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2G、3G、4G LTEネットワークの廃止に関する更新情報

著者 Harald Remmert, Sr.(ハラルド・レンマート・シニア) 氏
Engineering Digiディレクター
2020-10-21

マルツ掲載日:2021-2-22


 一部のセルラーネットワークの段階的廃止と5Gネットワークの成長により、セルラーコネクティビティを取り巻く状況が全体的に変化しています。旧世代のネットワークに基づいてデバイスを展開している企業が現在抱いている疑問は、それらのネットワークの寿命、4G LTEネットワークの利用可能な期間、およびニーズを満たせるほど早期に5Gが成熟するかどうかということに向けられています。この記事では、これらの疑問についてさらに探求し回答します。

旧世代のネットワークが廃止される理由

 キャリアはスペクトラムを再利用して、新世代のネットワークを成長させ、顧客に対してより高速で応答性の高い技術を提供する必要があります。旧世代の2G/3Gインフラストラクチャは、新世代のネットワークに道を譲る必要があります。つまり、旧世代のセルラーデバイスは実行不能になり、廃止される必要があるということです。

 ここでは、次のように最も重要な2つの指標があります。

(1) bit/s/Hzで測定されるスペクトル効率
 これは、使用可能な帯域幅においてデータがどれほど効率的に送信されるかを示す指標です。ここでは、変調、コード体系、エラー補正が重要な役割を果たします。4G LTEで一般に使用される64-QAMと256-QAMのようなより高次の変調方式では、2Gや3Gと比較して最大8倍のbits/Hzでデータを送信できます。

(2) レイテンシ
 これは、要求から応答までに生じる遅延であり、セルラーネットワークの応答性を示す指標です。セルラーネットワークと技術のアップグレードにより、レイテンシは初期2Gでの数秒から、3Gでの3桁のミリ秒、4G LTEネットワークでの2桁のミリ秒にまで低減され、将来の5Gスタンドアロン(SA)ネットワークでは1桁のミリ秒になると期待されています。

 朗報として、4G LTEは今後少なくとも10年間は使用可能で、5Gネットワークと共存することになります。この記事では、移行パスを計画している皆さんに役立つよう2Gと3Gネットワークの段階的廃止に関する最新の情報を提供し、4G LTEや5Gネットワークの見通しを示します。

2Gの段階的廃止の見通し


図1:主要な北米のキャリアは、すべて2021年末までに2Gを段階的に廃止することを予定しています。(画像提供:Digi)

 米国では、大手キャリアがすでに2Gサービスを停止する段階に入っています。

・AT&Tは、2016年に2Gネットワークの提供を停止しました。
・T-Mobileは2020年12月に2Gサービスを終了する予定です。
・Verizon Wirelessも2020年末に2G CDMAネットワークを廃止する予定です。
・Sprintは2021年12月にその2G CDMAネットワークを廃止します。

 ただし、これらの2Gネットワークが完全に廃止される前に、2Gデバイスは最適に動作しなくなることでしょう。次の状況が予想されます。

(1) 2Gセルラーデバイスは引き続きネットワークに接続できますが、新規デバイスのアクティベーションができなくなります。
(2) キャリアがそのスペクトラムを再割り当てして、オンライン化される新規ネットワークに道を譲るため、それらのデバイスは以前のようにうまく機能しなくなる可能性があります。

世界のその他の地域の状況
・Bell Canadaは2018年に2Gネットワークを廃止しました。
・カナダの他のキャリアには、すでに2Gのサポートを停止したTelusやRogersがあります。
・欧州では、より長い2Gの猶予期間が見込まれます。Vodafoneは少なくとも2025年まで2Gサービスをサポートする予定です。ただし、その時点よりも前にスペクトラムの再割り当てを開始する可能性があることに注意してください。

3Gの段階的廃止の見通し


図2:主要な北米のキャリアは、2022年末までに3Gを段階的に廃止することを予定しています。(画像提供:Digi)

 2Gネットワークと同様に、3Gネットワークも最終的に4G LTEをサポートするのに必要となるスペクトラムを使用します。これは、キャリアが段階的廃止を計画していることを意味します。さらに、3Gデバイスには最大約3Mbpsという速度制限があります。対照的に、4G LTEはより高速であると同時にスペクトラムをさらに効率的に使用します。これにより、より多くのデバイスが利用可能なスペクトラムを共有できます。

 主要キャリアの現時点の計画は次のとおりです。

・Verizonは、2020年末にCDMAネットワークを廃止します。
・AT&Tは2022年2月に3Gネットワークを廃止する予定で、3G携帯電話はアクティベーションできなくなります。
・T-Mobileは2021年末までに3Gネットワークを段階的に廃止する見込みです。
・Sprintの3Gネットワークは2022年12月に廃止する予定で、3Gデバイスはアクティベーションできなくなります。

 今は4G LTEデバイスの展開を評価する絶好の時期です。次にその点を説明します。

4G LTEネットワークの見通し


図3
:2Gと3Gはまもなく廃止されますが、近い将来に4Gを段階的に廃止する計画はありません。(画像提供:Digi)

