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統合型バックブースト充電器によるUSB充電の高速化とユニバーサル充電ソリューションの小型化

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-05-18

マルツ掲載日:2021-09-13


 リチウムイオン(Li-ion)バッテリやリチウムポリマー(Li-polymer)バッテリ用のユニバーサルバッテリチャージャ(充電器)と、OTGでの充電が可能なUSB 3.0電力供給(PD)の利用が、幅広いアプリケーションで拡大しています。

 このようなアプリケーションとしては、たとえばドローンやスマートフォン、タブレットPC、コードレス掃除機、ポータブル医療用デバイス、ワイヤレススピーカ、POS(販売時点)電子機器などがあります。これらのアプリケーションでは、充電時間の短縮、フォームファクタの小型化、電力密度の向上、コストの削減が常に求められています。

 バックブーストバッテリチャージャとUSB PDを組み合わせることで、高速で効率的なユニバーサル入力の充電ソリューションを開発することができます。しかし、これらの機器は単純なものではなく、USB OTG仕様を満たすための設計にはかなりの時間がかかります。これにより、コストが増大します。また、設計スケジュールにも影響を与える場合があります。

 設計プロセスをさらに複雑にしているのは、データ接続が中断しないことを保証するために、電力を供給しているデバイスがすぐに電力を消費する側にもなるように、USBの高速ロールスワップ(FRS)のタイミングと制御の基準を遵守する必要性です。

 USB PDユニバーサル充電アプリケーションにおいてこれらの問題に対処するには、統合型充電器(チャージャ)を採用することで、設計プロセスを合理化するとともに、バックブースト充電ソリューションを実装します。バックブースト充電ソリューションは、少ない部品点数と高い電力密度で高出力と高速充電を実現し、フル機能とコンパクト性を両立しています。

 この記事ではまず、USB 3.0とUSB Type-Cをベースにしたユニバーサル充電のニーズと、バックブースト型ユニバーサル入力USB OTGやFRSソリューションの実装の複雑性について、手短に考察します。

 その後で、統合型デバイスを使用するメリットを確認した後、デュアル入力セレクタと、USB PD 3.0 OTGとFRSをサポートするTexas Instrumentsの統合型バックブースト充電ソリューションを紹介します。また、OTGやFRS機能を備えたユニバーサル入力USB PDチャージャを今回設計する際に役立つ評価モジュールについても説明します。

ユニバーサル/OTG充電とFRSの複雑性

 USB Type-Cは、コネクタを標準化することで、ユニバーサルなAC電源アダプタの開発や、廃棄される電子製品を削減するのに貢献しています。しかし、コネクタの標準化はそれらの貢献への一つの因子に過ぎません。

 ポータブルデバイスはバッテリのセル数がまちまちで、アダプタの定格電力や電圧も5〜20Vと大きな違いがあります。アダプタの定格が複数あることと、バッテリ電圧も複数あることが相まって、USB PD充電ソリューションのアーキテクチャは複雑で困難を極めるものとなっています(図1)。


図1:USB PD充電ソリューションの内部設計は、様々なバッテリセル構成やアダプタ電圧に対応しなければならないため、複雑になりがちである。(画像提供:Texas Instruments)

 まず、USB PDコントローラ(U4)が識別する必要があるアダプタには、USBバッテリ充電仕様リビジョン1.2(USB BC1.2)、標準ダウンストリームポート(SDP)、充電ダウンストリームポート(CDP)、充電専用ポート(DCP)、高電圧充電専用ポート(HVDCP)、さらには非標準のアダプタがあります。

 入力パワーパス管理と電流センシングユニット(U1)は、USB PDコントローラとアダプタ間の通信をオンにした後で、バックツーバックのパワーMOSFETをオンにして、VBUSからの入力電圧をバックブーストチャージャ(充電器。U2)の入力に接続します。また、入力パワーパス管理ユニットは、検出抵抗を介して入力電圧や電流を検出し、過電圧と過電流からの保護を行います。

