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SPXOを用いて低消費電力回路のタイミング要件をシンプルかつコスト効率よく満たす方法

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード) 
Digi-Keyの北米担当編集者 の提供
2021-08-25

マルツ掲載日:2021-12-20


 回路タイミングは、マイクロコントローラ、USB、Ethernet、Wi-Fi、Bluetoothなどのインターフェースをはじめ、コンピュータ機器や周辺機器、医療機器、テストおよび測定装置、産業制御やオートメーション、IoT、ウェアラブル、民生用電子機器など、さまざまな電子デバイスで必要とされる重要な機能です。

 システムのタイミングを取るための水晶制御発振器の設計は、一見簡単そうに見えますが、水晶振動子と発振ICのマッチングについて多くのパラメータと設計要件を考慮しなければなりません。

 水晶振動子のモーショナルインピーダンス、共振モード、駆動レベル、発振器の負抵抗など、多くの考慮事項があります。回路レイアウトでは、プリント基板の寄生容量、水晶振動子のガードバンド、オンチップの集積容量などを考慮する必要があります。最終的には、最小限の部品で構成された小型で信頼性の高い設計、低い二乗平均平方根(RMS)ジッタに加え、最小限の消費電力と広い入力電圧範囲で動作することが求められます。

 1つの解決策は、簡易パッケージ水晶発振器(SPXO)を使用することです。低消費電力と低RMSジッタに加え、1.60~3.60Vの任意の電圧で動作するように最適化されたこれらの連続電圧発振器は、システムに組み込むための設計努力を最小限に抑えたソリューションを実現します。

 この記事では、ディスクリートの水晶振動子とタイミングICを用いたタイミング回路の設計を成功させるために満たす必要のある、重要な性能要件と設計上の課題について簡単に説明します。その後、AbraconのSPXOソリューションを紹介し、電子システムのタイミングニーズを効果的かつ効率的に満たすために、それらをどのように使用できるかを示します。

水晶発振器の動作と設計上の課題

 バッテリ駆動の小型ワイヤレスデバイスでは、消費電力が重要な検討事項となります。このようなデバイスの多くは、超低消費電力のシステムオンチップ(SoC)無線やプロセッサをベースにしており、数年のバッテリ寿命をサポートしています。また、バッテリはシステムの中で最も高価な部品であるため、デバイスのコストを抑えるためには、バッテリのサイズを小さくすることが重要です。

 しかし、小型ワイヤレスシステムでは、バッテリ寿命を考慮するとスタンバイ電流が最も重要であることが多く、クロック発振器がスタンバイ電流の大半を占める場合が多くあります。そのため、発振器の電流消費を最小限に抑えることが重要です。

 しかし、低消費電力の発振器を設計することは困難です。省エネの1つの方法としては、「ディスエーブル」状態にして、必要に応じて発振器を起動することで、スタンバイ電流を最小限に抑えることができます。しかし、水晶発振器をすぐに確実に立ち上げるのは簡単ではありません。設計者は、発振器のスタンバイ時の低消費電流と、あらゆる動作条件や環境条件における信頼性の高い起動特性を保証するために注意を払う必要があります。

 ピアース発振器の構成は、低消費電力のワイヤレスSoCでよく使われます(図1)。ピアース発振器は、水晶振動子(X)と負荷コンデンサ(C1とC2)を中心に構築され、内部の帰還抵抗器を用いた反転アンプで包まれた構造になっています。適切な条件の下で、アンプの出力を入力にフィードバックすると、負抵抗となり、発振が起こります。


図1:水晶振動子(X)と負荷コンデンサC1、C2を中心に構築されたピアース発振器の基本構成。(画像提供:Abracon)

 水晶振動子は複雑な構造をしているため、ここでは発振器におけるそれらの動作の最重要部分を簡略化して説明します。

 閉ループのゲイン余裕Gmは、さまざまな損失に対する発振器の信頼性を評価する性能指数(FOM)として用いることができます。これは発振余裕度(OA)とも呼ばれます。OAが5を下回ると、生産の歩留まりが悪くなったり、温度による起動の問題が発生したりします。OAが20以上の設計は、堅牢性が高く、設計された動作温度範囲で確実に動作し、水晶振動子やSoCの性能特性において製造ロットの変動による影響を受けません。

 発振器のOAを測定するには、回路に可変抵抗器Raを追加します(図2)。発振器が起動できなくなるまで、Raの値を増やしていきます。これは、以下のようにOAを決定するための値です。

             (式1)

 ここで、式の要素は次のとおりです。

  Rn:負抵抗
  Re:等価直列抵抗(ESR)

             (式2)

        (式3)

 ここで、負荷容量CLは、次のように計算されます。

   (式4)

 ここで、Csは回路の浮遊容量であり、通常は3.0~5.0pFです。


図2:拡張された水晶振動子モデル(中央のボックスの中)と、発振余裕度を測定するための調節可能抵抗器(Ra)を示すピアース発振器。(画像提供:Abracon)

 OAはESR(Re)に依存しており、ESRは水晶振動子のパラメータRmと負荷容量CLに依存しています。RmやCLがOAに与える影響は、低消費電力の無線デバイスに使われるような低消費電力の発振器ほど大きくなります。

 OAの測定には時間がかかり、開発プロセスが長くなってしまうことがあります。その結果、OAが見落とされてしまい、システムやデバイスが本番稼動したときにパフォーマンスの問題が発生することがあります。

 また、発振器の動作を確実にするためにOAを高く設定すると、別の問題が発生することがあります。たとえば、OAが高ければ発振回路の性能は高くなりますが、水晶振動子による電力損失は見過ごされてしまいます。

