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適切な部品を選んで応用することで医療用機器やユーザー、患者を保護する方法

著者 Bill Schweber 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2020-11-12

マルツ掲載日:2021-03-22


 研究室以外で患者に接触させて使用する診断用や生命維持用の医療機器、たとえば人工呼吸器、除細動器、超音波スキャナ、心電図(EKG)装置の利用は増え続けています。その背景には、人口の高齢化、患者のケアに対する高い期待、さらには医療用電子機器技術の改善によりこうしたシステムの実用性が向上していることなどがあります。

 このような機器には、機器類、病院スタッフ、そして患者に害を及ぼしかねないさまざまな電気的な課題に対する保護が必要になります。しかし、完全な回路保護には単にサーマルヒューズがあれば良いというだけではなく、保護機能の実装は対象となる設計や用途に最適なデバイスを1つ見つけるだけで終わりではありません。

 実際には、まず保護が必要な電子回路を把握し、次に最善の保護モードを判断する必要があります。基本的に、保護を実現するには複数の受動部品が必要で、標準的なシステムではこのような専門的な保護デバイスが十数個以上必要になる場合があります。保護デバイスは保険のようなもので、保険は稀にしか必要ない、またはまったく必要ないと考えられがちですが、それを持たないことの代償は持つためのコストをはるかに超えます。

 この記事では、このような医療システムで保護が必要な部位、たとえば患者向けシステムの信号/センサI/O、電源、通信ポート、プロセッシングコア、ユーザーインターフェースなどについて検討します。また、さまざまな電子回路およびシステムの保護部品について説明し、例としてLittelfuse, Inc.のデバイスを取り上げ、それぞれの役割と用途について解説します。

医療システムにおける保護の役割

 多くのエンジニアにとって、「回路保護」と言えばすぐに思い付くのは、150年以上も使用されている古典的なサーマルヒューズかもしれません。このヒューズが現在の形になったのは、主にEdward V. Sundt氏の業績によるものです。同氏は1927年に最初の小型速断保護ヒューズの特許を取得していますが、これはセンシティブなテストメータの焼損を防ぐために設計されたものです(リファレンス1)。

 その後Sundt氏が設立した組織が、Littelfuse, Inc.として後世に受け継がれています。以来、回路保護の選択肢は、多くの潜在的な回路故障モードが認識されるのにともない、きわめて広範に拡大してきました。各種の故障モードには、次のものがあります。

・他の部品に一連の被害をもたらす可能性がある内部故障
・オペレータまたは患者に危険を及ぼす可能性がある内部故障
・他の部品を圧迫しそれらの早期故障につながる可能性がある内部動作の問題(電圧/電流/熱)
・回路機能に固有の不可避な特性として慎重に対処する必要がある、過渡電圧/過渡電流、電圧スパイク/電流スパイク

 これらの課題の多くは、AC電源を持つ装置だけでなく電池駆動の装置にも当てはまります。

 保護デバイスのすべてと言わないまでも多くの機能は、許容度を超えた大きな過渡電圧を抑制するための機能です。過渡サプレッサのカテゴリは主に2つあり、1つは過渡現象を減衰させて影響を受けやすい回路への過渡伝播を防ぐもの、もう1つは影響を受けやすい負荷から過渡現象を迂回させてそれ以外の電圧を制限するものです。

 また、デバイスのデータシートで熱や性能のディレーティング曲線をよく確認することが重要ですが、これは定常状態保護のための仕様ではなく、所定の電圧、電流、時間制限により区切られるさまざまな期間の過渡保護の仕様である場合があるからです。

 考慮すべき多くの電気的パラメータには、クランプ電圧、最大電流、降伏電圧、最大逆動作電圧や逆スタンドオフ電圧、ピークパルス電流、ダイナミック抵抗、静電容量があります。また、それぞれがどのような条件で定義および規定されるかを理解することも重要です。

 デバイスのサイズ、保護されるチャンネル数やライン数も、考慮の対象になります。回路の特定部位に最適な保護デバイスとしてどれを選ぶかはこれらの要素に応じて決まり、さまざまなパラメータを考慮するには妥協が必要なこともよくあります。確かに、好まれる選択方法や「スタンダード」な選択方法もありますが、必要な評価や査定を行った上で選択する場合もあります。