 さらに4個のMOSFETがバックブースト型充電器ユニット(U2)に搭載されており、バッテリ電圧に応じて入力電圧を昇降させます。USB PD充電器のナロー電圧DC(NVDC)パワーパス管理と充電電流検出をサポートするには、バックブースト充電器の出力にもう1つのパワーMOSFETと電流検出抵抗が必要です。

 NVDCのパワーパス管理は、バッテリ電圧よりもわずかに高い電圧にシステムを維持する特別な管理手段であり、システムの最低電圧よりも電圧を下げないようにするものです。最小システム電圧とは、バッテリを外した状態や完全に放電した状態でもシステムが動作する電圧レベルのことです。また、システムに必要な電力が入力アダプタの定格を超える場合、バッテリ補助モードはシステムに必要な電力をサポートし、アダプタが過負荷にならないようにします。

OTG電源とFRS

 OTG電源を実現するには、図1のDC/DCコンバータ(U3)を使用してバッテリを放電することで、アダプタが取り外されたときに、USB OTG仕様で要求されている電源を外部デバイスに供給するための安定した電圧をVBUSに供給します。

 FRSも必要な場合は、USB Type-Cポートを介してVBUSにアダプタが接続されている場合でも、DC/DCコンバータを有効にしてスタンバイモードのままにしておく必要があります。アダプタが切断されたら、DC/DCコンバータに接続されているバックツーバックのパワーMOSFETをオンにし、コンバータの出力を接続してVBUSを保持し、FRSを有効にします。この方法の欠点は、DC/DCコンバータをスタンバイモードにしておくと、システムの静止電流損失が増加することです。

USBのOTGおよびFRSを備えた1~4セルのバックブースト充電器を内蔵

 以上のように、OTGとFRSをサポートするユニバーサルなUSB PD充電ソリューションの設計は、複雑な作業になります。Texas Instrumentsは、1~4個のLiイオンやLiポリマーセルを使用するアプリケーションのために、USB Type-CとUSB PDの入出力OTG電圧範囲全体をサポートする完全統合型バックブースト充電器BQ25792RQMRを設計者に提供することで、FRSのサポートを含む完全なUSB PD充電ソリューションの設計を大幅に簡素化します(図2)。オプションのデュアル入力電力マルチプレクサコントローラは、VIN1にUSB Type-Cコネクタ、VIN2に補助電源という2つの異なる入力電源をサポートします。


図2:完全統合型バックブースト充電器であるBQ25792はUSB PD充電ソリューション全体の設計を簡素化する。(画像提供:Texas Instruments)

 BQ25792は、以下のような幅広い入力に対応しています。

・入力電圧範囲は3.6V~24Vである
・USB BC1.2、SDP、CDP、DCP、HVDCP、および非標準のアダプタを検出する
・未知の入力源の最大電力点を検出する

 BQ25792は、入力電流センシング(検出)機能を内蔵しているため、充電器は入力電流を安定化し、入力過電流に対する保護を行ってアダプタが過負荷にならないようにします。また、外付けのバックツーバック型パワーMOSFETの制御・ドライバ回路を入力過電圧・過電流保護回路の一部として組み込んでおり、図1では入力パワーパス管理/入力電流検出ユニット(U1)の機能を代替しています。

 BQ25792充電器は、図1のMOSFET型充電器ユニット(U2)に搭載されている4つのMOSFETを統合することで、OTG充電に対応することができます。この充電器は、アダプタがあるときは、標準的な充電モードで動作します。アダプタが切断されると、電源フローは逆になり、バッテリからVBUSに流れます。BQ25792は、USB PD 3.0の電圧範囲仕様の全体(2.8V~22V)に対応しており、10mV刻みでプログラム可能です。

FRSをサポートする新しい手法

 USB Type-CポートでのFRSのサポートは、図1のDC/DCコンバータ(U3)を不要にするバックアップモードという機能で実現されます。BQ25792は、フォワード充電モードからリバースOTGモードにバックブースト充電器セクションを切り替えることができます。その際に、バス電圧が仕様から逸脱することもありません。