 4G LTEは結局時代遅れになりますが、10年以上先となる廃止までは固唾をのむ必要はありません。現在IoT開発を計画中の企業は、LTEネットワークの長期的な実行可能性に基づいて安全に計画を立てることができます。

 事実、5Gが4Gを完全に追い越すのに少なくとも10年以上かかるだけでなく、4G LTEは大部分のアプリケーションが現在必要とするすべての帯域幅を提供しており、はるかにコスト効率が高い選択肢となっています。

 長期間にわたり開発される多くのデバイスが4Gと5Gの両方の機能を備えるため、5Gの拡大にともない、4G LTE(ロングタームエボリューションの略)は非常に効果的にスペクトラムを5Gネットワークと共有します。

 現在5Gは、その目新しさや初期の限定トライアル実施のために高額料金を支払うことをいとわない早期採用者によって主に使用されています。すべての新しい技術と同様に、採用の拡大を実現するには重要な漸進的開発が必要になります。

5G採用の主な考慮事項

 以下は、現行システムの移行計画に役立つ重要な考慮事項の一部です。

・5Gネットワークは最先端ですが、現在の受信範囲は制限されており、「あらゆるユースケースに対する単一のユビキタスネットワーク」という5G構想を実現するには、ネットワークインフラストラクチャが進化する必要があります。

・5Gミリ波のような技術は、建物や群葉などの障害物のあるエリア、または雨や雪の多い場所には理想的ではありません。二重ガラスでさえ5Gミリ波信号を遮断する可能性があります。

・信号とノード密度の実行可能性を確保するための開発やテストが必要になるため、完全な5Gの展開が行われるまでには地理的領域に応じて今後3~5年以上かかります。


図4:5Gはデータレートの高速化、デバイス密度の増加およびレイテンシの低減を実現します。(画像提供:Digi)

・4G LTEと同様に、5Gでは長期的な進化のアプローチがとられ、その過程で漸進的に価値を提供します。これは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)によってリリース内にバンドルされた技術の背後にある仕様によく表れています。

・3GPPリリース15は、2018年12月に公開された最初の5Gリリースで、5Gの基礎とEnhanced Mobile Broadband(高速アプリケーションの意味)に重点を置いています。

・2020年7月にリリース16(5Gフェーズ2とも呼ばれる)が公開されました。これは、ミッションクリティカルな制御に重点を置いていましたが、Enhanced Mobile Broadbandも進化させました。

・リリース17は2021年後期/2022年早期に予定されており、Massive Internet of Thingsに重点を置いて、レイテンシの低減および衛星を介した5Gによっても他の2つの分野を進化させます。

4G LTEと5Gによる帯域の共有方法
 
 キャリアは4G LTEに対応するために2Gと3Gネットワークを廃止する必要がありますが、4Gと5Gの場合はそうではありません。5Gはミリ波などの新しいスペクトラムを使用し、4Gの既存スペクトラムと併用して機能できます。これは、動的周波数共有(DSS)によるものです。

●動的周波数共有(DSS)とは何でしょうか?
 DSSは、同じ周波数帯域での4G LTEと5Gの展開を可能にする技術です。DSSは、ユーザーの需要に基づいて、2つの技術の間でスペクトラムリソースを動的に割り当てます。

 DSSがない場合、20MHzの4G LTEスペクトラムを使用できるオペレータは、そのスペクトラムを分割する必要があります。つまり、4G LTEに10MHzのスペクトラムを割り当て、すべてのLTEユーザーをその10MHzのスペクトラムに押し込む必要があります。その場合に、当初の5Gユーザー数が最小限ということはあっても、残りの10MHzのスペクトラムを5Gに使用できます。

 DSSがある場合、オペレータはスペクトラムを分割したり、4G LTEや5Gの専用スペクトラムを設けたりする必要がありません。代わりに、2つの技術間で20MHzのスペクトラムを共有できます。最初に、このスペクトラムは主に4G LTE用に使用されますが、5Gデバイスの数の増加にともなって、スペクトラムが5G用にさらに使用されるようになります。最終的に、4G LTEデバイスがほとんど使用されなくなる15~20年後には、スペクトラムの大半が5G用に使用されます。

 動的周波数共有により、キャリアは4Gと5Gの両方で同じスペクトラム帯域を使用できます。交通に例えるなら、DSSは、バスと自動車向けに異なる道路を建設する代わりに、異なる種類の車両用に専用車線を備えた大きな高速道路を建設することに似ています。

●5G非スタンドアロンから5Gスタンドアロンへの移行
 セルラールータなどの多くの5Gデバイスは、4Gと5Gの両方の無線で構築されるため、どちらのネットワークにも接続できます。5Gの初期の頃は、これらのデバイスはまず4G LTEに接続してから利用可能な5Gネットワークに接続する必要があります。これは、5G非スタンドアロン(NSA)とも呼ばれています。

 最初に、大部分のデータは4G LTEを介して送信されます。ただし、時間の経過とともに5G受信範囲が拡大し、セルラーインフラストラクチャが5Gスタンドアロン(SA)に移行するにしたがって、ますます多くのデータが5G経由で送信され、セルラーデバイスは4G LTEを通さず5Gネットワークに直接接続できるようになります。したがって、引き続いて交通に例えるなら、5Gは高速道路上のより大きな車線として最終的に4Gを追い越すことになります。

LTE-MおよびNB-IoTを5Gに適合させる方法

 近い将来にLTE-MやNB-IoTデバイスを大規模にインストールする展開が期待されているとします。5Gが利用可能になると、これらのデバイスはすぐに時代遅れになるでしょうか?5Gを待つ間、展開を遅らせる必要がありますか?

