適切な接続とセンサにより高信頼性の産業システムと作業者の安全を確保
著者 Bill Giovino 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-11-06
マルツ掲載日：2021-03-15
産業施設が産業用IoT(IIoT)を活用して自動化、予測分析、安全性のレベルを向上させていく中で、デバイスとシステム間の信頼性の高い接続がますます重要になってきています。しかし、アプリケーションによっては過酷なものもあります。ケーブルとその近くにいる作業者は、腐食性の化学物質やガスにさらされながら、高温と低温の極端な温度にさらされる可能性があります。
また、機器によっては硫化水素のような腐食性ガスが放出されることもあり、こうした腐食性ガスは作業者にとって有害なだけでなく、ケーブル上の水分と接触することで、硫酸のような危険な反応副生成物を発生させます。これにより、ケーブルジャケットがすぐに腐食し、シールドや導体が露出したままになり、短絡やシステムの故障につながることがよくあります。
この記事では、過酷な環境下での配線の課題について解説します。次に、産業用システムの設計者が、Molexの実例を使用して産業グレードのセンサケーブルを選択することで、信頼性の高い接続と作業者の安全性を確保する方法を紹介します。また、危険な硫化水素ガスが設備や人員に重大な被害を与える前に、硫化水素ガスを検出する方法について、実例を交えて解説します。
過酷な産業環境での配線
産業用オートメーションシステムは、工場内のプロセスやシステムの状態を検出するセンサに依存しています。使用されるセンサの種類はさまざまで、温度サーミスタ、圧力トランスデューサ、レベルセンサ、光検出器、近接スイッチを含む場合があります。
モータ、コンベヤベルト、照明、液体計量、類似のデバイス用のアクチュエータを制御する方法とタイミングをメインコンピュータが適切に決定するためには、正確なセンサデータが必要です。
センサデータが正しくないと、間違ったタイミングでアクチュエータを制御したり、間違ったパラメータでアクチュエータを制御したりする可能性があります。その結果、運用コストの増加につながる非効率な運用から、システムの故障による高額なダウンタイムに至るまで、さまざまな問題が発生する可能性があります。
過酷な環境にさらされるケーブルを適切に選択して使用することで、センサデータやアクチュエータ制御信号の信頼性を向上させることができます。ケーブルの選択を間違えると、断続的な接続障害が発生する可能性があります。
このトラブルシューティングは難しいことで知られ、結果として高くつくダウンタイムが発生します。ケーブルの選択が不適切な場合、最終的には信号の劣化や全信号の損失につながる可能性があります。
IP67やIP68の定格を持つ産業グレードのケーブルとして認定されたメーカーのケーブルは、これらの問題の多くを克服することができます。ケーブルにIP67やIP68と表示されているからといって、そのケーブルが産業グレードであることを意味するわけではないことに注意してください。
IPコードは、ケーブルが一般的な粒子状物質や水に対して耐性があることを証明しているにすぎません。このように、一般的な消費者グレードのケーブルはIP68認証を受けており、一見頑丈そうに見えるかもしれませんが、極端な温度からの保護、一般的な溶剤や腐食性液体に対する耐性、または堅牢な産業グレードのケーブルが持つねじれや摩耗に対する耐性を備えていない場合があります。
産業環境でのUSBセンサやアクチュエータへの接続
多くの異なるタイプのセンサやアクチュエータは異なるインターフェースオプションを使用していますが、安全でユビキタスな方法は、USBをインターフェースとして使用することです。
最新の施設では、その高速性、電力供給、信頼性の向上により、USB 3.0の機能を活用しています。Molexは、0847330005 USB 3.0産業用ケーブルを提供しています(図1)。このケーブルは長さ1.31mで、一方の端には密閉型のUSB 3.0 Type A丸型レセプタクルコネクタ、もう一方の端にはUSB 3.0 Type Aプラグが付いています。
ケーブルアセンブリ全体はIP67定格です。毎秒5Gbit/sのデータレートをサポートし、USB 2.0のプラグやレセプタクルとの下位互換性があります。このケーブルの定格は－40℃～+85℃で、ほとんどの過酷な産業環境に適しています。
図1：Molexの0847330005 USB 3.0ケーブルには、一方の端に丸型のUSB 3.0 Type Aレセプタクルがあり、もう一方の端には標準のUSB 3.0 Type Aプラグがあります。過酷な環境に適した産業グレードのケーブルです。(画像提供：Molex)
