適切なTIAでLiDAR自動車距離センサの精度を確保
著者 Bill Schweber 氏
Digi-Keyの北米担当編集者 提供
2021-01-27
マルツ掲載日:2021-06-01
自律走行車が成功するためには、カーセンサとソフトウェアが安全かつ正確に目的地まで誘導することを搭乗者が信頼する必要があります。信頼をもたらす鍵は、先進運転支援システム(ADAS)を実現してきた手法としての様々なセンサからの入力の融合によって、精度、冗長性、安全性を高めることにあります。
主要なセンサの1つが光検出と測距(LiDAR)であり、設計者は自律運転車のために最高の信頼性、解像度、精度、応答時間を備えたLiDARシステムを確保する必要があります。
LiDARの性能は、アバランシェフォトダイオード(APD)信号を素早く回収してデジタルフィードバックを提供するフロントエンドのトランスインピーダンスアンプ(TIA)に大きく依存しています。フィードバック信号のタイムスタンプと送信信号のタイムスタンプを比較することで、測距のためのtime-of-flight(ToF)を算出することができます。
この記事では、LiDARを用いて精密な物体検出をするためにフィードバック回路の性能を開発する際の課題について簡単に説明します。続いて、アナログ・デバイセズのTIAを紹介します。
反射光から迅速にリカバリーするために、高速性、帯域幅、低入力インピーダンスの利点を活用して、ナノ秒(ns)のフォトダイオードの立ち上げ時間を実現する方法を紹介します。また、最良の総合的性能を達成するため、AC結合を介してAPD暗電流と周囲光を受け付けずに正確なToF推定を可能にする方法を示します。
ADASの主な要素
ADASの中核をなすのは、外部の物体を解析するための高度なセンシングシステムです。これらの物体を識別して位置を特定することで、車両は事故を回避するために、ドライバーに通知するか、適切な措置を取るか、またはその両方を行うことが可能になります。
ADASの背後にあるセンサ技術には、画像カメラ、慣性計測ユニット(IMU)、レーダ、そしてもちろんLiDARがあります。その中でもLiDARは、自律走行車における悪天候時や横方向の距離センシングと測距を行う重要な光学技術です。それはADASシステムの不可欠な部分を形成しています(図1)。
図1:ビジョン(カメラと関連ソフトウェア)、レーダ、LiDARシステムは、ADASが適切な措置を取れるよう情報を提供するために、互いに補完し合っています。(画像提供:Analog Devices)
ADASシステムはカメラを使用して、車両、歩行者、障害物、交通標識、車線などの外部物体を迅速かつ正確に検出し認識します。分析により、安全性を最大化するための適切な応答を引き出します。応答としては、車線逸脱警告、自動緊急ブレーキ、ブラインドスポットアラート、ドライバの覚醒と注意力の監視などがあります。カメラの強みは、物体の分類と横方向の解像度です。
自己完結型のIMUシステムは、通常、ジャイロスコープ、磁力計、加速度計の3つの組み合わせで、角運動と直線運動を測定します。角速度と加速度を統合した量を確実に出力するため、IMUにジンバルを使用します。ジンバルとは、1つの軸で物体の回転を可能にする旋回支持体のことです。
互いに直交する回転軸に取り付けられた3つのジンバルのセットでは、最も内側のジンバルに搭載された物体が、その支持体の回転から独立した状態を保つことが可能です。IMUは、GNSSの精度をメートル(m)からセンチメートル(cm)に向上させ、正確な車線ポジショニングを実現します。
自動車用レーダ技術適合により、距離や速度を含む多くの異なる変数を測定すると同時に暗闇の中での「視界」を提供します。一般的に、高分解能のためには、24GHzと77GHzの信号レートが使用されます。
レーダセンサは、その視野内の異なるオブジェクトからの反射信号を捉えます。次に、車両により他のすべてのセンサ入力のコンテキストの中でセンサ出力が分析され、例えば衝突を防止するためにステアリングやブレーキの調整が必要かどうかを判断します。
ADASの画像を完成させるために、LiDARは200~1150nmのスペクトル応答範囲を持つ光学系を利用しています。システムにより、レーザー送信から反射信号の受信までのToFが測定されます。多くの信号を合成することで、車両周辺の正確な多次元深度マップを作成することができます。