多数ある回路保護の選択肢から賢く選ぶには

 回路保護には、さまざまな選択肢があります。それぞれに固有の機能と各種の特性があり、それらに応じて、特定の故障分類に対する保護や必然的な回路特性に対する保護のための、最適な選択肢または唯一の選択肢が決まります。回路保護の選択肢には、主に次のものがあります。

・伝統的なサーマルヒューズ
・ポリマーPTCサーミスタ(PPTC)デバイス
・酸化金属バリスタ(MOV)
・積層バリスタ(MLV)
・過渡電圧抑制(TVS)ダイオード
・ダイオードアレイ
・ソリッドステートリレー(SSR)
・温度インジケータ
・ガス放電管(GDT)

 サーマルヒューズの概念はシンプルです。このヒューズには、厳選された金属で作られた厳密な寸法のヒュージブルリンクが使用されています。設計限界を超える電流が流れると、このリンクが発熱して溶融し、電流経路が完全に遮断されます。

 標準的なヒューズでは、開回路までの時間は過電流の量と定格限度の関係に応じて数百ミリ秒から数秒ほどです。このヒューズは一旦作動すれば後戻りできない性質上、多くの設計において保護の最終段階に使われます。

 ヒューズには、1A未満から数百A以上の電流値があります。また、故障によって開回路が生じたときに2つの端子間で数百Vまたは数千Vに耐えるように設計することもできます。

 標準的なヒューズの1つに、Littelfuseの0215.250TXPがあります。これは、250mA、250VAC、5×20mmのセラミックエンクロージャのヒューズです(図1)。多くのヒューズと同様に、円筒形やカートリッジ型のハウジングで、はんだ付けせずヒューズホルダに固定する形で回路に設置するため、交換も容易です。

 ヒューズには、長方形や「ブレード」ハウジングのタイプ、さらにはんだ付け可能なタイプもあります。なお、はんだ付けプロファイルに注意深く従い、ヒューズエレメントの損傷を防ぐ必要があります。

     
図1:Littelfuseの0215.250TXPは250mA、250VACのヒューズで、直径5mm、長さ20mmのセラミック筐体で提供されます。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 ヒューズはシンプルな部品ですが、多くの派生種類、微妙な違いなど、回路に適切なヒューズを選ぶ際に考慮しなければならない要素があります(リファレンス2、3)。ヒューズは通常、入力ACラインや、完全な短絡が生じる場合がある出力リード線に使用され、さらにはどのような過電流も看過できない内部の場所、たとえば電流フローを完全に停止する必要がある部位や、操作を再開する前に問題の原因を特定して修正する必要がある部位にも使われます。

 PPTCデバイスは、主に2種類の用途に有用です。1つはUSBポート、電源、電池、モータ制御などの安全規制への対応、もう1つはI/Oポートのリスク防止です。過電流、過負荷、過温度などの異常な状態が生じると、PPTCの抵抗が飛躍的に高まることで電源電流が制限され、回路部品を保護します。

 PPTCデバイスが高抵抗状態に遷移すると、少量の電流がデバイスを流れ続けます。PPTCデバイスは、その遷移状態を維持するために、低ジュール発熱の「リーク」電流または外部の熱源を必要とします。フォールト状態が解消されて電源が再投入されると、この熱源は必要なくなります。デバイスは低抵抗状態に戻ることができ、回路は通常の動作状態に復帰します。

 PPTCデバイスは「リセット可能なヒューズ」とも呼ばれますが、このデバイスは実際にはヒューズではなく、電流を制限する非直線性のサーミスタです。フォールト状態ではすべてのPPTCデバイスが高抵抗状態になるため、通常の動作でも回路には部分的に危険な電圧が生じる可能性があります。

 PPTCの代表的な例には、Littelfuseの2016L100/33DRがあります。これは面実装の33V、1.1AのPPTCデバイスで、リセット可能な保護が必要な低電圧(60V以下)の用途向けに提供されています(図2)。フットプリントは4×5mmで、8Aの過電流時に0.5秒未満で遷移します。

     
図2:2016L100/33DRは33V、1.1AのPPTCデバイスで、リセット可能な保護が必要な低電圧用途に使用できます。8Aの過電流時に0.5秒未満で反応します。 (画像提供:Littelfuse, Inc.)

