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産業システムにマシンビジョンを迅速に追加して工場の安全性と生産性を向上

著者 Bill Giovino 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-10-06

マルツ掲載日:2021-2-8


 産業用オートメーションの機械の設計者には、特定の視野内ですべての物体からの距離を決定するために、何らかの形式のマシンビジョンを実装することが求められています。このようなマシンビジョンを実装して距離を測る理由はさまざまです。

 たとえば、一般的な環境での変化や侵入をセンスしたり、生産ライン上の物体の距離を測ったり、危険から作業者やロボットを全体的に保護したりするためなどが挙げられます。特に、産業倉庫内の屋内車両では、自動運転、物体位置と識別、障害物検出と回避のためにマシンビジョンを実装しています。

 屋内のマシンビジョンで物体の距離を検出する方法として最も一般的なのは、レーザー光を用いて物体間の距離を測定するLiDAR(Light Detection And Ranging)です。LiDARでは、各点からの距離を決定するために、反射したレーザー光の戻り時間と波長を測定します。

 しかし、LiDARマシンビジョンのアルゴリズムは非常に複雑で、学習曲線が急峻であり、アプリケーションのコーディングにはマシンビジョンの専門家が必要です。

 この記事では、IntelのターンキーLiDARカメラをこれらのアプリケーションに使用して、視野内の物体からの距離を検出する方法を開発者に紹介します。複雑なマシンビジョン技術やアルゴリズムを学ぶことなく、新規や既存のシステムにマシンビジョンを迅速に追加することで問題を解決します。それから、高速USB 3.1接続を使用して、Intel LiDARカメラとUDOOのシングルボードコンピュータ(SBC)をペアリングする方法を紹介します。

屋内の産業オートメーション環境におけるマシンビジョン

 産業用オートメーションの屋内環境は、フロアに追加される機器や、作業者、備品が増えるにつれて、ますますダイナミックになってきています。すべての機械、センサ、オートメーションの高度化は、作業者の安全性を確保しながら効率を高めることを目的としています。

 多くの場合、追加のセンサは、ターゲットエリア内の人を含む物体を検出することを目的としています。生産ライン上の物体は、通過する物体により周囲光の変化を検出する基本的な光センサ、物体の重量によって押される機械的なスイッチ、製品が通過するときに遮断される生産ラインの光のビームなど、多くの方法で検出することができます。

 これらの方法は基本的な物体検出に適していますが、オートメーションの高度化に伴い、人間の目に似たより複雑な視覚検出が必要になってきました。

 大まかに言えば、マシンビジョンは機械に視覚を与えて異なる色を識別したり、物体を互いに区別したり、複数の動きを認識したりするようなものです。しかし、一般的で実用性の高いタイプのマシンビジョンは、視野内のすべての物体の距離を検出します。

 複数の物体の距離検出を行うためには、一般的に2つの方法があります。1つ目はレーダで、屋内環境ではレーダの使用により作業者が高周波信号に常にさらされることになるため、危険を及ぼすことが懸念されます。

 屋外環境では、レーダの周波数は物体に当たって跳ね返った後、周囲の環境に害を及ぼすことなく消散されます。屋内で使用される場合、レーダは繰り返し複数の物体に当たって跳ね返り、強力なレベルの電磁干渉(EMI)を引き起こします。長時間の暴露は、作業者に長期的な健康上の影響を与える可能性があります。

 視野内の複数の物体の距離検出を実行するための2つ目の一般的な方法は、LiDARとも呼ばれるレーザー光測距です。1つ以上のレーザー光ビームが、距離を測定する物体に向けられます。

 レーザービームが原点のレセプタに反射して戻ってくるまでの時間は、ビームの位相シフトとともに、放射されたレーザーの時間と位相と比較されます。アルゴリズムは、時間と位相差に基づいて物体までの距離を計算し、それをセンチメートルまたはインチに変換します。

 1つの物体を検出するために1つのレーザービームの時間と位相差を計算するのは非常に簡単です。しかし、より複雑なマシンビジョンアプリケーションでは、視野内の数十個の物体の距離を計算しなければなりません。これらの計算を組み合わせて距離の視覚的なマップを作成することは、些細なことではなく、膨大な開発時間を要する可能性があります。

距離検出によるマシンビジョン

 マシンビジョンアプリケーションですぐに実装できる実用的なソリューションとして、Intel RealSense 82638L515G1PRQの高解像度L515 LiDARデプスカメラがあります(図1)。このカメラは直径61mm、高さ26mmで、LiDAR画像深度ユニット、赤、緑、青(RGB)カメラ、慣性計測ユニット(IMU)を搭載しています。LiDARカメラは、1024×768または1920×1080の画像ビットマップを返すことができ、各ピクセルは物体の点からカメラまでの距離を表しています。


図1:Intel RealSense L515は、RGBカメラとIMUを搭載した自己完結型の高解像度LiDARカメラです。USB 3.1を使用して、サポートするコンピュータに簡単に接続できます。(画像提供:Intel)