Molexの0847330005 USB 3.0ケーブルは、各接点で最大1Aを安全に処理できるように定格されています。電磁妨害(EMI)に対して完全にシールドされているため、5Gbit/s USB 3.0のデータ転送が他の電子機器と干渉することはありません。
USB 3.0 Type Aプラグは、ほとんどのパーソナルコンピュータ(PC)で一般的に使用されている標準のUSB 3.0レセプタクルを提供する産業用コンピュータまたは組み込みシステムに接続することができます。
USB 3.0 Type Aの丸型レセプタクルを備えたケーブルのもう一方の端は、USBインターフェースを持つセンサ機器に接続します。レセプタクル丸型コネクタのロックナットは、20ポンドインチ(lb-in)のトルクに耐えられる使いやすいツイストロック機構を備えています。これによりセンサ機器との確実な接続を行い、偶発的な抜けを防ぎます。各コネクタは500回の嵌合/抜去サイクル定格で、これは定期的に再構成が必要な産業用機器に適しています。
レセプタクル丸型コネクタのガスケットシールは黒色ニトリルで、水や工業用油に対する優れた耐性を提供します。ニトリルガスケットはガソリン、作動油、一般的な溶剤に対しても耐性があります。
これにより、ガソリン式機械で使用されるセンサとの接続に優れたケーブルとなっています。溶剤や他の液体がコネクタに接触するといった事故があっても、こうした溶剤や他の液体がシールに浸透してデータ転送に支障をきたすことはありません。
太陽光や紫外線(UV)はケーブルジャケットの変色の原因となり、ケーブルをメンテナンスしやすいように色分けしていると不便なことがあります。また、太陽光にさらされると、商用ケーブルのジャケットに亀裂が入り、EMIシールドが露出してしまうこともあります。
MolexのUSB 3.0ケーブルジャケットは、耐久性に優れたPVC樹脂で製造されており、このPVC樹脂は太陽光や紫外線に対する優れた耐性を備えています。PVC樹脂は、時間の経過とともに、消費者グレードの材料で作られた商用ケーブルの長さを短くする可能性がある水に対する耐性も備えています。
機械的なアクチュエータやソレノイドへの接続
DINバルブコネクタは、バルブ、圧力スイッチ、リミットスイッチ、低エネルギーモータなどのアクチュエータの制御に使用されるソレノイドを作動させるために使用されます。産業環境でDINバルブアクチュエータとの確実な接続を実現するため、Molexは2210503466 DINバルブコネクタと5mケーブルを提供しています(図2)。
これは、最大24Vのアクチュエータ電圧に接続するための3線式ピグテールで終端されています。ケーブルアセンブリの定格は－40℃～+90℃で、寒い環境だけでなく、非常に高温になる一部のエンジンや機器にも適しています。
MolexのDINバルブコネクタは、DINバルブの上にタイトで安全なIP67シールを提供し、作動すると、制御されているDINバルブのタイプに応じてバルブを有効または無効にします。コネクタはネジで固定されており、不用意な取り外しから最大限の保護を提供します。DINコネクタ上の黄色の発光ダイオード(LED)は、DINバルブが作動したことを視覚的に表示します。
図2：Molexの2210503466は、一方の端にDINバルブコネクタがあり、もう一方の端に3線式ピグテールがあります。黄色のLEDは、バルブが作動したことを作業者に知らせます。(画像提供：Molex)
Molexの2210503466 DINバルブコネクタとケーブルには、ほとんどの過酷な化学薬品に耐性があり、ねじれや屈曲からの誤用に非常に耐性のあるポリウレタンジャケットが付いています。ポリウレタン製のケーブルジャケットは、切断や破砕の力にも非常に強いです。
DINバルブケーブルが破損していると、DINバルブ装置が断続的に動作したり、装置全体が故障したりすることがあります。これにより、このケーブルは、ケーブルを素早く伸縮させる可能性がある、または機械の故障や設定ミスでケーブルがつぶれてしまう可能性がある、移動する重機のアクチュエータに適しています。
安全のため、ケーブルを短くし、通常の運転中にケーブルを伸ばすことで、ケーブル接続部のどちらか一方の端/両端にストレスがかかるようにすることはお勧めしません。これには、ケーブル終端の両端が引っ張られないように、ケーブルに十分なたるみが必要です。
ただし、ケーブルのたるみが大きいほど、ケーブルが誤って引っ掛かったり、つぶれたりする可能性が高くなります。これらのアプリケーションでは、ポリウレタンジャケットが適切で費用対効果の高いソリューションとなります。
腐食性物質からの保護
