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IoTのためのワイヤレステクノロジー

著者 Walter N. Maclay(ウォルター・N・マクレイ) 氏
President, Voler Systems
2021-03-10

マルツ掲載日:2021-07-12


 IoTは、今なお、知られているようで知られていないと言えるでしょう。この言葉は、ハイテク産業や大企業に属す人々にとっては一般的な用語ですが、一般の人々にとっては、日常生活の一部でありながら滅多に耳にすることはありません。

 IoTとは、デバイス、車両、建物、電子機器、ネットワークなどの物理オブジェクトの接続性のことで、それらが相互に作用し、データを収集し、交換することを可能にします。それは、これまでインターネットに接続されることのなかった従来製品の最新型のものを含め、何百万もの様々なモノに適用されます。

 この記事では、これらのデバイスがワイヤレスで通信するための様々な方法について簡単に説明します。

データをクラウドに取り込む3つの方法

 IoTの課題の1つは、デバイスのセンサからデータをクラウドに送信し、そのデータを利用し、処理し、保存することです。スマートフォンを介したWi-FiやBluetoothのユビキタス的な利用に加え、携帯電話基地局や公衆Wi-Fiアクセスポイントの普及により、これまで以上にIoTセンサのクラウドへのアクセスが可能になりました。クラウドにデータを取り込むには、基本的に3つの方法があります。

●センサからゲートウェイ、そしてクラウドへ
 一部のアプリケーションでは、センサデータをゲートウェイに送り、そのゲートウェイがクラウドに効率的にデータを送信するのが最適な方法です。アプリケーションのニーズに応じて、ゲートウェイは単純な中継システムから、「エッジ処理」と呼ばれるより計算集約的な機能を実行する「スマート」プラットフォームまで様々な形態があります。

 駐車場センサや机使用率センサなどのデバイスは、一般的にゲートウェイに依存してデータを送信します。Wi-Fiはゲートウェイの一例です。家庭内で使用する場合は、Wi-Fiゲートウェイを設置する必要があります。

 すでにゲートウェイが設置されている公共の場所では、Wi-Fiはクラウドに直接的に動作します。Bluetoothのような他のタイプのワイヤレス通信では、ゲートウェイが必要です。家庭内のWi-Fiの例としては、スマート着せ替えパッドと接続された体重計のHatch Baby Growがあります。

 Wi-Fiを利用して、着せ替えパッド内の体重計から自宅のインターネットにデータを送信します。保護者と小児科医は、AndroidアプリまたはiOSアプリを使って、クラウド上の情報を追跡することができます。

●センサから携帯電話、そしてクラウドへ
 場合によっては、ゲートウェイを携帯電話にすることもできます。Wi-FiやBluetooth機能を搭載したスマートフォンは、データをクラウドに送信するためのゲートウェイとして使えます。

 たとえば、Voler Systemsでは高齢者のバランスをモニターするイヤホンの開発に協力しました。ここでは、Bluetooth LEを使って、アプリをインストールしたスマートフォンに無線送信します。データはスマートフォンからクラウドに送信され、そこでさらに処理を行ったり、データを共有したりできます。

●スマートデバイスから直接クラウドへ
 センサは、NB-IoT、LTE-M、LoRaなどの技術を使ってクラウドに直接接続することができます。これらの技術は、データ転送レートが低い限り、非常に小さな電力で何マイルもの距離を伝送し、通常、携帯電話基地局に設置された機器を介してインターネットへの接続を実行します。これは、データ転送レートと電力がはるかに低いことを除いて、携帯電話とほとんど同じように動作します。月々の利用料金がかかりますが、一般的には少額です。

 IoTワイヤレス通信戦略を計画する際に考慮すべき要素としては、転送されるデータの量、データソースがインターネットからどれくらい離れているか、必要な電力量、サービスの費用などが挙げられます。

 スマートフォンの普及と、Wi-FiやBluetooth無線規格の選択により、非常に便利なコネクティビティが提供されています。NB-IoTやLTE-Mなどの新しい規格は、将来のモノのインターネットの選択肢を広げます。

なぜ新しい技術が必要なのか?

 IoTは進化を続けています。改良を重ねるごとに、消費電力の低減、無線通信の長時間化、機能の向上などが図られています。新しいデバイスは、新しい技術を利用して、より優れたパフォーマンスを提供できます。

トレードオフのために何を考慮すべきか

 Voler社がウェアラブルデバイスやバッテリ駆動のデバイスを設計する際には、ユーザーから必ず次のような要求があります。

・長時間動作する
・大量のデータを長距離伝送できる
・小さなバッテリを使用する

 これらの相反する要求にはトレードオフが必要です。エンジニアリングには、技術的な取り引き、つまり妥協が付きものです。必要なシステム機能を検討し、システム要件に応じて最適なパフォーマンスを提供するために必要な技術要件のトレードオフを行います。そしてまた、満足のいくユーザーエクスペリエンスを提供することも重要です。その結果、多くの選択肢の中から最良の妥協点を備えた設計が実現します。

・トレードオフの考慮事項
・データ転送レート
・伝送距離
・バッテリサイズ
・コスト
・要免許周波数帯と免許不要周波数帯
・キャリア展開と顧客展開

・エンドデバイスの密度
・展開される場所
・ファームウェアの更新
・OS用ドライバ
・コンポーネント/モジュールの選択
・アンテナ
・技術の成熟度

 Volerは最近、あるスタートアップ企業と協力して、コネクテッド製品のバッテリ寿命を改善しました。これは、MurataのimpModule™をベースにして、ArmプロセッサとWi-Fiトランシーバを搭載したものでした。この会社は何週間も持つバッテリ寿命を必要としていましたが、プロトタイプ作成時からほとんど進んでいない状態でした。Volerでは、必要なバッテリ寿命に合わせてコードを修正しました。オリジナルのコードが意図した通りに動作していなかったのです。