 標準的な人工呼吸器では、2016L100/33DRを使用して電池管理システムのMOSFETを外部短絡による高電流から保護できます。また、USBチップセットの過電流保護も可能になります(図3)。


図3:この人工呼吸器のブロック図では、PPTCデバイスを電池管理システムやUSBポートセクション(領域2と領域5)に使用できます。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 MOVは、電圧依存の非直線性デバイスです。電気的にバックツーバックツェナーダイオードと同様に動作します。その対称的で急峻な降伏特性により、優れた過渡抑制性能を発揮します。

 高電圧過渡が発生すると、バリスタのインピーダンスは開回路に近いレベルから高い導電性のレベルまで桁違いに減少し、数ミリ秒で過渡電圧を安全なレベルにクランプします(図4)。


図4:MOVの電圧-電流(V-I)曲線は、通常の高抵抗領域と超低インピーダンス領域を示しており、後者は電圧が設計閾値を超えて上昇したときに発生します。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 このクランプ動作によって、過渡パルスの潜在的な破壊エネルギーがバリスタによって吸収されます(図5)。


図5:MOVでは、過渡電圧の発生時に高インピーダンスから低インピーダンスに突発的に切り替わることで、その電圧を許容可能なレベルにクランプします。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 MOVはさまざまなパッケージで提供されており、その1つである390V、1.75kAのV07E250PL2Tは、直径わずか7mmの小さなディスク型でスルーホールリードが付いています(図6)。MOVは入力ACラインに使用されることが多く、これによりACラインの過渡電圧による損傷を防ぎます(図3の領域1)。

 なおMOVは、複数を並列に接続してピーク電流とエネルギー処理能力を高められるとともに、直列に接続して通常利用できるよりも高い電圧定格を得るか、または標準的な各製品の間の定格を得ることもできます。

     
図6:V07E250PL2T MOVはスルーホールリード付きの7mmディスク型で、390Vで動作する定格を持ち、最大1,750Aの過渡を処理できます。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 MLVは、MOVに似ており基本機能は同じですが、内部構造が異なるので特性も多少異なります。MLVは、酸化亜鉛(ZnO)と金属製内部電極のウェット積層プリントレイヤ、焼結、端子形成、ガラス添加、めっきの各処理によって製造されます。一般に、同じMOV電圧定格の場合、小さなMLV部品では電流が高いときほどクランプ電圧が高くなり、大きい部品ではエネルギー耐量がより高くなります。

 たとえば、V12MLA0805LNH MLVデバイスは、そのピーク電流定格(3A、8/20μs)で複数のパルスによってテストされています。テスト終了時点(10,000パルス後)でも、デバイスの電圧特性は仕様の範囲内に収まりました(図7)。このデバイスは、人工呼吸器の電源とUSBポート(図3の領域1と領域5)の過渡保護に使うデバイスの候補に挙げられます。


図7:V12MLA0805LNHなどのMLVは、性能の低下なく繰り返し過渡パルスに耐えられます。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 TVSダイオードも、センシティブな電子回路を高い電圧過渡から保護し、他の大半の回路保護デバイスよりも迅速に過電圧イベントに反応できます。TVSダイオードは、通常のダイオードよりも大きな断面積のp-n接合を使用して電圧をクランプし、所定のレベルに抑制します。これにより、TVSダイオードは損傷を受けずに大電流をグランドに導通できます。

 TVSダイオードは一般的に、落雷、誘導性負荷スイッチング、伝送ラインやデータラインや電子回路に付随する静電気放電(ESD)などによって誘発される、電気的オーバーストレスからの保護に使用されます。

 TVSダイオードの応答時間はナノ秒単位であり、これは医療用製品、テレコミュニケーションや産業用機器、コンピュータ、民生用電子機器などの比較的センシティブなI/Oインターフェースの保護に有利な特長です。TVSダイオードには、過渡電圧とTVSの電圧と電流との間にクランプの明確な関係性があり、具体的には検討対象のTVSモデルごとに規定されます(図8)。


図8:この図には、TVSにおける過渡電圧/TVSの電圧/TVSを流れる電流間の一般的な関係が示されています。具体的な値は、選択したTVSダイオードモデルごとに規定されます。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 SMCJ33Aは、クランプ電圧53V、ピーク電流28Aの定格を備えた、5.6×6.6mm SMTパッケージの単方向TVSダイオードです。また、双方向バージョン(末尾がB)も提供されており、正と負の両方向への過渡が想定される場合に使用します。