 これらの損失は、重要因子となりえます。図2を振り返ると、水晶振動子の動作抵抗Rmは、電流が抵抗を循環することで電力損失を発生させます。CLが大きくなると、電流と損失が増加します。設計者は、水晶振動子の電力損失とOAの妥当な値のバランスを取る必要があります。

ジッタの回避

 水晶発振器を設計する際は、ジッタを理解して最小化することが重要です。ジッタには2つのタイプがあり、どちらも通常はRMS値として測定されます。

サイクル間ジッタ:位相ジッタとも呼ばれ、測定された複数の発振周期間の最大時間差を表し、通常は最低10周期にわたって測定されます。
周期ジッタ:クロックエッジの最大変化量であり、周期ごとに計測されますが、複数の周期では計測されません。

 水晶発振器のジッタの主な原因には、電源ノイズ、信号周波数の整数倍の高調波、不適切な負荷や終端条件、アンプのノイズ、特定の回路構成などがあります。原因に応じて、以下のようにジッタを最小化するための方法がいくつかあります。

・電源ノイズを制御するために、バイパスコンデンサ、チップビーズ、または抵抗器-コンデンサ(RC)フィルタを使用します。

・非常に低いジッタが要求されるクリティカルなアプリケーションでは、高調波を制御する方法を確立することが重要です(この記事で扱う範囲を超えています)。

・負荷や終端の条件を最適化することで、出力に戻ってくる反射電力を低減します。

・ジッタを増加させる傾向があるため、位相ロックループ、乗算器、プログラム可能な機能を含む設計の使用を回避します。

連続電圧型の水晶発振器

 1.60~3.60Vの間でシステムバイアス電圧が変化するシステムの設計者は、AbraconのSPXO「ASADV」、「ASDDV」、「ASEDV」を使用することでメリットが得られます(図3)。これらのSPXOファミリは、ASADVデバイスでは1.25MHzから100MHzまで、ASDDVデバイスとASEDVデバイスでは1MHzから160MHzまでの異なる周波数範囲をカバーしています。

 RoHS/RoHS IIに準拠し、気密封止(ハーメチックシール)されたセラミック製面実装デバイス(SMD)パッケージを採用しています。-40℃~+85℃の動作温度範囲において、周波数安定性は±25ppmです。


図3:ASADV(図示)、ASDDV、ASEDVの各SPXOは、気密封止(ハーメチックシール)されたセラミックパッケージに収められており、-40℃から+85℃までの範囲で動作可能です。(画像提供:Abracon)

 サイズは、ASADVが2.0×1.6×0.8mm、ASDDVが2.5×2.0×0.95mm、ASEDVが3.2×2.5×1.2mmです。これら3つのシリーズは、さまざまな動作温度範囲や安定性のオプション、CMOS/HCMOS/LVCMOS互換の出力フォーマットを備えています。

 重要なのは、ASADV、ASDDV、ASEDVの各ファミリが、低消費電流で動作するように最適化されていることです(図4)。出力イネーブル/ディスエーブル機能により、ディスエーブル時の電流はわずか10μAに抑えられます。最大起動時間は10msとなっています。


図4:ASEDVの消費電流と電源電圧の関係を示し、このSPXOファミリの標準的な性能を表しています(25℃±3℃で測定)。(画像提供:Abracon)

 SPXOの3つのファミリはいずれも、特に低消費電流となっています。ASADVの最大電流(15pF負荷、25℃で測定)は、1.25MHzで電源電圧1.8Vのときの1.0mAから、81MHzで電源電圧3.3Vのときの14.5 mAまでの範囲となっています。ASDDVとASEDVの最大電流値は、1MHzで電源電圧1.8Vのときの1.0mAから、157MHzで電源電圧3.3Vのときの19mAまでの範囲となっています。

 このデバイスは、複数の負荷を駆動することができ、良好な電磁妨害(EMI)性能と低ジッタを備えています。これらの製品は、RMS位相ジッタが1.0ps未満、周期ジッタが最大7.0psと規定されています。

 また、SPXOは、動作温度範囲全体にわたって良好な周波数安定性を実現しています(図5)。これらの発振器は、多くのアプリケーションにおいて、設計作業をほとんど必要としないドロップインソリューションとして使用することができます。また、バイアスごとに発振器を選択する必要がなく、バイアスに依存した周波数の変動もありません。


図5:これらのSPXOは、動作温度範囲全体にわたって良好な周波数安定性を有しています。このASEDVファミリのグラフは、標準的なものです。(画像提供:Abracon)

 最後に、衝撃や振動が重要視されない場合、ASADV、ASDDV、ASEDVの連続電圧面実装型水晶発振器は、微小電気機械システム(MEMS)発振器の低コストの代替品として使用することができます。

まとめ

 設計者は、幅広いアプリケーションと動作温度で安定したタイミングを提供するために、精密で信頼性の高い発振器を必要としています。ディスクリートの水晶制御発振器は必要な性能特性を満たしますが、水晶振動子を効果的に使用した設計は、技術的に難しく、時間がかかり、不必要にコストが高くなり、フォームファクタに関しても最適でない可能性があります。

 この記事で示したように、設計者は、広い動作温度範囲で優れた周波数安定性を持つドロップインタイミングソリューションを形成する、低消費電力の統合されたSPXOを使用することができます。SPXOを使用することで、部品点数の削減、ソリューションサイズの縮小、組み立てコストの削減、そして信頼性の向上を図ることができるのです。

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(1) 発振器の選択と効率的に適用する方法




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