFC5500を認識した際に通常のビープ音が鳴ると、SFC5xxx ビューアソフトウェアが起動し、COMポートを設定するように求めてきます。そして、同ソフトウェアは、利用可能な校正と、該当のSFC5500がサポートする、ガスごとに利用可能なすべての校正を表示します(図4)。


図4:Sensirion SFC5500 のビューワソフトウェアでは、接続されたユニットがサポートする、各ガスの幅広い校正を使用できます。(画像提供:Sensirion)

 SFC5xxxビューアソフトは、接続されているSFC5500のバリエーションをシリアル番号やファームウェアのバージョン、COMポートの設定とともに表示します。起動時に[System]タブが選択されて、利用可能な流量(フロー)校正が緑でハイライト表示されるのに対し、アクティブな校正は赤でハイライト表示されます。

 校正を変更するには、ターゲットガスの校正を右クリックし、[Load Calibration]を選択します。これで、接続されているSFC5500が選択されたガスに対して校正されます。校正はEEPROMに保存されるので、電源を入れ直した後に再校正する必要はありません。再校正が必要となるのは、異なるガスにユニットを使用する場合だけです。

 校正が終わると、[Data Display]タブが選択されます。このタブでは、ガス流量を設定・制御します。一定の流量に設定することも、カスタム波形を生成して流量を変化させることもできます。これで、SFC5500は校正され、自動操作の設定が完了しました。

 流量をプログラムで変化させなければならないような複雑なアプリケーションでは、SFC5500をDeviceNetで制御します。[DeviceNet]タブでは、DeviceNetのMAC IDとボーレートを設定します。DeviceNetを使用してリモートから簡単に流量を制御することができます。

 具体的には、ユニットに送る流量が0x0000なら無流量、0xFFFF(十進法の65535)ならフルスケール流量、あるいはそれらの間の任意の値ならそれに比例した流量に設定できます。これにより、複雑な流量制御の操作が可能となり、ガス流量(ガスフロー)を迅速・簡単にリモートから遮断できるようになるため、緊急時に役立ちます。

まとめ

 産業用ガスの精密制御は、製造プロセスにおいて不可欠です。校正ドリフト(変動)が生じた場合は従来であれば精度を維持するために定期的な再校正が必要になりますが、新しいガス測定技術ではその必要がなくなるので、効率の向上、メンテナンスの軽減、長期的なトータルコストの削減につながります。




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