 圧電トランスデューサを駆動する高電圧パルス発生器をともなうポータブル超音波スキャナなどに代表される用途にTVSダイオードを使用することで、USBポートやLCD/LEDユーザーインターフェースディスプレイを保護できます(図9の領域2と領域3)。


図9:このポータブル超音波スキャナのブロック図では、クランプ電圧53VのSMCJ33AなどのTVSダイオードをUSBポートとLCD/LEDディスプレイの過渡保護に使用できます(領域2と領域3)。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 ダイオードアレイは、大型TVSダイオード(ツェナーダイオードなど)を中心にステアリングダイオードを使用しており、I/Oラインに見られる静電容量を低減できるようにします。ダイオードアレイデバイスには、0.3~5pFという低いオフ状態キャパシタンスがともない、±18kV~±30kVのESDレベルに適します。

 そのいくつかの用途例には、USB 2.0、USB 3.0、HDMI、eSATA、ディスプレイポートインターフェースの保護が含まれます。なお、名称が似ているTVSダイオードアレイは同様の基本機能を備えますが、より大きな静電容量をともなうためより低速なインターフェースに適します。

 SP3019-04HTGは、そのようなダイオードアレイの1例です(図10)。このダイオードアレイは、4チャンネルの超低静電容量(0.3pF)の非対称ESD保護を6ピンSOT23パッケージに統合されており、10nA(標準)の超低リーク電流(5V時)をともないます。TVSダイオードと同様に、一般的な用途にはUSBポートとLCD/LEDユーザーインターフェースディスプレイの保護があります(図9の領域2、3)。


図10:SP3019-04HTGなどのダイオードアレイは、複数の高速I/OラインのESD保護を可能にします。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 SSR(光アイソレータとも呼ばれる)では、入出力の間がほぼ完全なガルバニック絶縁(抵抗パスなし)の状態で、1つの電圧が無関係の独立した電圧をスイッチングして制御できるようになります。

 SSRの利用には、数多くの幅広い目的があります。その1つである機能性について見ると、SSRによって、分離したサブ回路間のグランドループを排除すること、あるいはハーフブリッジ(Hブリッジ)MOSFET構成のハイサイドドライバをグランドから「フロート」させることができます。

 SSRを利用するもう1つの目的には安全性があり、特に医療機器では重要になります。なぜなら、SSRの絶縁性が導通を遮断するバリアになるからです。このような封じ込めは、ユーザーや患者が計測器のリード線、ノブ、プローブ、エンクロージャと接触するときに高い内部電圧がともなう場合に必要になります。

 CPC1017NTRは、基本的な単極、ノーマリオープン(1フォームA)SSRの代表的なデバイスです。小型の4mm2、4ピンハウジングにパッケージされており、入出力間で1,500VRMSの絶縁を可能にします。

 CPC1017NTRは非常に効率的な特長を持ち、動作に必要なLED電流はわずか1mAであり、100mA/60Vの切り替えが可能で、外部のスナバ回路を必要とせずアークなしのスイッチングを実現します。さらに、EMI/RFIが生成されず、外部の放射電磁場に対する耐性があります。

 このような特性は、一部の医療用の計測器やシステムに求められるものです。除細動器などの用途では、設計者はCPC1017NTRを使用して、低電圧回路を装置のパドルを駆動する高電圧ブリッジから電気的に分離できます(図11)。


図11:除細動器では、SSRにより低電圧の電子回路で高電圧のパドルを駆動できる一方、Hブリッジ構成のハイサイド「フローティング」ドライバをシステムのグランドから分離したままにできます(領域5)。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 温度インジケータは、サーミスタなどの温度センサの特殊なバージョンです。電源や高電圧源など高温になりやすい部位では過熱の監視が当然必要と考えられますが、USB-Type CなどのI/Oポートでも大電流を処理する可能性があれば過熱につながります。これは、内部の故障が原因の場合や不具合のある負荷やポートに差し込んでいるケーブルの短絡が原因の場合もあります。

 このような潜在的な問題に対処するには、SETP0805-100-SE setP正温度係数(PTC)温度インジケータなどのデバイスをUSB Type-Cプラグの過熱保護に利用できます。このデバイスは、USB規格の独自仕様に適合するように設計されており、最高のUSB Type-C給電レベルであっても保護する能力を備えています。