LiDARの用途としては、衝突回避、死角検知、緊急制動、適応走行制御(ACC)、動的サスペンション制御、駐車支援などがあります。LiDARシステムは、悪天候下での横方向の分解能と能力の点でレーダを凌駕しています。
ADASや自律走行車では、360度の検出と解析のために、これらのセンサを車両の周囲に複数配置する必要があります(図2)。
図2:カメラ、レーダ、LiDARを併用することで、車両の周囲360°の視界が得られ、車内外の人の安全を確保することができます。(画像提供:Analog Devices)
これらのセンサとその関連ソフトウェアが改善されるにしたがい、ドライバ、同乗者、そして車両から近距離の人の安全がさらに高まります。
LiDARの光学系
LiDARの設計は、約75,000ドルという車のルーフ上で回転する「コーヒ缶」型のセンサから、それぞれが1,000ドルの価格範囲内のより近代的なものへと進歩してきました。コスト削減の主な要因は、レーザーや関連エレクトロニクスの進歩によるものです。
(回転式コーヒ缶から)半導体専用レーザーへの移行と、それに伴う半導体プロセスの規模の変化が、コストとサイズが縮小された主な理由です。現在では、複数のLiDARセンサを車両の前後や側面に配置することにより、低コストで360°の視界を確保できるようになりました。
典型的なLiDAR設計は、データ収集(DAQ)、アナログフロントエンド(AFE)、レーザー光源(図3)の3つの主要なセクションに分けることができます。
図3:LiDAR評価システムの内訳を見ると、LiDARは主にDAQ、AFE、レーザー光源の3つのセクションから構成されていることがわかります。(画像提供:Analog Devices)
DAQには、レーザーとAFEからのToFデータを収集するための高速A/Dコンバータ(ADC)と対応する電源、クロッキングが含まれています。AFEにはAPDライトセンサと反射信号を取り込むためのTIAが搭載されています。
信号チェーン全体で、DAQセクションのADCに供給されるAPD出力信号を条件付けします。AFEには、DAQへの出力時の遅延タイミングも含まれています。レーザー部は、レーザーおよび関連する駆動回路を含み、初期レーザー出力信号を送信します。
LiDAR AFE
図4に示すように、LiDARレシーバの信号チェーンの例は、高電圧逆バイアス(-120V~-300V)の低入力静電容量APDから始まり、アナログ・デバイセズのLTC6561HUF#PBFのようなTIAが続きます。
TIAの高速220MHzゲイン帯域幅積(GBWP)を補完するために、APD入力とプリント基板の寄生容量を低く設計することが重要です。APDによって生成された電流信号にさらにノイズが追加されないよう必要なレベルの信号の完全性とチャンネル分離を達成し、それによってシステムのSNRと物体検出率を最大化するため、TIA入力部についてはさらなる注意を必要とします。
信号の完全性を高めるために、TIAにはアナログ・デバイセズのLT6016というローパスアンプフィルタが搭載されており、高速信号のリンギングを減衰させています。TIAは、APD出力電流(IAPD)を出力電圧VTIAに変換します。電圧VTIAは、ADC(図示せず)の入力を駆動する差動バッファアンプ(アナログ・デバイセズのADA4950-1YCPZ-R7)に送られます。
図4:この設計のAFEは、APD、LTC6561 TIA、ADA4950差動入出力高速アンプで構成されています。LT6016は、高速信号のリンギングを減衰させるアンプフィルタです。(画像提供:Analog Devices)
ToF を使用して距離を計算するために、ADCサンプリングレートの増分が受信した光パルスの分解能を決定するために使用されます(式1)。
(式1)
ここで、式の要素は次のとおりです。
LS:光の速度(3×108m/s)
fS:ADCサンプルレート
N:光パルスが発生してその反射を受信するまでの時間間隔におけるADCサンプル数
例えば、ADCのサンプルレートが1GHzの場合、各サンプルは15cmの距離に対応します。
不確実なサンプルが少しでもあるとかなりの測定誤差が生じるため、不確実なサンプリングはほぼゼロに近いものでなければなりません。そのため、LiDARシステムは並列TIAとADCを使用して不確実なサンプリングゼロを目指します。