 無線伝送では、伝送に必要な電力、データ転送レート、伝送距離の3つを管理する必要があります。そのためには、正しいワイヤレス規格を選ぶことが重要です。設計するIoTデバイスの無線規格を選択する際には、以下の表を参照してください。この表は、IoTデバイスに使用される一般的な無線規格を、その特性とともにリストアップしたものです。


表1:一般的な無線規格とその特性(表提供:Voler)

 無線規格が異なれば、必要な電力レベルも大きく異なります。必要な電力は、データ転送レートと伝送範囲によって異なります。たとえば表1を参照すると、LTEセルラーを使用して1秒あたり100ビットのデータを1km送信するために、デバイスは120mWの電力を必要とします。しかし、Bluetooth LEを使用して1mを送信する場合、デバイスは0.15mWの電力しか必要としません。

IoT無線規格の比較


表2:IoT無線規格の比較(表提供:Voler)

一般的なワイヤレスオプションの電力要件

 10m程度の距離のデータ送信なら、BLEやBluetoothで十分です。しかし、在庫管理のような産業用・商業用のIoTデバイスや健康モニタリングのためのウェアラブルデバイスでは、NB-IoTやLTE-Mのような長距離の通信が必要になる場合があります。また、ビデオカメラのように大量のデータを送信する機器の場合、BLEでは対応できません。Wi-FiやLTEなどのハイパワーな選択肢が必要になります。

 一方、NB-IoTやLTE-Mのようなセルラー無線プロトコルを使用すると、IoT機器は低電力で遠くの場所にデータを送信することができます。50kmまでデータを伝送できるSigFoxも同様です。しかし、データ転送レートの高いセルラー規格とは異なり、SigFoxは1秒間に300ビットのデータしか伝送できません。

プライベートネットワークとパブリックネットワーク

 プライベートネットワークは、1人や限られた数のユーザーのために、プロバイダが設置して制御するゲートウェイがあります。パブリック(公衆)ネットワークには、月額料金を支払うことで多くのユーザーが利用できるゲートウェイがあります。例としては、携帯電話のサービスです。

 パブリックネットワークでは、携帯電話基地局などのインフラを設置する必要があります。携帯電話が普及し、簡単にローミングできるようになったのは、基地局が広く設置されるようになったからです。

 SigFoxとLoRaは、米国ではインフラが限られているため、この技術を使ったデバイスはほとんどの場所で使えません。LoRaには、ゲートウェイを使ったプライベートネットワークのオプションがあります。

 2019年、NB-IoTとLTE-Mのインフラ導入が米国人口の9割をカバーする地点を通過しました。これは、携帯電話の電波が届くかどうかということです。何年も前からあった技術ですが、ようやく新しいデバイスに使用できるようになりました。

 世界のほとんどの主要国でもインフラは整備されています。NB-IoTやLTE-Mの利用が急増することが期待されています。それに反してSigfoxやLoRaは、公共インフラへの設置が大きく遅れています。

 以下、プライベート/パブリック無線の選択肢をまとめてみました。

●プライベート
・通信端末の両エンドを私的に所有
・どこにでも設置可能
・免許不要周波数帯
・基地局とエンドポイントの設置コスト
・月額料金なし

●パブリック
・プロバイダが所有するネットワーク(例:携帯電話)
・基地局が存在する場所でのみ稼働
・容易なローミング
・要免許周波数帯
・ネットワーク使用に対する月額料金

バッテリ技術の向上はいつになるのか?

 バッテリのほうが優れていれば、これらのトレードオフは簡単になるでしょう。化学的エネルギー貯蔵は、その効率の限界に近づいています。しかし、高密度化と安全性の向上については多くの研究が行われています。

 仮に、この50年間に電池が半導体のように進歩していたら、ピンの頭ほどの大きさの電池が1ペニーで手に入り、自動車の動力源になっていたかもしれません。言うまでもなく、そんな技術はどこにもなく、今後そうなることもないでしょう。デバイスは、エネルギーを化学的に貯蔵するために必要なスペースが制限されています。

 現在のバッテリは、究極の化学エネルギー貯蔵であるガソリンなどの10%程度のものです。しかし、ガソリンには安全性の問題があります。また、より効率的な選択肢として原子力がありますが、安全性の問題や可搬性の問題があります。今後、バッテリは少しずつ改良されていくでしょうが、その進展は緩やかなものになるでしょう。

コスト面での配慮

 多くのIoTデバイスメーカーは、製品を手頃な価格で提供し、市場投入までの時間を短縮するために、セキュリティへの投資を抑えています。開発段階でセキュリティを統合すると、コストと時間が大幅に増えてしまいます。

 しかし、セキュリティが脆弱なIoTデバイスを構築すると、生産性の低下、法的・コンプライアンス上の罰金、評判の低下、金銭的損失など、顧客だけでなくメーカーのブランドにもダメージを与える結果になりかねません。

 IoTデバイスに選択されるワイヤレス規格は、その性能、使いやすさ、セキュリティ、信頼性に大きく影響を与えます。IoTデバイスに最適な規格は、そのアプリケーションによって異なります。デバイスの目的を知ることは、効率的に動作させるために必要な電力量、データの伝送速度、バッテリの持続時間など、デバイスを構築するための重要な要件の手がかりとなります。

 Voler SystemのIoTデバイス開発専門家チームは、IoT機器に適したワイヤレス規格の選択を設計者に指導しています。IoTデバイスの設計に適した無線規格の選択については、いつでもIoTエキスパートにお問い合わせください。



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