 SETP0805-100-SEは0805(2.0×1.2mm)パッケージで提供され、100W以上を消費するシステムを保護します。また同デバイスの抵抗が公称12Ω(25℃時)から35kΩ(100℃時)(標準値)に増加することで、高感度で信頼性の高い温度表示を実現します。

 GDTというと、エンジニアはスパークが見える大きくてかさばる管のイメージを思い起こすかもしれませんが、実際にはまったく異なります。この管デバイスは、保護するラインや導体、通常はAC電力ラインや他の「むき出しの」導体とシステムグランドの間に配置することで、より高い過電圧をグランドに迂回させるためのほぼ理想的な機構を可能にします。

 通常の動作条件下では、GDT内にあるガスが絶縁体の役割を担うため、GDTは電流を通しません。過電圧状態(放電開始電圧と呼ばれる)が発生すると、管内のガスがブレークダウンして電流を通します。

 過電圧状態が放電開始電圧定格のパラメータを超えると、GDTがオンになって放電が起こり、破損につながるエネルギーを迂回させます。GDTには、非接地ライン用の2極デバイスと接地ライン用の3極デバイスがあり、両デバイスともデザインインとボード組み立てが容易な小型SMTパッケージで提供されます(図12)。


図12:GDTには、非接地回路用の2極デバイス(左)と、接地回路用の3極デバイス(右)があります(GDTの記号は、各回路図で右側にある「Z字型」の記号です)。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

 GDTは、75Vの低い放電開始定格電圧で提供されており、数百Aから場合により数千Aに対処できます。たとえば、GTCS23-750M-R01-2は放電開始電圧75V、電流1kAの定格を持つ2極GDTで、長さ4.5mm×直径3mmのSMTパッケージで提供され、ほぼあらゆる保護部位に設置できます(図13)。

     
図13:GDTは、映画に登場する大きなスパークギャップデバイスのような外観とは限りません。GTCS23-750M-R01-2は75V、1kA、SMTパッケージ入りのGDTで、寸法はわずか長さ4.5mm×直径3mmです。(画像提供:Littelfuse, Inc.)

規格が設計の指針に

 医療機器では複数の安全規格を満たす必要があり、それらには、あらゆる民生用製品や商用製品に適用される規格や、医療機器専用の規格もあります。そのような規格の多くは、国際的な地域が対象になります。多くの規格と規制の中には、次のものがあります。

・IEC 60601-1-2:「医療用電気機器-パート1-2:基礎安全と基本性能に関する一般要求事項 - 副通則:電磁妨害-要求事項及び試験」
・IEC 60601-1-11:「医療用電気機器パート1-11:基礎安全と基本性能に関する一般要求事項 - 副通則:ホームヘルスケア環境で使用する医用電気機器及び医用電気システムに対する要求事項」
・IEC 62311-2、「電磁界(0Hz~300GHz)への人体ばく露制限に関する電子電気機器の評価」
・IEC 62133-2、「アルカリ又は他の非酸性電解質を含有する二次電池及びバッテリ-可搬用途で使用する可搬式密閉形二次電池及びそれらで製造するバッテリの安全要求事項 - パート2:リチウムシステム」

 これらの安全規制を満たすには、回路保護デバイスの選択とその使用方法に留意することが大きな役割を果たします。また、認可/承認済みの技術や部品を利用すれば、承認プロセスを速めることもできます。

結論

 回路保護デバイスを一般的な装置や、特に医療用装置に使用する場合、使用する部位や使用の理由、使用方法の要件は、設計の際に複雑な課題となります。適切な保護部品は数多くあり、回路機能に応じて特化したものや、より汎用的に適用できるものもあります。

 保護が必要な各種の回路やシステムの部位に応じて、個々の部品にはその部位に最適な、または比較的適切な一連の特性があります。1つのデバイスで幅広いさまざまなシステム要件に対応するのは無理なため、設計者はいくつかの保護手法に頼らざるを得ません。

 多くの場合、どのデバイスを選び、どうすればそれを最適な形で使用できるかを決めることは本質的に複雑であり、規制に絡む審査の対象にもなります。設計者は、保護デバイスのベンダーまたはベンダー指定のサプライヤ(ディストリビュータ)に相談し、豊富な知識を持つアプリケーションエンジニアの助けを借りることを検討すべきでしょう。

 エンジニアの経験と専門知識を活かすことができれば、市場投入までの時間を短縮し、より入念な設計を確保できます。また、規制承認への近道にもなります。



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