 通常の動作では、アダプタがVIN1ポートを介してBQ25792と接続し、バッテリを充電するとともに、PMID出力を介してシステムや電源付きアクセサリに電力を供給します。アダプタの接続を切断した場合でも、バッテリからシステムへは引き続き電力供給できますが、PMID端子に接続されているアクセサリが受電できなくなります。

 バックアップモードでは、充電器は絶えずVBUS電圧を監視します。アダプタからの入力がなくなってVBUSが閾値レベルを下回ると、充電モードからOTGモードに素早く切り替わり、バッテリの放電、VBUS電圧の維持、FRSの実現を、DC/DCコンバータを追加せずに行うことができます。BQ25792のバックアップ電源モードでFRSを実装すれば、VBUS電圧が低下しても、PMID端子に接続されたアクセサリは引き続き受電できます(図3)。


図3:BQ25792のバックアップ電源モードを使用してFRSを実装すれば、VBUS電圧が低下してもPMID端子に接続されたアクセサリが受電できなくなることはなくなる。(画像提供:Texas Instruments)

 BQ25792では、スイッチング周波数を1.5MHzまたは750kHzのいずれかを選択することで、ソリューションのサイズと効率のどちらかをアプリケーションのニーズに応じて選択することができます。つまり、1.5MHzのスイッチング周波数を採用する場合は、小さなインダクタ(1μH)とコンデンサの値を使用することができます。

 これに対し、スイッチング周波数として750kHzを選択した場合は、効率は向上しますが、インダクタ(2.2μH)やコンデンサの値が大きくなるため、ソリューションサイズが大きくなります。

 バッテリ寿命を延ばし、電力損失を最小限に抑えるため、アイドル状態時、出荷時、保管時にはシステムの電源を切っています。出荷中は、I2Cは有効のままですが、充電器のシステムクロックが遅くなるので、デバイスの静止電流を最小限に抑えることができます。通常動作でバッテリのみの動作の場合、静止電流は21μAになります。出荷中は、静止電流は600nAまで低下します。

 Texas Instrumentsは、設計者がBQ25792を使い始めることができるように、同期バックブースト型充電器を実装するBQ25792EVM評価ボード(EVB)を提供しています。この評価ボードは、1~4個のセルに対して、10mAの分解能で最大5Aの充電電流を供給します(図4)。

 このEVBには、充電モードとUSB OTGモード間で切り替えるインターフェースが搭載されています。また、内蔵されているA/Dコンバータ(ADC)により、充電器のステータス、電圧や電流、故障を監視することができます。


図4:BQ25792EVM評価ボードを使用して、最大5Aの充電電流を供給する同期式バックブースト型充電器を実装することができる。(画像提供:Texas Instruments)

 このEVBの他の機能には、以下のものがあります。

・USB自動検出。USB PDとワイヤレス入力。3.6V~24Vの入力のサポート
・双方向のブロッキングNFETを駆動するデュアル入力源セレクタ
・2.8V~22Vの電圧を10mVの分解能で出力するUSB OTG電力供給
・シャットダウン/出荷モードでの静止電流は1µA未満
・電圧・電流測定をサポートする多数のテストポイント、ジャンパ、センス抵抗を装備

まとめ

 以上のように、ユニバーサルなUSB PD充電ソリューションの設計は複雑な作業であるため、USB OTG仕様をサポートする充電器の設計には多大な時間がかかります。設計プロセスは、USBの高速ロールスワップ(FRS)のタイミングと制御基準を遵守する必要があるため、さらに複雑になります。その結果、追加コストが発生したり、設計スケジュールに支障を来たす場合があります。

 このような場面に遭遇しないために、統合型バックブースト充電器があります。この充電器によって満たされるポータブルデバイスの設計者のニーズとは、USB PD、OTG充電、USB FRSのタイミングと制御基準の遵守、リチウムバッテリの充電時間の短縮、フォームファクタの小型化、電力密度の向上、コストの削減、市場投入までの時間短縮などに関するニーズです。

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