 Intel L515 LiDARカメラは、視野内のエリアのビットマップ画像を返します。しかし、LiDARカメラは、そのエリアの典型的な写真画像を返すのではなく、各ピクセルのRGB値が物体の各点からIntel L515カメラまでの距離を表している画像を返します。

 カメラの解像度は0.25~9メートルに達します。また、開発時に便利な標準の2メガピクセル(MP)RGB画像カメラを搭載しています。日光の多い場所での動作を想定して設計されていないため、屋内の照明状況での使用をお勧めします。

 図2は、Intel L515の画像例を示しています。カメラ画像は前景の植物を中心とし、2つのセクションに分かれています。左側は、植物と背景を自然な色で表現した通常のRGBカメラ画像です。右側は物体の各点からカメラまでの距離を視覚的に表現した画像です。

 前景の植物は青の色合いで表示され、背景の壁は明るいオレンジ色で表示されています。右側に行くほど壁はカメラの中心から離れていくため、画像はより深い赤みを帯びた色合いになります。


図2:Intel L515 LiDARカメラは、RGB画像(左)と物体の各点からカメラまでの距離を表したビットマップ画像(右)の両方を返します。カメラに近いエリアは青、カメラから遠いエリアは深みのある赤で表示されます。(画像提供:Intel)

 この情報を利用して、ソフトウェアは画像データを処理して、物体とカメラとの距離を決定することができます。

 コンパクトなサイズと高度な統合性を備えたIntel L515 LiDARカメラは、マシンビジョンによるデプスセンシングを新規または既存のシステムに迅速に実装する必要がある屋内の産業用オートメーションアプリケーションに適しています。

 モバイルシステム向けに、Intel L515には±4gの加速度をセンスできるIMUと、最大±1000˚/秒の回転をセンスできるジャイロスコープが搭載されています。これは、産業オートメーション施設で使用されるほとんどの屋内車両やロボットに適しています。

 障害物にぶつかった車両やロボットが瞬間的に4gを超える加速度をセンスすることがあるため、IMUのファームウェアをコーディングする際には注意が必要です。このような例外を考慮に入れなければなりません。

完全なシステムでのマシンビジョン

 Intel L515は、高速USB 3.1インターフェースを使用してPCやシングルボードコンピュータ(SBC)とのインターフェースが可能です。カメラハウジングにはUSB Type-Cコネクタが搭載されているため、Type-Cコネクタ付きの標準ケーブルを使用して簡単に統合できます。

 マシンビジョンの画像処理はCPU負荷が高いため、必要に応じて画像データセットをリアルタイムで処理できるように、十分な性能を持つことをお勧めします。UDOO KTMX-UDOOBL-V8G.00 Bolt V8は、2.0GHz(3.6GHzブースト)で動作する4コアプロセッサをベースにした高性能SBCで、最大32GBのDRAMによってサポートされています。プログラムメモリには、M.2ソリッドステートドライブ(SSD)を使用でき、標準のSATA-3ハードドライブインターフェースをサポートしています。


図3:UDOO Bolt V8は、最大3.6GHzで動作する4コアプロセッサを搭載した強力なSBCです。M.2とSATA-3外付けドライブインターフェースをサポートし、最大32GBのDRAMを搭載し、Intel RealSense L515 LiDARカメラとのインターフェース用にUSB 3.1 Type-Cコネクタを備えています。(画像提供:ODOO)

 UDOO Bolt V8には、モニタと接続するための2つのHDMI 1.4ビデオインターフェースがあります。ネットワーク接続については、オンボードのRJ-45コネクタを介して有線ギガビットEthernetで工場のネットワークに接続することができます。

 Wi-FiとBluetoothにも対応しています。ステレオオーディオは3.5mmの標準プラグでサポートされています。このSBCは、Microsoft Windowsと64ビットLinuxディストリビューションを含む64ビットx86互換のオペレーティングシステムで動作します。この強力なSBCは、2GHzのパフォーマンスをサポートするために、19V/65Wの電源が必要です。

 マシンビジョンデータのアルゴリズムについては、UDOO Bolt V8は十分な処理能力を持っています。高速USB 3.1 Type-Cインターフェースを介してIntel RealSense L515からデータを取り込み、必要に応じてHDMIインターフェースのいずれかに接続されたモニタに画像を表示することができます。音声出力ジャックのいずれかに接続されたスピーカから可聴警報や警告音を鳴らすことができます。

まとめ

 デプスセンシングを備えたマシンビジョンは急速に拡大している分野であり、一から構築すると複雑なコードやハードウェアを必要とすることがあります。事前にプログラムされたファームウェアで深度計算を実行するターンキーソリューションを使用したマシンビジョンシステムを組み込むことで、時間とコストを節約し、その結果、産業用オートメーション環境で迅速かつ確実に機能する高性能なマシンビジョンシステムを実現できます。



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