 その答えは、ある優れた技術の選択がLTE-MやNB-IoTとともに行われたということです。なぜなら、これらは4G LTE技術でありながらも、5Gを念頭に置いたLTEのロングタームエボリューションパラダイムの一環として開発されました。

 LTE-MやNB-IoTの設計当初、特定のLTE-MやNB-IoTが帯域内で5Gシステムと動作または共存できるようにするために、5Gの設計に特別な注意が向けられました。これにより、4G LTEが使用されなくなった後の5Gの将来にまで及ぶ前方互換性が得られます。

 前述したように、2021年後期/2022年早期に予定されているリリース17は、Massive Internet of Thingsに重点を置く最初のリリースになります。これは、チップセットやデバイスが入手可能になるのが早くても2022年/2023年であることを意味しています。

今から5Gに備えるための4つの方法

 今から5Gに備えるために何ができるでしょうか?アップグレードを検討すべきですか、それとも待つべきですか?実際5Gは今すぐに必要ですか?現在、Digiにはこのような多くの質問がお客様から寄せられています。これらの質問への対応として、以下の実施可能なプロセスをまとめました。

(1) 5Gアプリケーションの特定
 高速化とレイテンシの低減により動作が最適化されるアプリケーションを特定します。典型的な例は、機械学習や予知保全向けにエッジコンピューティングを活用するアプリケーションです。

 アプリケーションニーズは、データ量、レイテンシ、および電力要件の観点において今後5年間で変化しますか?たとえば、LTE-MとNB-IoTは、これまで2G/3Gでは不可能だった新しい電池駆動デバイスや新しいビジネスモデルを実現します。

付加的な質問:どのような趣の5Gが必要ですか?全国で受信可能であるものの性能は現在の4G LTEと同様である5G sub-6が必要ですか?それとも、人口が密集した都市環境で主に利用可能な高速の5Gミリ波が必要ですか?前述のように、すべてのスペクトラムがどこでも利用できるわけではなく、スペクトラムの可用性は時間の経過とともに進化するため、これは重要な要素です。5G対応にすること、または既存の機器を置き換えることを望んでいますか?

(2) デバイスの在庫を吟味する
 4Gから5Gへの適切な進化の経路を理解することは、将来に備えて計画するのに役立ちます。おそらく2Gや3Gデバイスがまだ使用されているか、アプリケーションで第1世代4Gデバイスを使用していて、高速プロセッサや4GギガビットLTEセルラー速度を備えた新しい4G LTEデバイスへアップグレードすることで利点を得られる可能性があります。

 この場合、モジュラーデバイスまたは「5G対応」のデバイスを探します。一般に5G対応とは、無線アップグレードによる5Gをサポートするための処理能力とインターフェースがあることを意味しています。

(3) 現在の展開を維持するためのコストやリスクの数値化
 2Gや3Gデバイスがまだ使用されている場合は、ネットワークの廃止による接続損失やサービス中断のリスクがあります。4G LTEデバイスを使用している場合、一般にこれらは問題ないと見なされますが、デバイスの使用年数を確認して、1対1の交換をするか、新しいデバイスにアップグレードするかどちらが好ましいかを判断します。検討すべき主な要素は、デバイスセキュリティとファームウェア更新です。いつものように、Digiはこれらの選択肢に関するガイダンスを提供できます。

(4) 移行のビジネスケースの作成
 5Gへ移行する時期とその価値があるかどうかを示す費用対効果分析を実施します。より大規模な移行の一環として意義深い暫定技術ステップに注目します。たとえば、5Gが利用可能になり、該当するビジネスケースが5Gへの移行をサポート可能になった場合にアップグレード経路も提供するモジュール式のハイエンド4G LTE/5G対応デバイスを今から検討します。

 デバイスとモバイルネットワークオペレータパートナーと連携して、デバイスおよびネットワークの可用性タイムラインに合わせます。屋外5Gミリ波機器などの取り付け費用を検討します。

変化に対応するための計画

 現在、特に先進国では、デバイス展開の準備をする場合に、ほとんどのアプリケーションにおいて十分な速度やかなり低いレイテンシを実現する4G LTEの優れた選択肢が得られます。発展途上国においては、4G LTEが今後数十年にわたって標準であり続ける可能性があります。

 同時に、5Gネットワークの受信範囲は拡大し、その技術は最終的に超高速で低レイテンシを実現します。これは、自動運転車などの先進技術において大変革をもたらすと期待されています。

 2G/3Gデバイス展開の場合、実行可能な期間は限られているため、今こそ自信をもって4G展開の開始や継続を計画する時期です。商用や産業用分野で5Gの早期採用者となることは、先駆者になるということです。



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