ガソリンエンジンや一部の工業化学プロセスでは、危険な硫化水素ガスを発生させることがあります。産業施設はこれらのガスを安全に封じ込めるように設計されていますが、ガソリン車を運転する人は誰でも排気マニホールドが漏れる可能性があることを知っています。
また、工場内の誰かがバルブを閉め忘れてしまうこともあります。硫化水素ガスは、少量であっても作業者にとっては非常に有毒です。腐った卵の臭いと認識されがちですが、硫化水素は空気よりも重く、発生地点から遠く離れた大規模な工業団地では、あっという間に気づかれずに拡散してしまう可能性があります。
硫化水素が水と接触すると、腐食性の硫酸を形成し、銅、鉄、アルミニウムの機器を素早く腐食させる可能性があります。硫酸は、濡れたケーブルと接触すると、ポリウレタンなどのほとんどの種類のケーブル絶縁体を急速に腐食させる場合があります。
PVC樹脂ケーブルジャケットは、室温ではポリウレタンよりも耐酸性に優れていますが、極端な高温/低温環境下で硫酸はPVCケーブルジャケットをすぐに腐食させる可能性があります。材料のスペックシートに関係なく、硫化水素と硫酸は、排気マニホールドやこれらの危険物質を含むように特別に設計されたその他の機器以外の材料に対して危険であると考えるべきです。
ケーブルや機器、および作業者の安全性を維持するために、Molex Sensorconは2023150001硫化水素ガス分析器を提供しています(図3)。硫化水素ガスの濃度を1ppmから400ppmまでの分解能で検出/表示できるLCDディスプレイを搭載した携帯型の装置です。
図3：Molex Sensorconの2023150001は、1ppmから400ppmまでの分解能で硫化水素ガスの濃度を検出できる携帯型の硫化水素ガス検出器です。(画像提供：Molex)
Molex Sensorconの2023150001硫化水素ガス検出器はIP67定格で、高アラームと低アラームの設定値から2つの異なるアラームを鳴らすことができます。工場出荷時に設定されている低アラーム設定値は10ppmですが、手動で最小1ppmに設定することができます。
工場出荷時に設定されている高アラーム設定値は15ppm以上ですが、手動で100ppm以上に設定することも可能です。これらのアラームに加えて、この携帯型ユニットは警告時に振動させることができるので、騒音の多い産業環境でも役立ちます。
この検出器は、フロア付近、特に空気より重いガスが集まる可能性のある機械のフロアで、低濃度の硫化水素ガスを検出するのに適しています。腐った卵の臭いが作業者の鼻で感知できるほどの強さに達していない場合に、硫化水素を検出するのに有効です。
硫化水素ガスを放出するエンジンやほとんどの工業プロセスでは、一酸化炭素も放出されます。一酸化炭素は無臭で、少量でも人体に有毒である可能性があります。Molex Sensorconは、硫化水素検出器と同じ物理的構造を持つ2023100001一酸化炭素ガス検出器を提供しています。
一酸化炭素は、作業者にとって危険なだけでなく、未検出の硫化水素を示すこともあります。どちらのユニットも、産業用オートメーション設備で作業者や機器の安全を確保するのに役立ちます。
まとめ
産業用オートメーション設備は、特に高温/低温の極端な環境や、危険で腐食性のあるガスや液体が存在する可能性がある場所では、ケーブルアセンブリには過酷な環境となる場合があります。
産業グレードのセンサケーブルアセンブリは、産業用システムを適切かつ効率的に制御できるように、コンピュータに正確なセンサデータを確保し、アクチュエータ用の産業グレードケーブルは、操作が適切かつ確実に制御されるようにします。これにより、信頼性が向上し、メンテナンスが低減されるため、運用コストが削減されます。
免責条項：このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、Digi-Key Electronicsの意見、信念および視点またはDigi-Key Electronicsの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。
このページのコンテンツはDigi-Key社より提供されています。
英文でのオリジナルのコンテンツはDigi-Keyサイトでご確認いただけます。
Digi-Key社の全製品は 1個からマルツオンラインで購入できます
ODM、OEM、EMSで定期購入や量産をご検討のお客様へ【価格交渉OK】
毎月一定額をご購入予定のお客様や量産部品としてご検討されているお客様には、マルツ特別価格にてDigi-Key社製品を供給いたします。
条件に応じて、マルツオンライン表示価格よりもお安い価格をご提示できる場合がございます。
是非一度、マルツエレックにお見積もりをご用命ください。