このようにチャンネルが増えることで、消費電力が増加し、プリント基板のサイズも大きくなります。これらの重要な設計上の制約についても、並列ADCの問題を解決するためにJESD204Bインターフェースを備えた高速直列出力ADCが必要となります。
LiDARセンサ
前述したように、LiDARシステムにおける重要なセンシング要素はAPDです。内部ゲインを備えたこれらのフォトダイオードの逆電圧バイアスは、数十Vから数百Vの範囲です。APDはPINフォトダイオードよりも高いS/N比(SNR)を有しています。さらに、APDの高速応答、低暗電流、高感度は際立っています。APDのスペクトル応答範囲は、LiDARの典型的なスペクトル範囲と一致するように、200~1150nmの範囲にあります。
APDの良い例としては、400~1100nmのスペクトル応答を備え、905nmをピークとするMarktech OptoelectronicsのMTAPD-07-010があります(図5)。デバイスの能動領域は、0.04mm2です。消費電力は1mW、順電流は1mA、動作電圧は0.95×降伏電圧(Vbr)200V(最大)です。立ち上がり時間は0.6nsです。
図5:MTPAPD-07-0101 APDは、905 nmでのピーク応答、0.04mm2の能動領域、および6nsの立ち上がり時間を備えています。(画像提供:Marktech Optoelectronics)
典型的な半導体ベースのAPDは、数十~数百Vの比較的高い逆電圧で動作し、ブレークダウンのすぐ下で動作することもあります(MTAPD-07-010では0.95Vbr)。この構成では、吸収された光子が強い内部電場で電子や正孔を励起して二次キャリアを生成します。数μmにわたり、アバランシェプロセスによって光電流が効果的に増幅されます。
APDは、その動作特性により必要な電子信号の増幅が少なく、電子ノイズの影響を受けにくいため、非常に高感度な検出器での使用に適しています。シリコンAPDの倍率(ゲイン係数)は、デバイスと印加される逆電圧によって変化します。MTAPD-07-010のゲインは100です。
TIAのソリューション
動作中、LiDARはデジタルバースト光信号を発し、その反射はMTAPD-07-010 APDによって捕捉されます。これには、飽和過負荷からの高速回復、高速な出力マルチプレクサ機能を備えたTIAが必要です。220MHzの帯域幅を持つLTC6561低ノイズ4チャンネルTIAは、これらの要件を満たしています(図6)。
図6:独立したアンプと単一の多重出力ステージを備えたLTC6561クワッドTIAは、APDを利用したLiDAR用に設計されました。(画像提供:Analog Devices)
図6では、反射レーザー信号(図3による)は、APDアレイと4つの低ノイズ200MHz TIAによって捕捉されています。TIAは捕捉した信号を素早くToF検出器(右上)に送信します。4つのTIAの入力に搭載された1nFコンデンサは、APD暗電流と周囲光の条件を効果的にフィルタリングして除去し、TIAのダイナミックレンジを維持します。しかし、コンデンサの値はスイッチング時間に影響を与えるため、設計者はそれを考慮して設計する必要があります。
強烈な照光下では、APDは大電流を流す場合があり、多くの場合、1Aを超えます。LTC6561は、このような程度の大きな過負荷電流にも耐え、素早く回復します。LiDARアプリケーションでは、迅速な過負荷回復が必須です。高速1mA過負荷からの回復は10nsで完了します(図7)。
図7:LTC6561は、1mAの大きな過負荷電流に耐え、10nsで回復します。(画像提供:Analog Devices)
図7において、入力電流のレベルが線形範囲を超えると、出力パルス幅が広くなります。しかし、回復時間は10ns台のままです。LTC6561は、位相反転なしで1mAの飽和イベントから12ns未満で回復し、データ損失を最小限に抑えます。
まとめ
自律走行車の成功への道は、カメラ、IMU、レーダ、LiDARの統合と融合から始まります。特にLiDARは、この光学技術を用いて精密な物体検出を実現するための課題を把握し、十分に対処することによって期待に応えられます。
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