オーディオ用ディスクリートオペアンプ【TROP-006MF】について
TROP-006MFは、DIPタイプのシングルオペアンプとピン互換性を持たせたFET入力のディスクリートオペアンプです。トランジスタ技術誌に発表されたディスクリートオペアンプTROP-001を改良したものです。
改良点は2つで、1つは差動入力段のFET化、もう1つは出力段に新回路を採用したことです。使用したFETの2SK3320は、ノイズ特性や量産バラつきなどが保証されています。その他、回路定数を見直すことによって幅広い動作電源電圧を確保し、過大入力時の応答特性などを改善しています。
出力電流は±500mAで、TROP-001から引き継いだ低負荷ドライブ能力は、ローインピーダンスヘッドホンを低歪率で直接ドライブできます。
<ポイント>
1. FET 入力差動1 段電圧増幅段(TROTA-02b)+ FET 入力SEPP 出力段(TRBA-02c)によるディスクリートオペアンプ。
2. ±500mA の出力電流による低負荷ドライブ能力により、低歪みでヘッドホンを直接駆動可能。
製品仕様
推奨電源電圧範囲 | ±4.5V~±15V |
THD+N | 0.01%以下(クリッピングパワー、20Hz~20kHz、Av=6dB、30Ω負荷) |
最大出力電流 | 500mA peak |
残留ノイズ | 1μV以下 (A補正、入力ショート、ユニティゲイン) |
fT | 2MHz |
スルーレート | ±14V/μs(VCC/VEE±12V) |
消費電流 | ±12mA(VCC/VEE±12V)±8mA(VCC/VEE±5V) |
サイズ | W=13mm D=11mm H=10mm(端子部含まず) |
設計者からのコメント
2016年春、トランジスタ技術誌に発表したディスクリートオペアンプTROP-001から2年、その間にTROP-001では実現できなかったことや妥協したことを改善すべく開発したのがTROP-006MFです。
TROP-001との大きな違いは二つあり、一つは差動入力段のFET化、もう一つは新回路になった出力段です。TROP-001ではOTA回路基板のTROTA-01と出力バッファ回路基板のTRBA-01の組み合わせでしたが、TROP-006MFは、それぞれ進化したTROTA-02bとTRBA-02cで構成されます。
まずはTROTA-01とTROTA-02bの違いについて説明します。大きく違うのは、入力差動対をバイポーラトランジスタからユニポーラトランジスタに変更したことです。ジャンクションFETを使うことによって入力バイアス電流を気にせず、より多くのアプリケーション回路で使えるようになりました。またローノイズに特化したバイポーラトランジスタがほぼ存在しなくなってしまった現在において、TROP-001ではノイズ性能は使用トランジスタの実力に頼らざるをえなかったのですが、今回使用した2SK3320はノイズ特性も保証されており量産バラつきを少なく出来ます。他にも回路定数の見直しによって、幅広い動作電源電圧の確保や過大入力時の応答特性などを改善しています。
ペアとなる出力段TRBA-02cはTRBA-01の延長線上の回路ではなく、新開発の回路を使用しています。TRBA-01では、NchとPchのジャンクションFETを使ったコンプリメンタリー回路を入力段に使いましたが、PchFETの入手性が悪いことや、出力段のアイドリング電流がこのFET入力段の特性に左右されてしまうことから、TRBA-02cでは入力段をFET1石にして、このFETの特性バラつきが出力段に影響を及ぼさない回路構成としました。また、このFETをMOSFETにしている理由は、入出力間のDC電位レベル差を少なくするためです。さらに、このMOSFETにトランジスタでカスコードブートストラップをかけることによって、入力電圧の変化に対する入力インピーダンスのノンリニアな変化を抑え、20kHzでのT.H.D.は大振幅時においてTROP-001に比べ6dB以上改善しています。出力段のバイアス電流の量産バラつきもTRBA-01に比べ10dB以上改善しており、マルチチャンネルでの使用時の特性差を気にしなくてもよくなりました。
TROP-001から引き継ぐ低負荷ドライブ能力は、ローインピーダンスヘッドホンを低歪率で直接ドライブできますので、モノリシックオペアンプ+トランジスタバッファという構成を必要としません。
電気的仕様において、モノリシックオペアンプに多く見られるレール・トゥ・レールの電圧出力には対応していませんが、上下対称クリッピング特性や低周波増幅用として十分満足できる電気特性は、高性能オーディオ用オペアンプの特性に匹敵していながら、4558タイプのオペアンプ同等の使いやすさも兼ね備えています。
音質については、モノリシック回路とディスクリート回路で一般的に言われるような差も十分に感じとってもらえると思いますので、是非、お試しいただければ幸いです。
Designed by Nakano Lab.
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オーディオ用ディスクリートオペアンプ 型番:TROP-006MF 3,700円(税抜) ![]() |